satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第453話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、騎馬戦がありました。そこで意外な交流を築いていたユーリとシエルくんの存在が……!
今回はまた別競技の話です。


《F side》
「……すーくん! 起きてー!」
「…………ん」
ずっと閉じていた瞼を上げると、目の前にはおれの肩を掴む、すぅがいた。
「……何?」
「何じゃないよ。すーくん、借り物競走、出るんでしょ? 出番だよ?」
あぁ、もうそんな時間なんだ。
ふわりと欠伸をして、席から立ち上がる。そんなおれをラルはニヤッと嫌らしい笑みで手を振ってきた。
「いってらっしゃ~い♪ 面白いお題を引くことを願ってるね☆」
「じゃあ、その面白いお題に当てはまったら、問答無用で連れ出す」
「いいよ? 当てはまるならね」
言ったな。そん時は小脇に抱えて連れ出してやる。
「頑張ってね、フォース!」
「いってらっしゃい」
りぃとティールは普通に送り出してくれる。ラルも大人しくこうすればいいのに、なんて可愛げのない女なんだろう。
まあ、それを言ったところで、あいつには響かないのだろう。
おれはフードを被り直して、観客席から伸びる階段を降り、フィールド上に出る。
借り物競走は個人戦だが、なぜか参加人数が多い。それだけレースも多いんだろうけど、走る前から気が滅入るくらいだ。
そもそも、生徒は必ず一つは出ろという制約もウザい。サボるにサボれないし。まあ、どんな状況でもアクシデントはある……という名目で、仮病とか使って休んでもいいかとも思った。が、二日間まるっと欠席するのは、今後にも響きかねないので断念した。何より、すぅがいる時点で、サボれるはずもない。
で、唯一参加する競技に、なぜ、参加人数の多い借り物競走を選んだのか。それには理由がある。
『続いて行われる競技は借り物競走だー! レーンの途中に設置された紙を拾い、そこに書かれたお題を観客席から探し出してくれ! フィールドにいる選手から借りるのは、なしだぜー!』
『書かれたお題が物なら誰かに借りて、人ならその人物と一緒にゴールを目指してください。ゴールした瞬間、係の人がそのお題と相違ないか確認します。問題なければ、完走となり、間違っていれば、お題探しからやり直しとなりますので、注意してくださいね!』
『お題は色々用意してるからな~♪ 何が出るか楽しみだな!』
……このお題がおれがこれに出た理由である。
毎年、マジでくだらんお題が紛れ込んでいる。その中の一つには『好きな人』という、ド定番なやつまである始末。あるのはいい。いいんだけど、これのせいで一昨年、知らん女達に追いかけ回された。
そのため、去年、今年と自分で出るようにして、追いかけ回されるのを阻止していた。一人一競技参加という制約も達成できるし、これにさえ出れば、後は適当に暇潰ししていればいいので、一石二鳥ではある。
まあ、おれ自身が『好きな人』お題を引き当てる可能性も捨てきれないけど、そん時はそん時である。ぶっちゃけ、レーン上に設置されたお題札はそれなりに多いので、引く方が確率は低いと思ってるけども。
『それでは、参加者は所定の位置についてください!』
『借り物競技、スタートだぜ!』

レースは順調に進み、おれが参加するレースの手番となる。
選手は八名程。借り物競走という障害物(?)があるからか、男女混合レースとなっている。
「……」
その中に同級生のディーネもいた。あいつは何を思って、これに参加しているんだろう。食べ物は出てこないのに。
「位置について……よーいっ!」
スタートの合図として、雷管の音が勢いよく鳴り響き、選手らは一気に走り出す。全員の目的はもちろん、お題が書かれた紙である。
おれも適当に散らばるそれらの中から一枚拾い上げ、書かれたそれを確認する。
「……あ~」
そこには『ピンクのリボンを身に付けている生徒』とある。色指定している辺り、いるのか、いないのか博打みたいなお題だな。まあ、こんだけの生徒がいれば、どこかにはいるだろうという算段かもしれないが。
今回の場合、すぅがそれに当てはまるので、あいつを連れていこう。身内にいてよかった。
能力を使えば、一発であいつの傍にいけるけど、流石にルール違反だ。移動系の技って訳じゃないけど、端から見れば、そう取られても不思議じゃないし。
……分かっていても、わざわざ、足で戻るの、面倒臭いなぁ。
おれは急いで走る……でもなく、普通にラル達のいる観客席に戻ってきた。全員が『この中にいる誰か、もしくは持っているもの』が目当てなのだろうと察しているらしい。
「宣言通り、面白いお題だったの~?」
「ん~……別に。残念ながら、お前を連れ出せそうなお題じゃない」
色指定なしで、リボンを身に付けている生徒、なら、ラルを小脇に抱えて、連れ出せたのに。惜しい。
おれは一応、すぅの身に付けてるリボンをちらりと確認する。まあ、今朝、おれが結ったので、間違いないのだが……今でもきちんとピンクのリボンで髪を結んでいる。
「すーくん、お題なんだったの?」
「それは後で。すぅ、ちょっと来い」
「? うん。私でよければ!」
「サンキュー♪……んじゃまあ、失礼して」
立ち上がろうとしていたすぅの腕を引っ張り、そのまま両手ですぅを抱き抱えた。
「ひゃ……ちょ、ちょっと、すーくん!?」
「おやおやぁ? これはこれは~♪」
「ラル、うるさいよ……?」
本当にそう。おれが戻るまでにこいつのこと、黙らしておいて欲しい。
ラルに構っている時間も惜しいので、おれは気にしないことにして、くるっと方向転換する。
「じゃ、行ってくる」
「ねえ! すーくん、普通に行こうよぉ~~!!」
「あ? こっちの方が速い」
「あ、えと、ステラ、いってらっしゃ~い……?」
「リーちゃーーーん!!??」
「あんま騒ぐなよ。危ないし、舌、噛むぞ?」
「騒ぎたくなるような抱え方するからでしょ!? こ、これ、お姫様抱っこ……!」
そんなことを言われても。こっちの方が運びやすいんだよ。
ぎゃーぎゃー騒ぐ、すぅはガン無視して、おれは来た道を戻る。階段から一気に飛び降りることも考えたけど、目立ちそうなので、やめておいた。
ゴール付近ですぅを下ろし、ポケットからお題の紙を取り出した。そして、その紙を待機していた係の人に渡す。
「お疲れ様でした! お題の確認をしま~す♪」
「さ、最後の最後まで……下ろしてくれなかった……っ!」
何度も言うようだが、おれ一人が走った方が速い。
「……ありがとうございました! お題は『ピンクのリボンを身に付けている生徒』で、お題はクリアです!」
「どーも」
残念ながら─と、言ってみるけど、おれは全く興味ない─一位は逃したらしい。とはいえ、三番目にクリアできたので、上々ではないだろうか。
「すーくんのばかっ! なんで、すぐに下ろしてくれないの!? 私、一緒に走れたのに!」
「しつっこいな。……だから、おれが一人で走った方が速いっての。文句言うな」
というか、もう終わりましたけどね。
すぅは運ばれ方が気に食わなかったのか、おれの背中をずっと叩いている。全く痛くないので、気にならないんだけども。
おまけに頬を膨らまし、大変ご立腹のようで。
「言うよ! 全生徒に見られちゃったじゃん!」
「あ? 別にいいだろ。あんなの見られたところで、減るもんはないだろ?」
「よくない! 私はよくないの!」
何が。不都合でもあるわけでもあるまいに。
「あるよ!? すーくん、明日から、『中等部の女の子をお姫様抱っこした』って噂になるからね!?」
そう言われると、そうかもしれない。しれないけど、だからなんだって話だ。剣技大会時の鈴流に関しても、いつの間にか何も聞かれなくなったし。それと同じだろ。
「変に反応しなきゃ、人は勝手に飽きる。気にすんな」
「んもー! それができるのは、すーくんだけなのっ!」
えぇ……? 抱っこなんて星の数ほど、してきませんでしたっけ?
これ以上、何か弁明してもすぅの耳には届かなそうである。無視安定かもしれない。
ぷりぷり怒り続けるすぅは無視し、おれはふとゴールの方へ目を向ける。そう言えば、おれと同じグループにディーネがいたはず。ゴールした選手の中にいないので、まだお題探しをしているのかもしれない。
「……すーくん、聞いてるの!?」
「あ? うんうん。聞いてる」
「嘘つけ……って、あれ。ツバサちゃん?」
ん?
おれが話した係とは別の人にディーネがお題の紙を渡している。そのディーネの側にツバサがいた。
「お題の確認、失礼します。……あれ、えと……お題には『好きな人』……と、ありますが」
「ん。……そこに、異性って指定はない」
「あーちゃんの好きなお友達として、来ました~♪」
「な、なるほど……?」
まあ、『好きな人』ってだけで、性別や好きの種類等々の細かい条件の指定はない。二人の主張は間違ってはないだろう。
ド定番お題、ディーネが引いたんだな。いい回避してるじゃん。
まあ、それはそれとして。
おれは『好きな人』お題を引かずに、そこそこの成績で終わらせられた。体育祭最後の競技としては、悪くないんじゃない?



~あとがき~
本編でフォース視点は初めてでしたな。

次回、体育祭、一日目ラスト競技!

フォースがちゃんと競技に出てる話でした。
リボンという指定だけなら、ラル、ステラ、リーフ、全員いけるんですよね。実は。
リボン指定だったら、嫌がらせも兼ねて、ラルを連れ出すと思うんですが、大人しく抱えられるかは謎ですね(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第452話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、皆で楽しい?お昼ご飯の時間を過ごしましたとさ!
ステラ「た、楽しい!?」
楽しかったよ?
ということで、午後パート、始まるよー!


昼休憩を挟んで、生徒達の鋭気も養えただろう。そんな生徒達が挑む午後一発目の競技は四人一組で行われる『騎馬戦』である。
放送部であり司会のリュウとキャスによって、今回のルール説明が始まった。
『皆さんには、騎手の頭にある鉢巻を取っていただきます。取られた騎手のチームはそこで行動不能……失格となります!』
『更に注意事項として、首より上は攻撃しないこと。そして、足技、髪を引っ張る、掴む等の攻撃も禁止! 使えるのは己の腕力のみ! 野郎共、思う存分、その力を奮うがいい!』
『……先輩? この後、女子の部もありますよ。野郎共なんて、言わないでください? さて、出場する生徒の皆さんは準備をお願いします!』
リュウのノリノリな口上に突っ込みを入れつつも、この場の進行を進めていく、キャスであった。
この競技に出場するイツキとアラシは準備をしつつ、騎手として準備運動をしているところだった。
「おっしゃー! 絶対にユーリから鉢巻、取ってやんよぉぉ!!」
「気合い入ってますね、イツキ先輩」
「おうよ! そういうアラシだって、レオンから奪うつもりなんだろ?」
イツキの指摘にアラシは否定するでもなく、こくりと頷く。
「俺とレオンはこういう勝負事だと、互いに譲れないとこがあるんで。……そいやぁ、ユーリ先輩、騎馬戦に出るんですね。あんまりイメージになかったんで、意外っす」
イツキと違い、ユーリに対しては、落ち着いた大人の印象が強い。アラシは、ユーリがこういう競技には参加しなさそうだと思っていたのだ。
「だろうな~! これに関しては、俺が無理矢理誘ったからな。ユーリのやつ、最後まで渋ってたけど」
その光景が付き合いの短いアラシですら、ありありと想像できてしまい、思わず苦笑してしまう。
「とにかく、俺もアラシも騎手なんだし、敵からばんばん鉢巻、奪ってこうぜ!」
「そ、そうっすね」
アラシもイツキもそれぞれのチームと騎馬を組む。そして、開戦の合図と共に、一直線に突っ込んでいく。
アラシの一番の目当てはもちろん、レオンである。そして、それは相手も同じはずで。
「……よお! アラシ、みっけ!」
「出たな、レオン」
互いに好戦的な笑みを見せ、鉢巻を奪わんと両手を組み、力比べが始まった。
「にっひひっ! 悪いことは言わねぇ! さっさとその鉢巻を寄越しやがれ!」
「っせぇな! それはこっちの台詞だ!! レオンの方こそ、下手なフェイントなんていらねぇ! 降参して鉢巻を寄越せ!」
互いに譲らぬ攻防戦。一方が手を緩めれば、一方が攻める。その攻めを避け、新たな反撃をする。その反撃をかわし、また根比べが始まる。
二人の勝敗は如何にしてつくのか。……それ以前にこれは団体戦で、一人に執着するものでもないのだが、それは二人には関係のない話かもしれない。

一方、その頃。
イツキはユーリの姿を探しつつ、隙を見つけては、鉢巻を奪っていた。
「ユーリがいねぇ!! あ、あの鉢巻は貰う!」
と、別のところで競り合う騎馬から、するりと鉢巻を奪う。正々堂々、真正面から取ることはなく、ある意味、賢い方法で戦果を上げていた。
チームを組んでいた三年の先輩からも感心の声が上がる。
「やるな、二年!」
「おっす! 先輩、今度はあっち行きましょう。この辺は敵も少なくなってきましたし」
「了解」
混戦しているとは言え、長年共にいる親友の姿を見逃すはずがない。イツキは再度、辺りを見回しつつ、ユーリの姿を探していく。もちろん、周囲の警戒も怠らない。必要な防御はしつつ、取れるものは取っていく……そのような行動を取っていると、アラシとレオンの姿を見つけた。
「ぬわ~……宣言通り、やりあってんね~……加勢……は、不粋だよなぁ? 頑張れ、アラシ~♪ って、ユーリはどこ!? ぜんっぜん、いねぇ!!」
まさか、自分にやられる前にやられたのでは……と、一抹の不安を感じた瞬間だった。
「……全く。僕を探すのはいいけど、上だけじゃなく、下も見たら?」
「……? ユーリ?」
探し求めていた親友の声が聞こえてきた。しかし、それはイツキの予想とは違うところから……下の方からである。
「……!? あいつ、もしかして!」
イツキがそれに気付いた頃には、一歩、遅かった。
一組の騎馬がアラシの背後に忍び寄り、するりと彼の鉢巻を取っていたのだ。
アラシも目の前のレオンを相手にするのに集中していて、全く反応できなかった。気付いた時には、既に鉢巻はなくなっていた。
「……んな!? 誰が……ってシエル!?」
「レオンのことになると、熱くなるのは悪い癖だよ。アラシ?」
アラシが振り向くと、にこりと笑みを浮かべるシエルがいた。彼の手にはアラシが巻いていた鉢巻が握られている。
「ユーリ……! お前、騎手じゃないんか!?」
少し離れたところで、イツキが叫んだ。その声にアラシもハッとして、目線を下げた。すると、イツキの親友であり幼馴染みのユーリがいた。
「……って、ほんとだ!? ユーリ先輩、シエルを乗っけてる!?」
「騎手やるなんて言ってないよ、僕」
「え? あ、そ、そうだっけ……?」
戸惑うイツキにユーリは小さくため息をつく。そして、にこりと笑った。
「僕が上になるより、シエルさんにやって貰った方がいいに決まってるだろ? だって、竜族で力もある。何より、背も高くて有利だから。……見事にハマり役だったみたいだ」
「ユーリの作戦勝ちだったね。頃合いを見て、アラシの鉢巻を取るのもユーリの案だし」
この言葉にアラシとイツキ……ついでにレオンもユーリに視線を注いだ。
「だって、団体戦ですから。真向勝負を望むお二人には申し訳ないですけど……今回はお預けってことで」
「ユーリお前……男同士の決闘を邪魔するなんて!」
「決闘って……これ、体育祭だし。団体戦だって言ったろ。……やるなら、個人的にどうぞ」
「……まあ、確かに。その通りっすね」
ユーリの言葉にアラシはぐうの音も出ない。
騎馬戦という競技である以上、他者からの横やりは想定すべき自体である。たまたま、シエルの前に誰もやってこなかっただけにすぎない。
「シエル、ユーリ先輩と仲良くなってね?」
「ん? まあね。剣技大会以降からかな。まあ、元々、合同授業とかで見かけてもいたし……さて、と。話はこの辺にして、後は彼の鉢巻を取ればOKだね?」
「はい。あいつの癖は見抜いてますんで、一番楽だと思います。話してある通りに」
「了解!」
「お? じゃあ、俺もしれっと援護しよっかな~♪」
アラシがやられてしまった今、狙われるのはイツキである。二対一はなかなかに分が悪い。しかし、だからと言って、攻撃の手を緩めてくれる相手ではないのは、イツキ自身がよく知っていた。
「一組だけならまだしも、二組同時は、さばけん! ひえぇ! 怖いんだが!?」
その後、シエルとレオンの連携に呆気なく破れたイツキ。
白組の健闘も虚しく、騎馬戦は紅組の勝利で幕を閉じたのだった。



~あとがき~
一番、ざっくりしてる気がする。

次回、別競技のお話です。遂に(?)ヤツが登場します。

アラシVSレオン、今までやったことありましたっけ……?ってなりつつ、書きました。この二人、勝負事になると、なぜか熱くなるんです。同い年の男の子だからですかね~

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第451話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、お昼休憩となり、のんびり(?)過ごしているラル一行。そこへツバサ一行も合流するご様子。
そんな続きからやってくでい!


《L side》
フォース君に案内された場所は建物の影になっているところだった。校舎、運動場から離れているのもあってか、ここでお昼を食べている生徒はいない。
「流石、フォース。こういう穴場っていうのかな……? そういうの、よく知ってるんだね?」
「ん~……まあ。ここら辺、いつも人少ないんだよね」
何気ないリーフちゃんの質問に、フォース君は平然と答える。その返答にステラちゃんは何か思うことがあるようで、訝しげに彼を見つめていた。
「……つまり、すーくんはこの辺でいっつもサボってるってこと?」
じーっと見つめてくるステラちゃんの視線から逃げるように、彼は明後日の方向を見る。その様子からステラちゃんはぷくっと頬を膨らませた。
「すーくん!?」
「いつもじゃないからいいじゃん。たまにだよ、たまに」
「今! いつも少ないって言ったよね!?」
「おれが来る時はいつもって意味だ」
そら、いつもここにいる訳じゃないだろうね。だって、生徒会室や図書室、屋上等々、君の昼寝場所は沢山ありますものね~?
「ラルさん!? いきなり暴露すんのやめてくんない!?」
「え~? 可愛い後輩のために情報提供してあげただけだも~ん♪」
「裏切り者……」
私は可愛い後輩の味方なのだ~♪
フォース君の恨みの籠った熱い視線は無視して、呑気に口笛を吹いてみる。あからさまに知らんぷりしてやった。
ふふん。愉快♪ 愉快♪
「すーくん! 今日という今日は許さないんだからっ! お説教だ! お説教っ!」
「説教はいいけど、んなことしてたら昼休憩、終わっちまうけど。いいの? 昼抜きでこの後の競技に出るの? おれはいいよ? 食べなくても」
「ぐ、ぐぬ……か、帰ったらお説教だからっ!」
「へいへい。覚えてたらね」
これ、しれっとかわされるまでがオチだな……
「人がいないのはいいけど、地面に直接座って食べるの?」
ここまでのやり取りを完全に無視していたティール─こういう時のティールは一番、スルースキル高い気がする─は辺りを見回して、首を傾げていた。
考えてみれば、ここは建物の影。本来、ここでお昼を食べる想定なんかされていないだろう。ご丁寧に椅子の類いなんて設置してないよね。
「そういう時のフォース君っしょ」
「……おれのこと、なんだと思ってんの?」
「便利屋さん」
「一回、マジで殴らせて欲しい……」
「おお? 殴れるもんなら、どうぞ?」
「…………チッ」
わざとらしい舌打ちが聞こえてきた気がするけど、きっと気のせいだ。
フォース君はパチンッと指を鳴らすと、大きなレジャーシートが出現する。十人は余裕で座れるくらいなので、十分すぎる広さである。
「さっすが、フォース君! 便利!」
ティールさーん。こいつのこと、どうにかして」
「あはは。ごめん、無理。……それより、ラル、なんかテンション高いね? 体育祭、楽しい?」
「うん。それなりに♪」
やはり、最後の体育祭という事実が少なからず影響を与えているのだろう。こうやって、わいわいするのも最後……では、ないと思うけど。まあ、少なくとも、このランダム弁当は今回の体育祭で最後だし、そういった部分だろうな。
「あ、いた! ラルさ~ん!」
私達がくだらない話をしていると、アリアちゃんとレオン君と合流できたらしい、ツバサちゃんがこちらへと手を振っていた。
「よっす! ティール! さっきのパン食いレースじゃ大活躍だったな~!」
「ありがとう。目的の物を手に入れられたし、ぼくはもう大満足だよ」
体育祭、まだ一日目の午前しか終わってないのに、もう満足しとるんか。
……いやまあ、その辺の突っ込みはするまいよ。面倒臭くなりそうだ。
「さて、好きなとこ座って~♪ お昼にしよ!」
「お前が得意気なの、腹立つんですけど」
「じゃあ、フォース君が仕切る?」
「…………いや、いいです」
そうだろうね。
私は全員に座るように促し、ようやくお昼ご飯の時間である。
「あ、そうだ。あーちゃんとステラちゃん達って初めまして、だよね?」
確かに。関われるような機会もなければ、接点もあまりないからね。
「今年の剣技大会ですーくんと戦ってた先輩……あと、さっきのパン食いレースにもいた!」
「逆にそれくらいの知識しかワタシ達にはないんだけどね……? 初めまして、アリアさん……で、いいんでしょうか?」
アリアちゃんとっては、待ちに待ったご飯だと思うけれど、そこは礼儀としてなのか、挨拶を先に済ませるようだ。二人と目線を合わせ、こくりと頷く。
「……ん。好きに呼んでくれていい」
「私はステラです! で、こっちは」
「リーフです。よろしくお願いします」
アリアちゃんは無言でこくりと頷く。アリアちゃんらしいと言えば、らしいのだけれど……多分、もう我慢できないんだろうな。
「……ご飯♪ お弁当♪」
彼女の意識はもうお弁当に向いちゃったな。これ以上の会話は無理だろう。
そんなアリアちゃん。配られたお弁当とは別に大量の食料が入った袋も持参している。
「……流石、アリアちゃん。ちゃんと追加の昼食を持ってきてるんだね」
「…………まあ、アリアだからな」
「いつものことだせ♪」
アラシ君とレオン君が言うなら、そうなんだろうね。
さて、私達も食べますか。
全員でそれぞれのランダムお弁当の蓋を開けてみる。ぐるっと全員分を見てみると、被ったメニューは一つもなさそうだ。
私は、ブリの香味だれがけ。
ティールは、鶏ササミと野菜の生春巻き……と、先程の戦利品。
フォース君は、唐揚げ。
ステラちゃんは、ピーマンの肉詰め。
リーフちゃんは、しらす丼
ツバサちゃんは、豚肉の冷しゃぶ。
アラシ君は、肉巻握り寿司。
レオン君は、アサリの酒蒸しバター醤油
アリアちゃんは、鶏肉の南蛮漬けと持参のご飯と戦利品達。
こうしてみると、圧巻のメニューの豊富さである。きっとここにはないメニューまあるんだろう。ゴンツさん、恐るべし。
「わ~! どれも美味しそうですね♪」
「ツバサは初めてだもんな。……つかさ、毎年のことだけど、食堂の試作品とはいえ、よくもまあ、こんなに用意できるよな……?」
「しかも、生徒全員分な♪」
一年男子コンビの言う通りである。
一回くらい、厨房の見学とかしてみればよかったな。生徒会の仕事と言う体で。
「ラ、ラルさん? それは職権濫用では」
「りぃ、それはいつものことだ」
「いやいや、いつもは駄目だよ!?」
まあ、冗談はさておき。
ツバサちゃんも言っていたけど、どれもこれも美味しそうなメニューで何よりである。私に関しては辛い料理じゃなくてよかった。
……が、ステラちゃんだけはお弁当のおかずを見て、無言で固まってしまっている。それに気付いたツバサちゃんが不思議そうに首を傾げていた。
「ステラちゃん? どうかしたの?」
「へっ!? な、なんでもないよ!」
「……すぅ、残すんじゃねぇぞ」
ステラちゃんの隣に座るフォース君から鋭い忠告─ついでに釘を刺すような視線─が入る。
「わ、分かってるもん……! リーちゃん、ツバサちゃん! せっかくだし、おかずの交換……」
「してもいいけど、全部渡すなよ」
「うっ……! すーくん、うるさいっ!」
「もしかして、ピーマンが苦手なのか~?」
「みゃっ!?」
レオン君の指摘に分かりやすく反応を見せてしまうステラちゃん。
ピーマンの肉詰めを見て、固まってたし、フォース君の忠告やレオンの指摘された時の反応……ほぼ確定だろうな。
「そっか。……お家だと、苦手な食べ物は、フォースが上手く料理してるから、忘れがちだった。確かに、こうダイレクトに出てくるの、久々かも」
「へ~? ちなみに、フォース、どんな風に隠すんだ?」
「定番なことしかしない。ミキサーかけたり、目につかないように混ぜたり。味でごまかしたり」
普段はフォース君の一手間があるから、問題なかったと。流石、ステラちゃんとリーフちゃんの保護者。やることやってます。
「……すーくんの作るお料理はだいじょぶだけど……これは、苦いの、絶対ある……!」
「ピーマンの肉詰め、ピーマンもちゃんと焼いてるけど、苦味は完全に消えないもんね。……ステラちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃない……!」
ツバサちゃんの言葉にステラちゃんはすでに涙目である。無理に食べる必要はないとは思うが、そこは保護者が許さないんだろうな。
「……『すーくんの作るお料理は大丈夫』と言わせるのは流石ですね、フォース君」
「別に。つか、棒読みに聞こえるのは気のせい?」
「キノセイダヨ~」
「……まあ、いいけど。すぅ、全部はいいから、一個くらいは食べろ」
「で、でも、お箸が進まないというか……」
分かる。嫌いなものって食が進まないよね。体がそれを受け付けないと言いますか。
そんなステラちゃんにフォース君は小さなため息を漏らしつつ、ピーマンの肉詰めを箸割ると、そのまま箸で掴む。
「じゃあ、おれが食べさせてやる。口開けろ」
「へ? や、そこまでしなくても、自分で食べ─」
「今、箸が進まねぇつったろうが。口答えすんな」
「わ、分かったから! そこまで近づけ……むぐっ!?」
ステラちゃんの抵抗も虚しく、フォース君は彼女の口にピーマンの肉詰めを突っ込んだ。突っ込まれたものは食べるしかないので、ステラちゃんはもぐもぐと口を動かし、ごくりと飲み込む。
それを確認したフォース君は無慈悲にも、残りのピーマン肉詰めを箸で摘まみ、先程と同じようにステラちゃんの口元へ運んだ。
「ほれ、あと半分」
「んーーー!? んぐ……ちょ、すーくんの馬鹿っ! 皆、いるとこで、やめてよ!?」
「あ? お前の場合、こうしないと食べんだろ」
「た、食べる! 食べます!!」
「ふぅん? じゃあ、いいけど」
と、フォース君は掴んだピーマンの肉詰めをぱくりと自分で食べてしまう。
「残り二つ、ちゃんと食える?」
「た、食べるもん……っ! って、ラルさん、レオンさん!? なんでそんな顔で見てるんですか!?」
……あら、バレたか。
私とレオン君は、今までのやり取りをニヤニヤとしながら眺めていた。それはもう、よいものを見せてもらいましたよ。
「いいっすね、ラル先輩! 見ました!?」
「もちろんだよ、レオン君。あれが青春というものだよ?」
「にゃはは~♪ 勉強になりま~す♪」
と、盛り上りを見せる横で、アラシ君は呆れた様子で自身のお弁当を摘まんでいた。
「あれがなんの勉強になるんだか……?」
「あはは……お二人の言うことなので」
「私達も食べよっか~♪」
「ツバサはツバサで流石だよな」
「ですね……」
……ちなみに、アリアちゃんは沢山のご飯に、ティールは先程のりんごジャムパンを堪能していたので、こちらの騒ぎにはノータッチである。
ある意味、一番幸せな昼食を過ごしていたかもしれない。



~あとがき~
お昼パート終わりです!

次回、午後パートスタート!

フィクションだから許されるけど、嫌がる相手に無理やり食べさせるのはNGですよ!!!!
まあ、フォースとステラの関係性なのでいいか、と思う私もいるけれど。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第450話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、午前の部ラスト競技、パン食いレースが終わりました!
ティールは無事、ジャムパンを手にできたのでしょうか……?
ラル「そこ、重要か!?」


《L side》
無事、パン食いレースも終了し、異様な熱狂も落ち着きを取り戻した頃。
『一日目、午前の部も無事に終了だ! おつかれさん! ここからは皆様、お待ちかね! 昼休憩の時間だ~~~!!!』
『体育祭期間中は例年通り、学校からお弁当が支給されます。今年もレイ学の食堂でお馴染み、料理長のゴンツさんお手製のランダム弁当です♪』
これもまた、体育祭の醍醐味かもしれない。
ゴンツさんのランダム弁当とは、別名、試作弁当とも呼ばれ、学食の新メニュー候補の料理やおかずがランダムに入っている弁当のことだ。そのため、どんな弁当なのかは受け取ってみてからのお楽しみである。
「食堂の奴ら、よくもまあ、生徒全員分を用意できるよな? しかも、全部一緒じゃなくて、ある程度バリエーションのあるやつ」
「しかも、全生徒、だもんね? ここ、千人くらいいるんでしょ?」
「最早、業者じゃねぇか……気が滅入る」
分かる。料理する身としては、沢山の種類のお弁当を用意するの、嫌だもん。でも、これはあくまで私とフォース君の主観なので、ゴンツさんは嫌とか思ってないんだろうな。プロだし。
……さて、そんなランダム弁当は一度、自分のクラスに戻って、そこで担任の先生から受け取る方式だ。そこから各々、好きな場所で昼休憩となる。
「さて、と……今年も皆で一緒に食べるでいい? ステラちゃんやリーフちゃん、予定ある?」
「いえ! 私は大丈夫ですよ♪」
「ワタシも! 今年もご一緒させてくださいっ♪」
了解。なら、集合場所も例年通り、中庭辺りでいいか。そこから人が少なそうなところに移動すれば問題なさそうだ。
「……一応、おれにも聞けば?」
「え!? 問答無用で強制参加の人に何を聞く必要が!?」
「うっぜ」
お黙り。なんなら、お弁当の受け取りも、私と一緒に行くんだよ。フォース君は!
私は嫌がるフォース君の腕を掴み、強引に引っ張るようにその場を離れた。ティールはまだここに戻ってないけど、どうせクラスで合流できるので、こちらで待つ必要はないだろう。
そして、ステラちゃん達は中等部なので、校舎は別になる。ここで一旦、解散だ。
「二人とも、また後でね~♪」
「はい。ラルさん、すーくんをお願いします!」
「まっかせろ~♪」
「こいつら、覚えてろよ……!」

私はフォース君と一緒に一度、教室に戻ってきた。教室ではすでに昼食の配布が始まっており、受け取ったクラスメイト達が楽しそうに移動していたり、そのまま教室で食べ始めていたりしていた。
ちなみに、ティールの姿はない。
「お弁当の数からして、まだ半分も戻ってきてないっぽいね?」
「あ~……あいつ、ジャムパンに意識向き過ぎて、これ、忘れてるとかないよな?」
え? いやぁ……流石にそれはないと思うけどね。とりあえず、私達は受け取ってしまうか。
先生からお弁当を受け取り、一旦、空いている席に座る。待っている間は暇なので、適当に話でもしていよう。話題はやはり、目の前にあるお弁当だ。
「フォース君って好き嫌いなくていいよね……何が出てきても、お弁当、美味しく食べられるもんね」
「なんだよ、突然。……まあ、これに激甘スイーツとかなければね。お前だってそこまで好き嫌いない……って、辛いの駄目なんだっけ?」
ピリ辛とか、ちょっと無理ですね」
何かトラウマがあるとかではないのだが、私は辛い料理が食べられない。カレーで言うところの中辛もしんどい。
辛み成分が口に残る感じが駄目なのか、刺激物自体が駄目なのか……とにかく、嫌いなものは嫌いです。
「あのくそまずダンジョン飯を食べる方がましなんだよね」
「あぁ……ダンジョンでポップする謎の食料ね。あれと辛い料理が同等なの、ヤバイな。あれ、食べるもんじゃなくね?」
あれを食べる時は最早、無なんだよな……何も考えてないし、何も感じないようになると言いますか。とは言え、あれはあれで極力、手を出したくない代物なんだけど。
そんな話─昼食前になんつー話をしてるんだって感じだが─を二人でしていると、ウッキウキのご様子のティールが教室へ戻ってきた。彼の手には先程の戦利品と思われるパンが一つ。
「ただいま~♪」
「おかえり。目当てのもん、取れたのか?」
「うんっ! バッチリ!」
フォース君の言葉に素直に頷き、満面の笑みを見せた。彼の様子を見れば、一目瞭然ではあるけど、やっぱり手に入れていたようだ。
「パンもいいけど、早くお弁当ももらってきて? この後、中等部二人と待ち合わせてるんだから」
「分かった。ちょっと待ってて?」
「……ラルは手慣れてんね、あいつの扱い」
それなりの付き合いですから。あぁいう時のティールは、こちらから促さないと動かないからな。
ようやくティールも自分の昼食を手にし、私達は教室を退出した。目指すはステラちゃん達の待つ、中庭である。
私達が中庭に到着すると、すでに二人は自分達のお弁当を受け取っているらしい。お弁当の入った袋を抱えて、空いているベンチに座っていた。
「ごめーん! 二人とも、待った~?」
「ラルさ~ん!」
「大丈夫です。ワタシ達もさっき着いたので! ティールさん、パン食いレース、お疲れ様でした♪」
「ありがとう、リーフ」
ちゃんと合流もできたな。後は食べる場所だな。このまま中庭で食べてもいいんだけど……一つ、問題がある。
「フォース君、どこにする? ここでもいい?」
「ここじゃないとこがいいです」
だよねぇ……
中庭は私達以外にも多くの生徒が昼食の場所として選んでいるらしく、結構な賑わいを見せていた。
一番、楽なのはどこかの空き教室とか、生徒会室を使うことだけど、体育祭中はサボり防止なのか、空き教室は終日施錠されている。いやまあ、私にはマスターキーがあるので、一応開けられるけど……ズルはよくない。同じ理由で生徒会室も開けられるけど、生徒会室を使うのはグレーだよねぇ?
「……比較的、人が少なそうなところに行こっか。フォース君なら探し当てられるでしょ?」
「じゃあ、こっち」
人気の少ない場所を探すプロを先頭に学園内を移動していると、見覚えのある男女とすれ違う。
白の狐族の女の子と赤の牙狼族の男の子……言わずもがな、ツバサちゃんとアラシ君だ。
あちらも私達に気付いたようで、ツバサちゃんがパッと顔を輝かせ、ブンブンと手を振ってきた。
「あ、ラルさん! それに皆さんも!」
「やっほ。そっちは二人だけなの? デート?」
「んなわけあるか! レオンとアリアと待ち合わせてんの!」
どうやら、アラシ君とツバサちゃんは幼馴染み達とお昼を過ごす予定らしい。ミユルちゃんとシエル君の名前が出てこないところを見るに、二人はまた別で約束があるのだろう。
「そだ。ラルさん、あーちゃん、教室で見かけませんでした?」
「いや? いなかったと思うけど……いた?」
と、男子二人に目配せをする。
「おれは知らん。……少なくとも、おれ達がいる間は教室にいなかったよ」
「ごめんね? ぼくも知らないんだ。パン食いレース後、一緒に教室行くか聞いたんだけど、残ったパン貰いに行くとかなんとか言って、別れちゃったんだよね」
え、レースに使われなかったパン、貰いに行ったの? 破棄されるより、誰かに食べて貰った方がいいかもしれないけども。
「そうですか……ってことは、パン貰って、教室行って……自前のお弁当も持ってってするから、もう少し時間かかるかな?」
「かもな。なら、先にレオンと合流っすか?」
「うん。そうしよっか。……あ、あの、ラルさん」
「ん? なぁに?」
「もし、皆さんがよろしければ、お昼、一緒に食べませんか……?」
私は構わないし、多分、ティール達も問題ないだろう。問題があるとするなら、フォース君くらいか。
「フォース君が決めて~」
「…………嫌だっつったら、うるさい人がいるんで、好きにしてください」
ステラちゃんの睨み……もとい、熱い視線にフォース君は大人の対応をする。流石、お兄さん。
「わあ! ありがとうございます! アラシもいいよね?」
「俺の確認は事後かよ……まあ、いいけどさ」
「えへへ♪ じゃあ、あーちゃんとレオンと合流したら、ラルさん達のところに行きますね! 皆さん、どちらで食べるんですか?」
……私らはどちらで食べるんでしょうね?
私達はフォース君に視線を向けた。如何せん、場所のチョイスはフォース君に一任している。つまり、行き先は彼しか知らないのである。
フォース君は少しだけ考え、すっととある場所を指差した。
「あの建物の影。あの辺にいる」
「分かりました! では、また後程ですっ♪」
フォース君がそう言うってことは、あの辺は人がいないってことなんだろうな。
まあ、それはそれとして。
いつもより大所帯になりそうだし、私達は先に行って、場所を整えておきますか。



~あとがき~
競技パートは一話でしたが、昼パートは何話か続きそうですね(笑)

次回、お弁当だー!

この体育祭編、ラルチームとツバサチームが絡むところがほとんどないです。まあ、お互い、別々に観戦してるので仕方ないですが。
なので、休憩時間くらいはいつも通りのメンツでね!

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第449話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ツバサ、ミユル、ステラ、リーフの参加する玉入れが終了しました。結果は白組の勝利! まあ、謎パワーによって、紅組に白組の玉が混じってたみたいですけど!
ツバサ「……私、ちゃんと背を向けて投げてたんですよ……?」
ま、まあ、あれがツバサちゃんのせいだとは決まってないので! き、決まってないので!!


《L side》
一日目午前の部、最終競技が始まろうとしていた。午前の最後の競技とはいえ、最後なので、生徒の盛り上がりも一際である。
……いや、この異様な盛り上がりは多分、最後だからって理由じゃない。競技自体が特殊なのだ。
『さあ、続いては! 今回の体育祭競技の中で、いっちばん倍率の高かった! パン食いレースだぁぁぁっ!!!!』
『噂では……数年前、あまりの倍率の高さのせいで、大会当日まで、参加者同士争いがあったとか、なかったとか……?』
私は水分補給をしながら、二人の前説を聞いていた。
単なる体育祭競技でなんつー事件を生み出しているんだ。まあ、理由は知っているのだけれど。
『おうよ! なんてったって、この競技に使われるパンの中には『幻のジャムパン』と噂高い、クレアおばさんのりんごのジャムパンがあるからな!』
……はい。これが理由です。
高等部では有名である、数量限定の『幻のジャムパン』が競技で食べられるのだ。もちろん、こちらでも限られた人にしか、手にできないのだけれど。それでも、参加さえできれば、誰にでも食べられるチャンスがあるのは確かである。
『ジャムパンだけでなく、他のパンもクレアおばさんのお手製ですから、全て美味しいんですけどね~?』
『それでも! 幻のジャムパンファンからすれば、これは見逃せないビッグイベントなんだぜ、相棒!!』
幻のジャムパンファンって何。……いや、言っている意味は分かるけど、そんな名称、いつからついてるんだ。
『えぇっと……先輩? もしかして、出たかったんです……?』
『おうよ! くそー! 抽選に外れたんだよー!!』
リュウ君の事情なんて、くっそどうでもいい~
リュウ君は軽い咳払いをし、改めて競技についてルール説明をしてくれた。
『このパン食いレース! 各レースに分けられる……なんてことはなく、全員参加! 一回限りのガチンコレース! 参加者は四ヵ所に設置されたパンを食べて、ゴールを目指してくれ!』
『ゴール前以外のポイントでは、ちゃんと手に取ったパンを完食してから走り出してくださいね? 食べきる前に走り出したら、失格になります!』
『最終ポイントだけは、少女漫画あるあるの口に咥えた状態でのゴールが許可されてるから、一直線に目指してくれよな! 曲がり角はないから、安心しろよ☆』
『ちなみに、幻のジャムパンは最終ポイントに配置される予定です♪ 運がよければ、手にできるのではないでしょうか?』
『トップ争いに躍り出て、ジャムパンを引き当てるか、残り物にはなんとやら~……で、あえて、後方に位置付くのか……その辺は参加者次第だ!』
いや、これ、一応、競走だから。幻のジャムパン引き当てたら勝ちってルールではないぞ?
『よぉし! 説明は以上だ!! 参加者はスタート位置についてくれ!』
……簡潔に言うと、だ。
数十名によるパン争奪戦である。三ヵ所に設置されたポイントでパンを食べ、最後のポイントでパンを手にして、ゴールをする……それだけである。
中等部、高等部合わせて、千人はいるので、この数十名ってのは、高い倍率を掻い潜り、選ばれた戦士(笑)ってところか。
「……なあ、ラル」
「ん?」
自前の上着のフードを被り、じっと下を見つめるフォース君。……ちなみに、ついさっき、こちらの席に帰ってきたので、ステラちゃん達の玉入れは見てないと思う。
そんな彼の視線の先には我らの仲間、ティールの姿がある。
彼もまた、死線(倍率)を潜り抜けた戦士の一人だ。いやはや、あのりんごに対する執着は天晴れだよ。もう何も言えないよ、私は。
私はふわりと欠伸を溢しつつ、パラパラと体育祭のパンフレットを捲っていく。
この態度で察してくれるだろうが、私はこの競技にまっっったく、興味がない。ティールが勝とうが負けようがどうでもいいのです。強いて言うなら、怪我だけはするなくらいです。
「この三年、ずっと思ってたけどさ……今までの競技の中でもこれが一番、怪我人出ねぇ?」
「皆、加減を知らないからねぇ」
とはいえ、会場の不思議パワーのお陰で、大きな怪我をしなくてすむ─負ったとしても、軽い擦り傷程度である─ので、こういう無茶苦茶なレースもありである。
「それを許す学園もどうかしてるわ。……時にラルさんや」
「今度はどうしたんだい、フォースさんや」
「あの胃袋ブラックホールなディーネさんと同等のスピードを見せつけている君の相棒に一言、お願いします」
そう言われ、私もフィールドへ視線を向ける。
パン食いレースなので、アリアちゃんもいるだろうと思ってたけど、やっぱり、ちゃんといるんだな。
そんなアリアちゃんは今、三つ目のポイントで焼きそばパンをぺろりと平らげているところだ。そして、ティールは少し遅れながらも、三つ目のポイントでカレーパンに手を伸ばしているところである。トップ争いの軍にはいるので、上手くいけば、トップスリーに入るかもしれない。
「……あんな相棒、存じ上げません。人違いでは?」
「現実から目を逸らすなよ」
「最後のポイントで絶対に幻のジャムパン、だっけ? それを取れるかは運ですよね?」
ステラちゃんの言葉に私は小さく頷く。
そう。ルール上、幻のジャムパン以外のパンも多くあるので、普通なら、幻のジャムパンを引き当てるのは難しいだろう。
普通なら、ね。
「アリアさんって、すーくんとラルさんのお友達なんですよね?」
「友達ではねぇよ。……クラスメイトではある」
「んもう、細かいなぁ……そのクラスメイトのアリアさんも幻のジャムパン、取れるか分かんないですよね。運勝負ですし」
「だよね? 普通のジャムパンとかも混じってると思うし、見た目が似てるパンは沢山あるし……ワタシだったら無理ですよ~?」
「いやぁ? アリアちゃんは取ると思うよ。食に関して、犬の嗅覚してるから。……それにティールも。トップを守れるなら、引き当てられるよ。りんごに対する嗅覚は鋭いから」
こんなことに確信は抱きたくないが、ティールとはそういうやつなのだ。
彼のりんごに対する執着は、時に人の能力を越える。……と、いうか、だ。
「そういう超人パワー、もっと別なところに発揮させなさいよ……!」
なんで! りんご限定なんだよ!!!
……私の悲痛の叫びが彼に届く日は一生来ないだろうな。
一番、最初にゴールテープを切ったのは、言わずもがな、アリアちゃん。そして、ティールは少し遅れて、三位である。二人に共通するのは似たような菓子パンを手にしていることだろう。
ここからでは、本当に手にできたのか判別できないが、あのティールがりんご絡みでミスするとも思えない。何より、あの笑顔が物語っている。
「……お目当てのジャムパン、ゲットしたみたいですね、ティール君は」
「それをこっから判断できるお前は流石、相方を理解してるよ」
うるせぇ。あんなやつ、私は知らんわ……!



~あとがき~
忘れた頃にやってくる、幻のジャムパンネタ。相方が周年イラストで描いてくれた場面はここでした。

次回、昼休憩!

りんごが絡むとラルさんは相棒に冷たいですが、悲しいかな、相棒のことは誰よりも理解している。
ちゃんと見てなくても、ティールがどうなったか、どうなるかはちゃんと分かってます。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第448話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとツバサちゃんが障害物競走に出場し、ラルが見事一位となりました。他レースの詳細は知らん←?


《T side》
障害物競走が終わってから、私は皆がいる観客席で他の競技の観戦をしていた。
レイ学の体育祭の観客席では、生徒達に決められた席はないので、クラスメイトの仲良しグループで固まっている人達もいれば、クラスや学科も違うお友達同士で一緒にいる人達もいて……皆、好きなように過ごしているみたい。
そんな私も同じクラスのアラシ、同学年だけど冒険科のレオンと一緒にいる。まあ、この二人といるのはいつものことではあるけど、今日はそこにあーちゃんやみーちゃん、シエルもいる。つまり、私の幼馴染み達と一緒なのだ。
あーちゃんやみーちゃん、シエルは学年が違うので、学校で一緒に何かするってことがほとんどない。だからか、皆と観るだけでも楽しくなってきちゃう。
ちなみに、レオンとシエルは、ラルさんと同じ紅組で、私、アラシ、あーちゃん、みーちゃんは白組。組分けは運なので、どうしようもないけど……競技外は敵味方関係ないので、気にしない!
「いや~! 純粋な徒競走、やっぱスピード勝負だし、全体的に三年の先輩達が強かったな~? まあ、ラル達はいなかったっぽいけど♪」
「まあ、ラルなんていたら、勝負にならなそうだけどな……?」
「ん~……確かに。パルクールも速いからな、ラル先輩。現に、障害物競走も速かったよね」
今のところ、ラルさん以外の人達は他競技で見ていない。もちろん、団体競技とかに出てて、見逃している可能性はあるけど……少なくとも、私は見ていないと思う。
競技はルールによって、学年関係なく組まされるので、極端だけど、中等部一年VS高等部三年の勝負も珍しくない。でも、流石に純粋な徒競走なんかは、ある程度、調整はされてるみたいだけど。
「ツバサちゃん」
「ほえ? どうしたの、みーちゃん?」
ぼんやりとアラシ達の話を聞いていた私の肩をとんとんっと優しく叩いてきた。そして、みーちゃんはにこっと笑う。
「そろそろ、私達の出番かな~って♪ ツバサちゃんも出るのよね、『玉入れ』……違ったかしら?」
「ううん! 行く!」
「お、ツバサ、また出番か! いってら~♪」
「うん! 行ってきます♪」
皆に手を振って、みーちゃんと一緒にフィールドに入場できる階段前まで移動する。その道中、みーちゃんが思い出し笑いなのか、くすっと笑みをこぼした。そんなみーちゃんに、私は思わず、首を傾げてしまう。
「あら、ごめんね? ふと、ツバサちゃんが玉入れに参加するって聞いた時を思い出しちゃって。とってもびっくりしたなぁって、ね? ほら、ツバサちゃんって……投擲がアレだから」
うっ……そ、そうなんだけど……!
「私も最初は参加するつもりなかったんだよ。でも、玉入れの玉って当たっても痛くないでしょ? それなら、他の人を怪我させちゃうこともないし、練習になるかなって思ったの!」
こういう機会でもないと、何かを投げる練習もできないからね! いつもなら、アラシが誰かに当たると危ないからって止めちゃうから。
そんなアラシも「玉入れなら」って許してくれたし……体育祭の一競技として、真剣勝負の場だけど、せっかくの機会を逃したくないもん。
「なるほど。……その時のアラシくん、しぶ~い顔してたでしょうねぇ……?」
「ほえ!? なんで分かるの、みーちゃん!」
「なんでって……ツバサちゃんのノーコンっぷりは私達の常識だもの。特にアラシくんは、アレのよく被害に遭ってるし」
「あう……わ、わざとじゃないんだけど……」
でも、みーちゃんの言う通りでもあるんだよね。うぅ、なんでなんだろう……?
運動場は玉入れ用にセッティングがしてあって、それぞれの範囲の中心に背の高いかごが置いてある。その周りに沢山の玉が落ちていた。
「あ、ツバサちゃんだ!」
「ミユル先輩も。二人とも、参加されるんですね」
話しかけられた方向を向くと、紅色の鉢巻をつけた、ステラちゃんとリーフちゃんがいた。二人とも、私達に向かって手を振ってくれていた。
「あらあら、ステラちゃんとリーフちゃんも参加するのね」
「はいっ♪ 参加競技を決める時、ステラと一緒に楽しそうな競技に出たいねって話をしてたので。これにしました! それに、ステラは投擲が得意ですから♪」
「ツバサちゃん、その、玉入れ参加するんだね。……大丈夫そう?」
そういえば、ステラちゃん達も私のノーコンっぷりは知ってるんだった……!
剣技大会の屋台巡りで立ち寄った射的屋さんで、存分にその力を見せちゃってたんだっけ……? は、恥ずかしい……!
「だ、大丈夫! こうやって背を向けて投げてれば、紅組のかごに入ることはないと思うからっ!」
私はくるっと紅組のかごを背後に、玉を投げるジェスチャーをして見せる。
これなら、紅組にも迷惑をかけず、投擲の練習になるし、少しくらいは白組に貢献もできる……はず!
なんてことを思いつつ、ちらっと三人の方をみると、三人の顔はなんとも微妙な顔をしていた。
「ツバサ、それは多分、フラグってやつだよ……?」
「えぇ……確かにそうねぇ」
「物理法則を無視してくるのが、ツバサちゃんの投擲力だもんね~?」
「そ、そんなことないよ! 大丈夫だよ!?」
ふえぇ!? みーちゃん達からの信用がない!
『参加者は揃ったな! じゃあ、学部、学科、学年等々、関係なし! ごちゃ混ぜ参加の団体戦! 玉入れの開始だ~!』
『ルールは簡単です。制限時間内に自陣のかごに玉を入れるだけ。紅組は赤のかごに赤の玉を。白組は白のかごに白の玉を入れてください』
『混ざることはないと思うが……自分の色じゃない玉を入れても得点にはならねぇから、気を付けろよ!? 後、妨害行為も禁止だ! 皆で楽しくをモットーによろしくなっ!』
うんうん……皆がよく知っているはずのルールだね。特別ルールみたいなのもなさそう。
ルール説明も終わり、参加者は係の人達の誘導に従い、配置についた。
うん……頑張るぞ……っ!
競技が始まると、参加者は地面に落ちている玉を拾い、一斉にかご目掛けて投げていく。私も近くの玉を拾い、狙いを定めた。
「……えいっ! え、えと……あれ? どこ、いったんだろ……?」
投げる瞬間、一瞬目を離してしまったのがよくなかったみたい。すぐに見失ってしまう。
よく考えたら、皆が投げる玉が同じ色しているし、私と同じタイミングで投げる人もいる。結果、私が投げたものが入ったのか、そうじゃないのか判断できない……そりゃ、そうだよね。
まあ、それを悔やんでも仕方ない。今度は見失わないようにじっと見てないと!
私はまた、近くの玉を拾い、同じように狙いを定めて、玉をぽいっと投げる。
今度は見失わなかったけど、あらぬ方向に飛んでいくのが見えた。
「ま、まだまだ! 時間はあるし、何度でも投げる……!」
時間内であれば、何度でもチャレンジできるもん。このまましょんぼりしてるのは、もったいない!
私は気合いを入れ直し、再び、玉を拾うのだった。

あれからどれだけ挑戦したんだろう。
ピピーッと競技の終了を告げる笛の音が辺りに響き渡った。参加者はかごの範囲外に出て、結果発表が終わるまでその場に座る。
「ツバサちゃん、どうだった? 練習にはなった?」
「……みーちゃん」
「あら……その様子だと、駄目だった?」
私はしょんぼりしたまま静かに頷く。
全部を視認していた訳じゃないけど、私が見てたものは、どれもかごに入らなかったと思う。
「うぅ……やっぱり、難しいね? 玉入れって」
「そうねぇ……ツバサちゃんにとってはそうかもしれないわね?」
でも、少しくらい練習にはなった……そう思うようにしよう。
私は駄目だったけど、これは団体戦。数が多ければ、白組の勝ちになる。せめて、そこだけは……なんて、思うのはおこがましい、かな?
互いのかごを係の人が確認して、いくつなのかを集計してくれる。その様子をドキドキしながら待つのは、楽しいような、早く終わってほしいような、変な気持ち。
後ろの紅組の様子も気になって、ちらっと背後の様子を窺ってみる。
「……? ──、──」
「───? ────!」
? 何か、あったのかな。
紅組の玉の数を数えている係の人が困ったように何かを話している。そして、その手には赤い玉……ではなく、白い玉が握られていて。
……ま、まさか、ね?
心当たりがない……こともないけど、私は見なかったことにして、視線を白組のかごに向き直る。
そして、まもなく集計が終わったのか、司会のリュウさんの声が聞こえ始めた。
『参加者の諸君、待たせたな! ドキドキの結果発表だ! 勝者は~~!』
少し長めのドラムロールが鳴り、大きなシンバルの音が聞こえたあと、『白組です! おめでとうございます!!』という勝利を告げる声が聞こえてきた。
『そいやぁ、ちょっとしたアクシデントがあって、集計が遅れたんだって?』
『実は、純粋な玉の数は、紅組の勝ちだったんです。でも、それは白組の玉が混じっての数なので、きちんと集計した結果、白組の勝利となりました。安心してくださいね!』
ふぇ…………ちゃんと、背、向けてたのに……!! な、なんでーー!!



~あとがき~
ツバサちゃん、すっげぇな……(笑)

次回、パン食い競争!

玉入れとか懐かしいですね。
記憶が正しければ、小学生の頃にやったきりです。多分。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第447話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回より、レイ学全生徒参加の体育祭が始まりました。ということで、体育祭編となります。いえ~い!
さて、今回の体育祭編、ちょっと特殊な進め方となります。一話の中で視点をがらっと変える箇所がございます。誰視点なのかの判断はいつも通り、《》の内の人物視点となりますので、よろしくお願いします。


《L side》
『──さあ、次に行われるのは障害物競走だ! 参加する生徒はフィールドへ集まってくれよな!』
リュウ君のアナウンスで参加予定の生徒達はぞろぞろと移動を開始する。
「確か、ラルもだよね? 頑張って」
「うん。行ってくる」
ティールは敵のはずだけど、こうやって応援してくれるのは素直に嬉しい。
まあ、敵なんですけども。一人だけな。
「ラルさん、頑張ってくださいっ!」
「ワタシ達も、全力で応援してまーす!」
ステラちゃんとリーフちゃんも笑顔で見送ってくれる。ちなみに、フォース君はいつの間にか席からいなくなっているので、たまたま席を外しているのか、どっかに逃げたかの二択である。
まあ、ステラちゃんがいるので、戻ってくるとは思うけど。
さてさて、私も移動するか!
着ていたジャージを脱ぎ、ぐっと背伸びをする。そして、ティール達に向かってパチッとウインクして見せた。
「しっかり一位取ってくるから、ラルちゃんの活躍、見ててねー!」
「はいはい……全く、調子いいんだから」
「ふふっ♪ 私達はここから、しっかり見守ってます!」
「ラルさんのことだから、有言実行しそうですね~……いってらっしゃいませ♪」
呆れ顔の相棒と可愛らしい後輩達に見送られながら、私は観客席を離れ、フィールドへ向かう。
障害物競走は文字通り、障害物を攻略しながらゴールを目指す競技だ。
麻袋飛び、綱渡り、山登り、縄潜り、段ボールキャタピラー……意外と盛り沢山の障害物達である。それもあって、単なるスピード勝負ではなくなるので、学年等々関係なくレースを行う。まあ、流石に男女分けはされているけれども。
まあ、何がこようと、普段から探検隊として活動する私の敵ではない。校長ではないけど、寝てても勝てる自信すらあるし。
「あっ! ラルさんっ!」
「? あら、ツバサちゃんだ」
体操服に身を包み、頭には白組を示す鉢巻を巻いているツバサちゃんがいた。
ツバサちゃんは笑顔でピコピコと耳を動かし、どこか嬉しそうにしていた。
「えへへっ♪ ラルさんと一緒の競技に出れるなんて嬉しいですっ♪ どの辺のレースに出るんですか?」
「ん? 女子の最終レースだよ」
「ほわ……ってことは、一緒のレースに出るってことですね……!」
と言うことは、ツバサちゃんも最終レースの組ってことか。うーむ、残念。頑張るツバサちゃんを愛でる暇はあまりなさそうだな。
「じゃあ、正真正銘の敵同士だねぇ」
「……はわっ!? そっか! ラルさん、紅組でしたね……!」
今、思い出したのか、ハッと気付いた様子を見せた。そんなところも可愛くて、ついつい頭を撫でてしまう。
撫でられたツバサちゃんは満足そうに笑みを溢しているけれど、これまた何か思い出したようにキリッとする。
「……ラルさん! 例え、ラルさん相手だとしても、私、負けるつもりはありません! 手加減しちゃ、ダメですよ?」
「うん。分かってるよ」
ごく自然に返答したつもりなのだが、ツバサちゃんは疑いの目を向けてきた。ツバサちゃんにしては珍しい顔だなぁなんて思っていると。
「……本当に手加減しないでくださいね?」
「え……? あぁ、うん。しないしない」
ティール達に宣言した以上、一位取る気満々なのは変わらない。でも、そこまで本気になる必要もないと思っていた。だからまあ、手加減するなという指摘は、ある意味、的を得ている。
ツバサちゃん的には、私相手だからといって、手は抜かないでくれ、という意味合いなのだろうけれど。
仮にそうだとしたら、なんだか、ツルギ君みたいなことを言う。彼は負けず嫌いなところを包み隠さず見せていたが、もしかしたら、ツバサちゃんもそんなところがあるのかもしれない。

障害物競走自体は問題なく進行し、私とツバサちゃんの出る番になる。
『いよいよ! 女子の部、最終レースとなったな! いやぁ~♪ 誰が一位になるのか、楽しみだぜ!』
『参加者の皆さんは位置についてくださいね~!』
司会二人が場を繋いでいる間、係の人に誘導され、スタートラインに立つ。
さあってと……頑張りますかね~?
「位置について……よーい、ドンッ!」
パンッとスタートの合図を皮切りに走者が一斉に走り出す。この辺は、ほぼ横並びなのだが、この先はいかに早く障害物を乗り越えるかで順位が決まる。
まず最初にこなすのは、麻袋飛びだ。袋の中に入り、一定の距離を進むだけの簡単なものなのだが、如何せん、動きにくい。
それは全員、一緒なのかここであまり差はついてない……のだけれど。
『おぉ! 白組の一年、なかなかに素早い動きだな!』
『他の皆さんも頑張ってくださいっ』
白組の一年……ツバサちゃんかな?
ちらっとツバサちゃんを見ると、大きな麻袋から顔だけを出し、ピョコピョコと跳び跳ねる女の子の姿があった。
その姿は健気で可愛らしいのだけれど、一体、あの小さな体からどうやって、あそこまでの動きを生み出しているのかは謎である。
……麻袋飛びを終えると、今度は綱渡りゾーンとなる。五メートル程の縄を一回も落ちずに渡りきることで、ここを突破できるようだ。
流石、冒険科が併設される学園。それっぽい障害物である。
周りの走者達はふらふらと慎重に渡ろうとするものの、皆、途中で落ちてしまい、最初からになっている。
ツバサちゃんも例外ではなく、渡りきる前にべしょっと地面に落ちてしまう。ちなみに、縄の下は怪我しないようにふかふかマットが敷いてあるので、何度落ちても大丈夫のようだ。
さて、これくらいの距離なら、ジャンプして渡れるけれど、それは流石にルール違反となってしまう。普通に渡るか。
現役探検隊としては、こんな障害物で失敗なんてしていられない。仮に失敗したら、笑われる! 特にフォース君から!!
『おぉ! 流石! 高等部、生徒会長にして、探検隊『スカイ』のリーダー! 一発成功で渡りきったぞ!』
おい。私だけ身バレするような固有名詞での実況をやめろ。今度こそ、放送部の経費削減するぞ?
私は綱渡りを終え、山登り用の山の前に立つ。とは言え、山登りなんて言うけど、そこまで高いものではない。ざっと三メートル程だろうか。しかし、それなりに急勾配なので、上るのに苦労はしそうだが。
……まあ、これもまた、現役探検隊の敵ではないけどね!
軽々と上り坂を上って、下り坂は一気に滑り降りる。はい。攻略っと。
そして、そのまま、網潜りのゾーンへ差し掛かった。網が動かないよう、複数の生徒達が網の端を押さえ付けている。そのため、端の方は潜りにくくなっているのだ。ってことで、真ん中を突っ切るしかない……本当なら、先頭に誰かいれば、その隙間に便乗して潜っちゃうんだけど、残念ながら、現在は私が先頭である。そして、綱渡りと山登りが行く手を阻んでいるせいか、すぐに誰かが来るような気配もない。
いくかぁ……くそぉ、私が先頭かぁ。
当初の作戦通り、真ん中を突っ切る形で網へと飛び込む。私が中腹辺りまで来た頃、他の走者達もぞろぞろとやってきて、網を潜り始める。
やっぱ、追い付かれるなら、この辺からだよねぇ……まあ、想定内だ。
私がまだギリギリ先頭を守りつつ、網から脱出すると、最後の障害物へと到達する。最後は段ボールキャタピラー……だったか。
輪っかになった段ボールの中に四つん這いの姿勢で入り、ゴールを目指す……らしい。
うん……予想していたけど、四つん這いのままゴールを目指すのは、なかなかにしんどい。これは体の小さい人が有利だな。……例えば、ツバサちゃんみたいな女の子とか。
しかし、そのツバサちゃんは綱渡りに時間をかけてしまったため、私とは順位が離れてしまっている。ここから追い付かれることもないだろう。
そして、網潜りで差は縮まってしまったけれど、周りの走者達は私の敵ではない。
「……私の勝ち」
危なげなく、他の走者達と差もつけ、私はゴールテープを切った
『ゴール! 一位は紅組の三年だーーー!』
ふう……よし。有言実行!
私がゴールしてすぐ、他の走者達もぞくぞくとゴールラインに到達し、ツバサちゃんも四位という結果でレースが終了した。四位は真ん中くらいの順位なので速くもなく遅くもなく……といったところだろう。
「流石、ラルさんです……! とっても速かったですね!」
「ま、現役の探検隊だからね。これくらいはなんでもないよ」
「そうだとしてもですっ♪」
私としてはなんでもないのだが、こう褒められると嬉しくなってしまう。
やっぱり、ツバサちゃんは天使だなぁ♪



~あとがき~
リアルが落ち着いて、「はっ! レイ学更新せねば!」と覗いたら、本編の最終更新が二ヶ月前……だと……!?
お待たせしました……いや、本当に……!

次回、別の競技の様子をお見せします!
果たして、誰が出てくるんでしょう。お楽しみに!

ラルにとって、学校の障害物競争なんて障害物にすらなってなさそうだなぁと思いつつ、書いてました。普段、ダンジョンやらモンスターとの戦闘やらで動き回る方ですからな。
そういう観点から、ラルも競技を選んでそうっすね……

ではでは。