satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

雑談的な。 その27

学校始まってるのに連続投稿しております。これに関しましては、ただの気紛れですね!←

あとはまあ、単純に生存報告(?)ですね……
昨日の台風、風が強くて家の窓ガラス割れたらどうしようとか思いながら寝ました。途中、起きることなく爆睡でしたね。((←え
つまるところ、私は無事です。いやでも、ぶっちゃけ、今までの中で一番危ないなと思いました。はい。
まだ風も強い地域もあると思いますが、外出の際はお気をつけて!
また、新しい台風誕生してるけど、今年はなんなんだろうね。台風祭り……?

H/K

何の話をしようかなって思ったときに、真っ先に思い付くのはやっぱりポケモンの話なんですよね。ということで、ポケモンの話を。
Let's Go!ピカチュウとLet's Go!イーブイの話ですね。あー英語打つの面倒くさい!
ピカブイでいいか!? これでいいか! 省略形はLPLEらしいけど。どっちでもいいか。とりあえず、この話をね。

これ、どっちにようかうおーってなってたんですよね。んでもって、予約しました。ピカチュウの方を。はい。ピカチュウの方を。本体つきの4万くらいするあれを、予約しました~! ポケモンやるためだけに買います! ありがとう!!
いや、イーブイとめっちゃ悩みましたよ。イーブイも肩に乗せたい。一緒におしゃれしたい。っていうか、イーブイ可愛い辛い。みたいな。
でも、同時にピカチュウも好きだし、XYからずっとお仲間にしてきた相棒みたいなやつじゃん。しかも、肩に乗せるとか夢じゃん。肩に乗せたらサトシになれるよ。やるわ。
みたいな感じでピカチュウにしました。
……今でも、イーブイがいいなと思う気持ちはある。浮気しそうな自分を押し殺しているところです。なんかもう、両方ほしい……(´・ω・`)

ええっと、システムはポケGO寄りなので、本来のポケモン本編ではないのかなと思っている私です。バトルはあるけど、レベル上げが面倒かなーって思います。トレーナー戦以外だと、わざわざゲットしなきゃ経験値貰えないシステムなんだよね。ボール消費激しそう。主人公のお金、大丈夫かな。大丈夫かな!?
伝説のポケモン相手はバトルしてからゲットチャンスあるみたいなので、それはあれだ。レイドバトル参加して、チャンスを得る……ポケGOシステムですね。これも。

まあ、このLPLEの発売を機に、再度、ポケGOを入れ直したんですよ。というのも、ポケGOは家の近くにポケストップがないのと、私の性格(THE 引きこもり体質)が相まって、やってなかったんです。ほぼほぼね。初期も初期にさようならしてしまったのです……
そして、また始めました。投げる練習と出来れば連動させて連れていきたいという願望のために。あの綺麗な画質で色んなポケモンが見られるのではという願望のために。ピカチュウの方では出ないポケモンもこっちで補えるかなっていうのも理由の一つです。そんな願望のために再開させたのです。
アカウントは残しておいたので、前回のデータを引き継いでます。いやぁ……ひっさしぶりにやりましたけど、楽しいですね。なんだあれ。あんなに楽しかったっけ。え、マジか。
というか、過去の私、イーブイを5匹ほど捕まえてたんだけど、初期も初期に5匹て。イーブイマニアか。怖いぞ。

私がインドアすぎて……お家大好き人間のせいで、ポケGOのために外には出ませんが、ちょっとずつポケモンをゲットしております。
発売前にイーブイブラッキーにしてやりますよ。ふっふっふー……(。-∀-)
(趣旨変わってる)

H/K

趣味全開の話しかしてませんが、まだまだ行きます。

ちょっと前にアディショナルメモリーが公開されました。カゲプロの曲です。これ聴いてて、私がカゲプロと会ったのは中学の頃だったなぁなんて思いまして。時間が経つのは早いものです。(遠い目)
じんさんの曲、やっぱりかっこよくて、しづさんの絵もかっこよくて……好きだなーって思いました。じんさんいわく、エモい曲だそうなので、聴いてみようね!!←

失想ワアドからキャラそのものの心情を描いていて、これからも少しずつそんな曲が増えるのかなって思ってます。これは増えたらいいなっていう希望かな。うん。
アニメ、小説は完結してますし、漫画ももうそろそろ終わりそうなので、本当に彼らのお話は終演に向かうのかなって。いやでも、カゲロウデイズの性質上、そんなこともないか……
私的には紆余曲折ありつつも、アニメはハッピーエンドなのかなぁと思います。そんな感じの終わりだった……はずだ!←
というか、一つの物語で色んなエンドがあるの、面白いと思いました。純粋に。

H/K

さーて! 毎回恒例の! 小説の話を!
実は思いの外忙しくて、どれもこれも中途半端になっております。悲しい(´・ω・`)
いや、言うほどあれだけど、夜に帰ることが増えてしまい、小説を書くかーと向かい合ってたら眠くなって……みたいにしんでます。お休み…(。-ω-)zzz
書けてないのによく出せてるなって思いますが、あれですよ。夏休みに書いたストックが残ってるだけですね。はい。学校始まってからは作品の完成スピードは完全に落ちてます。悲しい(´・ω・`)
ですが、まあ、月一は守れる……というか、ここまで週一投稿出来てるので、これからも続けられるように頑張ります。出なかったら察して! そういうことだから!

今年中には夏祭り編、終わらせたいね……あの子らの夏、長すぎて可愛そうになってくるもの(汗)
他の作品も同様ですけれどね。ここじゃなくて、鈴鳴はほぼ月一更新やし……あっちもやりたいなぁ……



ではでは、次の更新は……なんだろうね。今週の土日は予定が入ってるので、投稿するか謎ですが、小説……かな。空と海なのか、番外編なのかはたまた小説ですらない、関係ないものなのか……書いてる本人ですら見当はつきませんが! まあ、出てたらそのときはよろしくお願いします~♪

ではでは! 閲覧ありがとうございました!

未熟な新芽が華開くとき

~前回までのあらすじ~
ないですね! 出来れば、ヴァルツ視点の『幼き騎士は何思う?』を読んでいただきたい! それらのネタバレを含みますので!
今回からはもえぎ視点です! 大丈夫かな?
もえぎ「あ、あ、あぁぁぁぁ~……!!」
ヴァルツ「お、おい……急にうずくまるな。どうした? いや、粗方、予想は出来るが」
もえぎ「わ、わたっ……私、そんな重荷、耐えられ……ふえぇぇぇ」
ヴァルツ「諦めろ」
もえぎ「あうぅぅぅ」
ってことで、簡単なプロフィール紹介を入れてから、始めまっしょい。


~人物紹介~
もえぎ(リーフィア・♀)
セイバーギルド所属の隊員でヴァルツのパートナー。過去にヴァルツに助けられた経験を持つ。内向的な性格で、コミュニケーションに若干の弊害があるものの、心優しい少女。

ヴァルツ(ブラッキー・♂)
セイバーギルド所属の隊員でもえぎのパートナー。二つの神器を所有し、ギルドトップクラスの実力者だが、身体的な問題を抱えている。そのため、戦闘参加を頻繁に行わない。クールで自分を顧みない性格。

トリス(♂寄り)
ヴァルツが所有する神器の一つ。普段は細剣であるが、どのようにも姿を変えられる能力を持ち、攻撃力はずば抜けている。楽観的でおちゃらけた性格。しかし、ときに冷淡な一面も見せる。

マリー(♀寄り)
ヴァルツが所有する神器の一つ。姿は短剣。情報収集の力を持ち、どちからといえば、後方支援型の能力。ヴァルツのことを溺愛し、誰にでも優しいが、トリスのことは嫌っている。


まろ(ロコン・♀)
セイバーギルド所属の隊員。ヴァルツの後輩でもえぎの先輩。普段は薬品開発等を行う。その関係上、ヴァルツの健康面のサポートをしている。もえぎのよき話し相手。明るい性格でムードメーカー。

~~

じっと見つめられ、思わず目を逸らしちゃいました。逸らしちゃ駄目なのは分かっているつもりなのですが、つい体が反応してしまいます。
「あのねぇ、お嬢ちゃん。こんな無茶な要求が通ると本当に思っているの? こっちも好きで突っぱねる訳じゃないんだけどねぇ」
「で、でも、こちらも……その、お仕事なので、お願いを聞いてもらわないと……えと、その。あの、実力行使、しないと……はい」
自分もビックリするようなか細い声で反論してみますが、これも相手の神経を逆撫でしてしまったみたいです。何も言わなくても、直接見なくても、相手がイライラしているのが分かりました。そのイライラも分かります。だって、これが一時間以上も続いているのですから。申し訳なさと自分の力不足を痛感して、小さくなるように体を縮こませます。すると、後ろの方から溜め息が聞こえ、私と相手を隔てる机に紙が置かれました。頭をあげると、ヴァルさんが呆れた表情で相手を見ています。埒が明かないと思ったようで、割って入ったのでしょう。
「長く反論するのもいいが、こちらも暇ではない。難しいことを言っているつもりもないのだが? お互い、時間を無駄にするのも得策ではないだろう」
「つっても、いきなり来て、お前らんとこにやる金を増やせってのは……」
「最近、稼いでいるだろう。こちらが知らないとでも? ここで断ってもいいが、そのときはこちらでお前らの組織を潰すだけだ。どうする?」
「……っ! わーったよ……こっちもあんたらを敵に回したくないんでな」
渋々、ヴァルさんが差し出した紙に相手が署名をすると、私へ返してくれます。ちゃんと確認して、不備がないことをしっかりとチェック。
……うん。大丈夫……なはず。
「大丈夫、です。ヴァルさん」
「……だ、そうだ。これで滞納なんかしていたら、実力行使をさせてもらう。それでも態度が改善しないのなら、潰すのみだ。他へ逃げてもいいが、それ相応の制裁を覚悟することだな。……それでは、失礼します」
ヴァルさんが部屋を退出し、その後を慌てて追いかけました。入口近くで待っていてくれて、私が追い付くのを見ると、再び歩き始めました。隣に並んでヴァルさんに話しかけます。
「ヴァルさん、あの、ありがとうございました……それに、ごめんなさい。私、一人で出来なくて」
「あ? あぁ……いいよ。この仕事はふぃーには荷が重いから。それより、今日はどうする? ギルド行くかこのまま帰るか」
空を見れば、オレンジ色に染まっています。日が短くなっているこの頃です。これからすぐに日が沈むのでしょう。目線をヴァルさんに戻します。
「あ、えと……もう、戻るのも遅いですし、帰りたい……って、思っています……お夕飯、作らないとですし! 当番、私ですから」
「夕飯ねぇ……ふりかけご飯?」
「違いますよぅ……ヴァルさんの意地悪……」
「ははっ。悪い。冗談だ。……行くぞ」
「……はい! ヴァルさん」

何から話せばいいのか迷いますが、一つ一つ話していこうと思います。私の名前はもえぎと言います。現在、セイバーギルドで一隊員として働き、ヴァルさんのパートナーをやらせてもらっています。
私がギルドに入ったのは、十五歳の頃。この大陸では十五になると、いわゆる、大人の事情というものを教えられます。ここでは悪いことも合法であるとして扱われるので、悪い人達が堂々と表を歩ける……そんな制度を採用しています。それでも、野放しにするのはよくない。よくないから、野放しにしないために、ギルドが一括管理をしているのです。それが、この大陸で最大にして唯一のギルド……セイバーギルドなのです。
セイバーギルドは危ないこともたくさんするので、入るために適性があるかテストをし、入った後もランク分けをするためにテストを定期的にしています。私は真ん中くらいのランクですが、ヴァルさんは一番上のランク。ランクの数は大体、十くらいに分けられていたと思います。……多分……はい。
えぇっと、私とヴァルさんは子供の頃、一度会っていました。ほんの少しの間でしたが、ヴァルさんは私に優しくしてくれたことを覚えています。十五になってから聞かされたのですが、ヴァルさんがこの辺で有名な名家の人であったという話……そのヴァルさんがギルドで働いていること等。幼い頃、変な人に襲われ、どこかの森に連れていかれたときもヴァルさんが助けてくれたこと。それもこのとき、初めて聞きました。……あぁ、この話はヴァルさん本人から聞かされた気がします。
えと、その……私がセイバーギルドに入った理由は、恩返し……です。助けてくれたヴァルさんがいるギルドで働けば、ヴァルさんの手助け出来るかもしれない……そんな気持ちだけで入りました。色々あって、ヴァルさんが私をパートナーに選んでくれ、それもあってか、一緒に住んでいて、今に至ります。……ギルドに入って一年くらい経ったのでしょうか。時は早いものです。

お家はそこまで広くありませんが、二人で暮らすには十分すぎるくらいの広さがあります。二人の個室もありますから、プライベート空間もバッチリです。施設暮らしだった私にとって、これが初めての一人部屋でした。ちょっぴり嬉しいのは内緒です。
「ただいま……です」
「はい。お帰り……っ…けほっ」
「あ、あの! ごめんなさい! 私が連れ出したので……大丈夫ですか? どこか、変なところとか……!」
「んんっ。……大丈夫。バッグ放り投げたら思いの外、埃が舞っただけだから」
確かにヴァルさんのバッグが床に投げられていました。最近、忙しくてお掃除出来ていないから、埃が貯まってしまったみたいです。よかったですけれど……体調悪くなったのかと。
「あれだけで体調を崩す訳がないだろう。心配性もいい加減にしておけ」
「あう」
今日のお仕事は少し悪いことをしている組織から、お金を徴収するお仕事でした。セイバーギルドは組織の管理をしているので、ある程度大目に見ると太鼓判を押す代わりにお金を要求しているのです。そのお金を回収するのも隊員の役目。役目なのですが、私、そういうのが苦手で、お休みだったヴァルさんがついてきてくれたのです。……本当はゆっくり休んでほしかったんですけど、お仕事出来なかったなんてなったら、今日以上の負担をヴァルさんにかけてしまうかもしれません。
どっちに転んでも、迷惑しかかけてない。……本当に、嫌になります……
「ふぃー? 玄関に突っ立っていないで早く入れ。夕飯、作るんだろう?」
「あ、は、はいっ! 今、行きますっ」
被っていた帽子を取ると、買ってきた食材を手に持ち、玄関を上がる。そのままの足でキッチンへと入ると、近くにあったエプロンを身につけます。帽子はリビングにあるコート掛けに引っ掻けておきました。ヴァルさんのキャスケットも同じように掛けてありました。すでにくつろぎモードのヴァルさんはお仕事の資料……ではなく、趣味で集めてる本を読んでいます。そんなヴァルさんに話しかけました。
「今日、夜は冷え込むみたいですから、お鍋、作りますね」
「いいよ。任せる」
本から顔をあげることはなく、ぶっきらぼうに答えました。いつものヴァルさんなので、私は気にしません。ちょっと遅めのお夕飯かもしれませんが、なるべく早く、作り終えないと!



~あとがき~
もえぎ視点。ですます調は読みにくいかもですが、お付き合いください……というか、ほとんど書かないので、なんとか読みやすいように試行錯誤しつつ頑張ります。

次回、ご飯食べます。あとはなんだろ。事件の導入的な?

ここでこいつら何歳だよって思われると思いますが、細かくは考えてません。もえぎは大体、十六~十七ですね。そうなると、ヴァルツは二十二、三になるかな? 多分。
空と海ではもう少し時間が経つので、また一、二歳上になりますね。

ここで大まかにもえぎ達の住む大陸についての説明を入れました。いつか設定として、まとめたいと思いますが、エルフーンのエルンがまとめる大陸はこんな感じですね。悪いことしてもいいけど、お金は寄越せよ。みたいな制度があるのが特徴。まあ、やっていいよなんて言ってますが、悪いことにも限度がありますし、ある程度の規約はあります。それは紹介出来るときにしますね。

今回は説明回でしたので、何か聞きたいことが遠慮なくどうぞ! 分かりにくいのって絶対にあるし!

ではでは!

はじまりのソラ 7ー7

~attention~
この物語は時、闇、空の探検隊の物語を元にしております。原作のイメージが崩れる恐れがあるので、苦手な方はバック!
前回は『えんがわのいわば』をクリアしたところです。今回から『ツノやま』に挑むど!!
ピカ「あのさ」
はい。
ピカ「自分で言うのもあれなんだけど、私の自問自答の場面は必要?」
何度も出てくるってことはそれだけ気になってるし、ジレンマみたいなものです。仕方ないね! これからも出てくるよ!
ピカ(いつも勢いで書いてるのが原因なのでは)
は~い! 始めますよ!!


~7‐7 ギルド遠征、重なる謎~


浅い眠りから目を覚ますと、空が白み始めていた。もう夜が明けたらしい。寝たような気がしないけれど、時間は平等に訪れるもの。仕方ない。起きよう。
体を起こし、昨日、夜空を見ながら寝てしまったことを思い出した。ポチャ達から少しだけ離れたところで眠ってしまった。失敗したな……とはいえ、二人ともまだ起きていないから、問題ない。これがポチャに知れれば、心配をかけてしまう。それは面倒だし、気をつけなければ。
「ま、こういうのはバレなきゃ、やってないのと同じだから。……おーい、二人とも朝だよ~?」
「うぅ……も、もう、朝でゲスか……?」
「一応ね。今のうちに目を覚まして、軽く運動しておかないと、ダンジョンで怪我するよ。今日は『ツノやま』突破してベースキャンプに到着しないと」
「そう……でゲスよね……」
起きる意思はあるみたいだけど、なかなか覚醒するには至らないようだ。ポチャに至っては全く起きる気配がない。このまま自然に起きるのを待っていたら、日が暮れてしまう。こうなれば、奥の手だ。
「“十万ボルト”」
「うわあぁぁぁっ!!??」
「ぎゃあぁぁぁ!! 何するでゲスゥ~!?」
半強制的に電撃を浴びせて起こすしかないね。許せ。恨むなら自分の寝起きの悪さを恨め。
一日の始まりを電撃から始めることになったポチャは、少し不服そうにしているものの、自分が起きないのが悪いことを悟っている。そのため、文句を言うことはなかった。朝ごはんを食べて、三人で軽く準備運動をする。
「この山を突破すれば、ベースキャンプは目の前だよ。頑張ってこ~」
「……はーい」
明らかにテンションが低いけれど気にしない気にしな~い♪
「よし! 準備おっけ! 二人とも覚悟はいい? 山登りの時間だよ」
「ピカ、本当に朝強いよね。羨ましいよ」
準備運動等々をこなしても、ポチャはまだ眠そうにしていた。朝が弱いポチャにこんな時間からダンジョン攻略に参加させるのは、罪悪感がないわけではない。が、だからといって、こんなところに置いておくわけにもいかない。
「ポチャが極端に弱いだけじゃない? ダンジョンに入れば嫌でも覚醒するよ」
「……うん。そうだよね。ごめん。行こっか」
眠そうにしてても、問題ないだろう。昨日と同じように進めば、難なく突破出来るはず。私の予想が正しければ、だけれど。

予想通り、着実に『ツノやま』の奥地まで進んでいく。何事もなく、問題なく、だ。
それがそうもいかなくなったのは、後半に差し掛かり、もうすぐ終わるだろうと思い始めた頃。ダンジョン内がガラリと雰囲気が変わったのだ。何がとはいえないけれど、抽象的な言葉を使うなら、場の空気のような、そんな感じ。
「なんか、このフロアだけ嫌な感じがする」
「なんだろうね? 殺気立ってる……?」
「前にも似たようなことあったよね。カラナクシ軍団の。あれっぽい?」
「言われると似てるかも。……でも、あれは部屋の一部がそうだっただけで、全体的にそうじゃなかったよね? 今回は全体的に嫌な雰囲気だ」
「まるでボス戦前みたいでゲスね」
ビッパの何気ない一言がピタリと当てはまった気がした。そうか。全体的にピリピリしていて、肌に伝わるこの緊張感はそれか……?
「何かいるってことか」
「ひえぇっ!?」
「どうする? って言っても、ここを抜けなきゃ先には進めないけれど」
「警戒しながら進むしかない。ポチャ、ビッパ。離れないように気をつけて」
二人は小さく頷いた。私も二人に頷き返すと、一歩足を踏み出した。ゆっくり着実に歩を進めていき、奥へと進んでいく。何かあるわけではないけれど、警戒するに越したことはない。
ここは山と言っても岩山の類いで、森に囲まれているわけではない。見張らしはいい方だと思う。敵が隠れるような場所もない。だから、何かあればすぐに気がつける……と思うんだけれど。
そう考えていると、正面から何かが飛んできた。私が避けるのは簡単だが、そうすると後方にいる二人にも何かあるかもしれない。となれば、出来ることは一つだけだ。
私は素早くバッグからワープのタネを二つ取り出すと、正面の敵ではなく、後ろの二人に向かって投げた。咄嗟のことでポチャもビッパも避けられないだろう。
「ピカ!?」
「バッジで場所の確認すればすぐに合流出来る!」
それを言うと、二人はどこかにワープしてしまう。そこまで広いフロアではなかった。大丈夫。二人のタイプ相性も悪くなかった。……大丈夫だ。
それと同時に、私は目の前から飛んできた何かに見事、命中してしまった。

「いてっ! ピカ!?」
辺りを見回しても自分一人だけだった。ポチャはここがまだ見たことがない部屋だということを確認すると、ピカに言われた通り、バッジを起動させた。そして、マップ表示を出し、自分の位置、仲間の位置を把握する。
「……ぼくはここ。通路が見えないってことは三人でまだ来てないところ。……一番近い仲間と合流しなくっちゃ」
バッジを懐にしまうと通路を駆け抜け、いくつかの部屋を抜けると、ビッパと合流することが出来た。ビッパは動かずにじっとしていたらしく、忙しなく辺りを見回していた。そのため、ポチャの姿を見つけたときはパッと顔を明るくさせ、同時にホッとしたように駆け寄ってきた。
「ポチャー!! 無事だったゲスね! あっし、動くと迷いに迷いそうで……!」
「うん。それも一つの方法だよ。……ぼくは大丈夫……でも、ピカが」
「バッジは確認したでゲスか?」
「したよ。結構、離れたところにいるみたいだ。ピカ、なんで急にワープのタネなんか投げてきたんだろう?」
「何かあったゲスね……あっし達を遠ざけたい何かが……それがなんなのかは分からないゲス」
「とりあえず、ピカのところに行かなくちゃ! ねえ、そういえばさ、ビッパは敵の姿とか見た? 走るのに夢中だったんだけど、このフロアに来てから遭遇してないなって」
「そういえば……そうでゲスね。あっしも見てないでゲス。ここに来るまでは嫌と言うほど見たのに」
ポチャの頭にふつふつと嫌な思いが浮かぶ。もし、敵がピカに集中しているとしたら。普通なら、ダンジョン内の敵はどこにでもいて、平等に襲われる可能性がある。それが、ここでは一度も遭遇していない。なぜ、そうなるかまでは分からないが、ここは他とは違う何かを感じるのは確かなのだ。普通の常識なんて通じない何かがあるのかもしれない。
「待ってて、ピカ……すぐに行くからね!」



~あとがき~
遠征なのに遠征じゃない何かに巻き込まれてますね。

次回、ピカに一体何が……?
このパートなっがいなぁ……

本当はこんなに長くなる予定はありませんでした。さっさとベースキャンプ場に着いて、あれこれ話して、湖に行こうと思っていたので。まさかpart7まで続くなんてそんなこと……ねぇ?
もうね。二桁も夢じゃないですよ。はい。

ではでは!

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
遂に手を出しました。
ヴァルツ「言い方に語弊がないか、それ」
トリス「間違ってないからいいんじゃなぁい?」
ヴァルツ「……」
今回でまとめて終われたらいいな!
ヴァルツ「そう言うと大抵、考えとは反対の方向へ向かうんだよな」
う、うるちゃい……


一度、剣を振るうと周りにいた敵達は全員ばたりと倒れてしまった。そんな目の前の展開にボスもついていけず、硬直してしまっている。銃の引き金すら引けなかったらしい。そんな隙が俺にとっては絶好のチャンスだ。
「トリス」
『ふふん。任せて♪』
素早く相手の背後に回り、一太刀を浴びせる。声も出す暇もなく、地面に崩れ落ちる。もちろん、こいつにふぃーが押し潰されないように回収も忘れずに。
「……ところで、こいつはなんでここにいるんだ。予想はつくけど」
『さっきの口ぶりだと、こいつらが連れてきたんでしょ。自分のためなら子供も利用する! あはっ。大人の鏡だよねぇ』
トリスの言った内容で外れてはなさそうだ。連れ去られたのか、たまたま見つかったのかは定かではないが。
「トリス、代償の件はもう少し後でもいいか」
『うん。僕がヴァルツの体に馴染むまでは問題ないよ~』
さっきはすぐに取っていたくせに。
『あれはいいよって言われたから?』
そこら辺のタイミングなんかも不明なままだな。俺は使用した直後に発生するもんだと思っていた。
『そこはこっちの自由だ。いいかい? 神器を扱うってことはヴァルツ……お前の魂は僕のものだよ。どうするかは僕が決めるし、代償をどうするかも僕の権限。人の子に自由なんてないんだよ』
「なんというか……お前も大概だな」
『何それぇ! そこに転がってる奴と一緒にした!? 怒るよ!』
構っている暇はない。やることをやらないと。
ぎゃーぎゃー騒ぐトリスを一度、祠に置いてその祠の側にふぃーも寝かせておく。そして、周りにいる敵を外に出しておかなければならない。ここに置いておいてもいいけれど、一応、一族の敷地内だ。片付けておかないとな。
途中、マリーが帰ってきたため、彼女と共に後片付けに追われた。その間に、俺とトリスのことも話したが、反応は思った通りお小言を言われ、説教を受けることになった。ふぃーを送り届け、全てが終わったのは、日も昇り、辺りが明るくなり始める頃である。幸いにも母に一連の出来事はバレておらず、自分の部屋に戻れたのはよかったと思う。

「僕も遂に実体化! やった~♪」
「はぁ~……一段と騒がしくなりますわ。黙ると言うことを覚えた方がよろしいのでは?」
「うっさいなぁ……実体化、ひっさしぶりにしたんだよ! ヴァルツのおとーさん、全然余裕なくって、実体化する暇もなかったんだよ? 堪能してもバチは当たらないよ」
……あぁ。結局、何も変わらない。実体化しようがしまいが、俺に聞こえるのは変わらないし、むしろ、目に入るようになったから、悪化しているのか。
俺の先を歩くトリスがこちらを振り向き、両手をこれでもかってくらいに振ってきた。トリスと俺の距離はそこそこ離れていたから、結構な声量で叫んでくる。
「ヴァルツ! 遅いよー!」
「誰のせいでこうなってると……けほっ」
あの事件の後、予定通りに旅の続きをするために家を出た。そこで早々にトリスは代償を支払えと迫ってきたのだ。家にいれば、母にバレてしまうため、外で言われたのは好都合ではあった。魂は取らないなんて言っていたから、どうするのかと思っていたが、結果的に身体能力を取ってきた。身体能力なんて言ったが、運動能力、運動神経は変わっていないのは確認済み。つまるところ、体内の機能低下をしているらしい。一言で済ますなら、体が弱くなったと言うことになる。こんなことなら、寿命を取って貰った方がよかったのではないかと思う。
「大丈夫ですか、愛し子よ。あまり無理をしては駄目です。兄様は無視していいですからね」
「そこは問題ない。元から無視している」
「おぉいっ!? 聞こえてるぞー!?」
森に侵入した親戚達は何も覚えていないと答えていた。自分の意思で踏み入れた訳ではないらしいが、俺が直接聞いたわけではないから、真実を語っているかは不明だ。まあ、そこら辺の処分なんかは大人に任せるに限る。
ふぃーに関しても、どうなったかは見届けずに来てしまった。送り届けはしたものの、話は聞いていないし、あそこにいた理由も明らかにならないままだ。それでも、あの子が自分の意思で入るとは思えないし、敵に捕まっていたところを見るに、利用されたのは間違いない。あいつも被害者の一人だったと結論付けている。
「愛し子よ、どこに行きましょう?」
「……目的地は特に決めていないよ。でも、そうだな。俺の進化用の道具でも探しに行くか」
「お! ヴァルツ、何になるのぉ?」
いつの間にか近くまで戻ってきていたトリスが首を傾げながら聞いてきた。そんな仕草をしても、大して可愛くもない。
ブラッキー
「うわぁ……ぽいね」
「ふふっ♪ お似合いですわ、愛し子。さて、ここまで戻ってきたのなら、愛し子に楽をさせてあげてくださいませ、兄様」
「はぁ? 何それ」
そこまでこいつにお世話になるつもりはないんだが。俺の気持ちは無視され、マリーの話は続く。
「このペースですと、このダンジョンを抜けるのに休憩なしでも丸一日はかかります。ここは階層の深いところですので、このくらいは仕方ありません。そして、愛し子に無理をさせるわけにはいきません。……この意味、お分かりですよね?」
時折、休憩を挟むなんてことをすれば、もっと遅れるだろう。無理して倒れてしまえばまた入り口に逆戻りだ。俺は分かっててゆっくり歩いていたし、休憩もするつもりだった。何日かかけて抜ける予定だったのだが、二人には何も言っていなかったために、変に思われていたのかもしれない。
トリスが数秒の間、苦悶したと思ったら、くるりと背を向けてきた。
「しょうがないなぁ! 背負ったげる! 僕だってヴァルツに死なれたら困るし!?」
ほれほれとこれ見ようがしに迫ってくるが、主の種族をコピーするのが神霊だ。トリスもイーブイで俺と大した身長差もなく、力があるようには見えなかった。まあ、俺よりはあるかもしれないけれど。
「……そんな力あるのか?」
「神霊様を馬鹿にするなよ! お前を背負って次の町に行くことなんて造作もないんだからな!? ほら! 乗った乗った!」
そう強く言い放つと半ば無理矢理、背負われてしまう。こうなってしまえば、抵抗するのもおかしな話だ。黙ってトリスに背負われよう。
「言いましたわね。兄様、次の町までよろしくお願いしますわ♪」
「!? 狡くない? そういうことなの?」
「私が先頭に立ち、敵を殲滅いたしますので、兄様と愛し子はその後をついてきてくださいまし。もちろん、気になるところがあればそちらへ参りましょうね」
マリーはにこりと笑ってそう告げると、俺達の数歩先を歩き始めた。トリスの抗議は耳にも入らないらしい。流石と言えば、流石である。
俺の方は乱暴に扱われるかと思ったのだが、結構丁寧でそこは気遣いというものが存在していたらしい。驚くべき事実が判明したところで、眠気が襲ってくる。力を抜き、体重を預けてゆるりと目を閉じた。
「……トリス」
「なぁにぃー」
「やりたいことが出来た。……きっと、それは道徳的ではないんだと思う。それでも、力を貸して欲しいんだ」
「何言ってるの。僕はもうお前の道具だよ? 好きにしたらいいさ。……それにねぇ、ヴァルツ」
そこで一度、言葉を切る。不思議に思って片目だけ開けてみる。そこには不敵に笑うトリスがいた。
「僕は普通は望んでいないんだよ? ヴァルツがこの連鎖を途絶えさせると言ったんだ。……終わるまでは、どこまでもついていく。全てが終わったとき、それでもヴァルツが生きてるのなら、お前の最期も見届けるから」
「なるほど。……その未来を実現するために、まずは強くならないとな」
「んふふ♪ そうだね! 強くなるまでは守ったげる~♪」
マリーには言えないこの野望とも見える願いは、きっと、こいつとなら叶うんだろう。いや、叶えるんだ。そのための一歩を踏み出したんだ。



~あとがき~
はい! ヴァルツ編終わり!!

次はもえぎ視点! 本編にもあるように、今のトリスの主はもえぎ。まあ、使うだけならヴァルツも使ってますけど。むしろ、使用権はヴァルツっぽいところあるけども! そうなった理由について語っていこうと思います~♪
ギルド加入辺りからやってもいいんですが、長くなりそうなんで、カットですね……さらっと説明はします。その説明で今回、敵に捕まったうんぬんの話も出しますかね。

代償は使った直後に取られるのではと思うと思います。そこに関しては、神霊の判断ですね。取らないやつもいるくらいなので、払ってねというタイミングで勝手に取ります。予告するのかしないのかも神霊の気分次第です。マリーはいらない派です。とった方が力はあげられるのですが、それでヴァルツに何かあるのは嫌なので、くださいとは言ってません。ヴァルツはあげて強化できるならしてもいいよっていうタイプなんですけどねー
トリスはヴァルツに対して、適当なタイミングで貰ってもいいかと一応聞くタイプ。嫌だって言われても無言で実行します。
ちなみに、雷姫はピカに対してはマリーと似たような感情を持っています。が、必要があれば影響がないところで妥協する感じ。ピカ以外は無言でバンバン貰うんじゃないですかね。はい。

ヴァルツのやりたいことに関しては、察してくれって感じですね。特に説明はしませんし、空と海にも出てくる話ではありません。仮に、ヴァルツ&もえぎを主人公にした話を考え、出すときがあれば分かるかもしれませんが。ここではご想像にお任せします!

ではでは!

空と海 第201話

~前回までのあらすじ~
フィフィが大活躍の日でした。
今後、ヴァルツやもえぎ、フィフィが出ることはない……はず! いやー! やっと終わりが見えてきた気がする! 気がするだけであとどれだけの話数になるのかさっぱりですけど!!
ピカ「予想しまーす。今年中に終わらないに一票」
ぐぬぬ!! じゃあ、終わったら!? どうする!?
ピカ「んー? いや、何もしないけど」
えー……
今回も一応、過激表現、流血等々にご注意を。
ピカ「それは最初に言え!」


大きな騒動が起きている祭り会場から離れた上空に、チルは二人の仲間を乗せて飛んでいた。離脱したと言うよりは、リーダーであるピカからの指示を受けて三人、別行動をしていた。
この命令を受けたのは、敵との交戦が始まって間もない頃。ソルの持つ探検隊バッジに連絡が入った。探検隊バッジに来るということは、チーム内からの連絡であるのはおおよそ見当がつく。ポチャからなのかと思いつつ、前線をコンに任せ、後方へ下がる。そして、バッジの通信を入れた。
「応答、遅れました。ソルです」
『おー……やほやほ~』
「……ピカ、さん? 大丈夫なのですか? というか、今どこに」
『大丈夫じゃなーい。しんどいよー……だから、もう少しだけ寝るけど、やってほしいことがある』
声は確かに元気はない。眠そうな声で、覇気がなかった。仕事のやる気がないと愚痴っているときくらいに覇気がない。
「僕に、ですか」
『ソルだけじゃないんだけどねぇ……コンとチルを連れて、あるところに向かってほしいの。本当なら、私が行きたいんだけど、雷姫ちゃんが駄目って言うからさ~?』
「そりゃ、さっき倒れて寝てたんですから。……それで、どちらに?」
『ヴァンガルの本拠地だよぉ』
「本拠地? あの、今の状況、どこまで把握してますか?」
『んえ~……? なんかうじゃうじゃ敵が出てきててぇ~……変な気配もしてるし、訳わかんねぇっすよ~? 新手のお化け屋敷的なー』
説明になっているのか不明な説明に、ソルは首を傾げる。結局のところ、ピカがどう考えているのかもさっぱりだった。支離滅裂と言ってもおかしくない言動にどうしようか迷っていると、ピカの声が真剣なものに変わった。
『まあ、それでもやらなきゃいけないことは組み立ててる。収めるために……違うな。勝つために、だな。そのために必要なの。……ヴァンガルの組織に潜入して、情報取って来て。んでもって、殲滅してこい。リーダー命令だ』
「ポチャさんには?」
『言わなくていい。私の独断だから。何か言われても適当に流して、このことは伝えるな。……この戦いで、ポチャには何かがあるはず。だから……私の傍に……手の届く範囲にいてもらわないと。守れない』
先程は適当な感じに言われたが、ソルが予想するに全体的に全てを把握しているのだろう。そのため、今足りないものをどうにかして、補いたいのだ。その足として、ソル達を使うつもりなのだ。
「……了解です。チルさんと行動してるフィフィさんはどうしますか?」
『フィっくんはまた別の任務を与えるつもりだから、言わなくても……あー違う。ごめん。言ってもいいけど、言わなくてもいい内容は言うな』
「分かりました。すぐにここから離脱します。離れるのは罪悪感ありますけれど」
『感じなくていいの~……リーダーからのご命令が絶対なの~……ふぁ……んじゃまあ、適当に向かってねぇん……おやすみぃ』
再び覇気のない声で締め括り、プツリと途切れた。ふっと息を吐くと、前線を任せていたコンのところへ戻る。
「おっかえりー! ねえ、全然やられない! どーしよっか!?」
「そんなことより、別の命令が入った。ここを離れるよ」
「そんなことぉー!? あたしのセーキの大発見をそんなことってー!!??」
コンの首根っこを咥えて、さっさと離脱した。この間もじたばたと暴れるため、落とさないように慎重に運ぶ。こう気遣っていることすら、コンは気付かないのだろうと頭の片隅で思った。
「うがー!! あー? ソル、つーしん、来てる!」
喋ろうにもコンを咥えているし、話すためには立ち止まる必要がある。それでは非効率だと思い、出ていいよ、と目で伝える。すると、コンはパッと顔を輝かせた。普段、連絡するのはソルの役目であり、コンから応答することが少ない。強いて言うなら、何かをやらかしたときに、ピカに報告するときだけは自分から嫌々やっている。あとは、全体の連絡くらいであった。そのため、ソルの代わりに出るなんてことは滅多にないのだ。
「はーい! ソルのバッジだけど、コンでーす!」
『コーン! チル、コンだって!』
バッジからはフィフィの声が聞こえてきた。チルと行動を共にしているため、フィフィが連絡してきたのだろう。そうだとすれば、チルは今、飛んでいるということになる。
『あらあら♪ コンさん、元気ですわ♪ ソルさん、私はどちらに向かえばよろしいでしょう?』
「ん~……ん」
少しだけ考えるが、ここから大して離れていないところで集合した方がいい。そう思って、コンをちらりと見下ろした。何が言いたいのか伝わったらしく、ニッと笑ってバッジに視線を戻した。
「あのね、ギルド前だって! あれ、何するの? あたしたち、離脱して逃げちゃうの?」
『ピカさんからの特別命令らしいですよ。詳しいことはソルさんに聞けと言われました。私はソルさんと一緒に行けと言われただけです』
「特別! いいね! 楽しそう! フィフィも来るの?」
『ううん。ボク、別のことやるの。ピカがね、お手伝いするときが来るからって言ってた。……だから、じょーほーせーり? しなきゃなの。だから、一回、基地にもどって、しりょー読む』
ピカはフィフィに何かをさせるために戻るように伝えたらしい。それが何なのかはある程度予測は出来る。が、どうするのかまでは分からない。ソルが理解しなくとも、ピカがどうにかしてしまうのだろう。
『……そいうことなので、ギルドの前で集合しましょう。必要なものもこちらで用意しますわ』
「はーい! 待ってるね。……ソル、他に言うことある?」
ここで伝えたいことは特にない。そっと首を振ると、コンは素直にチルとの通信を切った。そして、バッジを大事に自分のスカーフへとしまいこんだ。この体勢でソルに返すと、バッジを落とすかもしれないと考えたようだ。
「ソル、ピカの指令ってなんなの? というか、ピカ、寝てたんじゃなかった??」
「……」
「あ、そっか。喋れないんだった。着いてから教えてね」
「ん」
この連絡から数分後にギルド前に到着し、そのまた数分後にチルと合流したところで、ソルはピカから受けた命令の説明を二人にした。



~あとがき~
せっかくフィフィをピックアップしたので、他のメンバーの暗躍も伝えてやろうと思いましてね! 時系列からはまた外れますがすぐに元通りだよ。大丈夫大丈夫(適当)
ピカがどっから情報を仕入れていたのかがこれで分かると思います! こいつらからだよ!

次回、ヴァンガルの本拠地に乗り込みます!
殲滅って言われたのでね。あれですよ。察して。

ピカのこの連絡はいつにしたものなのか謎だと思いますが、まだ逃げ出す前ですね。ポチャと会話して、少し時間経った頃だと思います。でもまあ、敵との交戦が始まった直後なので、ピカさんはこのあと逃げます(笑)
また、フィフィがピカからの命令を受けたのもここら辺ですね。詳しいことは聞いてないっぽいので、とりあえず、情報集めしておけと言われたんでしょうな。それをしてからのヴァルツとの連携に繋がるわけです。

ではでは!

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
引き寄せられたのはヴァルツの親戚達でした。なんなんじゃ……
ヴァルツ「知らん。なんで来たんだろうな」
トリス「あはは♪ 予想出来ていてその台詞は白々しいよ、ヴァルツ?」
ヴァルツ「……」
やだ、黙らないでぇ~……
前回のあとがき通り、戦闘はカットします。ぐだっぐだな戦闘なんて見たくもないですもん!!(私が)
ヴァルツ「私欲……」
トリス「忠実だねぇ~♪ いいね!」


戦闘慣れしていない大人達だったらしく、子供の俺でも簡単に倒すことが出来た。この場から離せば、とりあえずは問題ないらしい。恐らく、あの状態だったときの記憶はなく、何をしていたかも覚えていないだろう。
「マリー、こいつらを外に。それで……」
「はい。事情を聞けばよろしいのですね。すぐに戻ります」
大人数人を一人で引きずりつつ、入口へと向かった。命令しておいて何だが、俺も行った方がよかったのだろうか。しかし、一応はトリスが狙われたのだから、近くで見張っておきたい。マリーは一人でも問題ないだろう。
「俺が平気なのはお前と契約を交わしているからなのか?」
『うん。まあ、それもあるけど、単純に僕との相性がよかったんだよ』
「……」
『あは。嫌な顔してるねぇ♪』
祠の扉を閉め、もう一度辺りを見回す。今まではマリーに周りの情報を探ってもらっていたが、ここではそれが出来ない。自分の勘しか頼れないということになる。トリスに聞いてもいいが、それはそれで癪だ。
「この辺りにふぃーはいないみたいだな。……? トリス、ここに入れば無条件にここに引き寄せるのか?」
『え? そりゃあ、僕のことを手に入れたいって少しでも思っているなら、ここに呼び寄せるけど?』
「思ってなかったら?」
『引き寄せる。そして、美味しく魂を食すだけ』
「結果は同じか。……両者ともお前に操られてるって考えでいいんだよな」
『そおね。意図的にしろ無意識にしろ、そうなるのかなぁ?……えー? 何々?』
「もしかして、ふぃーは……」
そこまで言いかけて、俺は反射的に後ろに飛び退いていた。俺が立っていたところに何かが通過していくのが見えた。
「あの親戚以外にもいたのか」
『僕、あれで全員なんて言ってないしぃ』
「……クズが」
『あっはははっ!! ヴァルツの本音ウケるー!』
「うるさい。誰がいるのか言え」
『マリーじゃないから、細かいところまでは分からないけど、五、六人ってところかな。なかなかの人数かもね』
通過したものが何なのか確認するために、近くの木を観察していく。すると、投擲用の小型ナイフが刺さっていた。完全に一般人ではない。……裏社会の奴らか。
「悪人にも狙われるとは。トリス、人気者だな」
『んふふ。そっちの世界も面白そう♪』
「そうか。そうなれば俺はお前から解放される。いい話かもな」
『あー! やだやだ! 僕は同じ人の子に使われるなら、ヴァルツに使われたいのー!』
抜いたナイフを気配のする方へと投げる。短い呻き声と共によろよろと人が出てきた。丁度、腕に当たったようで、片腕を押さえながら出てきた。種族はニューラだ。
俺は素早く祠の前まで戻り、トリスに触れられないようにする。
「どこの組織だ。ここは一応、私有地と言うことになっているんだが」
「深緑の悪魔を頂きに来た。現所有者が死んだって聞いたんでな」
言動がはっきりしている。少なくとも、トリスを扱う素質くらいはあるのだろうか。
『ヴァルツ程ではないけど。ほらほら、僕のこと守ってよ?』
ふむ。……守るにしても、こちらは武器を持っていない。トリスを使えるわけではないし、マリーは今、ここにいない。マリーが戻るまで、時間を稼ぐしかないか。
「悪いが次の所有者は決まっている。お前たちのような奴らに渡すわけにはいかない」
「だが、今はここにある。……フリーってことだろ? そこを退け。ガキが」
『僕、今まで以上にモッテモテ! モテ期ってやつかな? でもでもぉ、好みじゃないな~? 素質はあっても好きになれないってあるよね? そういう人だな、こいつは』
……じゃあ、食えばいい。というか、その方法なら自分の身も守れるじゃないか。俺が危険を冒してまでお前を守る必要がない。
『いいの? こいつのこと、食べちゃっても。ほら。教育上よくないってあるし。ヴァルツも一応、子供じゃん? 一応!』
「今更、配慮する意味が分からない。やれ、トリス。俺が許可する」
『わは~♪ ここに来て、久し振りのお食事! いっただきまーすっ!』
一度閉めた祠の扉を開ける。そこには変わらず、トリスが鎮座していた。それを見たニューラは突進する勢いでこちらへと走ってくる。俺はぶつかるのも嫌だから、トリスから離れた。
相手からすれば、俺が観念して受け渡したとでも思っているのだろうか。突っ込んできたということは、トリスと俺の会話は聞かれていないことになる。まあ、元々、俺の頭に伝えてきたものだから、他人に聞こえるわけがないか。
「これが……神器!」
無造作にトリスを掴むと、ニューラはゆらりとこちらに体を向けた。そのまま襲いかかるのかと思ったが、体を向けただけでばたりと倒れた。
『私欲まみれで自己中な魂は美味~♪』
「早いな」
『ヴァルツの感覚で言うなら一口だったの』
こんなやつに食われるなんて、なんて儚い命か。……というか、食われるってことは大したこともないのか? しかし、祠から出したトリスをどうしよう。触って代償払えなんて言われたくもない。
『触ったくらいでお命頂戴しないよ! 使わなきゃいいんだから!』
あぁ、そう。じゃあ、戻そうか。
すでに力尽きたニューラの手から簡単にトリスを奪い返す。するりと手から抜けたそれは、近くで見れば見るほど、その彩飾の細かさに驚かされる。昔の人が神格化して崇めてしまう気持ちも分からなくはない。中身はとんでもない奴だが。
「それを離せ」
「……は? まだいたの」
『だから、五、六人はいるんだってば』
忘れてた。そのうちの一人は勝手に死んだけど、残りがいるのか。
声のする方を見て、驚いた。探していたふぃーが捕まっていたからだ。意識はなく、敵に抱えられた状態だが、確かにそこにいる。ふぃーと残りの敵数人はボスっぽい奴がふぃーを捕まえ、残りが俺を囲むように群がる。とは言え、片手で足りる程度しかいないものの、全員が武装済みで素手で勝てるとは思えなかった。
「そのイーブイは?」
「人質って奴だよ。見りゃ分かんだろ?」
そうだろうな。しかし、ふぃーが人質になりえるかは分からないはずだが。
「はんっ! 前、あんたがこいつを助けたのは聞いてんだ。知り合いなんだろ」
……聞いた、ということは、苛めっ子達の中にこういった仕事をする身内がいたのか。なんという運命というか、確率に当たってしまったのか。計算なんてしたくはないから、やめておくけれど。
ボスが引き金を引いた銃をふぃーの頭にくっつける。早くしろと急かし、脅しているらしい。経緯がどうであれ、抵抗するにはふぃーをどうにかしなければならない。仮にマリーが戻ってきたとしても、なんとかなる相手にも見えなかった。周りを突破するのと同時にふぃーが死んでしまう。
『わ~……結構、絶望的なシチュエーションだよね? どうする?』
そうだな。仮にお前を使ったとしたら? お前を渡すことなく、ふぃーを助けられる?
『……そういうシナリオが望みなの?』
聞かれたことだけを答えろ。
『はいはい。今のヴァルツが僕を使ったとしたらでしょ? まあ、問題ないだろうね。けど、本来の契約は先の話。ここでするっていうなら、それ相応の代償を貰う』
その代償はどれだけのものを要求する?
『命は貰わないって保証してあげる。それしか言えないなぁ』
……十分だ。
『あっはぁ♪ いいね、好きだよ! そういう自分勝手で先のことを考えずに決めちゃうところっ! ふぃーちゃんなんて放っておけばいいのに! ううん。そういうヴァルツが好きだよ!』
ぐっとトリスを握り、落ち着かせるために深呼吸をした。これから、俺は掟破りのようなことをする。しなくてもいいことをする。……ただの自己満足のためだけに、こいつを利用するんだ。
「トリス、俺に力を寄越せ!」



~あとがき~
ついにやってもうた……

次回、ヴァルツ視点終了(予定)です!

ヴァルツが払わなくてもいいような代償を払ってトリスを手に入れたのか、それが今回の話で分かりましたね。一定期間が来れば、何事もなくトリスを手に出来たのに、ふぃー……もとい、もえぎを助けるためにトリスを使うことになりました。そんな経緯です。はい。健気なヴァルツですね(笑)
分からないことあれば質問どぞ!!

このヴァルツ視点が終われば、もえぎ視点に移し、さらに時間を変えてもえぎがトリスを手にした話をやるつもりです! ヴァルツ視点ではあれだから。大きな代償を払った理由を語っている(つもり)ので!

ではでは!

空と海 第200話

~前回までのあらすじ~
ヴァルツとピカが別れ、ピカが敵と交戦中!
そして、描写に注意ですぜぇ~……流血、その他過激表現に注意!
ピカ「……今回、注意することある?」
わからん! まあ、言うだけね。
ピカ「注意って言う割には軽いんだよね」
あはは! ここくらいは明るくいかねば、病んでしまいそうです!!
ピカ「書けなくてひーひー言ってるだけでしょ」
そうとも言う……


戦線離脱し、走ること数分。その短い間でも、ヴァルツは目を閉じて回復に専念しているらしい。トリスは話し相手もいないため、黙って走っていた。
そして、救護テント付近まで近付くと、マリーの姿を発見した。その近くにもえぎの姿はない。
「あ、マリー」
「兄様。……あぁ、愛し子よ! なんて無茶を……!」
ヴァルツの姿を見て、どういった状況なのかを完全に理解したらしい。神器と主は心で繋がっているため、様子は近くにいなくとも感じ取れるのだ。それでも、ヴァルツの命を忠実に守って、もえぎをここまで連れてきた。そこは称賛すべきものだろう。
「ねえ、僕に何か言うことはないのぉ?」
「ありません」
「うっわぁ……清々しいほどにキッパリ言うね。いいけどぉ~……ほら、ヴァルツ。ついたよ」
「……ん」
トリスの呼び掛けにうっすらと目を開けた。ふわりと欠伸を漏らしつつ、しっかりと自分の足で立った。数分とはいえ、休憩したことでいくらかは回復したようだ。また、ピカに薬を投与されたことも相まって、回復も早まったように感じる。軽くストレッチをしながら、体の動きをチェックする。問題ないと確認すると、二人と向き合った。
「それで? 雷姫の主に言われたこと、やるの?」
「まあ、そうだな。……マリー、探れるか」
「はい。……問題ありませんわ」
「トリス。お前はふぃーのところへ戻れ。そっちの方が回復も早い」
「えー? ここまで来たら最後までお供したぁい」
「我儘だな。腹が立つほどに」
「愛し子よ、もえぎ様には会われないのですか?」
「会う?……まだ寝てるんだろう? 必要ない」
救護テント付近は怪我人でごった返しているわけではないが、全く人がいないわけでもない。それなりに忙しそうに動いており、怪我の手当てに道具の補充にと奔走しているらしい。ぐるりと見回していると、偶然レンと目が合った。レンも気が付いたようで、ヴァルツの方へと近寄ってきた。
「ヴァルツ~♪ 生きてたんだな~」
「勝手に殺すな。仕事しろ」
「厳しい……っ! あ、もえぎ嬢なんだけど、パパっと手当てしといたよん。命に別状はないから、安心して」
「? 別に心配してないが」
「素直じゃないね」
「あ?」
「そだ。ピカに会った? いなくなったんだけど」
「ピカなら戦場を駆け回っている。……仕事あるから、これで」
レンに背を向けて本部方面へと歩を進めた。後ろでは「会ったの!?」や「マジで!?」といった驚きの声が聞こえてきたが、それに振り返ることはなく、無視して歩いた。マリーがその後を追いかけ、トリスは珍しくヴァルツの指示に従い、二人の後にはついかなかった。我が物顔でテントの中に入り、あるベッドの前で立ち止まる。そのベッドの上ではある人物がブランケットに包まり、体育座りで小さくなっていた。
「やぁ、もえぎ。元気?」
「……うぅ。私、役立たず、です……」
そう言いながら、もえぎが顔だけブランケットから覗かせる。表情から、かなり落ち込んでいるのがうかがえた。
「落ち込むことないよ。もえぎは頑張ったよ~? ほとんどはもえぎが倒したんだし」
「でも、大事なときに、やられて……全然、力になれませんでした。……いつも、そうです。ヴァルさんの、パートナー……なのに」
「僕を所有しているだけでも大したもんだと思うけどぉ……」
「そんなこと、ないです……うぅ……」
もぞもぞと動き、また隠れてしまった。こうなってしまうとしばらくは閉じ籠ったままだろう。トリスは肩をすくめ、もえぎの中に戻っていった。

「愛し子よ、本当はもえぎ様が起きていたこと、分かっていたのではありませんか?」
「分かっていたとして、何になる?」
「愛し子は、お優しいお方ですわ」
「……好きに解釈しろ」
本部へ足を運ぶと、目的の人物を簡単に見つけることが出来た。彼に近付くと、彼も知っていたようでパッと顔を明るくした。
「えと、ヴァルツ……お兄ちゃん! だよね! ボク、ピカに言われたの。お手伝いしてって!」
おおよそこの場には似合わない、幼く無垢な少年は無邪気な笑顔でヴァルツに話しかけた。
「ピカのところの、フィフィ、だったか? 敵の弱点を探るのはいいが、それをどうするつもりだ?」
「うんっ! フィフィだよー! あのね、ボクがみんなに見せるの。ここだよーって! ボクにしか出来ないってピカが言うから、がんばる。……“レーヴ・スリュー”!」
フィフィが腕を振ると彼の周りに多くの水のスクリーンが現れた。ここ一帯の地形が表示され、点滅している丸印が敵の位置なのだろう。これを目の前の子供が行ったのだとすれば、彼もまた、スカイの優秀な一員である。
「これで、なんとなくは、わかる、かな?」
「“レーヴ・スリュー”……あらゆる情報を可視化して、使用者に伝える技。……マナフィって優秀」
「まあ……♪」
「それで、探った情報をお前に伝えるのか」
そう聞くと、フィフィを首を横に振った。少し困った顔をして、ヴァルツを見上げた。
「うりり……言われても、わかんないから、こーするの! せつぞくっ!」
接続と言ったものの、その実、フィフィと手を繋いだだけである。“レーヴ・スリュー”を使用した人と繋がることで、情報共有を行い、それをスクリーンに写し出すことが出来る。つまり、ヴァルツが見つけた弱点を一気にスクリーンへと情報としてまとめあげられるのだ。しかし、それ相応の情報量をフィフィが抱えることになる。普通なら、パンクして絡まってしまうものだが、フィフィならば出来るとピカが確信しているらしい。ヴァルツはそれに乗っかるしかないのだ。
「マリー」
「はい。愛し子よ」
短剣へと姿を変え、情報を探るために目を閉じて集中する。フィフィと手を繋いだまま、片膝をついた状態で全体の敵の弱点を拾い上げていく。
「……初期より、減ってはいる……のか」
『はい。……しかし、ほとんどが偶然によるものでしょう……あと、一分弱で全てを揃えます』
「了解」
「ほわわ~……たくさんだ~♪ えいえいっ!」
ヴァルツが弱点を探り上げ、それをフィフィが新たな情報として更新していく。全てを探り終えたのと同時にフィフィのスクリーンには膨大な情報が写し出された。敵の位置、弱点の位置が事細かに記されていた。敵の位置に関しては、時々変動しているため、動きに合わせて場所もずらしているのだろう。これはヴァルツが敵の位置と弱点を把握している間のみだろうが、それだけでも大したものである。
「えとえと。……これをー……みんなに、見せる! んー! “マーキング”!」
ぐるぐると手を回し、勢いよく拳を突き出した。水色の光が中に上ると、四方に飛び散っていく。まるで光のシャワーのように降り注いだ。
「これで、みんなにも、見えるようになったね! かいじょー!」
繋いでいた手を離すと、フィフィはニコッと笑った。対してヴァルツは、とんだ大者を隠し持っているものだと心の隅で冷や汗をかく。これを口にすることはないだろうが。
「ピカー! 出来たよー!」
どこからか取り出した通信機で連絡をする。交戦中だと返事も返ってこないのではとも思ったが、その予想を裏切ってピカの気の抜けた返事が返ってきた。
『……はぁい。さっすが、フィっくん。私の愛する息子だねぇ~♪ あとでよしよししてあげよう!』
「やったー! ピカも、がんばって!」
『はいは~い。ヴァルツさん、お疲れ様でした。あとは、適当にこっちでやっときまーす』
「……そうしてくれるとありがたいね」
『一生分の働き、したんじゃないですかね♪』
「そうかもな。……ところで、お前、随分余裕あるみたいだが、終わったなんてことはないだろう?」
『そっすね。……結構、面倒です。最悪の場合も視野に入れてますよ。今はまあ、ある種の休憩時間、ですかね?』
何らかの方法を使って、敵の自由を奪っているのだろう。ピカは攻撃技だけでなく、そういった、妨害可能な技もいくつか取得している。
ヴァルツは先程まで戦っていてたどり着いた一つの答えを言う。これは戦っていて得たものと、今まで蓄積してきた情報による一つの予想であった。
「……ふうん。俺から言えることはないが……俺の予想だと、そいつも周りの敵と大差ないように思う。そういった技を使うやつがいるんだ。“ヴァンガル”の上層部に」
『……ですよねぇ。そんな気はしてました。ってことは、明確な弱点なんてないですね。こいつ』
「一種の“ネクロマンシー”だな。周りとそれは別の人物によるものだろう。造り方が違うし、目の前のそれは、本物の人を使わなければあり得ない」
『……ふふ。人が悪いですね? スパッと言ってくださいよ。ゾンビって♪』



~あとがき~
さくっと雑魚処理は終わりました。あとは警備員さん達が適当に駆逐してくれます……!

次回、他のスカイメンバーの話でもするか。せっかくなので!! 時間軸はずれると思います。申し訳ねぇ。
なんかさらっと情報出ましたけど、次回以降で説明しますんでお待ちを。

フィフィはスカイ最年少ですが、立派な隊員です。やれば出来る子! それがフィっくんなのです。
“レーヴ・スリュー”は作中でも説明がありましたが、簡単に言えば、コンピューターみたいなやつですね。スクリーンに見立てるのは水じゃなくてもいいんです。可視化できるような媒体であれば何だっていいんです。重要なのは、使用者の持つ情報……その中でも必要なもののみを一気に写し出し、利用することが出来る点です。他人の情報を写したければ、使用者に触れて情報を思い浮かべれば直接流れ込み、目の前のスクリーンに写る仕組みです。完全サポート技ですね。後方で展開して、後ろで指示出しする的な。そんな技です。
次に“マーキング”ですが、これも似たようなものです。特定のものにマークして、見えるようにする技です。本来の使い方は敵につけて、追跡するときに使用する感じかな? 今回はそれを全員に見えるようにして、弱点を表示するために使いました。
ここまで語ればわかるかと思いますが、フィっくんは完全後方支援型の戦い方を得意としています。もちろん、攻撃も出来るけど、誰かのサポートに回ることが多いです。そんなフィフィをよろしくね!

ではでは!