satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
もえぎちゃんのお家を見つけてあげましたとさ。そろそろ、自分のことを済ませてもいいと思う!!
ヴァルツ「別に帰りたくはないし、そもそも子供に葬式なんて退屈なこと耐えられるわけがない」
自分の! 家族!!!
ヴァルツ「物心ついた頃に追い出すような父親なんて家族でも何でもないだろう?」
もえぎ(ヴァルさん……結構、根に持って……ますです……)
まあ、いいや。始めまっす!


ナエトルとふぃーが出ていき、俺とマリー、そして親方の三人が残される。ここで俺も出ていけばいいのかもしれない。しかし、気になったことがあったため、立ち上がりつつ再び親方と向き合った。
「……案外、すんなり受け入れるんだな」
「まあね。子供は財産でしょ?」
「ふぅん。……はっきり言ったらどうだ? 人員を増やしたいだけだって」
「あはは。それを分かっていて、君も彼女を連れてきたんでしょう? 深緑の悪魔に仕えし、少年よ」
『え~? 僕のこと悪魔扱い~? うっそだぁ! 信じられな~い』
ずっと黙っていたくせに、ここぞと喋り出す。今までしてきたことを分かっていてその言動なのか。まあ、こういう奴なので、気にしたところで意味はないか。
「俺もまだ、継いだ訳じゃない。……仮に継いだとして、所有権を放棄したって構わない。そのとき、どうなるかは保証しないがな」
「ははっ♪ 怖いねぇ」
『そんときは、ヴァルツの体を使って大暴れしちゃうかな~♪』
まあ、そうなるだろうな。すでに仮契約は済ませてしまっている。ここで俺が放棄したところで、俺の命はトリスの物でしかない。
「スカウトの件は受けるつもりではいる。いずれ、ここで世話になっていた方が都合がいいからな」
「そう? 君の事情は聞かないでおくよ。こちらも君を利用するだけだし、君もこちらを利用してくれて構わない。ここはそういう場所さ」
「そのつもりだ。……親方様の貴重なお時間をいただき、感謝します。失礼します」
踵を返し、部屋を出る。そして、何も言わずにギルドも出ると、ずっと黙っていたマリーが口を開いた。
「よろしかったのですか? あのような大切なことを決めてしまって」
「ギルド加入の話か? スカウトをされたときから決めていたよ。急な決断ではない」
『ははっ♪ 前から家に戻る気ないのね~♪ とことん反逆していくねぇ』
そういうわけではないんだが、説明するのも億劫だ。勝手に勘違いでもしておけばいい。困るものでもないし。
さて、そろそろ家に戻ってもいい頃合いだろう。帰らない訳にもいかない。
「帰るぞ、マリー、トリス」
「はい。仰せのままに」
『あーあー……かたっくるしい、あの家に行くのね。りょーかい』

家につく前にマリーを戻し、来た道をそのまま歩く。そして、家に帰ると、大人達の挨拶も終わったようで、家は閑散としていた。先程まで大勢の人がいたことが部屋の散らかり具合から、そう予想するのは容易い。
「あぁ、ヴァルツ! おかえりなさい!」
俺の姿を見ると、母は駆け寄ってきて抱き締めてきた。葬儀で疲れているだろうに。
母の種族はグレイシア。父はエーフィだった。なぜそのように進化したかは聞かなかったが、興味はないし、本人達のなりたいものに進化したに過ぎないだろう。
「ごめんなさい。ここまで遠かったでしょう? 疲れてない?」
優しく撫でるその手は、親の温もりのなのだろう。……そんな純粋なものなら、どれだけよかったか。
俺はやんわり母の手を制し、にこりと笑って見せる。ここでは『いいこ』でなければ、居場所はないのは学習済みだ。
「俺は平気です。……母さんの方が疲れた顔を通り越して、死にそうな顔してる。……父さんは、どうして?」
死因を聞いてみるも、母の口は開かない。それだけで答えが分かるようなものだった。トリスの言う通り、力に耐えられなかったのだ。トリスの代償は寿命だ。それさえ払えば、所有はさせてもらえる。そういった契約を祖先と交わしたらしい。そこから追加で払えば、力を使わせてやると。
要は、気に入らない奴でも主人と認めるが、力を使うには追加料金を払えと言うことだろう。過去にはトリスの気に召す所有者はいたらしく、その人は早死にすることなく、天命を果たしたと記録に残っている。……ちなみに、ここら辺はトリス本人から聞いた話だ。
「聞かなくても分かるけど……神器は」
「お父さんが倒れたら、消えてしまったわ。あるべき場所へ帰ってしまったみたい」
「その場所はどこに?」
「それは言えない。あなたはまだ神器を持つ年齢になっていないもの」
そうなるか。まあ、予想通り。
「荷物置いてくる。母さんは休んでていいよ。部屋の片付けは俺がするから」
「そんな。帰ってきたばかりのあなたにそんなことをさせられないわ」
「俺だって、そんな顔してる母さんを働かせたくない。朝からずっと、動いてばかりなんだろう? 少しは休んだっていいんだよ」
母から離れ、二階へと上がる。そして、家にいた頃の自分の部屋を開ける。部屋は片付けられており、埃なんかも見当たらない。定期的に掃除されていたらしい。六歳程で家を出たためか、棚には子供らしい物は一つもない。そこにあるのは、勉強のための本ばかり。語学、歴史書、薬学等の知識をつけるための物から、武器や体術といった、物騒な物まで。当時の俺は親に言われるがまま、本の内容を叩き込んだ。今でも思う。その知識は必要なのだろうか、と。
『あの、愛し子よ?』
「なんだ。ここではあまり喋るなと言ったはずだが?」
『一つだけ聞いてもよいですか』
「手短になら」
『……先程と今、どちらが本当の貴方ですか?』
「分かりきったことを聞くな。今、お前と話している方が素だよ」
『ヴァルツ、親の前では猫被りなの。期待の子供を演じるためにね♪ 神子だと崇められるヴァルツの心労を考えると、笑えてきちゃうけどね』
「……そういうことだ。マリー、一つ教えてやろう。今も昔も、あの人達は、ここの人達は俺のことは見ていない。……『神霊様に認められた神子』だ。トリスを扱う道具でしかない」
日照りが続くから、神様に供物を与える。生け贄を捧げる。それは人として扱われていないと俺は思う。俺の存在は、ここではそれと同意だ。
「神霊様に見会うだけの子が久し振りに産まれたと、崇めた挙げ句、その命を神霊様に捧げろと。そんな勝手なことを言う大人達の元に産まれたんだよ。俺は」
『人の子は勝手だよね♪』
「だから、こんなことはここで終わりにしてやる。俺みたいな子はもう必要ない。……まあ、俺がこいつに一生を捧げるのは変わらないんだが」
『うっふふ♪ だって、面白おかしくしてくれるんでしょ? めっちゃ期待してるんだから』
その期待に応えられるかは知らないが、まあ、少なくとも他の神器と同じ人生……? 神生? いや、どちらでもいいか。暮らせるようにはしてやるつもりだ。そうなるには時間はかかるし、やることは多いがな。
『私は一生、貴方についていきます。愛し子は、マリーの大切な主様です。神子だとか、そんなのは関係ありません。私がついていきたいから、ついていくだけですわ』
「……ありがとう、マリー。さて、早く戻らないと不信に思われる。俺が許すまで声をかけるなよ。トリス、お前もだ」
『しっかたないねぇ。聞いてあげるよ』
『はい。愛し子よ』



~あとがき~
ヴァルツの周りはろくな親がいねぇ……
特別視されると、肩身狭いですよね。

次回、そろそろ佳境に……!
あともう少し! もう少しで終わるから!!

別にヴァルツみたいに親のことを嫌うと言うか、無関心なることを良しとは思いません。彼はそうであるだけで、私がそうではないので。っていうか、ヴァルツみたいに優秀でもなんでもねぇし!! 親と険悪になったこともないし!!! 大好きだしー!!((←え
まあ、何が言いたいかって、これはフィクションだぜってことですね。はい。

雷姫が妖刀と呼ばれるように、トリスもまた、別の名前で呼ばれています。深緑の悪魔(しんりょくのあくま)ですね。なんで悪魔なのって……まあ、ぱくぱく魂食べちゃうからなんですね。自分で言っといてあれなんですけど、お菓子感覚かよ……
マリーのは特に考えてません。なんだろ。分かんない。きっと、そこまで強力な武器ではないんでしょうね。トリスや雷姫みたいに名前を残すほど、使われていないのかもしれません。

ではでは!