satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第132話

~前回までのあらすじ~
ピカ「金魚すくいという名の博打もんですな。よい子はこんなことしちゃ駄目よ~? 合法的なことなら止めないけどね」
フォース「……いや、ギャンブルに手を出しちゃ駄目だからね?」
ってことで、フォースが金魚すくい(賭け事)に挑戦するよ!
ピカ「いえ~い」
フォース「…………」
そして特に言うことないんで、始めます!


フォースの宣言にフローゼルトサキントは全く信じていないようで、互いに顔を見合い、苦笑を浮かべていた。対してピカはフォースの手の内を悟ったのか、彼と同じようにニヤリと笑っている。
挑発されたアズマオウはというと、プライドが傷つけられたのか、キッと睨んでいるが、それが視界を閉じているフォースに届くはずもない。
「……や、やれるもんならやってみなさいよ。言っておくけど、ピカにも掬われたことなんてないんだからね!」
「あずちゃーん? 私、あなたのことは一、二回は掬ってるからね~?」
「んなのどうでもいい。さっさと終わらそ……」
ピカの言葉を無視し、手元のポイをもてあそぶ。本人が望んでやっているわけではないからか、少しだけダルそうにしていた。その態度がまた、アズマオウの気に障ったようだ。
「ピカ。確認しておくけど、技以外は何してもいいんだよな?」
「そうね。危ないことじゃないならね」
「…………ふむ」
「何されても掬われるもんですか!」
「ふっ……何されても、ね?」
「………な、何よ」
ニヤリ、と笑って見せるフォースのそれはどこか危険な雰囲気を漂わせていた。その雰囲気にアズマオウは一瞬たじろぐ。その隙をフォースは見逃さなかった。たじろいだ瞬間、ピカと同等かそれ以上の速さでポイを水槽の那珂へと滑り込ませ、自分よりも大きいアズマオウを片手で簡単に空中へと放り投げた。これには放り投げられたアズマオウを初め、見ていたトサキント、店主のフローゼル、周りの人々が驚きを隠せなかった。ただ一人、ピカだけは全てを知っているかのように笑っているのを除いて。
「……! でも! 入らなければ意味はないわ。ピカのように技を当てる? そんなの当たらないように防御すれば…」
「何を言ってる? おれはお前を技を使わずに掬ってやると宣言しただろう? もう一つ付け加えようか。お前は望んでおれのところに来るよ」
「は、はあ!? 随分私のことを舐めているのね! みすみす敵であるあなたの支柱に収まるとでも!?」
「そうだな。……収まるね。だって、おれがお前を狙うと言ったんだ。それはさ、おれはお前がほしいって意味だぜ?」
「………!?」
「ピカみたいにトサキントを狙ってもよかったのに、だ。お前の言う通り、おれはこれをやったことがないのにお前を狙った。もし、金がほしいならピカみたいに手堅くいける。……そこら辺踏まえて考えてみろよ。おれの言った言葉の意味を……な? あずちゃん?」
しゅるり、と目隠しに使っていたリボンを緩める。緩めることで出来たリボンの隙間からアズマオウを見据えた。初めて見るフォースの紅い瞳にアズマオウはビクッと体を震わせる。それは恐怖からではなく、別の何かの感情によるものであることはアズマオウ本人がよく解っていた。
「それともおれから言ってやろうか。それがお前の望みならそれはそれで構わない」
「っ……そ、そんなこと言ったって…」
「何? もう一度、ハッキリと言ってやろうか?」
「や、やめ……!」
「おれはお前がほしい。だから、おれの元へと降りてこい。悪いようにはしねぇよ。たっぷり可愛がってやるよ。My Angel?」
「!!!」
アズマオウを誘うように優しく笑って下で抱き止めるように手を広げていた。言われたアズマオウは顔を真っ赤にさせて、抵抗もなしに吸い込まれるようにフォースの下に置いてあった桶へと入っていった。
「…………マジィ? そんなやり方、ありなの?」
「……口説き落とすとか……いやでも、ちょっとかっこよかった…わ。うん、アズが落ちるのもわかる」
フローゼルトサキントが呆然としている中、ピカはお腹をかかえ、大笑いしていた。
「あっははっ!! 傑作! やばい、これ、女子なら惚れるよぉ!」
「お前は絶対惚れねぇだろ。……ほら、これでいいか?」
緩めたリボンを元に戻すと、地面に置いてあった桶を軽々と持ち上げる。桶の中のアズマオウは頬を赤く染め、ぼんやりしていた。そんなアズマオウをちらりと見て、フローゼルは苦笑を浮かべる。
「うん、はい、大丈夫でーす。……やー……おにーさん、凄いね? 普通、さらっとあんなこと言えるか?」
「? 必要なら誰にだって言ってやるけど」
「うひゃあ……悪っい男だねぇ?」
「彼は手段を選ばないんだよ。必要ならなんでもやっちゃう人」
「あーはいはい。つまり、ピカ嬢ちゃんとおんなじってことね」
「こいつと一緒にされたくはない」
「えー? 素直に喜べよ。フォース君ったら照れ屋さんなのかなぁ?」
「そういうとこ、マジで嫌いだわ」
「あはっ♪ 誉め言葉ね~?」
「……分かった分かった! 喧嘩すんなって。ほら、これが賞金な。にしても、初めてだわ。あんな方法で勝っちまうなんてな」
フローゼルからお金を受け取りながらフォースは首を少しだけかしげる。フォース本人は大それたことをした覚えはなく、単純にあれで簡単に終わるのではと思っただけだった。技も少しは考えたが、よくよく考えてみれば、ピカのように状態異常に出来る技はなく、ほとんどが攻撃技だったからという理由もあった。
「ま、嘘はついてないし、いいだろ?」
「う、うん? そうなの……か?」
「フォース君はついてないよ。あずちゃんがほしいって言ったのも単純に掬いたいなって意味だし。お金目当てっていうより、本当に掬えるのか興味本意だったと思う。最後も変なこと考えてないって意味かな。多分」
ピカの言った推測にこくりと頷き、肯定の意を見せる。物は言いようとはこのことである。
「にしし♪ 儲かった儲かった♪ というか、楽しかったしね。んじゃあね、おにーさんっ!」
「はあ~……今年はやられたわ。ま、祭りを楽しめよ、お二人さん」
やれやれと言うように肩をすくめて、二人を送り出してくれた。トサキントも同じように見送るが、アズマオウは未だに夢の世界へと思いを馳せているようだった。

金魚すくい屋を後にする頃にはかなりの人混みになる時間になったようで、初めに来た頃よりも人の数はかなり増えていた。
「めっちゃ混んできたね~」
「そうだな……人酔いしそう」
「何その新しい酔い方!? ま、もう大体、雰囲気分かったでしょ? 毎年こんな感じだからさ、明日はイブちゃんと楽しんでね」
「……お節介だな、本当に」
「お世話したい人にしかこんなことしないよ。私、面倒はごめんだからね」
「あっそ。……? なんかあっちの方が騒がしくないか? なんかあるわけ?」
「? 特別何かあるようなところじゃないはずだけど……?」
フォースの指す方は一段と騒がしくなっているようで、人だかりさえ出来てしまっていた。二人は互いに顔を見合わせ、そちらの方へと足を向けた。
人だかりへと近づくとどうやら何か揉めているようで、数人の大人と二人の子供がその輪の中心にいるようだ。リボンで目隠ししているために、声だけで判断するしかないフォースは小さくため息をついた。恐らく、大人の方がなにやら因縁でもつけてきたのだろうか。酒も入り、面倒なことになっているらしい。
「しょーもないことで揉めている気がする。おい、ピカ、どーす……? ピカ?」
隣にいたピカの方を見ると返事はなく、さらに近くに彼女の気配がなくなっている。ここまでは一緒に来たはずで、途中ではぐれたとは思えない。となれば、答えは面倒だと察知したピカが逃げたか誰か呼びに行ったか、あるいはこの騒ぎを止めるために飛び込んだかの二択だ。そしてこの場合は、後者だろうとフォースは考える。単純に勘だが、探検隊である彼女がこのような場面を見過ごすはずがないと確信があった。
「おにーさん方、寄って集って子供いじめなんて何しているのかな?」
「あぁ? なんだ、お前は」
「ん? んー……通りすがり? まあ、いいじゃない。私が誰かなんて今は関係ないでしょう?」
フォースの予測通り、ピカはいつの間にか輪の中心に入り、大人と子供の間に割って入っていた。どんな表情をしているのかフォースには分かりかねるが、いつも通りの仕事用の口調で笑顔を浮かべているのだろうか。
「それにしても、質問を質問で返すなんて失礼なことをするのね。……私は答えたんだし、次はあなた達が答える番よ? ここで子供を責め立てて、何をしているの?」
「部外者のお前には関係ないだろうが! 関係ないやつが口を挟むんじゃねぇ!」
「心外ね。今は祭りの場で皆楽しく過ごしているのに、水を指しているのはあなた達の方なのに。揉めるならよそでやってってのが分からないのかな」
「………っせえよっ! 口出すなって言ってんだろうが!! “マッハパンチ”!!」
放たれた“マッハパンチ”は真っ直ぐにピカの方へと飛んでいく。それをみすみす受けるピカでもないのが、避けてしまうと後ろにいる子供達に当たってしまうことになる。そのためかその場から動くことはしなかった。
「先に手、出したのそっちだから。周りに証人もいるし……全く、なんでこんなときまで仕事しなきゃなんないのよ」
ふっとピカの表情から笑顔が消え、真剣な顔付きになる。そして慌てることもなく“まもる”を繰り出す。“まもる”で弾かれたことに対して攻撃してきた……オコリザルはイラつきを見せた。そんなオコリザルにピカは面白くない物を見たように鼻を鳴らす。
「考えなしの馬鹿なのね。……ねえ、攻撃してきたってことは私に喧嘩を売ったのよね? それなら喜んで買ってあげるわ。怪我したくなければ逃げてもいいのよ?」
「戯れ言を言ってんじゃねぇよ。……てめぇ一人に何が出来るっつーんだよ」
「え、その自信はどこから来るの? 世間知らずもいいところよ。……まあ、あなた達に負ける気なんてないんだけれど」
ピカはそう言うと、くるりオコリザル達に背を向けた。そして子供達の方を向いて、その場にしゃがむ。怯えて泣いてしまっている子供……オタチの兄弟の頭を優しく撫でた。
「何があったのかお話出来る?」
「わ、わざとじゃない……わざとじゃないの。その人にぶつかっちゃって……それで…」
「そう。……教えてくれてありがと。怖かったね。痛いとこはない?」
「う、うん……ないよ……」
ざっと見たところ、怪我をしているところはなく、また兄弟が嘘をついているようにも見えない。完全に酔っぱらいのウザ絡みのようなものなのだろう。心が狭い大人なのだな、と哀れみの意味を込めて、オコリザルの方を見た。律儀にもピカの話が終わるまで待っていたのか、怒りで何も出来なかったのかのか……理由は不明だが、オコリザルはピカをじっと睨み付けるだけだ。少しだけ体を震わせながら。その様子を見て、ピカは小さく笑った。
「攻撃してくれてもよかったのよ? どうして律儀に待っているのかしら? まあ、言わなくてもいいわ。私よりあなた達の後ろにいる彼が怖かったのかな?」
オコリザルの後ろをとっていたのは、フォースだった。殺気を出しているわけでもなく、ただそこに立っているだけだ。何の音も立てず、気配も悟られることなく、そこにいるだけ。野生の勘でも働いたのか、オコリザル達はフォースに恐れをなしている。
「ほら、うちのリーダー様のこと、攻撃してもいいんだぜ。……攻撃出来るならな?」



~あとがき~
おわらなーい\(^o^)/
次回に続くよぉ~♪

次回、ピカとフォースパート終わればいいな!

私、フォースのかっこいいセリフとかよくわからない! よくわからないけど、もうこんなんでいいかなって! 考えられないよ!!
あと、面倒は嫌いとか言っておきながら、自ら飛び込んでいくスタイルのピカちゃん。なんか久しぶりですな。よくあるけど、本当に嫌なときはスルーします。多分。

ではでは!