satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 番外編~前編~

私は今、ギルドにあるキッチン…要は台所に来ていた。何も伝えられずに、無理矢理連れてこられたようなものだが、何をさせるつもりなのかは未だに不明である。
「さあ、ピカ! リン! やりますわよ~♪」
「はい、キマワリさん! 頑張りましょう!!」
私の隣で妙に燃えている先輩である、キマワリこと、きまっちとチリーンこと、リンの二人。
熱くなるのは一向に構わないのだが、状況整理中だから出来れば、話しかけて欲しくない。しかし、そんな私の気持ちなぞ露知らず、リンが笑顔をこちらに向けた。
「ピカさん、料理経験は?」
「探検ばっかしている私にあるとでも? 大体、ギルドのキッチンすら、初めて入ったわ」
そう。記憶にある限りでは、経験など皆無である。
元々する必要もなければ、している人もあまり聞かないし、見たこともない。つまり、出来なくても大して困らないのだ。
……いや、料理の価値なんて今はどうでもよくて。
なぜ、私はこんなところにいるのか、ということが重要なんだけれど。
「じゃあ、初めて体験ですね♪ 明日、何の日か知っていますか?」
「………さあ?」
「バレンタインですよ、バレンタインデー! 女の子には大切な日ですわ~♪」
「好きな人にチョコレートを渡す日ですよ。もちろん、仲良しのお友だちにあげてもいいんですけどね♪」
ふうん……バレンタイン、か。
ぶっちゃけ、興味ない。
大して好意を持っている異性もいなければ、これといって親しい同性もいない。うん……なんと空しい人関係……まあ、私に問題があるのかもしれない。あと、仕事の多さとか。
リンはあ、と何か思い出したかのように呟くと、先程の説明に付け加えた。
「ギルドの皆様に日頃の感謝をこめて、毎年義理チョコをあげているんです。なので、ピカさんにも手伝ってほしいんですよ」
なるほど、これで私がここにいる理由が分かった。義理チョコ作りのためか。
バレンタインでチョコレートを貰うって、男共は嬉しいものだろうか。そんなに騒ぐことでもないだろうに。義理なんですけど。義理。
これだから世の中の男は……
「ピカ、いくら男嫌いだからといって、バレンタインを否定するのはよくないですわ。ポチャとかにあげればよろしいのでは?」
苦笑を浮かべつつ、そう提案された。
別にバレンタインを否定したわけではないのだが……男嫌いは認めよう。本当のことだし、仕方ないから。
しかし、言い訳するわけではないが、初対面の男の人が苦手…もとい、嫌いなだけだ。うん。
なんかこう……知らない男の人とは関わらない方がいいと、本能が言っている……気がする。
まあ、今回はギルドメンバーにあげるらしいので、知らない相手ではない。そこまで気を張る必要もないだろう。
「じゃあ、何すればいいの? 言っとくけど、本当に知らないからね?」
「大丈夫ですよ。レシピ見ればなんとかなりますから」
専門用語なんて出てきたら、お手上げなんですけど。つか、それ以前に面倒だ。そもそもなんで、好きでもない相手にプレゼントせねばならんのだ。
ここまで考えて、やる気のパラメータ(そんなものは初めからないようなものだ)が、ゼロを越え、マイナスゾーンに到達。
よし、無理だ!
「私、やっぱ無理。戦闘要員だもん」
そう言って、くるりと九十度方向転換する。そして、そのまま歩き出す……ことは出来ず、リンの“ねんりき”によって、動きを封じられた。
「ただでさえ、女子の人数が少ないんですから、逃げないでくださいよ! キマワリさん、料理が下手なんですから! 私を一人にしないでくださいー!」
衝撃的事実発覚。ますますやりたくないわ。
「そんなこと言わずに! ねっ!?」
必死にお願いされても嫌なものは嫌なの! リン、離せ! 下手な人が何を仕出かすかくらい、料理をやらない私でも想像つくよ!
「リン、ピカ、ワタシのこと、馬鹿にし過ぎではありませんか? そこまで言うほど、下手ではありませんよ?」
「去年、なんやかんやで、完成しませんでしたよね? 去年だけではありませんよ……?」
あぁ……毎年なんだ。
「とにかく! これは恒例行事みたいなものなんです! 拒否権なんてありませんよ」
キッ、と真面目顔になるリン。その顔を見て、逆らったら上下関係として駄目だよな、と思い、気持ちを切り替えた。
「ふぁーい。……やればいいんでしょ、やれば」
やる気の見えない返事だと自覚しつつ、方向をキッチンの方へ戻す。そして、思わず、ため息がこぼれた。
どうなっても知らないからね、私。



~あとがき~
バレンタインなので、番外編でーす!
どうせなら、ピカが初めて料理をする話にしよーっと思い、こんな感じになりました。なので、ある意味、過去編ですね。ギルド修業中時代のピカです。なので、性格が若干違う……ような気がします。

次回、男子組も登場! 女子三人のチョコレート作りはいかに!

ほんとはイブメインで頑張る話でもいいかなーっと思ったんですが、本編ではイブ目線なので、番外編くらい、別な人がいいなと。そして、書きやすいピカに視点が……(笑)

ホワイトデーくらい、フォースとポチャがお返しかなんかで、あたふたするような話がしたい。うん。
誰得やねん。まあ、私の願望なんだが。

ではでは!