satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第85話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で面白おかしく学生している物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回までが昼休みの休憩回(?)でした。今回から剣技大会─トーナメント戦編─となる……はず……うん。なる……(汗)
始めていくぞ!!
ラル「適当でうける」
アラシ「最近、物書きから離れてたからな」
へへっ……(泣)
ソシャゲの闇が……闇が……ふふっ……


《A side》
中等部二人とはその場で別れ、俺達は控え室にいた。到着した途端、そくささと部屋を出ていこうとしたラル達三人を、当然ながらツバサが引き留めたのだ。ということで、選手ではなく生徒会の三人も選手控え室で予定よりも遅くなってしまった昼飯を一緒に食べている。
まあ、食べているとは言ったが、アリアやイツキ先輩達はまだ帰ってきていないし、ミユルやシエルは俺らよりも先に食べ終わり、すれ違うように屋台を見に行ってしまった。フォースはいつの間にか消えていたし、ラルは椅子の上で体育座りしているんだけども。ティールだけが普通に昼飯を食べていた。とりあえず、今、部屋にいるのはフォースを除いた、屋台巡りしたメンバーのみというわけだ。
「なんかさぁ……めっちゃ働くやん……おかしくない? 私、学生じゃん? 青春謳歌すべきだよね」
「何言ってるの。リーダーがちゃんと働いてくれないと、したっぱのぼくらはご飯食べられなくなって死んじゃうよ~」
兄貴からの頼みも関係しているのだろうが、ステラとリーフ─主にステラだけだった気もするけど─のおねだりを受け入れてしまったせいでもあるだろう。更におかしな方向へと意識が行ってしまったらしい。目から光がなくなったラルは、隣に座るティールに文句のような愚痴のような話を永遠と繰り返していた。それを適当に受け答えをしているのはある意味、才能というか……慣れなんだろう。
「いやいや。ムーンお兄ちゃんとクラウお姉ちゃんが何とかしてくれるって……」
「隊員頼りなのやめなさい」
「……リーダー頼りもやめない?」
「隊の権限、君がほぼ握ってるよ」
「投げる! 捨てる!! もしくはあげるよ!?」
「いらなぁい」
ティールさまぁぁー!! お願い!」
「ここではただのティールだから」
「あぁ~……ここでも能力発揮してもいいよ?」
「疲れるからやだ」
「非情だー! 世界が優しくないー!!!」
「大人げないな。さっさと気持ち、切り替えなよ」
呆れたようにため息を漏らすティールに、駄々をこねる子供っぽく頬を膨らませる。
「嫌ですぅー! そんなんしたら、認めるようなものじゃないですかー! やだー!!!」
「我儘言っても、予定は変更されないし、宣言したことは取り消せないよ。諦めて、先生との……イグさんとの約束守りなさい」
「理不尽だって! あんな手を使うなんて!! イグさんなんて嫌いだ!」
「はいはい。イグさんに負かされたときだけ、そういうの言ってるね」
「そんときだけが嫌いだからだよ!!」
「押し付けはお互い様だろ」
「それを言われると何も言えないっす」
なんか、理不尽な言い訳ばかりなんだけど、大丈夫なのか?
俺の隣にいたツバサが少しだけ考えるような仕草をして、こちらを見上げる。
「ん~……生徒会室でもおんなじようなやり取り、いつもしてるよ?」
あ、そうなんだ……
俺達が聞いているなんて気にしていない二人の会話は更に続く。
「今度、討伐依頼に連れ回そうかな」
「えっ!? 報酬出るように取り付けたのにまだ何か求めるの……? 欲張りだね」
「今日はイグさんのいいように使われてるから、それくらいは許されるよ。大丈夫。リアさんの許可は取る」
「いや、そういうことじゃ」
「私とイグさんだけじゃないし。デートにすら見えない……つーか、あの人と二人で歩いたとして、彼女に見えるわけがない。女性の扱いじゃなくて、身内だもん。扱いが!」
「ん? ラルはイグさんと恋人に見られたいの?」
「リアさんに殺されるから見られたくない。見られたくはないけど、見られた方が変な虫は寄って来ないから難しいよね。……んでも、イグさん、周り見てるから、そんな人がいたら追っ払ってくれるわ。紳士だから」
「紳士?」
「睨み付けの紳士」
「それは紳士じゃない気がする」
……話が別の方向行ってないか? つか、他人の兄貴に対して言いたい放題だな。
「そういえば、ラル達ってイグさんと結構親しかったんだな。ラル達が探検隊してるのは知ってたけどさ~♪」
レオンの言葉にラルとティールの話は途切れ、こちらを振り向いた。
「あー……ツバサちゃんには言ったけど、探検隊として何年か付き合いあるからね。分かると思うけど、あっちが先輩ね」
ふぅん……たまに兄貴が話していた後輩チームってのはラル達だったのか。いやでも、兄貴って交流広いし、ラル達以外にも気にかけてそうではある。
「初めましてのときから二人は強かったし、今思い返しても、なんでよくしてもらったのかさっぱりなんだよね。……? 電話? ちょっとごめん」
ラルは制服のポケットから端末を取り出し、それの通話ボタンを押しながら部屋の外へと出ていってしまった。
「お電話? 誰からだろ?」
首を傾げるツバサに、面白そうにしているレオンがにやりと笑う。
「予想してみるか? 噂をすればなんとやらって言葉に乗っ取って、イグさんだな!」
「イグ兄なら、直接ここに来ちゃいそうだよ~? ししょーだよ!」
「にしし。……リアさんの機械音痴なめてるのか、ツバサ?」
「……はっ!!」
レオンの言葉にはっとしているが、流石に電話はできるだろ。機械音痴でもだ。
ティールは誰だと思う?」
「え? あ~……そう、だな。ぼくもレオンと同じでイグさんからかな。さっきのこともあったし、それに……」
「ただいま」
ティールが言い終わる前にラルが帰ってきた。変に気分が落ち込んでいるとか、そういう変化はなく、いつものラルに見える。
「お、帰ってきた~! ラル! 電話、誰からだったんだ?」
「え? イグさん。リアさんがヒナギクの様子を見に病院行ったから、代わりに救護室で救護班の生徒まとめろって……なんで私だよ!?」
それに関しては、生徒会長だからだな。
「まあ、結局は途中抜けしないとだから、その時間にリアさんがいなかったらリリちゃんに任せるけど」
「! ってことは、午後もラルさんと一緒にいられるんですか?」
ラルが大好きなツバサが目をキラキラさせながら質問をする。その声も嬉しそうに弾ませていた。
「まあ、そうなるかな。……そろそろ時間か。ティール」
「了解。ぼくも仕事に戻るよ。仕事の引き継ぎを済ませてからラルの仕事を引き受けるってことで」
「頼んだ。フォース君の仕事もどうにかしないとな……はあ。ご指名がティールだったら、フォース君に全部やらせたんだけど」
「いやいや! それはフォースがパンクするだろ」
「分かってないな、アラシ君。フォース君はやろうと思えば一人でなんでもできるんだよ。でも、しない。理由は面倒だから」
例えそうだとしても、流石に全部を押し付けるのはどうかと思うって話なんだが……まあ、ラルの言う通り、フォースなら涼しい顔でそつなくやれそうだけど。
「あ! ラルさん、私も一緒に行きます!」
なんてことを考えていると、席を立ったティールとラルはひらりと手を振りながら、控え室を後にした。その後ろをツバサも追いかけて出ていく。

ラル達が出ていった後、控え室にも選手全員が揃った頃。ずっと流れていたBGMが切り替わり、放送が流れ始める。
『Hello,every one! 紳士淑女の皆様、しっかりと体は休められたかな? そろそろ昼休憩も終わりだぜ!』
丁寧な言葉を織り混ぜてはいるが、テンション高いせいで丁寧さは全く感じない。放送部の部長のリュウ先輩の言葉は続く。
『そろそろ大会後半を始めていきたいんだが……おいおい、相棒~? 呑気にジュース飲んでいる場合じゃないぜぇ? 次、相棒の番だぞ』
リュウ先輩の声であまり聞こえなかったが、小さくストローで飲み物を飲む音が聞こえた気がした。先輩に呼び掛けられ、ガタガタッと慌ただしい音が聞こえ、キャスの焦った声が聞こえる。
『ば、番って……まだ放送の時間じゃないですよ!? 早すぎますって!』
『あり? そうだっけ? まあ、もうBGMも流れてるし、お客さんも席ついてるし、裏の準備は万端って連絡あったし、いいだろ! 後半戦の説明するぞ!』
な、なんて勝手な。いやまあ、もうすぐで所定の時間になるし、問題はないとは思うが。どうせ、説明していれば、時間にはなるだろう。
勝手に開始時刻を少しだけ早めたリュウ先輩は軽快なテンポで説明を始めていく。
『前半終了にも言ったが、確認のためもう一度言っておくぞ! 後半戦の初戦は今から行われるシャッフルによって決められ、その後の展開はトーナメント戦! つまりは勝ち上がりって訳だ! 負ければそこで試合終了! 王道なやつだな!!』
最初の組み合わせだけ、ランダムに決められて、後はトーナメント形式って訳だ。残り八人だから、一対一のトーナメント式でも問題ないのだろう。
『更に! トーナメントの決勝にはスペシャルなゲストが登場してくれる予定だ!』
『そ、そのゲストが誰なのかは、決勝戦開始前にお知らせしますです!』
『ちょぉっとだけヒントを言っちゃうと、数年前から急成長を続けていると噂の有名探検隊メンバーだそうだ♪』
『せ、先輩……楽しそうですね?』
『まあな! ゲストがどんなバトルをしてくれるのか楽しみだからな~♪』
放送部の二人なら、ゲストに変更があったと知っていてもおかしくはない。そして、リュウ先輩は三年生。ラルやフォースを知っていても変ではないし、生徒会と部活の繋がりもある。現状、一番楽しんでいる立場なのかもしれない。
『んじゃあ、トーナメントの対戦相手を発表していくぜ! モニターに注目!』
控え室に備え付けられているモニターに映し出されたのは、トーナメント表。樹形図のような見慣れたなんの変哲もない表だった。図の一番下には俺達の名前が書かれたカードのような物がある。
『選手の名前が書かれたカードがシャッフルされ、組み換えが決定する! どんな組み合わせになるかは神のみぞ知るってことだ。……ではでは、シャッフルスタート!』
リュウ先輩の合図と共にカードが裏返しにされ、シャッフルされていく。自分の名前がどこにいったのか分からなくなるくらいぐしゃぐしゃにされ、ドラムロールと共に妙な緊張感が漂う。
俺が思うのはただ一つ。
……アリアとは極力当たらないところにいけますように!! 願わくば、決勝まで上がらないと当たらないレベルの!
これだけである。この一つに尽きるのだ。
焦れったいくらいにシャッフルされたカード達は、けたたましいシンバルの音と同時に一瞬にして表に収まる。これで、一回戦の相手が分かるようになった。しかし、カードは裏のままで名前は分からない状態だ。
『一回戦の組み合わせが決定!! 一回戦、第一試合は……アラシ・フェルドVSイツキ・カグラ!』
リュウ先輩の発表と同時に左端の二枚がオープンされる。その言葉通りに俺とイツキ先輩の名前がある。
「お、相手はアラシか。よろしく~♪」
いつも通りの笑顔でひらひらと手を振ってくる先輩。それに俺は軽く会釈を返し、再びモニターへと目線を戻した。
……とりあえず、アリアじゃなくて、よかった。……うん。
『つっ……続けて、第二試合! レオン・エクレールVSアリア・ディーネ……ですっ!』
「んなあぁぁぁぁ!!??」
「ご飯……♪」
あー……ご愁傷様、レオン。
選手控え室では人目も憚らず、レオンの絶叫が響き渡る。半分は知った仲とはいえ、少しは気にしてほしいものである。
『どんどん行くぜ! 第三試合! ミユル・ノフェカVSユーリ・ケイン!』
「あらあら」
「……マジか」
二年生対決ってことか。んでも、ユーリ先輩、滅茶苦茶嫌な顔してるけど、何か理由でもあるんだろうか?
『い、一回しぇ……一回戦! 最後の第四試合!! シエル・シルフVSセジュ・クルール!』
お、思いきり噛んでたけど、大丈夫か?
とはいえ、これで一回戦の組み合わせが決定。その後の試合はトーナメントで組み合わせが決定され……あれ。そうなると、俺……勝ち上がったら、アリアと対戦するはめになるんじゃあ……?
「嘘だろぉぉぉ!!?? なんで!!」
「あ~……っと、ドンマイ、レオン」
発狂中のレオンにシエルが声をかける。この慰めもあまり意味はない。決まったもんは仕方がないというやつだ。
『よぉし! 対戦相手も決まったことだし、予定通り! 一回戦第一試合を時刻通りに開始する! 該当選手二名はフィールド上まで来てくれよな! 第一試合開始前に詳しいルール説明も行うぞ』
初っ端からアリアに当たらなくてよかったけれど、これは……どうするかな。



~あとがき~
アラシ君、レオン君が勝つと言う可能性を微塵も考えてません。そういうことだよ。

次回、一回戦開幕だー!!
バトルまで進めるかは分からないです! 入れたらいいなって感じ。

本当なら、トーナメント組み合わせ発表からのアラシVSイツキ戦をやろうかなと思ってたんですけど、どうにも……こう、好き勝手喋らせたくて、前半茶番多めにしました。つっても、ラルとティールの適当な会話ですが。
この二人だけのどうでもいい会話が久しぶりな気がして楽しかったですねー! アラシ君達も聞いているのは二人とも百も承知だと思います。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第84話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でふわふわーっと過ごしている物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、怪我でゲストを辞退してしまったヒナギクの代わりにラルとフォースがイグさんご指名にて務めることになりました。本人達にやる気は存在するのか……(笑)
今回で昼休憩は終わるんじゃないかな。多分ね!
久しぶりにアラシ君視点です。理由? ラルのお休み回だよ!!


《A side》
本人達の意思とは裏腹に、この後行われるトーナメント戦に参加することになったらしい、ラルとフォース。二人のテンションについては……まあ、予想通りだ。かっこよく宣言していたラルも通常モードになってしまったらしく、控え室に戻る道すがら、大きなため息を何度も漏らしていた。
「あの暴君兄ちゃんめ……覚えてろよ。今日に限って、これでもかって利用してるし……便利屋じゃないんですけどぉ?」
なんて、実の弟のいる前で言ってしまう始末。しかし、兄貴の性格は俺が嫌ってくらいに知っている。そのため、ラルに対して同情の思いしか出てこない。頑張れとしか言えないが、実際に頑張れなんて言ったら、ラルが逆上しかねないので黙っていよう。
もう一人のピンチヒッターであるフォースは、いつも通りに見えるが、本心ではどう思っているのだろうか。
「んお? あ、あれは……」
レオンの素っ頓狂な声と同時に勢いよく突っ込んでくる人影。その人影は一直線にフォースへと突進するつもりのようだ。フォースも人影は見えていたんだろうが、避けはせず、突っ込んできた人物を受け止める。
「いって……何?」
「なぁんで冷静なのー!! すーくんの馬鹿っ!」
「え……理不尽」
「あ、ステラちゃんだ!! どうしたの? フォースさんに突進して」
タックルしてきたのは、ツバサの最近の友達の一人であるステラだ。そんなステラに遅れること数十秒。こちらもツバサの友達、リーフだ。
「いきなり走らないでよ~! しかも、フォースにタックルしちゃって」
「大丈夫だよ。ほぼ無反応だったもん」
「いや、そういうことじゃ……まあ、いいや。皆さん、こんにちは。驚かせてごめんなさい」
俺達に軽く会釈をし、ツバサの方へと駆け寄り、軽く抱き合った。
「遅くなっちゃったけど、氷の解体ショー、すっごくきれいだったよ! あと、氷のお花もありがとね~!」
「えへへ……ありがと、リーフちゃん!」
微笑ましい光景の一方で、ステラはフォースにタックルをし続けるという荒々しい光景も展開されていた。それを見ていたレオンが嫌らしい表情を浮かべる。簡単に言えば、「面白いおもちゃ見っけ!」である。ついでにラルも似たような感じの笑みを見せていた。この二人、こういうときの性格の一致があるのが恐ろしい。特にラル。レオン以上に言葉巧みに攻めてくるからな。
「二人とも、フォースを探していたの?」
「あ、そうだった! ステラ! タックルはもういいから!」
ティールの一言にリーフはツバサから離れ、ステラとフォースの仲裁に入る。なんて、フォースは反撃もしていないから、ステラの一方的は攻撃だったのだが。リーフの言葉に渋々、フォースへの攻撃を止める。
「何。放置してた件で怒ってたの? 別に、トラブルの対処に行ってただけで、お前のことは忘れてないよ」
「合流できなかったことは怒ってない」
「は? 怒ってもないのに、おれはお前からの攻撃を受けてたのか」
「すーくんだからね」
「理由になってない辺りがこわ~い」
「あーもう! 話が進まない! すーくんは黙ってて!」
「理不尽のオンパレードすぎる」
俺もそう思ったが、ステラはフォース相手だと遠慮がなくなる性格なのは、なんとなく察していた。多分、最終的な決定権はフォースにないんだろうな。
「さっき、リーちゃんも言ったんですけど、ツバサちゃんから氷のお花もらったんです」
ステラがポシェットから取り出したのは手のひらサイズに精巧に作られた氷の花だ。陽の光を浴びて、きらきらと輝いている。元々はアリアが適当に魔力爆発をさせてできた巨大氷だったのに、こんなガラス細工のようなものができるんだから、世の中、ものは使いようだ。
「せっかくきれいなのに、溶けちゃうのがもったいなくて……すーくんなら、どうにかできるよね? 永久保存できるような入れ物! 創れるでしょ?」
「あ? 創る? 無理に決まってるだろ」
「なぁんでぇ?」
「面倒くさいってのが一番だけど、それ以前におれの目が届かん」
「……はぇ?」
不満げなステラに対し、呆れた様子のフォース。ステラと目線の高さを合わせ、一つ一つ確認するように話していく。
「というか……一時的な保存なら未だしも、長期間をお望みだろ、お前」
「うん」
「はぁん? ってことは、お前らが死ぬまでおれはすぅに付き従えと。あり得ないんですけど。そもそも、おれの力をなんだと思っておいでですか、お嬢様。便利機能じゃないの。お分かり?」
「お分かりじゃない」
「分かれよ。創造するにもある程度の消費は伴うし、制限もあるってことだよ。……大体、おれがこうやって実体化している時点で、それなり食ってるからね!?」
「じゃあ、すーくんが昔みたいにいなくなれば解決?」
「馬鹿か。未解決だよ」
……予測でしかないが、フォースとステラの能力の話、だろうか。その辺の話を詳しく知らないから、何も分からないのだが。それは、レオンもツバサも同じらしく、不思議そうに二人を見ていた。しかし、自然と何か知っているだろうラルとティールへと視線が動く。ティールはティールで、俺達から逃れるように、ラルを見つめている。説明は任せた、みたいな。
「……え、私? あ~……っと、あの二人の関係性を詳しく話すのは面倒だから、フォース君の能力だと思って聞いて?」
俺らの視線に気がついたラルが少しだけ困ったように笑う。
「フォース君はね、力を操る能力があって……自分の持つ力……ここではエネルギーって言うけど、それをある形に変化させるの。エネルギーの具現化って言えば分かるかな。例えば、今から百の武器出してって言われれば、フォース君はそれを実行できる。言ってしまえば、魔法や技と似てるかもね」
なるほど……?
魔法や技の元は魔素だ。……魔法は魔力だけど、基本、目には見えない力を別のものへと変換して攻撃、防御、補助の手段として用いる。フォースの持つ能力はそれに似た別の何かってことなんだろう。
「例外を除いて、能力の及ぶ対象は無機物限定。さっき言った武器とかがそう。あとは、関係ないところで言えば、服とかもいけるみたいだよ。でも、自分よりはるかに大きなもの……建物とか、そういうものは創れないみたいだけど」
便利なのかどうなのか分かりにくいけど……まあ、自分の思い描いた物が作れるのは融通が利いて、何かと活躍の場はありそうだ。
それを用いて、ツバサの作った花を取っておきたいって話になるのか。確かに、中に入れたものが劣化しない入れ物を……なんて考えて作れば、それが作れるんだろう。
「ほあぁ……フォースさん、すごいですー! なんでもできちゃいますね!」
純粋に感心したらしいツバサにフォースは首を振る。
「いや、なんでもは無理。有機物は創れんし、一生なんてのも無理。仮に創ったとして、それを保つにも一定の力は使い続けなきゃならん。おれが身に付けるなら未だしも、家に置きっぱだと考えると毎日がハードモードだよ……それを思い描きながら過ごせってことだろ? できる?」
……とてもじゃないが無理だな。
人は生活している限り、刺激ってもんがある。それは楽しいっていう感情だったり、突然訪れた出来事だったり……色々あると思う。それに気をとられず、頭の中で自分の創ったものを浮かべ続けるなんて、目の前のものが注意力散漫になってしまう。
「つーことで、諦めろ。大体な、そういうもんは有限だから綺麗だなーって思えるんだよ」
「むー……すーくんの意地悪!」
今の説明を聞いても、諦めきれないのかステラはかなりむくれている。こうして見ると、ステラは大分子供っぽいところもあるものだ。……フォース相手限定かもしれないが。
「意地悪つってもなぁ……そんなに言うなら、そこのオネーサンに頼めば? なんか考えでもあんじゃない?」
そこのオネーサン……って。
フォースの言葉に再び、ラルに視線が集まる。
「は、はあ!? 考えって……そ、そうだなぁ。……要するに、それを保つためのケースがあればいいんだよね? 冷蔵庫的な。そんな感じのを組み込んだ何かを作れば……いいんじゃあ」
「ラルさん、できますか!?」
はえ!? あ、そーね……ソーダナー……デキナクハ、ナイ、ト……オモウ、デス、マスネ」
かなり言葉がおかしくなってきているが、それは多分、本人なりに嫌な予感を察知しているからだろう。面倒に巻き込まれそうな予感がしているのに、逃げられないのも察知している。そんな感じだ。さっきの兄貴みたいな展開だな。
「た、例えば……魔力石を使ったケース、とか、かな? 魔力石を動かすには魔素が必要だけれど、それは空気中に漂っているわけで、枯渇は余程のことがない限り、あり得ない」
温度調節やらを魔法……じゃなくて、術に頼る?
「そ。まあ、それ用の魔法式みたいなのは必要だし、全く科学に頼らないなんてのも無理だけど、組み合わせればいけると思うよ。魔法でも代替可能だろうけど、何十年も効力のある魔法とか、どんだけ高度なんだって話よ。運用は無理」
大魔術師……それこそ、ツバサみたいな魔法の申し子ならわけなさそうだが、そんな人達がほいほい存在してたまるか。
「いくつも課題はあるけれど、理論上は実現可能。って……それを作る時間は私にはないからね!!」
慌てて否定するラルに、ティールは首を傾げる。
「あれ。この前、作ってなかった?」
「!? 黙れ、相棒!」
「ラールーさぁん??」
「あの、あれです! 見せられるものじゃないんですー!! やー! 来ないで! お助けー!」
ステラとリーフに詰め寄られ、たじたじである。ティールの奴は多分、確信犯だ。だって、めっちゃ笑顔だし。
あんな風に見ていると、ラルは何かと押しに弱いみたいだ。ツバサに何かせがまれたときも、さっきの兄貴の件も結局、ラルが折れていたような。
「先生のときと今の状況は違うけれどね。ラルは優しいから」
……?
ティールの言葉の真意はよく分からなかったが、ステラ達がんがんに詰め寄られ、ラルが折れるのも時間の問題であるのは明白だった。
「分かった!! じゃあ、協力してもらう! 私に魔法関連任せたら何年もかかるから手伝えよ!!」
ビシッと指差した方向にいたのは、ある意味当たり前だがフォースだった。フォースは爽やかな笑顔で一言。
「ははっ♪ 式の組み替えすればいいの? 明日には連絡入れてやるよ」
「こういうときだけ……!」
きっと、ラル的には時間稼ぎというか、取りかかるための期間を延ばしたかったのだろう。しかし、それを逆手に取られ、逆に仕事しろと言い渡された構図になってしまった。
フォースはフォースでそれを分かっていて、明日までに終わらせると言ったんだろう。これに関しては、フォースの方が上手だったらしい。



~あとがき~
ぶつ切り感凄いけど、長くなったので仕方なし……(ネタ切れとも言う)

次回、トーナメント戦開幕!!
いっくぞー!

ラルの発明はここでも健在。もの作りが好きだって話は別のところで言った気がします。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第83話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でふわふわーっと過ごしている物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、思いがけないご指名に、スカイの三人は呆然……というか、驚愕してました。
今回はその理由と結果をね。話していこうかなと。
大会終わったら、ラル視点以外も書きたい。この剣技大会編、ラル視点多くすぎやで……まあ、アラシ君が出てきてくれない or ラルの方が進めやすいってのが一因ですが。


《L side》
な、何言ってんだ、この人!!!
驚きすぎて、叫んだ以上の言葉が出てこない私達を他所に、イグさんは続ける。
「実は、来賓の人達にお前らんこと結構、聞かれちゃって。ほら、去年、一昨年は誰かしら出てただろ? 特にティールは最終まで残るからさ、目立ってたんだよな」
確かに、今年は誰一人として参加していない。それぞれ不参加の理由はあるが、まさかそれがここに響いてくるとは。なんなんだよ、来賓の方々。やめろ、そういう話を学園関係者にするの!
「や、だからって……ヒナギクの代わりて。私達、ここの生徒なんですけど」
「その前になんでおれなんだよ! ティールだろ、そこは。ラルとティールのコンビなんだから! あと、会長と副会長だし!?」
「フォース!? やめて! 巻き込まないで!?」
「待て待て! 私確定させるのやめてくれない!? ティールとフォース君がやれ!」
「「お断り!」」
完全に嫌な役目を押し付け合うという醜い争いが起きてしまっているが、なぜか来賓の方々から噂され、且つ、探検隊しているというだけで、ご指名されるのも変な話だ。
「あはは♪ まあ、予想通りの反応だな!」
「兄貴。……ちゃんと説明してやれよ。多分、話が進まないんじゃないか?」
「ん? まあ、そうだな。つっても、お偉いさん達から話が出てるってので完結してるけどな~? 三人とも俺の持ち場、知ってるだろ?」
その問いに私達は小さく頷く。
イグさんの持ち場は会場……現場監督だ。
「そこで、まあ、偉い人達から『噂の探検隊は出ていないのか』って質問が多数あったわけよ」
「噂の、探検隊……?」
「惚けるなって~♪ お前率いる『スカイ』だよ。いやぁ♪ 有名になって兄ちゃん、嬉しいぞ~♪」
惚けてないよ。そんなんわざとだよ。ちくしょう……
「話を聞くと、お前らの戦いぶりを楽しみにしている人が案外多くてさ。俺が参加予定はないって説明したときも残念そうにしてて。……そこに、ヒナギクの怪我によるゲスト辞退騒ぎだろ? これはもうお前らの出番って訳よ♪ サプライズ的な」
そんなんで予定外な戦闘なんてしたくないんですけど!! サプライズってなんだ! こっちがサプライズされた気分だよ!?
「あー……お偉いさんらが『スカイ』をご所望なのは理解した。なんでそこまで人気あるのか知らんけども」
「えーっと……ぼく達的には理解なんてしたくなかったけどね?」
「で、なんでおれなのかさっぱりなんだけど。その説明で行くと、適切なのはラルとティールだろ?」
「あ、それはイケメン補正? フォース、淑女様方……奥様方に人気あるんだよな。このイケメンはいますかって聞かれたし。何かしたんじゃね?」
「は? いや、おれ、今日は会場外の連絡本部にずっと……い、や、待って……あ、あぁ……あれ、かなぁ……えぇ? 嘘だろ……マジか」
イグさんの言葉を聞き、頭を抱えてその場にうずくまるフォース君。理由が個人的すぎるというか、特定層に向けたものすぎて、何とも言えないところが、更に微妙なところである。
しかし、なんか心当たりがあるんだな。こいつ。
「ってことで、噂の探検隊のリーダーであるラルとイケメンで人気のあるフォースが適任じゃね? ってことよ。出番のないティールには悪いけどな~」
「いえ! ぜんっぜん!! むしろ、二人抜けるならぼくが生徒会の仕事をカバーしないといけないので! いいです!」
ぶんぶん首を横に振って全否定のティール。
逃げやがって……!
ここで頷いてしまうのは簡単だ。しかし、どうしても嫌なので、冷静に返してみようか。
「……えーっとイグさん。確かに私達、生徒会は大会成功を第一に考えています。裏からバックアップしていますし、それを中止に終わらせたくはない。これを楽しみにしているお客様も生徒も、来賓の方々がいるのを理解しているつもりですけど、『スカイ』を参加させるなんて、いささか強引すぎるのでは? 私達は『スカイ』だけど、生徒でもあります。参加したければ、事前に意思表明してますし、それ故、反感を買いかねません。我々の探検隊も生徒会も、信頼を落としかねない」
「まあ、言いたいことは分かる」
「別の手を考えましょう?……例えば、いっそ、イグさんが参加すればいいと思いますよ。ほら、知名度も人柄も実力も申し分ないです」
「俺はそれでもいいけど……教師と生徒って立場上、目新しさはないぞ? どうしても授業っぽさが抜けないと思う。あと、俺、一人しかいない」
ぐっ……確かに。
このあとのゲストの役割を考えると、一人では無理だ。もう一人は必要になる……元コンビのリアさんがここにいるけれど、彼女はとある事情で戦えない。そんな状態のリアさんを戦闘の場にイグさんが出すはずもない。
「ラル」
「はい?」
「ゲスト参加自体は取り消せない。そうだな?」
「……はい」
笑顔で冷静なイグさんは怖い。怒りを感じるからではない。何かを企んでいる……もとい、確信めいた自信があるから冷静な対処をしてくるのだ。
「生徒会のお前に依頼するんじゃなくて、スカイのリーダーに依頼する。……生徒ではなく、一人の大人として。俺の後輩としてお願いする。……それじゃあ駄目か?」
「ぐ……そ、んなのは、屁理屈です」
「じゃあ、仕方がない。もっと別の言い方してやる。なあ、ラル~?」
あ!? これ、逃げるべきだ!
頭で理解していても、反応速度はイグさんの方が上手である。逃げようと後ろを振り向くものの、イグさんの手で簡単に捕まってしまう。彼の腕が私の肩に組まれ、がっしり捕まる。ちらりとギャラリーを見ると、アラシ君やティールは諦めろみたいな顔してるし、レオン君は面白そうににやにやしている。そして、イグさんをあまり知らないユーリ君とリリちゃん、現状を理解しているのか怪しいツバサちゃんとキーくんは不思議そうにしていた。フォース君はすでに諦めているし、リアさんにいたっては、笑ってこれを見ている。要は、誰も助けてくれないのだ。世界は無情である。酷い。
「俺はラルを妹のように思ってるんだよ? 出会ってから結構経つもんな~」
「そ、そうですね……イグさんには、大変可愛がってもらっていると感じてますよ。その節はありがとうございます……」
「いえいえ~♪ 俺もお前らの成長を楽しみにしてるし、いいってことよ! で、そんなかぁわいい妹ちゃんは俺の……俺達の頼みをお断りしたことありましたっけ? なぁ、リア~? どうだった?」
う、そ……だろ!? リアさん巻き込むの!?
「そぉねぇ~……なかったと思うわよ、イグ?」
リアさんは、日頃の恨みと言わんばかりに楽しそうに参加してきた。空いていた右側にぴったりと寄り添ってきた。イグさんとリアさんに板挟みされた状態である。
「だって、ラルちゃん、とっても優しいもの♪ 皆のこと、大切に思ってくれる、優しい子。私達の自慢の妹ね」
「だよなぁ? それに、ゲストが決まらなきゃ大会は失敗したと言っても過言ではない。そうなったら、来年以降の開催も危ういかも。……そんな事態は避けたいだろ。後輩達の将来がかかってるかもしんないぞ?」
う、ぐ……うみゅぅぅっ!!
「卑怯ものー!!! こういうの、弱いの知っててやってるんだもん! 酷いですよ、イグさんもリアさんもー!!」
「えー? 俺達は事実を述べてるだけだぞ~♪ ほれほれー? どーするー?」
イグさんがにやにやと笑いながら私の頬をつつく。リアさんも同じようにつんつんとつついてくる。
結託しやがって、このバカップル!
しかし、イグさんの言う通りだ。今ある手札で考えれば、私達が出てしまうのが一番手っ取り早く、大会を成功させる確実な方法だ。イグさんから太鼓判を押されてしまった以上、「私達では実力不足です」なんて言い訳にすらならない。
私達以外の代わりなんて見つかる保証もない。ここは私が折れるしかない、のだろう。分かっている。それが正しい選択であり、そうするしかないのも、理解はしていたのだ。しかし、嫌なものは嫌だし、嫌いなものは嫌いなのだ。……それでも、大人になるしかないのだと理解しなければ。
ふっと短く息を吐く。そこで、私の中にあるスイッチを切り替えた。
「確認ですが……それは、学園の生徒会長の私ではなく、一部隊を率いるリーダーの私に話しているんですよね。そう捉えても?」
「……いいぜ」
その一言でイグさん達から解放され、私はティールの隣に立つ。相棒に目配せをすると、彼は小さく頷いた。
「では、私とフォースの参加を受け入れるに当たって、無償で協力はできません。生徒としてではないのなら、これはビジネス。貴重な人材を貸し出すのですから、それ相応の報酬を要求します」
「強かだなぁ……けど、それくらいをしてもいいくらいの力をお前らは持ってる。その条件を呑むよ」
「ふふ♪ ただでは転ばないってところがラルちゃんらしいわね~♪」
イグさんの横でくすっと笑うリアさん。昔から、私の性格を知っているから、ある意味、こうなることは予測済みだったかもしれない。
「当然です。私はチームのリーダー。メンバーを指揮するのが私の役目であり、彼らを守るのも同義」
「……リーダーがそう決めたのなら、ついていくのがぼくらの役目で、リーダーを支えるのはぼくの役目。……ね、フォース?」
「へいへい……わーってますよ。逃げも隠れもしないから、安心しろ」
フォース君が立ち上がり、私の横に並ぶ。フォース君と視線を交差させ、互いの意思を通わせる。私に心を読む能力はないけれど、ある程度なら分かる。
「探検隊『スカイ』から私とフォースが、探検隊『ヒナギク』の代わりを請け負いましょう。若輩者ではありますが、精一杯務めます。そのように対応の程はそちらにお任せします」
「おう♪ 任せろ。仕事モードのラルなら、受け入れてくれるって信じてたけどな♪」
……なんだろう。はめられた感が。
「! ラルさんとフォースさんの戦っている姿が見られるんですか!?」
私達の後ろで経緯を見ていたツバサちゃんが好奇心と期待を含ませた、キラキラおめめで見つめてくる。それぞれ、どんな気持ちでこれを見ていたのかは、考えたくもないのでそっと目線を外した。
「探検隊ってことなら、制服はアウトだよな」
「あっ! そっか。着替えか……着替えるのか。取りに戻るにも時間ないな。誰かに持ってこさせるにしても、誰がいたっけなぁ」
しーくんはギルドに預けてきたし、ともは遊びに行くとかなんとか言っていて、家にはいない。成人二人は……どうだったか。ムーンはここ最近全く連絡ないし、クラウは……どうだろう。
「望みがあるのはクラウかぁ……ちょっと連絡してみようかな」
最悪、トーナメント中にでも帰ってしまおう。それでも、出番までには戻ってこられるだろう。
服の問題は後回しにするとして、残り少なくなってしまった昼休憩でご飯を食べなくては。
「……戻るか。とりあえず」
上に現状報告をするらしいイグさん達、ギリギリまで戻るつもりのないユーリ君達とここで別れ、私達はアラシ君達の控え室へと向かうのだった。



~あとがき~
真面目モードのラルちゃん、お久しぶり(?)な感じがしますね。なんででしょう(笑)

次回、忘れられてそうな彼女らを出します。
昼はまだ終わらねぇぜー!!

イグさんにたじたじなラルを書くのは楽しかったです。今後もあるかは分かりませんが、あればまた書きましょうね。
先輩後輩って立場もあるし、教師と生徒って立場もあるし、恩人でもあるので、本当に立場が悪い。ですが、全く勝てないわけでもないとは思ってます。いや、本当にどうでもいい話では、イグさんらが折れることが多いと思いますね。「しっかたないなぁ(笑)」みたいなね。
でもまあ、ここぞっていうところはイグさん達は強いね~! 正論を並べてるってのもありますし、ラルの性格もありますけれどね。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第82話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の日常を描いた話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
トーナメント戦で、ゲストとして呼ばれていたというヒナギクの二人を襲ったらしいタイガ。その人をどうにかしまっしょいってところでしたね。
イグさんがどうにかしてくれますよ。(他人事)


《L side》
しかし、これでユーリ君の言っていた問題とやらも理解した。彼も参加者とは言え、生徒会の一人であり、大会準備中には資料作りをしていたのだ。そこでゲストのヒナギクを知ったのだろう。あるいは、近くにいたリアさんから説明を受けたかもしれない。どちらにせよ、ゲストの二人が怪我してしまった事実は変わらない。この状況を問題と言わず、何と言えばよいのだろうか。
「……こんなん呼ばれても、どうしようもないやつですやん。面倒臭い!」
今は、イグさんが相手しているタイガをどうにかするのが先決だ。ゲストをどうするとかそれは後回しにする。それが普通である。しかし、すぐに考えなくてはいけない問題だ。
あーもう! どうする!? 私一個人でどうにかできるか?……できるわけないだろ!
私の焦りが伝わったのかは知らないが、ヒナギクの片割れ、ピースさんがしゅんとした様子でリアさんを見ていた。
「すんません、姐さん。……その、おれらが不甲斐ないばかりにこんなことに」
「それは気にしなくても大丈夫。……それよりも、周りに被害がいかないようにって思ったのかもしれないけれど、少しは自分の身も守りなさい。ちゃんと受け身を取らないから、二人とも、骨折しちゃってるじゃない」
救護班担当者達による適切な処置で、ある程度の痛み緩和され、手当ても済んだようだ。包帯や骨折した箇所に当てられた添え木なんかが痛々しい。
しゅんとするピースさん同様、スペラさんも同じように小さくなっていた。
「面目ないっす……」
ヒナギクはリアさんとイグさんを慕っているようで、そんな二人の期待を裏切った形になってしまい、申し訳なく思っているのだろう。今回の話も、イグさんから持ちかけられたようだし、尚更だ。
「あ、あの……リアさん? もう一ついいっすか? 喧嘩になったのは分かるんすけど、なんでこう……見世物っていうかお祭り騒ぎに?」
アラシ君の言う通りだ。目の前で喧嘩、暴力沙汰が起きていているのに、パニックになっていない。その理由はリアさんの張った結界があるから。そして、その中にいるイグさんは相手に手加減している状況。……それだけを見てみれば、なんとなく想像できていた。
「あぁ、それはね。イグの機転なの♪ これが公になれば、最悪、大会中止もあり得るわ。そうならないようにって、喧嘩風のバトル勝負に見えるようにしたのよ」
「なるほど? だから、わざとらしく立ち回ってんのね。ま、その体でいくと、さっさと終わらせちまえば、客も興醒めだろう。間違ってはねぇけど……なんつーか、別問題がな」
フォース君の言いたいことも分かる。別の意味で大会に支障が出ていると言いたいんだろう。しかし、それに関しては、結果論だ。もしかしたら、軽傷だったかもしれないのだから、イグさんのバトル勝負に見せかけるという判断は、今できる最善策だと思う。
「タイミングを見計らって取り押さえるみたいだから、イグに任せてもらえる? ラルちゃん」
「それは分かってます。実力で言えば、あの人よりもイグさんが数十倍も上。私達の助太刀なんて必要ないですよ」
「さっすが、アニキと姐さん。一言も会話を交わしてないのに、そこまで通じてるんすから」
「愛っすね! 愛のなせる技っす! 姐さん!」
スペラさん、ピースさんの予想外の言葉に、リアさんは顔を赤くする。学園内だけでなく、外部にもその熱々っぷりをお見せしているようで。
「あ、イグさん、怒ってる」
思わず、「イグさん」呼びになっているティールの呟きに、私はイグさん達へと視線を戻す。
先程から、相手の罵倒にもニコニコと対応していたイグさんだったが、タイガの攻撃をひらりと避けた後、大剣を器用に使って彼を転ばせた。そして、素早く相手の腕を掴み、拘束しているところだった。その一瞬、ちらりと怒りの色が見えた。
「ははっ♪ いっくら俺が寛大だって言っても限度ってものがあるわけよ~♪ 分かる?」
「くっそ……! 離せ!」
まだ優しく語りかけているイグさんの話に聞く耳を持たないタイガ。どうにかして、イグさんの拘束から逃げ出そうと、無様にももがいている。しかし、誰がどう見ても、イグさんの勝ちだ。
全く。イグさんが丁寧に相手してくれていたときにタイガは降参すべきだったのだ。それが賢い選択だったのに、なぜそれに気付かないのだろう。
無駄に抵抗を続ける男を見下ろすイグさん。大きなため息と共に、低く怒りのこもった声が響く。
「……いい加減にしろよ。お前。手加減してやってるのが分からねぇのか? あ? こちとら、お前さんの腕の一つや二つ、貰ったっていいんだ。それだけの被害を出してくれてるからな。……なぁ、タイガ?」
そこで一旦言葉を区切ると、そっとタイガの耳元に顔を近づける。
「────、────」
「ひっ……!?」
私にはイグさんが小声すぎて、何を言っていたか分からない。唇を読もうにも遠すぎて見えないのだ。だから、それをしっかり聞き届けたのはタイガ本人だけだろう。どんな内容だったのか、言った当人か、聞かされた彼に聞くしかないのだが、タイガの反応を見れば、おおよそは推測できる。できるが、私の今後の精神を守るためにもする必要はないので、予想立てはやめておこう。
「ふへー……ひっさしぶりにイグさんのキレるところを見るかと思った~」
「一歩手前だな、あれ。怒ってはいる」
幼い頃からイグさんと触れ合ってきたレオン君と、実の弟であるアラシ君は、若干顔を引きつらせつつも、どこか安堵している様子だ。マジ切れイグさんを見なくてすんだからだろうか。
「……お? ラル達いるじゃん! 丁度よかった。こいつ、警察につき出すから連絡頼めるか? あと、フォース、大丈夫だとは思うんだけど、一応、拘束よろしく~♪」
タイガに向けていたお怒りモードはどこへやら。私達に話しかけてきたときには、いつもの笑顔を浮かべた、イグさんだった。その豹変ぶりに寒気を感じつつも、ある意味日常であると言い聞かせ、ぴっと敬礼ポーズ。
「仰せのままに~!」
「うぃーす」
イグさんの言う通り、警察……あと、応急手当がしてあるとはいえ、怪我をしてしまったヒナギクのために病院にも連絡をティールに任せる。
私は集まってしまった人達に向かって、これを締める必要があった。
これは、あくまでも喧嘩っぽいバトル。こちらで企画したエンターテイメントだった。……よし。
集まってしまった野次馬に向き合う。興奮冷めやらぬ人達に向けて、語りかけた。
「お集まりの皆様、驚かせてしまったかもしれませんが、お楽しみいただけましたでしょうか? 現役探検隊、冒険家による、バトルを間近でご覧いただけたようで何よりです♪ すこぉし熱が入ってしまいましたが、ご心配なく! 問題ありません」
できる限りの声量でなるべく、全員に聞こえるように話していった。そして、大袈裟な動きを取り入れながら、人々の視線を集めていく。
「午後から執り行われる、学園の生徒達のトーナメント戦も負けず劣らず、白熱したバトルを皆様にご覧いれましょう! 今の勝負がその余興となったのなら、幸いです。……これで、探検隊達による勝負を終了とさせていただきます。それでは、このあとの大会もゆるりとお楽しみくださいませ! レイディアント学園高等部、生徒会会長のラル・フェラディーネでした!」
いい感じに締めくくりの言葉を言い終わると、野次馬から拍手を貰ってしまうという事態にはなったものの、どうにかパフォーマンスの一つだったと思わせられたようだ。
いやぁ……何故、私はこんなことしてるんでしょうねぇ……?

適当な出任せのお陰で、大した騒ぎもなく、野次馬達も散っていった。その後で、タイガを警察、ヒナギクをお医者さんに引き渡して、ようやく落ち着きを取り戻した。
また、突然の事態に対応してくれた警備の子達や生徒会の子達、一人一人に礼を言う。彼ら彼女らには持ち場に戻すなり、昼休みに戻るなりして貰い、この場にいるのは計十一人。先生の二人と、その場に居合わせてしまったユーリ君達、そして、後から駆けつけた私達だ。
「とまあ、先生達が何とかしたわけですが……ラル先輩、どーするんすか?」
「私に聞かないで……キーくん」
そう。この騒ぎを収めたところで問題は残っている。ヒナギクの代わりだ。
「腕と足の骨折じゃ、ゲスト参加は辞退せざるを得ないですよね?」
「ですです。それに、プログラム内容的にも難しいですよ。会長様」
ユーリ君とリリちゃんも心配な表情だ。生徒会の一員として、大会を成功させたいという目的がある。それは痛いほど理解しているし、私だって同じだ。しかし、今更、なしで! なんてできっこない。リュウ君の方でゲスト参加の旨を伝えてしまっているから、なかったことになんてできないのだ。
「トーナメント開始まであと三十分くらいですよね……? ゲストさんの参加っていつくらいでしたっけ? 後半?」
「そ。そこに参加者いるから多くは言わないけど……多く見積もっても三時間後にはどうにかしないとまずいな」
不安そうなツバサちゃんの質問に、通常運転のフォース君が答える。内心は慌ててるかもしれないが、表情に全く出ていないので、恐らく、そこまで焦っていないのだろう。
「ぼくらの知り合いに当たる? 都合つくかな」
「えーでも、イグさんがヒナギクをどう選んだかにもよるんじゃない?」
ちらりとリアさんを見る。それに気付いたリアさんは、んと、と少しだけ考えてから、口を開く。
「人柄と知名度と実力……だったと思うわ」
むっずかしいな。それ。
親方に連絡してみるか? いや、そもそもあの人が通信に出るかも微妙だ。なんでこういうときに限っていないんだ、あの人。では、ノウツに取り次ぐか? いやいやいや! こういう非常事態に弱いノウツ巻き込んでどうする。
「あ……それについては、俺に考えって言うか、提案がある♪」
と、イグさんが言うと、私の方を見る。満面の笑みをこちらに向けていた。
「? 兄貴?」
あ、嫌な予感。
「人柄がよくて、知名度も実力も申し分ない探検隊、もしくはそれに見合う部隊の人達を探せばいいんだろ? それなら、俺の目の前にいるよな。……探検隊『スカイ』のリーダーのラル、及びその隊員であるフォースがさ。これなら、来賓も教師陣も全員が納得できる、ぴったりな代わりだと思うんだけど」
「「「は、はあぁぁぁ!!??」」」
突然のご指名に、スカイメンバーのフォース君、ティール、そして、私の三人の叫び声がこだました。



~あとがき~
もう少しやりたかったけど、長くなると思うので切りました。

次回、ヒナギクの代打に指名されたスカイのラルとフォース。いったいどうする?

イグ兄さんのお怒りモード台詞や描写。プロット時よりも盛ってます(笑)
そして、結局、タイガの描写を入れないという……まあ、人でプライド高めのヤな奴だと思っててください。二度と出てこないんで((

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第81話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやっと過ごす話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は本当にただの繋ぎでした。ひとっつも進んでませんが、レイ学世界でのスカイの紹介的な何かを突っ込みました。有名な探検隊の一つやでってのを知ってくれればええで!
さてさて、今回はメインシナリオ進めようね……(笑)
今回はこちらの都合により、ラル視点に戻します。こっちの方が分かりやすいと思いますので!


《L side》
お昼時で一層、賑わいを見せる屋台から全員が好きなものを手にし、そろそろ会場付近に戻るか、と話をしていた頃。つけっぱなしにしていたインカム……ではなく、制服のポケットに入れていた個人的の持ち物である端末に着信が入った。これで話してもいいのだが、周りが騒がしいために、予め端末と同期させていたインカムで通話を繋げる。この方法だと、誰から来たのか、声を聞くまで分からないのが難点ではあるが。
「もしもし? どちら様です~?」
歩きながら、呼びかけてみると、あちら側から落ち着いた声が聞こえてきた。
『会長、ユーリです』
「およ。どうしたん? こっちで連絡して……あ、通信機持たせてないな。ごめん」
『はい。予選勝ってしまったので。生徒会の仕事ができずに申し訳ありません』
大会出場中のユーリ君とキーくんは仕事免除中だった。そんな彼がインカムも通信機も持っているわけがないな。
「いいよ。トーナメント戦も頑張ってね。……それで? 要件は?」
『簡潔に述べますと、噴水広場に設置してある休憩スペース付近にて、事故……といいますか、トラブルが発生しています。原因は探検隊同士のいざこざですね』
「はあ!? 馬鹿じゃないの?」
『それを僕に言われましても……』
そうだね! ごめんね!?
思わず叫んでしまい、一緒に歩いていたアラシ君達が私の方を振り返る。全員不思議そうにしていたり、怪訝な表情を浮かべていたりだ。
「ラルさん?」
「んっと、ツバサちゃん、ごめんね。ちょっと待って。……状況は?」
『たまたま近くにいた、イグニース先生とリア先生が対処に当たってくれています。現場に居合わせた生徒会役員は、先生の指示でお客様の整理等しています。そのお陰でお客様から怪我等の被害報告はないですが……何と言うか、問題が』
「問題? イグさ……先生がどうにかしてくれているなら、それも直に収まるでしょ。私が出向く必要ある?」
『あぁっと……少しややこしくて。できれば、会長には現場に来ていただけると助かるのです。僕達じゃどうしようもなくて』
うぅん? 話が読めないけれど、いざこざのせいで別問題が発生しているという認識でいいんだろうか。それをどうにかするためには、イグさんじゃ駄目……なのか? あの人で駄目ってもう無理なんじゃね? 理事長とか呼べ。何とかしてくれるよ。多分。
しかし、戸惑いの混じるユーリ君の声を聞いていると、大丈夫なんて笑い飛ばせる状況でもないのは明白だ。それに、自分で見た方が言葉で聞くより分かりやすいだろう。
「……今から向かう。ユーリ君は私が行くまで先生達から指示を仰いで」
『了解です』
ユーリ君からの通信を切ると、今まで黙っていた皆を見据える。
私の発言だけを聞いて、状況を察しているのは、相棒達だけだ。
「ぼくら、どうすればいい?」
「昼にやめろよ~……トラブル嫌いで~す」
「私と噴水広場の休憩スペースに直行しろ。……ツバサちゃん達はどうする? イグさん達の手伝いすることになったんだけど、来なくてもいいよ。危ないかもだし」
危ないというフレーズに引いてくれるかと思ったけれど、先に手を挙げたのは真剣な表情のツバサちゃんだ。
「私も行きます! イグ兄がいるなら、師匠もいると思いますし、お手伝いできることもあるかもしれませんから。それに、私も生徒会の一人です!」
その言葉は、私に訴える……というよりは、アラシ君に向けたもののように聞こえた。危険なところに行くのは、アラシ君的になしだろうが、返した言葉は意外なものだった。
「……ま、兄貴がいるなら、多分大丈夫だろ」
「面白そうだし、俺らもついてくけどな! いいだろ? ラル」
アラシ君と肩を組むような形で、レオン君が申し出る。ツバサを連れていきたいなら、俺達も連れてけ! 的な感じだ。ユーリ君の話から、怪我人は今のところいないらしいが、収まるまで一人も出ないとは言い切れない。そのため、貴重な回復要員のツバサちゃんの申し出は正直なところ、ありがたい。
……現場にはイグさんとリアさんもいる。大丈夫か。
「分かった。一緒に行こうか。ツバサちゃんは生徒会だから、まだ言い訳が立つけど、アラシ君とレオン君は変に手を出さないでね?」
「分かってるって! サンキューな!」
噴水広場方面に向かって歩を進める。人の多いこの状況で全力疾走はできないものの、できる限りのスピードで現場に向かう。私の隣にいたティールが少しだけ、心配そうにしていた。
「いいの? ラル」
「多人数まとめるのが私だしねぇ……問題ない。それに、私達のお兄ちゃんが対処してるなら、出番はないよ」
「確かに。……了解だよ。会長」

そこまで離れていないため、連絡を貰って数分と経たずに休憩スペースへと到着した。アラシ君達には、『探検隊同士のトラブルをイグさんがいさめているらしい』という、簡単な説明だけをしてある。
そして、休憩スペースには本来なかったものがそこにはあった。ドーム状にスペースの一部を覆う結界が存在しているのだ。
「多分、師匠の張った“シールド”ですね」
と、ツバサちゃんが一言。
リアさんの魔法で作られた結界は、恐らく、周りに人を入れないようにするための物だ。結界に近付かないようにと、何人かの生徒会の子達が人の整理をしているのが分かる。これも、二人の先生の指示だろう。結界の外には野次馬と思われる人々が多くいるが、その人々の隙間から結界内の様子も、遠目ながら窺えた。中には、得意武器である大剣を携えるイグさんと、見知らぬ男性一人。こちらは片手剣だ。
「何してんの、兄貴。……え、武器持ってるんだけど」
単純な話し合いでその場を収めていると考えていたらしいアラシ君から、驚きと戸惑いの混じった呟きが漏れる。私もアラシ君と同じ考え……というか、可能性を願っていたけれど、それは叶わなかったようだ。
「イグさんはいいけど……リアさんはどこだ。フォース、探せ」
「もう終わってる。人が多すぎて気持ち悪いけど。……こっち」
人の探知能力を持つフォース君の先導で、リアさんと合流を計る。野次馬を掻き分け、─体の小さいツバサちゃんは、アラシ君がどうにか、かばいつつの移動となってしまったが─なんとか全員、たどり着いた。そこにはリアさんの他に、連絡をくれたユーリ君とキーくん、リリちゃんがいる。そして、二人の男性の姿も。この二人は、話に合った探検隊のいざこざに巻き込まれた人だろう。
色々気になる点はあるが、とりあえずやることは一つだ。
「リアさん! それに、ユーリ君も! 詳しい説明求むですよ!!」
「ラルちゃん!……あら。皆も、来てくれたのね」
リアさんの周りに人が近づかないようにしているのか、ユーリ君とキーくんが人払いをしているようだ。理由は巻き込まれたと思われる二人の治療をしているリアさんとリリちゃんのためだろう。彼らは意識があるのか、時折、呻き声が聞こえてくる。命に別状はないだろうが、軽傷とは言えないくらいの怪我だ。
「すみません、会長。説明はリア先生から伺ってください。僕とイツキは野次馬整理に向かいますので。……イツキ」
「おけ! じゃ、先輩方、後はお任せしま~す♪」
私達が来たから、この場は任せるのだろう。ユーリ君とキーくんは人払いに四苦八苦しているところへと向かうために、この場を離れてしまう。元々、昼休憩で警備の人数もギリギリまで減らしてしまっている。こちらに連絡が回らなかったのも、イグさんやリアさんがいたから、後回しにしていたのだろうか。それとも、私達が昼休憩するからとか言ってしまったのが仇に……いや、今考えることではないか。
「オレ、赤髪が勝つに百賭けるわ~」
「あ!? ずっりぃー! 俺も赤髪に賭けるつもりだったのに!」
周りからは目の前で起こっているものが、何かのイベントか何かに見えているらしい。まあ、イグさん達がそうなるように気を回したんだろうが、これはこれで面倒臭い。いやまあ、本気の喧嘩をされるよりはましなのかもしれないけれどもだ。
「なんか、すっごいことになってんなぁ~♪ こういうのも祭りって感じするけどさ」
「呑気なこと言うなよ、レオンのアホ」
「んだよー! つれないなぁ、アラシは!」
「うっさいなぁ……つか、うちの兄貴は探検隊相手に何してんだ、マジで」
ほんとにな。
イグさんは自分に突っ込んでくる男を適当にあしらいつつ、適度な距離を保っていた。完全に手加減している図だ。
「邪魔すんな、炎鬼!」
結界内での会話も聞き取りにくいものの、全く聞こえない訳でもないらしい。片手剣持ちの男がイグさんに向かって叫ぶ。それにイグさんは笑って答えた。
「べっつにいいんだけどさー……そろそろやめにしない? 時間は有限って言葉もあるしさ」
「うるせえぇぇ!! ここで終わらせてたまるか! 俺の気がすまねぇんだよ!」
相手は随分とお怒りのようで。そうなった理由は、ここにいる二人が噛んでいそうだ。その二人は今は大人しく、リアさんとリリちゃん、そしてそこに加わったツバサちゃんの手当てを受けている。一人は紺色の髪に、額には角が一本生えており、もう一人は藍色の髪に角が二本。二人とも、鬼族の特徴に一致する。
「イグニースが仲裁に入ったんだろうが……元々はあの結界内の男とこいつらの喧嘩だったのか?」
状況的には、そう判断するのが普通。いや、いい年した大人が学園内で喧嘩とは、示しもつかないが。
「……あっ! どこかで見た気がすると思ったら、ゲストの二人か! イグ先生達の知り合いの」
ここに来てからずっと黙って考え込んでいたティールが、ようやくその内容を引っ張り出せたらしい。そのゲストという言葉と姿を見て、私も思い出す。
トーナメント戦で、あるゲストを招いていると聞かされていた。それがここにいる二人なのだろう。確か、名前はチーム『ヒナギク』。紺色髪のピースさんと藍色髪のスペラさんによるコンビの探検隊だったはずだ。直接の面識はないが、名前くらいは聞いた気がする。
「えぇ、そうなの。……そっか。ティールくんは資料を見たのね?」
「事前に誰が来るかは一応、知らされましたので。で、あそこにいるの……は、あれもどっかで見たことある気が……あ。タイガ、か?」
「タイガ? あー……適度に絡んでくるウザい人? 記憶から抹消してたわ。会わないし」
「前に中身のない暴言を吐き捨てた人でしょ。あはは♪ なっつかしいねぇ」
あ、ヤバイ。ティール様、ご立腹気味だぞ。
ティールさん、お、怒ってます……?」
「はわ! 会長様のお怒りモードは見るけど、ティールさんはなかなか見ないですよ!! レアですの!」
「そ、そうなんですね!」
ツバサちゃん、そこに感心しなくていいぞ。
このまま放置していると、装備していない愛剣呼び出して、飛び込みそうなティールを落ち着かせるために、私は彼の腕に自分の腕を回す。
「まーまー、前だから。何年か前の話だから。落ち着けー? ねー? 結界張ってあるし、私達に手出しはできないよ~」
「分かってる。……それで、あのタイガさんが何を? あの人、沸点低いし、プライドも馬鹿みたいにあるので、予想はつきますけれど」
「刺々しいティールも珍しいな~♪」
「レオン、ちょっと黙ってろ。……リアさん、一から説明お願いできますかね?」
「えぇっと……何から話そうかしら。私とイグはお昼ご飯を一緒に取っていたのよね。……それで、そうね」
少しだけ考え、リアさんは口を開いた。
「まず、ネタバレみたいになるんだけれど、今回の大会ではあるゲストを招いてて、それが、ここにいる二人。ピースくんとスペラくん」
ある程度、手当ての終わった二人が私達に向かって気まずそうに会釈した。
「それで……ティールくんも似たようなこと言っていたけれど……彼、二人がゲストに選ばれたことをよく思っていなかったみたいなの。それで、二人に怪我をさせて……それを止めに入ったイグにも八つ当たりを。『ヒナギク』を推薦したのもイグだったから、かもしれないわ」
心狭すぎか。
しかし、状況は把握した。ヒナギクの二人を怪我させたのはあのタイガという探検家で、半分逆恨みにイグさんにも喧嘩を吹っ掛けたということだ。推薦者がイグさんだったという情報を、彼が知っていたかはともかくとして、大会中にこのような事件を起こすとは、とんだ迷惑者である。



~あとがき~
長いから切りました。
そして、思った以上にぐっちゃぐちゃですね。いつか書き直そう……

次回、暴れているタイガをイグさんはいかがいたすのか……!

新キャラです。ヒナギクのピース、スペラとイグさんと戦ってるタイガ! ヒナギクはともかく、タイガの描写をほぼしていないという状況です。次回、やりましょうかね。忘れてなければ。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第80話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で平和に過ごす話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は、アリアちゃんの真骨頂を見てしまったラル達でした。そして、まだまだ続きます。昼休み。
ラル「残り二十話で百話に達するんですが、お気持ちを~」
いやぁ……定期的に出しているとはいえ、早いっすね。今だけだろうけど。
ラル「それな」
レイ学世界では夏にもなってませんが、お付き合いくださいませよ~♪
今回は久しぶりのアラシ君視点です。


《A side》
男子二人を連れ、屋台の広がる方面へとラルは消えていった。屋台会場は広いし、アリアと出くわすかは分からないが、そこら辺はあの三人は気にしないだろう。仮に見かけても話しかけない……と思う。さっきの話を聞いたしな。
「そいやぁ、アラシ、ご飯買いに行く? だったら、俺の分もよろしく~」
「はあ? ふっざけんな。自分で行け」
「ちぇ……優しくねぇなぁ」
うるせぇ! 集るつもりの癖に。騙されてたまるか。
ぶーぶーと文句を言うレオンを適当にあしらっていると、ツバサが俺の制服の裾を軽く引っ張ってきた。
「アラシ~……」
少し甘えるように俺を見上げる。それだけで何が言いたいのか予想がついた。
「はいはい。ラル達と行きたいんだろ? なら、早く行かないとな。外に出られると見失うかもだし」
「! うんっ! 行こ、アラシ!」
ツバサはパッと顔を輝かせ、アリア、ラル達が先に歩いていった通路を走る。あいつがスピード出すと、とてもじゃないが追い付けなくなる。急がなくてはと言ったが、そこまでダッシュする必要もないだろうに。俺も走るのか。
「レオンはどうするんだ? ここにいても飯は買ってこないけど」
「買ってきてくれないんなら、一緒に行くしかないだろ~? アラシ君ってば、優しくないんだからぁ」
わざとらしい。むっかつくわ。こいつ。
部屋に残るらしいミユルとシエルに、外に出てくると伝え、俺とレオンで先を走るツバサを追いかけた。こうなる前にラル達に一緒に行こうと提案すればよかったのではと、今更ながらに思いながら。

先を行くツバサには途中で追い付き、三人で会場外出口を目指した。会場外に出ていたらどうしようかと思ったのだが、三人は案外近くにいた。
通行の邪魔にならないところに三人で固まっていたのだ。どこへ行くのか相談していたのかもしれないし、全く別の理由かもしれないが。とりあえず、俺達はラル達に追い付けたようでホッとした。
「みなさーん!!」
ツバサの目一杯の叫びに、三人がこちらを振り向いた。
「お~……お揃いで。どうしたの?」
「ツバサがお前らと一緒に行きたいって言うから、走ってきたんだよ。先に行かれたら面倒だろ?」
「あーそういうこと? それならツバサちゃんに渡した通信機で呼んでくれてもよかったのに」
「……あっ! そっか!」
ラルに言われて思い出したらしく、制服のポケットから通信機が出てくる。恐らく、生徒会メンバー全員に渡されているもののようで、ツバサも例外ではないようだ。ツバサの通信機を見て、ラルは苦笑する。
ティールはインカム外してるけど、私とフォース君はつけっぱなしだったから。ツバサちゃんに渡したやつだと、ここにいる三人には繋がるようになってると思うよ」
確かにラルとフォースは片耳にインカムをつけていて、ティールは外しているみたいだ。恐らく、ティールは完全に休憩時間で、ラルは司令塔だから常時つけていなくてはならないのだろう。フォースは……なんだろう。外すのが面倒なのか、担当時間だけど、こっちにいるのか。
……うん。両方あり得そうだ。
「まあ、いいや。今度から何かあるなら、それで呼んでくれていいからね」
「は、はい。すみません」
「ラル達はここで何してたんだー?」
レオンの質問にティールが困ったように笑う。
「んと……ステラとリーフと待ち合わせしてたんだ。せっかくのお昼だから一緒にって……思ったんだけど」
「待てど暮らせど、そのお二人が現れないってわけ。この混雑だし、仕方ない気もするがな。すぅ達も子供じゃないから放置でもいい」
流石、フォース。冷たい言葉をずばっと言うなぁ……
それに賛同するわけではなさそうだが、ラルも少し唸りながら話し始める。
「このまま時間を浪費するのもあれだよね~……先にある程度買い出しに行くか。そっから合流しよ。お昼は一時間だけだもん。フォース君はよくても、私とティールは食べなきゃ死んじゃいます~」
「これくらい我慢できるよ。ダンジョン潜りっぱなしでも問題ないだろ?」
「それと比べる? ダンジョン内はあれよ。アドレナリン出まくりだから、気にならないんだよ」
「あー……一理ある」
ダンジョンあるあるを聞かされても、探検隊でもない俺達に伝わるわけではない。黙っているしかないのだが、レオンがうんうんと頷いていた。
「俺も遺跡調査とかでずっと作業してたら、時間忘れるし、飯食わないな~♪ それとおんなじってことだろ?」
「そゆこと~♪」
ちょっと、同調できない。
「さて、ツバサちゃん達も私達と一緒に行くんだよね? 早速、行きますか。目的地はある? ないなら適当にご飯屋台巡るけど」
「特にはないです。でも、何か美味しそうなの食べたいです! せっかくの屋台ですもん♪」
「OK! じゃ、歩こっか♪」
ステラとリーフと回っていたときに、買い食いしていた気がするが……そこを突っ込むのは野暮なんだろう。恐らくだが。
六人と少し大人数だが、たくさんの人が行き交う道を歩きながら、進んでいく。屋台を見ながらだから、ややゆっくりとした足取りである。
周りに全く興味がないらしいフォースが、全員の足取りに合わせて歩いている中、思い出したように口を開いた。
「あー……レオンとアラシは勝ち上がったんだよな。おれは見てなかったけど。……今年の一年は豊作なんかねぇ?」
確かに。勝ち上がった八人の中で、三年は二人だけ。残りは二年と一年。普通に考えれば、三年が多くなると予測しているものだろう。俺もその考えは一応は、あった。
フォースの言葉に答えたのは、ティールだった。
「それもあるかもしれないけど、Bブロックに三年が固まってみたい。こればっかりは時の運だよ。偉い人達のアピールの場なのに、三年があまり残っていないのもどうかと思うけれど……後輩も今のうちに存在感見せつけておいて損はないだろうね」
後輩と先輩の親睦を深めるという目的と、大型ギルドや研究施設、有名教育機関等へとアピール……先輩方の将来ががらっと変わる……かもしれない、この行事は、一大イベントなんだろう。一年の俺には遠い話のように思える。
「……仕事する気があるなら、か」
「そうだね。ギルドに所属したければ、こんなチャンスないから。ぼくらにはあまり関係ないかな」
「私とティールは卒業しちゃったもんね。今更、入り直す気もないし」
「ふーん? そうなんだな。じゃあ、ラル達はフリーってことか?」
「そそ。一通り、中等部卒業と一緒に終わらせたからさ。とはいえ、これ以上、隊員を増やすつもりはさらさらないよ。私ら含めて、もう七人抱えてますもの~」
「ほえ? それ、多いんですかね?」
「探検隊としてなら多いかな。本来、ソロか……多くても、一度に編成組めるのが四人だから、三、四人ってところだね。私の率いる探検隊は、私とティールがメインで、言ってしまえば、残りはサブ扱いなのよ。別動隊って言った方がいいか」
つまり、メインどころの依頼なんかはラルとティールがやるけど、同時進行で別依頼も請け負う人がいる……ってことか?
俺の呟きに、ラルが嬉しそうに笑って頷いた。
「そうだね。チーム内でも得意な分野で仕事してもらう! みたいな。仮にツバサちゃんが私のチームにいたら、魔法関連のお仕事担当……とか。そういう分け方をするの。もちろん、仲間を信頼しているからこんなやり方をしてるんだけどね。メンバーがリーダーの目の届かないところに行くってのは、リスクもあるから」
何かあったら駆けつけられない……とか、かな。
「はわわ……ラルさんって、すごいんですね! そんなチームのリーダーさんってことですよね?」
「一応はね~……ひっそりとやってるだけだよ」
なんて言うラルを横目に、チームの一員でもあるティールとフォースがぼそっと呟いた。
「ひっそり? ひっそりしたか? おれら」
「ここ一、二年はひっそりもしてない」
チームメンバーである二人はラルの言葉に納得していないようだ。
俺は探検隊に詳しくないが、それでも、ラルの率いる探検隊『スカイ』は、この辺じゃよく聞く名前だ。その理由の一つに、ここに冒険科があるからだろう。学生と平行して活動している人は少なくないと聞くが、大きく名を挙げるのは簡単ではない。実績を得るには、現場に出て成果を挙げなければならないのだ。そのために、技術を身につけ、知識をつけ、力をつけなければならない。
そんな世界で、現役学生且つ、確実な実績を残すスカイは探検隊を目指す生徒達の憧れの存在だろう。それに、生徒会で役職持ちと来れば……ひっそりとなんて難しい話だ。
「私は適度な休みと探検しか望んでないよ!」
「探検ってところには同調する。……ぼくらの場合、環境や仲間にも恵まれたと思うよ。運も実力のうち、だね」
「そうだろうけど……ティールに運もとか聞きたくなかったなぁ。一番、運がないじゃない?」
「うっ……そんなことは……」
言葉に詰まるってことは、自覚があるか、心当たりがあるんだろうな。認めるかどうかは、また別の話だ。



~あとがき~
単なる繋ぎ回。

次回、事件でも起きます(適当)

スカイはこちらの世界線でも有名です。
とはいえ、空海みたいな爆発的な権力は持っていないとは思いますが、知名度、実力も兼ね備えているのは変わりません。皆に通り名があるのもお決まりです(笑)
空海と違うのは、フォースが探検隊として二年活躍しているってところですかね。空海では考えてなかったけれど、ここでは通り名とかついてるんだろうな。

ではでは!

学びや!レイディアント学園 第79話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で平和に過ごす話です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回から、剣技大会~お昼休み編~がスタートしているところです。ラル達三年生徒会組+ツバサちゃんの話でした。今回もそんな感じで進めていきまっしょい。


《L side》
……もう一度、確認しておくか? もしかしたら、見間違いかもしれない。
「ラル? なんで今、閉めたの?」
ティール、フォース君、お願いだから、何も聞かずに部屋をちらっと確認しよう。私と」
「は? なんで」
「聞くな! 見ろ!」
自分でも強引なことを言っているのは理解している。私もティール達の側だったら、変な目で見ているに違いないからだ。それでも、ここは一人で見るよりも何人かで見るべきだと判断した。一人だと見間違いの線が捨てきれない。
二人に目配せをし、そっと扉を開ける。怪訝な顔をしつつも、ティールもフォース君も私の言う通りに部屋を覗いてくれた。
そこにあるのは、初めに見えた部屋の備品等々。そして、一つの机に大量の食べ物に囲まれ、それを美味しそうに食べる人魚族の女の子……同じクラスのアリアちゃんがいた。それをしっかりと捉え、見間違いではないと確認したところで、再び扉を閉めた。
「皆さん? どうかしましたか?」
私達三人が邪魔して、ツバサちゃんには部屋の様子が見えていないんだろう。上級生三人の奇行を見せるのは恥ずかしい限りなのだが、生憎、彼女の質問に答えてあげられる程の余裕はなかった。二人の手を引いて、扉から離れ、こそこそと内緒話をするように小声でなんちゃって会議を始める。
「え、あれ何? 夢か。私は夢を見てるのか」
「リアルだろ」
「すっごい食べてたね。幸せそうに。あれ、お好み焼きとか焼きそばとか……他にもあったよね? なんかたっくさんあったけど……同じお店のかな」
「いんやぁ……少しずつ量も材料も違ったと思うぞ。別のところだろ」
なんで分かるんだ、このお兄さんは。
「ってことは、屋台制覇でも目指してるの? 何も与えられないよ? 景品もないよ? え、私らで用意すべきなの?」
「いらないんじゃないかなぁ……流石に」
「つーか、あいつ誰だっけ」
はあぁぁ!? そこからぁぁ!?
彼女が食べていたご飯の判別はつく癖に、人の顔は覚える気のないフォース君を軽く殴る。全く痛そうにしていないところが腹立つ。
「アリアちゃん……アリア・ディーネ! 同じクラスでツバサちゃんのお知り合い! Bブロック残り組で、氷山作った張本人。覚えろ!」
「氷山見てねぇし、おれ。……で、そのディーネさんがありとあらゆる食べ物に囲まれてるって事実を確認したわけだ。……なあ、ツバサ」
「? はい」
「ディーネとやらは、食いしん坊キャラなのか?」
「ほえ? くいしんぼう?」
こてんと首を傾げるツバサちゃん。アリアちゃんとも親しいツバサちゃんなら、答えを知っているだろうけれど、その前に一つ。
「あれは食いしん坊の領域越えているよ。多分」
「直すとこそこ? 冷静に言うことでもないよね」
「冷静にならないとやってらんないんだよ!! 察しろ!」
「何してんだ、こんなところで」
いきなり背後から話しかけられ、私は思わず、フォース君の後ろに隠れる。ほぼ条件反射だ。手が出なかっただけ、感謝して欲しいくらいである。
「わっ! アラシ! びっくりした~」
「え、ごめん……?」
びっくりしたと言う割には、そこまで驚きが伝わらないティールに、これはこれで反射的に答えたのだろう。平謝りのアラシ君だ。彼は扉近くの壁に寄りかかる体勢でこちらに話しかけてきたらしい。つまり、控え室からわざわざ出てきてくれたことになる。話しかけてきたのが知り合いであると確認をすると、私はフォース君の後ろから出る。そんな私に大して興味もなさそうなフォース君から、質問が飛んできた。
「なんでおれの後ろなの」
「近かったからが一番の理由だけど、実用的な理由にするなら、一番の盾じゃん。簡単には倒れないし、最悪見捨ててもどうとでもなる相手だから」
「ははっ……殺すぞ、貴様」
「おー? やってみろや~」
……とまあ、茶番は置いといて、だ。
「お~♪ ツバサを送ってきてくれたのか? サンキューな!」
部屋の状況をアラシ君に質問しようとしたところで、レオン君がひょこっと扉の隙間から顔を出した。そして、アラシ君の隣に立つと、レオン君は話を続ける。
「んでも、なんで扉を開け閉めしてたんだ?」
「……大方、アリアだろ?」
「えへ。アラシ君の仰る通りです」
それだけで何が言いたいのか、レオン君も察したようで、ばつの悪そうに「あ~……」と呟いた。
「ま、最初はびっくりするよな♪ なんつーか、その、アリアの食いっぷりには……色んな意味でため息が尽きないからなぁ……」
きっと、幼い頃からの付き合いで、この二人にも絶え間ない苦労があったのだろう。同情する。
「あ、そっか! だから、フォースさん、食いしん坊って言ったんですね? あーちゃんの食べてるところが見えたから」
ツバサちゃんは、ぽんっと手を合わせて、合点が言ったというように明るい笑顔を向ける。
「食いしん坊っつーか、ブラックホールだけどな~? アリアの胃袋の場合♪」
胃袋の表現にブラックホールとは……
「ラル達も中入るか? 今、俺らしかしないし」
「ん? そうなの? ユーリ君達は?」
「イツキ先輩、Dブロックだったユーリ先輩を迎えに行くって飛び出してたんだよ。で、そのまま外で飯行ってくる! とかなんとか。まだ帰ってきてないから、外にいると思うぞ」
アラシ君の説明に妙に納得してしまった。なんか、キーくんらしいや。リリちゃんも約束していると言っていたから、三人でご飯を食べる約束でもしていたのだろう。とことん仲のいい三人だ。よきかなよきかな。
さて、中に入ってもいいけれど、私達もすぐに外回るし、ここはさっさと退散してしまおう。元々の役割はツバサちゃんを送り届ける、だ。それは終わったわけで、ここに居座る理由はない。
「じゃ、私達はこれで行くわ。ツバサちゃんを届けたことだし。……あれ、アリアちゃん」
「……ん。ラル。……と、皆も」
え、あれだけ大量にあった食べ物、食べ終わったの? 嘘だろ。
ここを立ち去ろうとした瞬間、アリアちゃんが扉を開けて、私達と出会した。話し声は聞こえていただろうが、彼女の性格からして、スルーしそうなところだ。しかし、私が呼び止めたから、アリアちゃんも素通りせずに立ち止まってくれたらしい。
「あーちゃん、どこか行くの?」
「……ご飯、買いに行く」
「よく食べるね、アリア。……さっき、ちらっと見えたけど、食べ物、たくさんあったよね?」
ティールの問いに、アリアちゃんはこくんと小さく頷く。
「けど、足りない……それに、あれ、お昼じゃなくて、間食……まだ、いける……」
どこか誇らしげなアリアちゃん。彼女と私達とで、かなりの温度差があるけれど、彼女は全く気にしていない。
「んーと、間食ってなんだっけ。ぼくの記憶と違う意味合いな気がしてきた」
「間に食べる何かだろ」
そのまんまだな……間違ってはないだろうけども。食べている本人が間食だと言うのなら、間食なのだろう。この問題に深く突っ込むと、自分の常識が崩れそうなので、これ以上はやめておくのが吉だ。
「行くのはいいが、トーナメント始まるまでには帰ってこいよ? 賞品もらえなくなるぞ」
「……ん」
アラシ君の忠告に短い返事で答える。そして、そのまま外の屋台方面へと歩いていってしまった。
残されたのは私とティール、フォース君にアラシ君、ツバサちゃん、レオン君の六人だ。
「アリアちゃ……というか、ディーネ家の一ヶ月の食費気になるけど……きっと聞かない方が平和なんだろうね」
「にゃはは~♪ それが懸命だと思うぜ。ま、ディーネ家のつっても、アリアだけだな。親元離れて暮らしてるから」
あー……え? じゃあ、あれ、一人で賄って……仕事か。稼ぎのいいお仕事、ね。こちらも深く突っ込まない方がよさそうだ。
「さて、私達もそろそろ行こうか。いっくぞー、ティールにフォース君。ご飯の時間だー!」
貴重な一時間をお喋りに費やすわけにもいかない。フォース君は食べなくても平気だろうけれど、私とティールはそんな風にはできていないのだ。
アラシ君達に軽く手を振り、アリアちゃんが向かった方向へと歩き出す。
「おれも行くの? 部屋にいたいんですけど」
「荷物持ち」
「自分で持てや」
「まあまあ。せっかくだし、三人で行こうよ」
ティールに言われ、─相棒が間に入っていなくても、大丈夫だったと思うけれど─ため息混じりながらも、フォース君も後ろをついてきてくれていた。



~あとがき~
ネタを押し込んだ感が凄い。

次回、まだまだ続く! お昼休み!

このアリアちゃんの大食いネタで一話使えるとは思いませんでしたね。ここまでにちょいちょい見え隠れはしてましたけれど。

ではでは!