satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

黄金の欠片

ペンギンの手から放たれた弾丸は矢が飛んできたと思われる場所へと飛んでいく。そして、茂みの奥でぶわっと白い煙が立ち込めた。恐らく、ペンギンが氷タイプの弾を打ち出したからだろう。それを確認し、ラルはうつぶせ状態で、愛刀である雷姫を出現させた。こそこそと話しているところを見ると、雷姫に何か言われたのかもしれない。
茂みの方からうめき声が聞こえ、ペンギンの攻撃がヒットしたようだ。それが合図だったかのように周りが騒がしくなる。
「………来たよ」
「了解。ポチャ、フォース君、わかっていると思うけど……これは普通の依頼。殺すことは許されないからね」
「正当防衛ならいいのか?」
「フォース君は絶対に武器使うな。死人が出る」
「………あいよ」
全く。どんなイメージを持たれているのやら。……間違いではないところがまた、痛いところなのだが。
「フォースは手加減って知らなそうだよね……」
「手加減くらい、頑張れば出来るぞ? 多分」
「その多分が怖いんだよ。っていうか、手加減って頑張るものなの?」
「いつも本気で戦うから手加減は難しいんだよな」
「突っ込まないよ……ぼく…」
なんだ。つまらんな。
気配が近くなってきたところで、おれ達はその場で立ち上がる。そして互いに戦闘体勢をとった。ラルは刀を構え、ペンギンは渡された銃を構えていた。肝心のおれは、特に何もすることなく、その場に立ち尽くしていた。構えるだけ無駄だし、そもそも、構える、などという概念が存在しない。いつもこんな感じだ。
気紛れで構えることもなくはないが、そこから正式な攻撃をしたことはない。
ただ、周りに気を配り、どこに誰がいるのか、どんな奴がいるのか、戦闘力はどれくらいなのか、戦いに必要な情報を取り込んでいく。
敵の位置はここだけではないようで、広範囲に潜んでいるようだ。とりあえず、この周りには二十から三十の敵がいる。そこまで強い感じはしないが、ペンギンがあっちの意味で危ない、と言っていたので、こちらの常識は通じないだろう。
それが壊れた奴の末路、ということだ。
がさがさっと辺りの茂みが揺れ、多くの敵達が出てきた。奇襲をするなら、もっといい手を考えればいいのに、と一種の哀れみを覚える。
「来た来た。………チッ……馬鹿ばっかだね」
「ピカの舌打ちが怖いよ。何を期待してたのさ」
「期待するだけ無駄だろ。こんな軍団」
「ま、そうだね。……皆、健闘を祈るよ」
ラルはぽつりとそう呟くと、敵陣へと突っ込んでいった。ペンギンも黙ってうなずき、同じように突っ込む。
おれはそんな二人を見届け、小さく息を吐いた。
何が楽しくて、こんな血生臭いことをしなければならないのだろう。主…継承者のためになるようなことでもないのに。
まあ、巻き込まれたのだから、やるけども。
「珍しい……イーブイか。しかも紅目だぜ。売ったら金になりそうだな」
そういえば、この国では、イーブイは珍しいんだったか? つか、金にならねぇよ。本当はイーブイじゃないし。大体、そういうのって、少女って相場が……いやでも、奴隷制度なら、男もありだったんだっけ? いや、売るならやっぱ、少女の方が………って何考えてるだ、おれは。
「ぼさっとしてんじゃねえぞ!」
させているのは、どちら様なんだろうね。変なこと考えていた、おれもおれなんだが。
正面に三人。左右に四人ずつ。計十一人。楽勝だな。
挑発してきた奴の攻撃をかわし、上にジャンプし、左右から飛んできた攻撃もかわす。
おれの周りにいた奴らには変な奴はいないようだ。皆、攻撃がパターン化しているし、何より、目がこちらを見据えているからだ。薬でやられていたら、焦点が合わないような目……まあ、死んだような目をしているはず。
これならやりやすい。
「………“チェーン”」
出現させた鎖の真ん中を掴み、遠心力に任せてぐるぐる回す。
これなら、殺すこともないだろう。ほぼ殺傷能力は皆無だと思っていい。使い方を考えれば、殺すことも出来るが、面倒だからしない。駄目って言われたし。
「どこから出した!? その鎖!」
「知るかよ! 急に出てきたんだ」
「うるさい連中だな。騒ぐ暇あったら、おれを倒すことくらい考えたら?」
おれを倒すなんて、無理な話だけど。
地面に着地し、縄を投げる感覚で敵に向かって攻撃する。遠心力のお陰か勢いをつけるのとそうでないのとでは、威力が違う。当たり前の話であるが。
まずは一人終わり。
次に真ん中ではなく、鎖の端を持ち、ぐるりと勢いをつけて鎖を回す。これで広範囲の攻撃が出来る、というわけだ。なかなか楽でいい。
避けられなかった数人が回した鎖に弾かれ、ばたりと倒れる。そこまで強く回したつもりはなかったのだが、誰も起き上がってこなかった。
根性がない奴らだな。残りは半分くらいか。
「てめぇぇぇ!」
残りの敵達が怒りのこもった感じの雄叫びを上げながら、俺に向かって突っ込んできた。怒りに任せると注意力が散漫になる。ふむ、これはありがたい襲撃だな。
先程出した鎖を一度消し、ぱちんと指を鳴らした。すると、突っ込んできた奴らはおれの鎖に縛られ、自由が効かなくなる。驚いた表情を浮かべ、次には受け身も取れぬまま、前から地面に向かって倒れた。
顔面からいったが……痛いな、あれ。
痛さでのたうちまわっているから、相当痛いのだろう。しかし、おれには同情が沸き上がるより、その姿が滑稽に見えて仕方がない。さっさと終わりにしてあげるのが、せめてもの情け、というものだろうか。
おれはバタバタともがく奴らに手刀をして、気絶させる。全員を気絶させたところで、ふう、と息を吐く。
「もう悪さすんなよ。馬鹿共」
こんなことを言ったところで、聞いている人なんていないんだろうけれども。
ぐるっと辺りを見回す。ラルとペンギンはおれより離れたところで戦っているのか、静かなものだった。殺気も感じないから、おれの周りにはもう誰もいないのだろうか。そもそも、あの二人はどこ行ったんだろう。
「まあ、思ったより、簡単に事が片付きそうで何より…………?」
先の方で何やら騒がしい感じがした。あそこで戦闘しているのか……
あの二人が負ける、などということはあり得ないが、異様な胸のざわめきがある。何かありそうで、嫌な感じがする。
「………こいつら一塊にしとくか…」
倒した十一人を近くにあった木に鎖で縛り付けた。木には悪いが、帰ってくるまでの辛抱をしてもらうしかない。
「悪い。こいつら見ててくれ」
駄目元で敵を縛った木に話しかけた。こんなことされて、いいよ、なんて言ってくれる奴なんてそうはいないだろうが。

『………ワカッタ。キミガカエッテクルマデノアイダダケダヨ』

マジか。素直な木もいたもんだ。
おれはありがとう、とお礼を言い、気になる方向へ走る。ラルとペンギン、どちらかが戦っている……と思うのだが、果たしてそれは本当にあっているのだろうか。
兎にも角にも行ってみなければ、わからない。少し急ごう。



~あとがき~
あ、考えてたところまでいかなかった……ま、いっか。次で。

次回、騒がしい正体が判明しまーす。

久し振りにバトルシーンを書いたので、伝わりにくいところがあるかもしれませんね……ごめんなさい。そこはあれです。皆様の溢れんばかりの想像力を駆使してください! お願いします!
ま、フォースがチェーンを使うの、久し振り過ぎる気がします……私だけだろうか……?
一応、あれは彼だけが使えるオリ技なんですけどね。使う機会があんまりないんですよね。バトルメインの小説じゃないので。コメディーがメインなんです。やいやい騒ぐ奴がメインなんですよ。はい。

敵の詳細は特に考えていないので、敵の種族名も特に加筆していません。モブだし。やられキャラなんでね。なので、そこは皆様のご想像にお任せしまーす。

ではでは!