satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第182話

~前回までのあらすじ~
ポチャがなんとか敵を足止めして、ピカ(?)が登場した辺りです。関係ないんだけど、お祭り編、五十話くらいやってます。三日あるとはいえ、五十話って……嘘だろ……
ピカ「百はやらないだろうけど、それぐらいはいきそうだね?」
ポチャ「三日目が濃厚すぎるんじゃない?」
それな……マジそれな……
ピカ「後悔しても遅いんだよ」
ポチャ「このあともバトルたくさんあるのにね」
ピカ「分かるわ。ポチャ、鶴の一声お願いします」
ポチャ「始まったものは仕方ない。最後まで一緒に走ろう?」
あ、あい……! 走りますぅ!!


誰だという言葉を聞いて、彼女は戸惑う。何を言い出しているんだろうか、と言ったように表情に出ていた。
「……だ、誰って……え、急にどうしたの?」
「理由はいくつもあるよ。……ピカは寒いところが苦手なの。今、この場所は雪が降ってもおかしくないくらいに気温が下がっている。そんなところにいつもの格好で来れる訳がない。マフラーくらい準備するか、開口一番にぼくに何とかしろって叫んでるところだ」
スイを構えて牽制をしつつ、淡々と述べる。
相手の一つ一つの動作が、目の前の人はピカではないと告げていた。
「何年も一緒にいるぼくに向かって、『君』はないよね? もちろん、全く使わないとは言わないけど、ピカは基本的には名前呼び。次に困っている人や仲間をスルーしてまで、真っ先にぼくのところには来ないし、走って探すなんて無駄なこともしない。バッジ使って探すし、連絡を入れる。大体さ」
スイを一文字に斬る動作をする。彼女は危険を察知したのか、横に飛んで回避動作を見せた。それを目で追いつつ、冷静にかつ冷たく言い放つ。
「相棒の一人称は『私』だ。……似せるつもりがないなら正体を表せ」
「……あは。付け焼き刃じゃこんなものだよね。周りは騙せても、流石にパートナーは騙せない。もう少し情報があれば、ちゃあんと演じてあげられたな。反省」
見た目はピカで、口調もほとんど彼女なのに、本人でないと分かった今、違和感しかない。彼女はポチャの真正面に立つと、にこっと笑った。その笑顔すら、嘘臭く感じてくる。
「でも、ここではピカとしているよ。そっちの方が面白そうだからね。君に言われた通りに……いや、ポチャに言われた通りにやってみせるからさ♪」
「偽者だとバレたのに、する必要なんてある?」
「あるよ~! あるある! ポチャの動揺が誘えるじゃない? 今だって、なんで私がここにいるのか、すっごく考えてる。頭フル回転って感じ。見て分かるもん」
ポチャに指摘された部分を直し、ピカを演じてみせる。彼女の目的は読めないが、それならもう少し会話を重ねようと思った。きっと、リーダーの彼女ならばそうするだろうと。
「で、何がしたい? お前は『ヴァンガル』の一人ってこと?」
「えぇ? あんなちっぽけなところと一緒にしないで。闇組織とは一切関係ないんだから」
両手で何かを払うような仕草を見せ、否定してきた。その発言に嘘があるようには感じないが、本当のところは分からない。
「あ、ごめん。一切関係ないっていうのは言い過ぎかな。でも、そこまでの関係はないよ。一員でもないことは断言する」
「最初の質問には答えないのか」
「せっかちだなぁ~……私は何も知らないの。ただ、ある一帯で制御が効かなくなったから見に来ただけだよ。……あ、聞かれる前に答えとくけど、制御してるのは私じゃないからね?」
制御をしているということは、この無数の敵達は彼女の仲間がしていることであると断言していいだろう。
「止める権限もなさそうだね……とりあえず、お前がぼくの敵だってことは認識したよ」
スイを構え直し、彼女に向かって斬りかかる。彼女はどこから取り出したのか、小さなナイフでポチャの攻撃を受け流した。
小回りの利くナイフは大きな動作なしでも攻撃することが出来る。しかし、大した威力は望めない。使いやすさはあるものの、殺しには向かない武器である。そんな武器を手にしているが、彼女はくるくるとその場で回り、楽しそうに笑った。
「あっはは♪ 力入ってないよ、ポチャ。こんなおもちゃで、どうにか出来るくらい手加減してくれてるの? あぁ、違うか」
ぴたりと止まったかと思うと、息がかかるくらいまで一気に近付いてきた。怪しい笑顔と共に。
「……私のこと……ううん。ピカのこと、斬れないんだよね。それが君の心の弱点。闇の部分」
「……」
『てぃー……?』
スイの心配する声が響く。ポチャは後ろに回避したくとも、動くことが出来なかった。過去に自分の失態で、ピカを傷付けてしまったことがあった。それも、かなりの大怪我を負わせてしまったのだ。その事件があって、しばらくはまともにピカの顔は見れなかったし、探検隊を辞めようと決心してしまう程にトラウマとなってしまっている。
その件がポチャの中で、解決なんてしていなかったのだろう。ずっと思い出さないようにしてきたし、二度と起こさないように鍛練をしてきたつもりだ。それでも体は正直なものらしく、ピカではないと分かっていても、反射的にあの一件が頭を掠める。
とんっと彼女に押される。よろよろと数歩下がり、そのまま膝をついてしまった。視界が狭まり、呼吸も浅くなる。息の仕方を忘れてしまったように、でたらめに吸って吐いてを繰り返す。
『てぃー! あのひと、ぴーじゃない。ぴーじゃ、ないんだよ!』
「分かってる……けどっ!」
「うんうん。大切な人を簡単に斬れるわけないよね。……私はね、ポチャ」
「やめろ……!」
何を言われるのか分かってしまい、掠れた声で悲願するように叫んだ。一度も本人には言われたことはない。言うはずがない。それでも、どこかでこんな風に思っていたらと、思わないでほしいなんて都合のいい解釈をしていた気持ちがそのまま、この場に伝う。
「痛かったよ。体も、心も。……知らなくていいものを知った気分だった。ねえ、どうして私を助けたの、ポチャ? どうして、一思いに殺さなかったの? 二人で苦しんだのはどうして? どうして、まだ私の前に、横に……後ろにいられるの?」
あのときのピカは、ポチャを突き放すことはしなかった。脱退を申し込んだ時だって、抜けるなと叱咤されたのだから。自分の横にいろと、隣に立っていろと泣きながら言われたのだから。
だからこそ、今の言葉はポチャが言われたらどうしようと、思っていたらどうしようと、不安が呼び起こしたものである。
「ねぇ……答えて? 私はポチャの質問に答えたんだもん。次は君の番、でしょう?」
「ぼく、は……」
そのあとの言葉は続くはずがなかった。答えが出ていたら、目の前の敵が言うはずがないのだ。
「黙りなんだ。そうだろうとは思ったけどね。じゃあ、私が一つの答えを提示しよう」
力なく項垂れているポチャに、ナイフの標準を合わせる。真上から、重力に添うように振り下ろそうとしていた。
「死んじゃえば、考える必要もないよね? 今、楽にしてあげるから」
『てぃー!』
スイやセツは剣以外に実体化することは出来ない。神器ならば、体を作り、守ることが出来るのだが、二振りにはこの瞬間、場面を黙って見ることしか出来なかった。



~あとがき~
トラウマってやですよね。
私もあるんですけど、一生克服出来ないと思っています。ほんとに。

次回、このままポチャをどうにかするかぁ……
別視点でもいいけど(笑)

あーあー……偽者暴くまではかっこよかったのにね。形勢逆転? してます。これだから、ポチャ君は!
ポチャ「……えっ!?」

ピカの寒いの嫌いなのは初めて明かした? どっかで言ったかもしれない……? まあ、いいか。ピカは寒いの嫌いです。
ピカ「雪山ダンジョンで、通常装備なのに平然としてるポチャの頭がおかしいと思う!」
ポチャ「ぼく単体!? 大体、ピカが寒がりなだけだよ!」
ピカ「人が行くところじゃないから! 死にに行くところだから!!」
ポチャ「原住民に謝れ!!」

ピカとポチャの過去の話ははじソラで詳しくやるとは思うんですけど、ポチャの過去編でちらっと語っています。今回の話の中でもさらっと概要は書いたので、察することは出来ますよね! そういうことだよ!!((←
要約すると、ピカのことを怪我させて、ポチャが死にそうなくらいに思い詰めたことがあったって感じですな。ピカ(本物)の口から責められることはなかったんですが、仮に責められたらどうしていたのか、どうすればいいのかと、心のどこかで抱えていたことをピカ(偽者)言われた感じです。
……本物偽者ややこしいな。
本物はいつ復活するんですかね……(無計画)

ではでは!