satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第188話

~前回までのあらすじ~
スラがイブになりました。禁断の手やで……!
イブ「え、えぇぇ……!?」
フォース「どうしよう」
イブ「どうにかして!? お願いだよ!」
まあ、あれだね。なんとかはなるよね。多分。
イブ「多分!?」
フォース「しんどいなぁ……めんどいなぁ」
結局はそこだよね。君。
フォース「まあ、うん」
表現注意やで! 多分! 始めます!!
イブ、フォース「かっる……」


「なんかあっち、大変なことになってない!?」
チコちゃんに言われ、私はすーくんの方を見た。どこが大変かは言われなかったが、多分、大変なのはそっちだろうって勝手に予測をした。るーくんがこの大群で大変なことにはなってないと思うし。
そして、チコちゃんの言う大変は、確かに大変だし大問題だ。たくさんの剣が浮いて、一度にすーくんに向かって飛んでいったのだから。
いや、そこも重要だけど、別のところも重要だ。
なんか、あそこに私がいる!? え、あ、えぇ!?
「どゆこと……?」
じゃあ、あれはあのキルリアが私に変身したってこと? 何のために……あ。すーくんを殺すため?
制御者は制御者を殺せる。それは同じ力を持っているから。同じ力っていうのは、“強き力”のこと。……力を取り戻した継承者にも出来ることなんだろう。でも、私はまだ出来ないのに。……キルリアは出来るってこと? え、負けた気分……
「るーくん!」
たまらず、離れたところで戦っていたるーくんを呼び戻す。るーくんは無視することなく、すぐに来てくれた。
「どしたー?」
「あれ! あれ!!」
「およ? およよ……その手があるのか。なるなる。あはは。俺達、終わったね!」
結構、軽めに諦めたな!?
「継承者と制御者が戦ったって話は聞かない。まあ、あり得ないから、聞くわけないんだけどね? 今まで一緒に暮らしてきて、自分の半身みたいに過ごしてきた相手を攻撃するってなかなかいないよね。それこそ、恨みを買うくらいのことはしないといけない。……だから、継承者と制御者は絶対的な信頼関係にある」
「最初の理解者が制御者になるんだもん。裏切るようなこと、しないよね。少なくとも、私はしない」
一人ぼっちだった私にすーくんは色々してくれた。家族みたいに、友達みたいに……たくさん、優しくしてくれた。教えてくれたし、育ててくれたんだ。そんな人に攻撃なんて出来ないもん。
「制御者同士の戦いで制御者が死ぬことは確認されてる。だから、掟で禁じているわけ。……まあ、うん。理屈じゃ、継承者にも可能ってことは分かってたけど……うーむ。こんなケースは想定外よぉ? あの馬鹿も予想外じゃないの?」
あの馬鹿……?
二人で首を傾げていると、るーくんはそれに気が付いてにこっと笑った。
「あ、なんでもなーい♪ とにかく、俺にも手は出せない。制御者としてここにいる以上、俺もすっちーの制御者だ。制御者の肩書きを消してもいいなら、戦うけど。……いや、それはそれで無理だ。神様としてってなるから、別のルールに縛られる」
「傍観するって話?」
「そそ。りっちーはよく覚えてるね~♪ 人の世に俺は干渉出来ない。神様が手を出すようになれば、世界が簡単に変わるし、下手したら滅亡する」
世界滅亡か。あり得ない話ではないかも。
「ふふん♪ それほど力は強大で恐ろしいものなのよ~……ここはかーくんに任せるしかないねぇ。大丈夫、かーくんは出来る子だから」
るーくんは安心させるように笑うと、優しく頭を撫でてくれた。そして、目の前に迫った敵を持っていた槍で一気に蹴散らす。
「だから、俺達は俺達で出来ることをしよう!」
「……うんっ!」
私とチコちゃんは同時に頷いた。
大丈夫。すーくんは約束したもん。……私の、大好きなすーくんは強いんだもん。信じてるって言ったから。大丈夫、信じてる。

「おお~♪ 制御者って本当にすごいな」
「……はっ……しんど……」
パチパチと拍手されるが、馬鹿にされたようにしか聞こえなかった。
二十の内、半分以上は鎖で縛り、残りの三、四本はこちらへと飛んできた。回避をしつつ、なんとか全てを抑えることは出来たものの、それはあくまで結果論。そこに至るまでに剣には、致命傷は避けたものの、何度か斬られている。斬られて分かったことは、この紛い物の力でも制御者であるフォースを殺すことは可能であるということだけだ。もちろん、相手の威力は半減している。それだけ時間と猶予はあるが、消耗戦になる以上、フォースの死刑決行時間が増えるだけである。
「お前、ほんとに何がしたいんだよ」
「分かってるでしょ? 足止め」
「この敵はお前の仲間がやったことだ。でも、探検隊達は『ヴァンガル』がやったと騒いでいる。が、今のところ動きはない……となれば、『ヴァンガル』の情報は嘘ってことになりかねないが」
「確かに動きがないもんね。そう思っちゃうか。……でもね、すーくん。『ヴァンガル』はある闇組織の傘下なんだって。その親玉はすーくんも知ってると思うな」
「……あいつがいるのか?」
「まっさかぁ♪ そんなわけないよ! あの人は余程のことがない限り、手は汚さない。でも、考えていることは正解だよ」
にこにこと笑いながら話す姿を見て、本人ならこう話せる内容ではないと、フォースは知っていた。スラは更に続ける。
「上の組織が『ヴァンガル』に命令して、あることをしようとしてるってことだよ。……あたし達はそれに便乗して、別の目的を果たそうとしているの。最初に言ったでしょ? あんなところと全くとは言えないけど、関係ないって」
「なるほどね。……やろうとしていることに興味は?」
「ある! だからこその足止めなのっ! 本当なら、ピカさんを一番に止める必要があるんだけど、なんか倒れちゃったみたいだし? 必要なさそうだよね。そっちは神器使い手が三人。その中でも上位が雷姫なの。一番の危険人物だよ、ピカさんは」
「あのババァ、なかなか高位の武器なんだよな。忘れてたわ。……つか、そんなにいるの、神器使い」
「神器一つをババァ呼ばわり出来るすーくんの神経を疑いたいけど……まあ、いるよ。リーフィアブラッキーのコンビ」
リーフィアはもえぎのことかと見当がついた。“リーフブレード”の扱いが剣のそれと酷似していて、普段から使いなれている物があるのだろうと何となく想像していたのだ。そして、そのブラッキーについては知らないが、もえぎのパートナーで、それなりの手練れならば、ピカがちらりと漏らしていたヴァルツという相手のことだろうと予想した。
「武器の形を変える、トリス。周囲の情報を読み取る、マリー……そして、雷の力を宿し、強大な力を与える雷姫。……たくさんあるよね~」
「神器がこの世にいくつあるのか分からない。生まれたり、消えたりを繰り返すからだ。……でも、それと何の関係……って、え、待て。お前ら」
「私じゃないけどね? でもね、すーくんは勘がいいのね。歴戦の戦士って感じっ♪ カッコいい♪」
神器の名が出てくる時点で、ある意味察しがついた。否、ついてしまった。
「神器を使った暴走……? それが目的?」
「そう! まあ、今言った三人の中から暴走者は出ないけどね。神器との信頼関係が築けちゃってるし、結構長い間所有してるみたいだから、暴走なんて起きないもん」
「最悪、かなりの人が死ぬんだけど」
「そうだね?」
直接、フォースは神器による暴走なんてものは見たことはない。見たことはないが、話には聞いたのである。文句混じりのファウスの言葉であったが、町一つが壊滅するだのなんだのと。そんなことを言っていた横で、大変なんだなと当時は他人事のように思ったものだ。
それが今、自分の目の前で起こるかもしれないなんて考えたこともない。そもそも、神器自体が珍しいため、制御者としてこの地にいる間に所有者に出会うことがなかった。ピカの所有していた雷姫と、この時代、この地で会ったのが初めてだった。
誰かに知らせなければ、大事も大事だ。どうにかして、止めなければ。しかし、一体、誰が頼れるのか。信頼しているピカは頼れない状況下なのに。誰を頼るべきなのか。
そんな一瞬の焦りと油断がスラにチャンスを与えてしまった。
「ばいばい、すーくん」
「やっば……!」
怪しく笑うスラにフォースは後ろを振り返った。スラと同じように、キラリと怪しく刀身を光らせた剣が一直線に向かっていたのだ。そして、それを避ける暇はないと直感で思ってしまう。なるべく、致命傷にならないよう、対処する他なかった。



~あとがき~
やっと敵の目的が見えてきましたね。

次回、やっとフォースに借り(?)を返せそう!
フォースはどうするのか……!?

なんか終わりそうにないですね。二十くらいで終わるだろとか楽観的に考えてたんですけど、まだ終わらねぇや、このお祭り編!
いつ終わるんだ……?

ではでは!