satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第181話

~前回までのあらすじ~
ヴァルツともえぎでした。武器使用を求める、ヴァルツの真意はどこにあるんでしょうか。
もえぎ「ヴァルさん、いいんですか……? 無抵抗? というか、武装してない人に武器使って」
ヴァルツ「ふぃーはゾンビにも手加減するんだ? 偉いねぇ……自分も巻き込まれるしかないのに、痛いのは嫌だもんねって手を抜くのか」
もえぎ「ふえっ!!??」
なぜゾンビ……?
ヴァルツ「攻撃してもピンピンしてたから」
お、おう……
んでは、始めるかね……


ポチャの放った水の矢は、全て敵に命中した。射たれた敵達は後ろへと仰け反り、その後ろにいた敵まで巻き込んで玉突き事故を起こしていた。
それでも当たらなかった敵はいる。ポチャの攻撃を運良く回避したもの達は一斉にポチャの方を見た。睨まれたわけではなく、ただただ見られただけ。それだけなのだが、無数の目、それも無機質な目を向けられて、平然と出来るわけがなかった。
「生気を感じない……? いや、それよりも」
標的が自分に変わったことを危惧すべきだ。
敵達はどんなポケモンは判断出来ない。様々な形が混じった異形なものと言うべきか。作りもののような無数の敵をどう対処すべきなのか、そのような知識をポチャは持ち合わせてい。だから、彼のすべきことはひとつであった。幸いにも、敵の注意は自分にある。
「ここから先、行かせるわけにはいかないんだよね。……“ふぶき”!!」
力一杯、これ以上にないくらい広範囲に冷気をぶつける。マイナスの冷気を当てられ、何もないわけがなかった。体の端から少しずつ凍り始め、相手の自由を奪う。それでも進もうとする敵に負けないように力を込める。
粗方、動きを封じると、周りにいた仲間との情報共有を行う。とはいえ、コンやチルから聞かされたものと大差なかった。
「どうしますか? あいつら、やっつけても時間が経つと復活するみたいで……」
「復活、ね。何かトリックがあるんだろうけど……ぼくがこの場を離れると、対応しきれないだろう?」
ポチャの言葉に申し訳なさそうに頷く。敵の足止めを行ったのはポチャ一人だ。ここで彼が別のところへ行ってしまえば、次はないかもしれない。それに気付いているのだ。しかし、ポチャ自身もこのあとはどうしたらいいのか分からなかった。足止めは出来ても、倒すことが出来ないのならば、どうすればいいのか。倒す方法があるのかも分からない。方法が分からないのなら、離れるわけにもいかなかった。
手をあぐねいていると、通信が入った。相手は全体の指揮を執るプクリンからだった。ポチャだけでなく、周りにも通信を送っているらしく、それぞれが通信機を持っていた。
『四天王の総意の元、武器使用が認められたよ。ただし、銃は殺傷力が強すぎるから禁止! 相手を捕獲出来るならしてほしいけど、安全第一でよろしくね~♪』
場違いな明るい声にポチャは苦笑が漏れる。誰からかの進言で武器を使えるようになったらしい。が、ポチャは武装をしていないのに武器で戦うことはしたくなかった。一方的に襲ってしまうのは、闇組織と同じことをしているのと同意であるためだ。
これはポチャの考えであって、周りはそうではないらしい。認められたのなら、使ってしまおうという考えの者が多いようだ。それぞれ、武器を出し、準備を行う。ここら辺一帯は未だに動く気配はないが、いつ動くか予想が出来ない。
「……君達は他を当たってくれ。ここはぼく一人でなんとかするよ。今は動きを止めてるし、動き出しそうなら止める手立てはあるからね。他はそうじゃないかもしれないし、手伝ってあげて」
その言葉にこの場にいた者達は四方に駆け出していった。素直な人達でよかったと内心ほっと息をつく。「一人では危険です」なんて言われてしまえば、どうかわせばいいのか戸惑ってしまう。
「セツ、ここの冷気をコントロール出来る?」
『あいあいさー!』
氷の剣、セツこと雪花を呼び出し、ポチャが動きを止めた敵達を任せる。剣の形はもうどこにもなく、空気と解けてしまったらしい。その証拠にぐんっと体感温度が下がる。夏なのに肌寒いと思ってしまうくらいの温度だ。ポチャがそう感じるのだから、慣れない人が近付けば寒いと感じることだろう。セツを使ったこれは、周りに人がいると使うことが出来ない。出来ないと言うよりは、寒さに耐えられる人の前でならしてもいいのだが、今回はそうではなかった、が正しい。
「これで足止めになればいいけど、これが出来るのも限られた範囲。ぼくはここから動けない……じっくり見てみるか」
凍って動かない敵に近付いて、じっくりと観察をする。このポケモンだとはやはり言えなくて、見たことがない異形の人形でしかないと感じる。
「人体改造……なんてそんなことしてないよね? 流石に道徳に反するというか、人道から逸脱してるもんね? 違うよね……うん。ないない」
とは言うものの、ポチャに判断する知識はないし、否定出来る情報もない。そのことがぐるぐる頭を駆け巡る。
『どーしたのー? だいじょぶ?』
「あぁ……お前のご主人は、キャパオーバーで大変なことになってるんだ。無駄話なんかで話しかけるなよ」
『あうあう。たいへんらー』
セツはそれだけ言うと黙る。色々とお喋りな剣ではあるが、主人には忠実なのだ。神器ではないため、代償もない。お喋りなところを我慢すれば、それなりに扱えるのだ。あくまでもそれなりにだが。
「何で出来てるんだ……? 本当に人だったらどうしよう」
仮に人だったとして、疑問に持たざるを得ない点がいくつかある。一つは復活の件。道具を使えば説明がつくが、それにしても、数が多すぎる。それほどの道具を揃えられる気はしないし、難しい話だ。二つに敵の数。これだけが一度に現れる技など思い当たらないためだ。三つに無機質な目。いくら死んだ目をしている人がいるからと言って、全員が全員、そんな目をしているのもおかしな話。また、ポチャの手で凍らされているというのに、悲鳴一つ上がらなかった。一瞬に凍らせたのなら、声一つ上げられないが、今回に限ってはゆっくりと時間をかけてしまっている。恐怖で声が漏れても不思議ではないはずだ。しかし、それがなかった。
「生きて……ない、のかな。それなら武器で倒しても問題ないし、捕まえる必要もないけれど」
今では彫刻のように固まってしまっているそれを見ても、答えは出ない。結局のところ、判断材料がないのである。
『てぃー! ななめ! まえ!』
「!? スイ!」
『はーい!』
セツの忠告で咄嗟に、もう一振りの名前を呼ぶ。反射的に剣を振るい、不意打ちの攻撃を流した。瞬時に後ろに飛び退いて相手との距離を取る。次なる攻撃に備えるが、ふっと緊張を解いた。
「何してるの……ピカ」
ポチャを攻撃してきたのはピカだった。いつも通りの格好で、普段の彼女が立っていた。あちらも驚いているようで、ぽかんとしている。武器は持っていないところを見ると、すでに納めた後なのだろうか。
「寝てたんじゃないの? 起きるの早くない?」
「そうかなぁ? あたし、結構寝てたと思うけど。君の体内時計壊れたんじゃない?」
「……ピカが言うならそうかもね。もういいの?」
「うん。早く合流しようと思って、適当に走ってた。見つかってよかったよ♪」
そう言って、ピカはにこっと笑う。ポチャはちらりと周りを見つつ、話を続けた。
「そうなんだ。見ればわかるけど、大変なことになってて。説明するのも億劫なくらいなんだけど」
「あはは~……ま、ここに来る間にも見かけたからね。なんとなくは分かってる」
「そっか。それなら話は早い。……ところでさ」
「うん?」
ポチャは一呼吸置いて、ピカを見る。……否、鋭く氷のような冷たい目で睨み付けた。
「……お前は誰だ?」



~あとがき~
なんだか、最後で『〇の名は』的な台詞が飛んでる気がするんだけど……? まあ、いいや。我らが主人公、ピカの登場です。

次回、ポチャ視点で続きます!

ポチャ、一人になると、とことん口調が強気に聞こえてくる不思議。案外、こっちが本性なのかも? いや、知らんけど。

セツの本当の名前って言うの? それを出しました。もしかしたら、初めて? かも?
実は私も全く覚えてなくて、セツは「氷華」(読み:ひょうか)と書きましたが、あっているのか謎です。「雪華」(読み:せっか or せつか)だった気もするんです。読みすらも曖昧な私。ヤバイね。スイ、セツ呼びが定着してて、私の中で真名がどっかいってる……
ちなみにスイは出なかったけど「水泉」(読み:すいせん)です。これは自信ある。というか、ちゃんとメモしろよ私……! どこかにメモ! しろよ!!
まあ、いいや。見つけたらそれに直しておきます。なかったからこれで固定だ!「氷華」「水泉」ね!

(2018.5.19 追記)
調べたら氷華じゃなくて雪花やった。花の字すら合ってなかった。もう駄目だ……
本編は雪花に直しました。読みは『せつか』です。

ではでは!