satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第183話

~前回までのあらすじ~
偽者ピカとポチャの戦いでした。今回も引き続きお送りします!
ポチャ「もうぼく、無力なんだけど」
そうだね。……短い人生だったね!
ポチャ「……ん? 作者の中で今、殺された?」
さようなら! 忘れないよ!!
ポチャ「悪乗りし過ぎだからね!?」
大丈夫。救世主は現れるからさ!
ポチャ「え、えぇ……?」


ポチャに振り下ろされるナイフをぴたりと止める。止めざるを得ないと言った方が正しいかもしれない。何者かの気配を感じ取り、邪魔されたのだ。彼女はポチャから離れると、頭上を見上げた。そこで落ちてくるある人物と目があった。
「うわっ!」
「よぉ……ご無沙汰」
カイリューに変身したウィルから飛び降り、フォースはそのまま攻撃を仕掛ける。
「“ソード”!」
「んあぁあっ! あんたに見つかるなんて運がないわ! というか、なんでいるのよ!」
フォースの斬撃をなんとかかわしつつ、文句を言う。そんな文句を受け流して、嵐のような攻撃を続けた。
「すぅ! そっちは頼んだ!」
空にいるイブに声をかけると、もう一振り剣を増やす。二振りでさらに攻撃回数を倍以上にする。流石に小さなナイフ一つで受け流せないようで、全てを避けることは出来なくなっていた。
「ポチャさん! 大丈夫ですか!?」
「イブ……? 皆、どうして」
フォースが敵をポチャから引き剥がした瞬間を狙って、イブ達が空から地面に降りてきた。ウィルはカイリューからイーブイへと姿を変え、フォースが戦っている方角を見つめている。
「戦ってるかーくん、格好いい……!」
「フォースがこの敵を出した人を捜してたんですけど、その途中で知った気配を見つけたって言うので、そこに向かったんです。そうしたら、ポチャさんがいて……」
「でも、あの人、ピカさん……? いやまあ、すーくんが言うんだもん。偽者さんなんですよね」
イブ達はある程度の状況は察しているようで、目の前のあの人がピカではないことを理解していた。
四人が乱入したことで、そこそこ落ち着いてきたポチャは息を整え、ゆっくりと立ち上がる。
「容赦ないな……フォース」
「かーくん、容赦ないタイプだからね! 俺も同じタイプだから、安心してね~♪」
「その台詞にどう安心しろと……?」
親指を立てて、自信満々な表情を見せる。能天気なウィルを見ていると、いくらか気持ちが楽になった気がした。ふっと息を吐き、フォースの方に目線を移す。
彼の攻撃に押されたのだろう。地面に倒れ、フォースのことを見上げている。一方のフォースは普段と変わらない。トレーニングでもしている感覚なのかもしれない。持っていた剣を消すと、ぐっと背伸びをした。
「お前、その姿で何をしたいわけ? ペンギンのこと、殺すつもり? それならおれらが来る前に機会あっただろ?」
「……まあね。誰かを殺すなんてこと、するつもりはなかったよ。だから、彼を殺すつもりもない。……けど、あんたは別。この前の借りは返す!」
「ははっ♪ 返せるものならどうぞ?」
二人の会話に関して、ポチャは全く心当たりがなかった。フォースは彼女の正体に目星がついているようだが、イブやチコ、ウィルもポチャと同じように誰だか知らないようだ。
「ってことだから、ここはおれ達でなんとかする。四人いるし、周りの敵も対応出来るし。お前はここから離れろ」
こちらを見ることなく、ポチャに指示する。
フォースは、ポチャの状況を見て、そう判断したのだろう。この場に彼のやれることは何もない。実際、フォースが乱入していなかったら、どうなっていたのか想像するに難くない。
ここは素直に従った方がいいのだと。
「分かった。ここは任せるよ。……戻れ、セツ」
冷気となってこの場に漂っていたセツを呼び戻し、剣の形へと変化させる。そして、そのまま離脱した。向かう宛などないが、とにかく、ここから離れたいと切実に思ったのだ。力が足りないと感じるのと、自分のパートナーを信じてやれない己の弱さを呪いながら。

フォースはポチャがここから離脱したのを確認すると、ピカの偽者から離れる。イブとチコを守るようにウィルと横並びになる。彼女に止めを刺すのは簡単だ。しかし、その前に聞きたいことは多かった。
「んで、お前らは何がしたい? 前言っていた続きとやらか?」
「……あは。覚えてたの?」
「あんな高さから落とされたのに忘れるわけないだろ。キルリアもどきさん」
「……あぁぁっ!? あのときのぉぉ!!??」
フォースの言葉でイブが叫ぶ。春祭りの前、ソルについて行った図書館の帰り道。そこでピチューのキーテとキルリアのスラに襲われたのだ。
しかし、目の前の彼女はあのときに見た、キルリアではない。ピカチュウの姿をし、それは紛れもなくピカそのものなのだ。
指摘された偽者はゆっくりと立ち上がる。そして、くるりと一回転すると、姿がキルリアへと変化していた。イブを襲った人に違いなかった。
「“へんしん”……? ってことは、メタモン? イブ、あの人のこと、知ってるの?」
「知っているというか……なんと言いますか」
チコにあの事を説明していなかったことを今更ながらに思い出した。ここで説明しても仕方ないかと開き直り、話題をすり替える。
「そんなことよりさ、“へんしん”であそこまで姿が変わるものなの……? 特定の人物になっていたように見えたけど」
「確かに。……あなたは、誰なの? メタモンが本当の姿?」
チコが問いかけると、スラはクスクスと面白そうに笑う。
「さあ? 本当の姿なんて忘れてしまったわ。メタモンにもなれるわよ? 見る?」
そう言うと、先程と同じようにくるりと回る。一回転し終わる頃にはメタモンへと姿が変わっていた。楽しそうに笑うのはキルリアのときと、何も変わっていない。
「……さて、本当のオレって誰なんだろうな?」
「ころころ一人称変えやがって。イライラする」
フォースが“ソード”を構える。ウィルも何も言わずに“ランス”を取り出す。手慣れた手付きでくるくるとバトンのように回した。肩慣らしのつもりなのだろう。
「俺は周りの敵を近づけないようにしとく。かーくんはそのメタモン? キルリア? まあ、どっちでもいいや。そっちよろしくね。行くよ、すっちー、りっちー!」
「えぇっ!? わ、分かった!」
「すーくん……!」
走り出したウィルに、慌ててついていくチコ。しかし、イブだけはフォースの方を見たまま動かなかった。何か声をかけたいが、何も出てこなかった。一抹の不安が心に刺さって取り除けない。そんな感覚を覚える。
「大丈夫。……おれがやられるわけないだろ?」
「……うんっ! 信じてるっ!」
強く頷いて、二人の後を追う。
いつだって、イブを守ってくれたフォースが負けるはずがないのだと。フォースが時折見せてくれる、安心させるような優しい笑顔を、イブはいつも信じている。
そして、フォースもまた、イブを守るためだけに戦ってきた。今回もそれの一つに過ぎない。
「借りとやらを返してもらおうか」
「もちろん……♪」
メタモンから再び、キルリアへと姿を変えたスラと対峙する。フォースは剣を構え、一気に地面を蹴り上げた。



~あとがき~
ははっ! 長くなるぞー!

次回、敵をやっつけている(であろう)他の面々に視点を変えます!

やあやあ! 久しぶりのご登場ですね。皆さま、覚えていますか? スラちゃん? くん? です!
いろんな形に変わるスラは一体、何者なんでしょうかね? いやはや、どうなることやら。

あ、ポチャは死ななくてすみました。よかったね。フォースが空から助けに来てくれたよ。フォース、高いとこ好きじゃないのに、ハッスルしましたね。必要なら自分の嫌いなこともさらっとしちゃうのが彼なのでね。もうね、こういうやつなのよ(笑)

ではでは!