satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
いきなり人が死んだ……だと。(姿も名前も見せてないけど)
ヴァルツ「間違ってはない」
もえぎ「ふえぇ」
十五にしては落ち着きすぎじゃない!? ヴァルツ、もっと子供っぽく生きてもいいんだよ?
もえぎ「……ヴァルさん、そんな時代があった……のですか?」
ヴァルツ「あると思うか?」
もえぎ「……いえ」
ヴァルツ「じゃあ、そういうこと」
はあぁ……ヴァルツの子供時代は見た目だけか……
では、始めていきましょう!


町に到着すると、昼間のもあってか人通りは少なくない。そこそこ栄えている町なので、住民も多い。
「案外変わらないものだな」
『記憶通りって訳?』
「まあな」
トリスの言葉に適当に返しつつ、町の中を歩く。俺の家は住民に知れ渡っているようで、町の噂で家のことを時折、耳にした。主に父が死んだ話なのだが。住民は俺のことには気が付かない。まあ、ここに住んでいたのも九年前。記憶が薄れても不思議ではない。俺自身、周りとは関わりもなかったし、問題はなかった。
「……あれか」
『ははっ♪ めっちゃ人いるな~』
『皆様、お父様に別れの挨拶をしているようですね。……好かれていた、のでしょうか?』
「形式だろう。親しくなくとも、こういったものには参加するのが普通なんじゃないか」
『ふうん。人の普通って面倒だねぇ』
「同感だ」
人の出入りが激しく、その流れに乗るのも億劫である。少し待てば流れは止まるだろうから、それまで近くに待機しておこう。……なぜ、自分の家に入るだけなのにここまで遠慮しているのかも謎である。
「とことん他人行儀だ」
『家に思い入れもないから仕方なくない?』
「まあ……そうか」
自分の家に背を向けて、適当に歩く。近くに公園があっただろうし、その辺に座って待っていよう。
公園にはものの数分でついた。遊具があり、ベンチがあり、ちょっとしたピクニック的なものも楽しめるのだろう。実際のところ、楽しんだ経験はないが。
そして、好都合なことに誰もいない。この時間帯は遊んでいそうなものだが、子供は学校にでも行っているのかもしれない。
「出てこい、マリー」
「はい。愛し子よ」
「話し相手になれ。暇だからな」
「ふふっ♪ 喜んでお相手しましょう♪」
マリーを呼んでおかないと、一人で座って独り言を話す変質者になりかねない。道を歩いているときはなるべく小声で話していた。周りの人は大して気にも止めないからそれでいいが、こういった場所で一人なのは目につく。
適当にベンチに座り、隣にマリーを座らせる。マリーは座る前に、一礼をする。礼儀というものを徹底しているからこその行動だ。
「どのくらい、ここにいるおつもりですか?」
「この町の滞在期間の話か? まあ、葬儀が終わればさっさと出て行くつもり」
『葬儀って一週間もあれば終わるんじゃない? ヴァルツの家は火葬? 土葬? その他?』
「火葬。燃やされて煙が天に上がれば、神の下へと運ばれるから、だそうだ」
『ほーん? 神様とか信じてるの』
「家系で言えば、神霊を見ている者が多いから。俺はそう言った話は信じていないから、どっちでも構わないが。死んだ後なんて死者には関係のない話だな」
『まあ、そうだろうね? 死んだらそこで終わり。後始末みたいなもんだ』
「兄様、そのような不謹慎なことを……」
「構わん。俺も死んだ後のことなんて、後片付けだと思う方だ。……土葬で自然に還った方が有意義な使い方かもな」
『ふふん♪ そういうところは気が合うな』
「嬉しくはない」
「お二人とも、野蛮な考えをお持ちなのですね」
マリーからしてみれば、そうなのかもしれない。人の考えなんてそれぞれだし、強制するつもりもない。まあ、マリーは人ではないのだが。
「あら。何やら人が近付いてくるようです。大人ではなく、複数の子供ですが」
「ほう……公園だしな。不思議はない」
「……あら、そうでした。いつもの癖で、つい。申し訳ありませんわ」
探知能力のあるマリーがくすくす笑う。いつもなら、誰が来たか調べさせるが、こんなところで事件なんてものは起きないし、面倒なこともないだろう。
「あう」
「転んだぞ! どんくさいなー!」
……前言撤回した方がよさそうだ。
躓いて転んだのは、イーブイの少女。ところどころ汚れているようで、毛並みが乱れている。対して複数の子供が責め立てているようだ。種族に統一性はなく、単純に同級生とか近所の友人とか、そんなところか。
「俗に言う、いじめと言うやつか」
「あらあら。人の子はなんと愚かな行為を」
『弱いものはやられるし、強いものが勝つ。それが自然の摂理だ。気にすることはないね』
「愛し子よ、どうするのですか?」
「……いじめなのかも決定打がないからな。見ず知らずの奴が突っ込むのも変な話だ。観察する」
「はい。愛し子よ」
『え、いじめって分かったら突っ込むの? ヴァルツらしくないんだけど』
トリスの言葉は無視し、さりげなく子供達の動向を観察する。歳は俺より下だ。十歳にも満たない可能性すらある。
「俺の姿は見えているのか、あいつらは」
「ふふ。さぞかし楽しんでいらっしゃるのですね。その場合、人の子の目は節穴になりますのね」
マリーは特別優しいわけではない。俺のことを気に入ったから優しいだけで、基本的には周りに厳しいところがある。トリスとはまた違う厳しさと言うべきだろうか。……神器に住む奴の思考なんて考えるだけ無駄かもしれないが。
『僕、あの子供にちょっかいだしたぁい♪』
「ろくなことにならないな。この場にいなくて正解だ」
『つまんないの~』
「こうして話しているのに、本当に見えていないみたいです。……視野が狭いのですね」
「そうだな」
うずくまっているイーブイの少女を大人気なく囲って……いや、子供だから大人気なくはおかしいかもしれない。とりあえず、少女が逃げられないように壁となり、心もない言葉を浴びせているようだ。悪口と言うにはあまりにも幼稚で、俺なら聞き流すようなものである。しかし、それは俺の場合であって、少女はそうはいかないらしい。目には涙が溜まり、我慢出来ずに頬を伝う。
「女の子を泣かしました。女の敵ですね」
「あれだけで敵になるのなら、世の中は敵だらけだ。大変だな」
「うふふ♪ そうですわね」
『んで、お優しいヴァルツさんはどうするの?』
「……割って入る」
『ほーんとヴァルツらしくなぁい♪』
トリスはそんなことを言うが、別にこういうことが初めてではない。そんなことはトリス自身が知っているはずだ。俺の動向をチェックしているのは、あいつなのだから。
まあ、普段はいじめを止めさせるなんてことはしないのだが、見てしまったものは仕方がないというものだ。
「マリーはここで待機していろ」
「かしこまりました。必要とあらば、名をお呼びくださいな」
笑顔でとんでもないこと言うマリーに返答はせずに、ベンチから立ち上がっていじめの集団へと近付く。
「その辺でやめておけ、それがお前達のためだ」



~あとがき~
ヴァルツめ……冷めきってやがる!
前回の予告とは全く違うことをしてるんだよなぁ。家帰れよ……!

次回、いじめっ子らにヴァルツはどうするのか!
ってか、大人しく父親の葬儀に出ろよ!! お前!

特に言うことはない。
葬儀方法に関してはいろんな考えがあると思います。ピカ達のいる大陸とヴァルツのいる大陸は違うので、そこの考え方の違いもあると思います。ちなみに、ピカのところはこれといった決まりはないです。ポチャは住んでいたところが海だったので、考えとしては埋めるものだと思ってますね。反対にチルちゃんのとこは燃やします。で、灰を空にばら蒔くやつです。はい。
ヴァルツに拘りはないと思います。家は燃やしてるけど、俺のは勝手にしろって思ってます。はい。
いや、十五でそんなこと。考えるのも変だけどね!?

ではでは!