satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第180話

~前回までのあらすじ~
カイやエルン達の話でした。大変やで。
今回は新キャラさん、ヴァルツ出すぞ! もえぎと出すぞ! わーい!!
ピカ「それだけで一話持つのか」
わかんない! 頑張る……
ピカ「お、おう……なんか語彙力低下してない? 大丈夫?」
うん。駄目……ピカさん、早く復活してくれ……
ピカ「……もう少し寝てようか」
やめてぇぇ!!!


人気のないところを歩いていた。花火が上がっているのは音がしているし、なんとなく見えていたから知っている。実際、観賞したことはないが。
人がいないところを警備しても意味がないと思うのだが、このようなところを歩いているのにも理由がある。
「ヴァルさん、本当にこっちですか……?」
「……ん」
もえぎに背負われ、顔を上げることもしないヴァルツ。もえぎはヴァルツに言われるがまま歩いているに過ぎない。ナエによって、半ば無理矢理ここへと呼ばれたらしく、最高に機嫌が悪い。元々、体調も悪かったのもあって、ここへは来る予定がなかったのだ。
「その状態で……その、大丈夫ですか……?」
「大丈夫に見える?」
「……全く見えません」
「じゃあ、そういうこと」
男の割には体重は軽く、もえぎは度々心配にもなるのだ。本人は、生きていれば問題ないとさらりと流している節はあるが。
「何も……ないといいですね」
「……んなわけねぇよ。確信があったから、ナエが呼んだ。……俺が必要なるって踏んだんだ。これでなんもなかったら」
その先は何も言わないが、なんとなく、察することは出来た。
しばらく歩いた後、もえぎはぴたりとその足を止める。どこか違和感を感じたためである。先程と大して変わらないはずなのに、どこかがおかしい。その違和感が何かとは明確に言えない。もやもやが気持ち悪くて、助けを求めるようにヴァルツの方をちらりと見た。
「ヴァルさん」
「ふぃーの勘、信じる。降ろして」
言われたままヴァルツを降ろすと、思ったよりもしっかりとした足取りで数歩前を歩く。体調が悪いのは嘘だったのかもしれないなんてぼんやりと思う。
「来い、マリー」
『はい。我が愛し子のために♪』
ヴァルツの手に現れたのは四十センチ程の剣。刃こぼれ一つなく、装飾もどことなく王宮にありそうな豪華なものである。言ってしまえば、新品であると思わせるほどのそれをストンと足元に垂直に落とす。
マリーと呼ばれた神器を無造作に扱うが、マリーは大して気にしていないようで、ヴァルツが望む行為を命令されることなく遂行する。
「構えとけ、ふぃー」
「は、はいっ! “リーフブレード”!」
武器を構えるわけにもいかず、葉っぱで作り出した草の剣を二振り構える。どこから来てもいいように警戒を怠ることはしない。
マリーは敵の姿を探しだし、どこいるのかどういった相手なのか等情報を割り出す能力を持つ。ここ周辺を探知し、特定の人物、或いは危険のある人物を探し出すことも容易である。
『愛し子よ』
「なんだ」
昔からだが、マリーはヴァルツのことを愛し子と呼ぶ。もえぎがマリーの存在を知ってからずっとそうなのだが、何か理由があるのかは分からない。ヴァルツも何も言わないため、直すのも面倒なのかもしれない。
『地の奥から、強い源を感じます。何か産み出そうとする……そんな力でしょうね。人ではありませんが、人に似た何かを産み出そうとしています』
「自然がんなことするわけねぇよなぁ」
『はい。大地は大いなる力を持ちます。しかし、これは明らかに人為的なもの……そう、言うなれば悪意、でしょうか?』
「悪意……自覚されようがされまいが質が悪い」
地面に刺さったマリーを引き抜くと、ペン回しでもするようにくるくると器用に弄ぶ。何か思考するときのヴァルツの癖であった。
『悪いことは言いません。ここから離れるべきです。私は、あなたを失いたくはないのですよ』
「別に死ぬつもりはない。……が、お前がそう言うなら、そんな場面に出会す可能性があるんだろうね。……ふぃー、何か感じるか?」
「ひゃいっ! えと……んと……」
必死に感覚の糸を手繰り寄せる。ここは木々に囲まれているため、草タイプのもえぎにとってはホームのようなものだ。街中や洞窟なんかより、ずっと敏感になれる。そして、ある一点に目線を向ける。
「あっ……あそこ!」
指を指した瞬間、どこからともなく、ゆらりと人影が現れた。距離はあるから、先制攻撃を受けることはない。注意深く観察をする。どのようなポケモンなのか、タイプはなんなのか判断が出来なかった。見たこともない形をしている。もえぎの知識にないものなのか、見当もつかない。
「……ビンゴ。流石だな」
「ヴァル……さん、あれ、なんですか……?」
「知らん」
情報屋のヴァルツですら、知らないと言う。その割には落ち着いていた。そして、次の言葉にもえぎは更に混乱してしまう。
「つか、人じゃないな。……“シャドーボール”!」
マリーを持っていない方の手でエネルギーの塊を作り出し、敵が現れた方角へと飛ばす。敵は避けることもなく、技を受けた。倒すまではいかなくとも、ダメージは与えられるだろうと思ったのだが、全く動じておらず、ゆっくりとこちらへ近付いてきた。
「ヴァルさんの、効いて、ない?」
「あー……そうくるか。逃げるぞ」
「に、にげ……? でも、逃げたら、あれ、皆さんを襲います……!」
「ほっとけば襲うだろうな。そうならないために作戦立てる。……まろに連絡を入れよう。ってことで、おぶって」
「そ、それは、いいですけど……マスターじゃなくていいんですか?」
剣を腰に装備するためのベルトに“リーフブレード”を納める。消してしまってもよかったのだが、何かあったときのためにすぐに攻撃出来るようにしておきたかった。そして、ヴァルツを背負うと、彼の示す方向へと走り出す。もえぎの疑問には答えることなく、まろに連絡を入れ始めた。
「俺だ。……お前んとこも出た?」
『分かってるなら、連絡なんかせんどいて! 今、忙しいんやけど!』
通話の奥の方で騒がしく音が聞こえる。戦っている音なのだともえぎは判断した。ちらりと後ろを見ると、いつの間にか数が増えていたようで、こちらにむかってゆっくりとだが近付いてきていた。両手は塞がっているため、攻撃をして、牽制することは出来ない。どうすればいいのか聞きたくても、ヴァルツは何も気にしていないように淡々と話していた。
「怒るなって。普通の技じゃ効かねぇんだ。推測だがな、確実に殺れる方が勝機はあるよ」
『殺るぅ? 武器使えって?』
「端的に言えば。その許可取ってこい。俺が言っても楽したいだけとか思われそう」
『……分かった。三分、時間ばちょうだい』
「いいよ。よろしく」
「ふえぇぇ!! ヴァルさん! 後ろぉ……」
泣きそうな声で訴えるもえぎ。まろとの連絡を切ったヴァルツはちらりと後ろを見る。
「ははっ……ゾンビ映画か何かかよ。あれに捕まったら、俺らも晴れて、ゾンビの仲間入りってか?」
「そんなのやですぅ……!」
「ん。俺も嫌だよ。……なりなくなけりゃ、全力で走れ~? ふぃーの足にかかってるぞ~」
「うーっ! 自分は走らないからって」
「いつものことだろ。……あー、しょうがねぇなぁ。マリー、行けるか」
『うふっ♪ 愛し子の命とあらば』
「よし、行け。三分でいい」
『承りました』
後ろに向かって、マリーを放り投げる。くるくると回りながら飛んでいく剣は、瞬く間にブラッキーへと姿を変えた。その優雅な立ち振舞いに、どこかの姫のような雰囲気を持ち合わせている。
「私、お二方の足止めを務めます。神器のマリーと申しますの。……私のお相手、してくださる?」



~あとがき~
これで……一周……?

次回、ポチャに視点を戻して、敵と遭遇したその後をやります!
意外と長いぞ……?

わー! ヴァルツの簡単キャラ紹介します!
ヴァルツ(ブラッキー・♂)
年齢は二十代前半。エルンが親方をしているギルド所属の情報収集担当。もえぎのパートナーで幼い頃からなんとなく見知った間柄。幼馴染みと言える程、仲良くはなかった。彼女を「ふぃー」と呼ぶ。
性格、装備等々は本編の通り。
神器と呼ばれる短剣、マリーを所有する。今は所有していないが、別の神器も同時に所有していた時期があり、その後遺症で病弱になってしまった。

こんな感じ! 本当はもう少し込み入った設定があるんだけども、もういいです! 無視!
無視というか、ここではどうでもいいですね。はい。とりあえず、もえぎのパートナーで、エルンのところのブレーン的ポジションのヴァルツをよろしくお願いします。プクリン親方のところのピカみたいなポジションですね。この人。

ついでにマリーも!
マリー(♀っぽい)
上品な話し方をする短剣(って言えるほど、短いか微妙だけど)の神器。ヴァルツを「愛し子」と呼び、彼が小さい頃から所有者と認めていた。
能力は感知能力。ある特定のものを瞬時に探し出して、その固有情報を引き出す。人なら種族、所有している物、年齢から細々したものまで見抜く。
ヴァルツのことが大好きなので、代償はいらないらしい。

マリーはあれね……お母さんというよりは、お姉さん……? なのかな?
そんな二人をよろしくね!

ではでは!