satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第157話

~前回までのあらすじ~
なーさん乱入……いや、乱入ってのは語弊があるね。参戦、か?
ホノオ「見切り発車みたいだね」
何を言うか、ホノオさん。私はいつでも無計画で走る暴走車だぜ☆
ホノオ「おぉ~♪ すっごい降りたいなぁ」
あはは~♪ ほめてもなにも出ませんよ~♪
レン「はっきり拒絶されてるのにポジティブだな」
ナエ「ぬー」
レン「あっ……うん。そーねー……」
んじゃ、始めますね!


がらりと雰囲気が変わったフィールドを笑いながら眺めていた。そこにナエと交代したもえぎが不思議そうに見つめている。
「…………」
「お疲れ様、もえ~」
「あ、はい……あの、そんなに楽しいですか。今の状況……」
「ん? そやね。楽しいよ。うちからしたら、これは他人事やけんね」
まろの返答に特に続けることはなく、すとんと端の席に座る。ここから見る景色はフィールドに出ていたときのものとは全く違う。ここからでは死角も多く、全体を把握することは容易ではない。そんな状況で、フォースやホノオに指示を出しているらしいピカが少しだけ恐ろしく思えた。存在そのものに恐怖したというよりは、ピカの力量が見えてこないことが怖いのだろう。それと同時に尊敬もした。
「すごいひと、ばっかり……だな」
「そら、そぅやろなぁ~♪ ナエと同等の力を持った人ばっかりやもん。そんなところに出とるんよ、うちら」
「聞いてたんですか」
「あはっ♪ 地獄耳やけんね」
「そう、ですか……?」
他愛ない話をしていたが、まろは笑みは消さないまま声だけ真剣になる。
「んふふ。……でも、ちょーっと、ナエは暴走してる気がするんよ」
「ぼうそう」
「そ。理性が飛ぶとかそういうことではないけど。……ま、真面目な人やから仕方なかよ」
そういうと、ぱちんと手を鳴らした。気持ちでも切り替えるかのように、空気を切るように、突然に。
「それがうちらのリーダー。ちゃあんと見とき、もえ」
「……はい」

同僚が観察していることを知ってか知らずか、ナエとホノオのやり合いはどんどん熱を増していた。ホノオの体が大きい分、何をしているのか目で追えないなんてことにはなっていない。なってはいないが、観客達は理解が出来ず、ただただ呆然と眺めるしかないだろう。
しかし、戦っている当事者達はそうも言ってられない。場の空気と自身の勘……使えるものはを使っていく必要がある。
「“かえんほうしゃ”」
ごうっと灼熱の炎を吐き出し、ナエの姿を狙う。しかし、当たるなんて思ってはいない。あくまで、陽動である。ホノオ自身、どう技を使えば相手を動かせるのか、どのようなことをすれば思い通りになるのか知っている。それを直感的に判断をしていく。直感だから、何を基準に選ぶのか聞かれても適当だよ、としか答えられないのだが。
ホノオの予想通りの軌道にナエが動く。炎を避けるために限られた道へと誘われる。それは、恐らくナエも知っていて、そうせざるを得ないが故に、動いているのだ。
「ありがと。そう動くと信じてたよ」
「……ぬぅ」
「“れんごく”」
ナエが逃げてきた場所に火柱が上がる。地獄の門でも開くのではないかと思わせるように高々と立ち上った。逃げられてなければ、ナエはこの中である。効果は抜群で、普通なら耐えられるはずはないがあくまで、普通ならである。
「……ま、この程度でやられるわけないもんねぇ」
“れんごく”に囚われている間にホノオは適切な距離を取り、じっと火柱が落ち着くのを待つ。そんなホノオの側にレンが降り立った。
「やるねぇ」
「えへ。傍観者面のレンに言われても嬉しくない」
「んだよ、可愛くねぇな~? これからどーすんの? このまま追い込むのか」
「出来ることならね。でもなぁ……そう簡単に終わるなら補佐なんてやってないよなって。一筋縄じゃいかないのが君達だろう?」
「ん~……そう評価してくれるのはありがたいけど。お前も大概だよ」
「……? そうかな」
「そうだよ……っ!?」
気づかぬうちに種を植え付けられ、その種から生えてきた芽がレンの体にまとわりつく。
「“やどりぎのタネ”……いつやられた」
「今、じゃない?」
すっとホノオが指差す方を見ると、火柱に囚われていたはずのナエが火柱の前に立っていた。所々火傷の痕があるが彼にとって些細なことだったようだ。
「くっそ……じわじわくるやつじゃん。嫌らしい」
放っておけば、レンの体力はナエに吸いとられていく。つまり、ホノオだけを相手にしているわけではなく、レンも攻撃対象であるという意思表明のように思えた。レンの状態を観察しているとふと、レンが連れ出したトパーズの姿がないことに気がついた。ホノオは辺りを見回すが、姿はない。
「トパーズくんは?」
「あぁ? あら、いつの間に……?」
どうにか芽を取り除けないかと奮闘していたレンから間抜けな声が発せられた。奮闘したところで取り除くことは不可能に近いのだが、それはレン自身も分かっているのだろう。
「ぬぬぬ」
助走のモーションもなく、ナエはその場から消えたように攻撃体制になる。誰に向かってくるかなんて、分かりきってきた。そしてその軌道も予測出来ている。ホノオは後ろに飛び、背後に向かって何かを受け止めるように腕を突き出す。
「大丈夫大丈夫。忘れてなんかないよ」
「ぬぅ……」
がっしりとホノオに掴まれ、ナエは少しだけ呻く。しかし、これでは終わらなかった。ナエの周りに無数の木の葉が舞い、次第に竜巻のように巨大になっていく。ここでホノオはパッと手を離し、距離を取る。
「“リーフストーム”……物理攻撃ばっかりしてくると思ってたっ!」
「……ぬんっ!」
ナエの掛け声と共に“リーフストーム”はホノオ目掛けて飛んでくる。草タイプの技とはいえ、強力な技だ。まともに食らってしまえば、今後の戦いに支障が出かねない。そう思って距離を取り、炎技で対抗しようと正面を向いた。
「ぬー」
少しだけ、嬉しそうに笑う。意味が分からず、ホノオは困惑した。なぜ笑っているのか、理由を考える。まだ策があるからなのか、それとも別の考えがあってこそなのか。あるいは、自分の思い通りに事が進むからなのか。ここから離れるべきか、突っ込んでナエが繰り出す何かを未然に防ぐか。ホノオはここまで考えて、ぐらりと地面が揺らぐのを感じた。
「っ!? これは……!」
ナエトルが使える、地面タイプの技。“だいちのちから”であった。地面がホノオに向かって地面が岩となり、牙となる。回避行動に移る前にまともに食らってしまい、視界が揺れる。そんな状態で回避出来るはずもなく、今度は目の前に迫る“リーフストーム”を受けるしかなくなった。ホノオはナエの思惑通りに動いてしまったことに、全て受けたあとに悟った。
「げほ、げほっ……いっつ」
「ぬ~」
「あーすっごい嬉しそう。……んー……思考が追い付かなくなってきたな」
ナイトとのやり合いは、お互いのことを完全に熟知した状態で挑み、考える必要はあまりなかった。ホノオは元々そんなタイプではあったが、思考していないわけではない。ただ、体が勝手に動くだけである。しかし、ここに来てナエの登場で反射神経だけでは勝てないことに気づいていた。それほどナエの強さが身に染みたし、レンの反応を見ていても察することが出来ていた。どのような手がいいのか考えて、ずっと動いてきた。そんな戦い方を今までしたことがないホノオは、慣れないことをして、思った以上に消耗しているのだ。判断力が落ちてきている。
「俺は、ピカちゃんやブイじゃないもんな……考えるのがウザったくなってくる」
ここからは直感で、いつも通りに動くしかない。その方がまだ勝機はありそうである。そう切り替えた途端、頭がすっきりしてきた。
「んっ……はぁー……さて。抜け駆け禁止、だよ? トパーズくん!」
「うわっ!?」
だからこそ、ずっと気配を殺し機会をうかがっていたトパーズの奇襲にも気づけたのだろう。トパーズが突っ込んできたところにタイミングよくパンチを繰り出していた。もろに受けてしまったトパーズは簡単に吹き飛んだ。
「……ぬん」
「あはっ。色々考えるのやめるね? だって、そんなの俺じゃないもん。俺の戦い方じゃない。複雑な思考回路はいらないんだ。俺の役目じゃないから」



~あとがき~
長くなってしもうた。ごめんなさいね!
なんだか、ホノオとナエメインですね。トパーズとレンの影の薄さヤバし。

次回、まだまだ続くぜ! ホノオVSナエ!

なんか、あれですね。レン、何してんのって感じですね。あいつは何しきたんや……? フォースにやられ、復活したと思ったら、もえぎに手足縛られ、ナエに“やどりぎのタネ”植えられ……いいところないですね。多分、これからもないですね(笑)
本人、やる気ないんで適当なところで帰りたいんだと思います。抵抗も必要最低限しかしてませんし。いや、頑張れよって感じですけどね!

ではでは!