satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第150話

~前回までのあらすじ~
ナイトともえぎ、レンとフォースがバトルしています。いやまあ、レンとフォースはバトルではないか……?
フォース「ここら辺でやっと一回戦、半分過ぎた感じするな……」
ピカ「そうだね。……でも、作者のことだから、どっかで詰まるよ」
フォース「まあ、そうだな」
なんだか、信用がない私。
と、とにかく、始めるか……


ぶんっと尻尾を大きく振るい、風を切る音が響いた。地面に叩きつけるのはあまりしたくはないが、この際、仕方がない。元々、ポケモンは丈夫なのだ。この高さから落ちたとしても、死にはしない。が、フォースは全く動じず、尻尾に掴まったままだった。ぷくっと頬を膨らませて、怒っているようであるが。
「危ないなぁ……落ちちゃうよ」
「落ちろよ! なんで平然と掴まっていられるんだ!?」
「離したら落ちるから……?」
「俺は落ちてほしいの! あぁ!? 上ってくるなよ!」
ぶんぶん尻尾を振っているにも関わらず、物ともせずにレンの背中の方まで上ってきた。結局、レンの妨害を何とも思わず、背中に辿り着いてしまっていた。
「飛ぶのってさ、便利だと思うけど、敵に背中とられたら何も出来ないよね。弱点ってやつ」
「まあ、そうだけど……何かして落ちたらお前も巻き添えだぞ?」
「それはやだなぁ……ほんとは高いとこあんまり好きじゃないんだよね」
好きではないと言うわりには、笑顔を崩していない。何だが、フォースの言うこと一つ一つの真偽が分からなくなってきていた。それが作戦なのかもしれないのだが。
「あーもう! どうでもいい」
自棄になったかのように、翼を大きく羽ばたかせ、乱暴に飛び回った。レンは背中に手は届かない。そのため、背中から引き剥がすためには、フォース自身が手を離すしかない。最早、この手しかレンに出来ることはない。まあ、これも効果的とは言えないのだが。そんなことを考えつつ、飛びながら後ろの様子をうかがうと、フォースは振り落とされないように踏ん張っているところだった。体制を低くし、自分が受ける空気抵抗の範囲を狭めているようだ。
「もう、諦めて落っこちれば?」
「やだよ。痛いじゃん」
受け身も取らずに落ちれば、このスピードと高さだ。いくらポケモンが丈夫だからといって、痛いで済むのか怪しいところではある。一気に戦闘不能にまで追い込めるかもしれない。
「だから、おれも抵抗するよ」
「は……? え、ちょ、まっ!!」
にこっと可愛らしい笑顔とは裏腹にフォースはレンの首を絞め上げた。小さい体にこんな力があるとも思えないくらい、かなり力強いものだ。
そもそも、首を絞めるのにもそれなりの技術がいる。でたらめにやっても意味はない。しかし、レンの首に巻き付くようにして首を絞める少年はそこら辺の心得はあるようで、綺麗に技が極っていた。なぜ、そのような知識があるのかと問いたいところだが、そんな余裕がレンにあるはずもない。
「ばっ……!」
「このままおじさんが気を失えば、真っ逆さまに落ちるから止めろって言いたいの? えへへ。大丈夫だよ。地面に先に叩き付けられるのはおじさん。おれはその上に着地するから♪」
そういう問題じゃないだろ、と突っ込みたい。しかし、声が上手く出せない。少しずつ意識も遠退き、同時に視界も狭まっていく。
「首の骨は折らないよ。……というか、安全に降ろしてくれるって約束してくれるなら、すぐに止めてあげるんだけどな」
こんな状況でもフォースは冷静だった。自分も巻き込まれるかもしれないのに。そんな態度でいられるのが少し、恐ろしくも思う。
レンは意地でも頷いてやるものか、と思っていたのも数秒前。こんな苦しいの、気を失うまでまだ数分もかかりそうなのに耐えきれる気がしなかった。
分かった、降ろす、という意味を込めて乱暴に飛び回ることを止めると、首の圧迫感も消える。それと同時にレンに新鮮な空気が入ってきた。
「げほっげほっ……あぁ……んっ………はぁ。おい。あれ、マジで入ってたぞ……?」
「なぁにぃ? 文句言わないで欲しいな。ちゃんと調節はしてあげたよ。おれが本気で絞めるなら、おじさんはもうお花畑に行ってるし」
「まさか……冗談だろ?」
「んふふ~♪……気になるなら、試してあげてもいいよぉ? 一生、ここに戻れなくなってもいいなら、だけど」
試すと言ったフォースの顔に子供っぽい笑顔はなく、悪魔が面白がって浮かべる……そんな意地悪な笑顔があるだけだった。
数秒の沈黙のあと、やめとくわ、とぽつりと呟く。その方がいいよ、といつの間にか背中に戻っていたフォースが欠伸をしながら答えた。そんな様子を見て、レンはこんな呑気な奴に言いくるめられたのかと肩を落とした。

レンとフォースが空で対峙している頃。
もえぎとナイトも取っ組み合うようにやり合っていた。フォースが軽くでいいと言ったが、そんなことを忘れるくらい、本気にはなっていた。理由は単純。ナイトが煽ってくるからだった。
「ヴァルのオマケかと思っていたけど、んなこともないらしいな!」
「! ヴァルさんのこと、知って、いるんですね」
「まあね」
もえぎの“リーフブレード”を難なく避け、余裕の笑みを見せる。バトル中に相手を煽るのも、余裕を見せるのも、もえぎのパートナーであるヴァルツにそっくりだ。おまけに種族も同じときた。
「まあ、ちょっとした縁があるだけさ。あぁ、兄弟とか家族とかそういうことではないんだか……あいつとは、それに似た何かがあるのかもしれない」
「聞いたことない、です」
「そりゃ、ヴァルは自分のことなんて何も言わない奴だからだろ? そういうとこ、格好つけてると思わね?」
そう言われ、少しだけヴァルツを思い出す。確かにそういうところがあるな、と思ったところで、反射的に回避行動に入っていた。
「流石に簡単にはいかねぇか」
「……」
実力差がある。これは勝てない相手だ。そう直感的に思う。だからこそ、フォースは軽くでいいと言ったのかもしれない。もしかしたら、本気になって倒す必要はないと言いたかったのかもしれない。実力が違うと思ったから。
出方を見たいと言ったのも建前で、本音はそれだったのかもしれない。聞いてみないことには分からないが、教えてくれるとも思わない。
それでも、もえぎがすることは、決まっていた。
「“くさむすび”」
「おっと……アクアと同じ手は食わないよ」
地面から生えてきた草から避けるために、斜め上にジャンプした。けれど、それはもえぎの誘導である。
「私の狙い……こっち、です」
両手に持つ、草で出来た双剣を振るう。“くさむすび”は相手の行動を狭めるためのもので、初めからこれでしか倒す気はなかった。
「おうっふ……! こっわ」
それでも、ナイトは余裕である。命を取らんとばかりに、首もとを狙ってきたもえぎの剣を顎を上げて、紙一重で避ける。そしてそのまま体を反転させて、尻尾で思いきり剣を叩き落とした。もえぎの手を離れた剣は形を保てなくなり、はらはらと木の葉が舞うように消えてしまった。
手ぶらになったもえぎはバックステップで距離を取り、ナイトはしっかりと着地をする。
「素早い回避だな。ヴァルの教え?」
「…………」
「図星って感じか……年頃の女の子に何させてんの? あいつ」
「……あの」
「さっさと倒せって言ったのに抵抗するなって? ははっ……許せって。流石にちびっ子達の前で簡単にやられるわけにはいかんでしょ」
ナイトの言う、ちびっ子とは自分のチームメイトのことだろう。適当にしているようで、そうではないらしい。そこら辺は年長者としての自覚があるようだ。
「そーんなわけで、ごめんな。お嬢さん?」
「この場で、情けは無用……です」
「ほう……それなら、お前らの協定もなかったことになるけどね?」
「……それ、は……」
「また図星だろ? だから、あのイーブイ君の前でやられるわけにはいかないって? 残念だったな。もう、俺は打てる手は打ったんだわ」
ナイトがそう言ったのと同時にがくん、と膝が落ちた。目の前がちかちかして、定まらない。状態異常……猛毒状態だ。
ブラッキーは危険が迫ると毒素を含んだ汗を出すんだよな。……でも、それだけじゃつまらんだろ。だから、剣を叩いたときに“どくどく”をさせてもらった。これが普通のダンジョンなら、道具を使えたんだけど、あいにく、この場は道具使用不可」
言っている意味、わかるよな、と笑いかけた。そしてもえぎは、ナイトにはめられたことを悟ったのだった。



~あとがき~
うっひゃぁ~……なんだこれ。
またフォースの目的……いや、もう、目的なんてなかったんや……!

次回、もえぎのピンチにフォースは、チームメイトはどう動く……?

フォースVSレンはフォースの優勢。
もえぎVSナイトはナイトの優勢。
そんな感じですね。ちなみに、エレキとアクアはエレキを倒したのはフォースってことになるのかな。アクアは交代なので、やられてはいないです。もえぎに押されてましたが。

フォースは簡単に気道塞いでレンを押さえましたが、よい子は安易にやっちゃ駄目よ!?
フォースはあれだから! 慣れてるから、力加減をしていますから! 気絶するかしないかくらいのギリギリなラインを保ってるから!
実際出来るかわかりませんが、フォースなら出来る気がした。普段はダルいとか言ってさっさと終わらせます。多分。

ではでは!