satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第198話

~前回までのあらすじ~
キーテとピカ、ゆるーく終わりましたね。今回はヴァルツの方へと向かいます。どうなったんだろうね、あの人。
ヴァルツ「死んではないとだけ」
ピカ「まあ、そうだろうと思ってますよ」
もうね! もう終われる! はず!!
ピカ「もう、二百話目の前なんですけど~」
ヴァルツ「本編は全体の半分ってところか」
ピカ「話数がってところじゃないのが怖いところですよねぇ~」
やめて……


前を走るピカを黙って追いかけつつも、周りの警戒は怠らないようにしていた。とは言え、ポチャが気付く前にピカの方が反応が早く、敵はピカの手によって倒されていた。更にその敵達は復活することなく、消えるところを見るに、彼女は的確に弱点を突いているのだろう。勘なのか、見えているのかは定かではないが。
「もうそろそろ、ヴァルツさんに言われた地点なんだけど……あは。すっごい嫌な感じ」
『む。……大方、予想はしていたがの。こうなると、相手が弱いことを願うのみじゃな』
二人には何が起こっているのか分かっているらしいが、ポチャにはさっぱりである。だからといって、この二人が説明をしてくれるわけでもない。
「こっから狙える?」
『狙ってもよいが、マスターの仲間も巻添えになるかもしれんぞ。それでもよいなら、やるがな』
「……んじゃ、加速しようか。ポチャ、ついてこれたらついてきてね~♪ ここ真っ直ぐだからさ」
「えっ!? いや、待って。説明を……!!」
「説明する時間も惜しいんだよね。……一言で言えば、神器使いと一戦交えてくる、かな」
「神器使い? それってピカと同じ……ってあぁぁっ!? もういないし!」
一言だけ言い残し、雷姫を使って移動スピードを上げたピカは、一瞬にしてかなり先まで行ってしまったらしい。ポチャが内容を聞き返す時間もなかった。これでは、何のために合流したのか分からない。しかし、場所だけは言っていたので、辿り着くことは可能である。
「もー! これだからピカはー!!」
こんな調子で呆れつつも、心のどこかで安心感とどうにかなると考えている自分がいた。ピカの存在がそれほどにも大きいのがはっきりと分かる。
ピカ言う真っ直ぐをひたすら走って追いかけることに専念した。少なからず時間はかかっても、合流は出来るだろう。

ヴァルツはトリスを小さく、普段から馴れていて扱いやすいナイフに変化させ、対応していた。相手が大剣であるため、懐に入ったり避けたりするのには適当であったのだ。しかし、技術面や身体能力でカバーをしているが、体力面では大幅に遅れをとっていた。
「うえっ……化け物かよ」
『ヴァルツも大概だと思うけれどね。……こいつから、全く神霊の声が聞こえない。完全に意識飛んでいるのかな? しかも、二人とも暴走状態。んふふ。嫌だねぇ』
「嫌だと言う割には、楽しそうだな」
ヴァルツが大きく避けたために、空振りをするガオガエンから距離を取りつつ、体勢を整える。逆手にナイフを持ち変え、呆れ気味にトリスに問いかけた。絶望的な状況にも関わらず、彼の声は弾んでいたのだ。この状況下が楽しくて仕方がないと言わんばかりの調子だ。
『まあねん♪ こんなピンチ、滅多になくない?』
「……確かに久し振りではあるが、俺は楽しくはないからな」
『ふふん♪ ヴァルツもまだまだだね』
「……は?」
『あっははっ♪ ほらほらぁ~? 来るよ。前』
トリスの声で前を向くと、ガオガエンがゆらりと体をふらつかせつつ、こちらに向かって剣を振り上げてきた。上から下に振り下ろすつもりなのだろう。後ろか前に避けるか考えたあと、攻撃を仕掛けるために一気に前進をした。体もあちらの方が大きいため、股下を潜り抜けて、攻撃を回避した。それと同時に相手の背後を取る。
「トリス!」
『まっかせて~♪』
呼びかけに応じ、トリスはナイフから片手剣に姿を変えた。くるりと手のひらで回して持ち変えると、素早く相手を斬りつけた。斜めに二回、体を回転させて一文字に一回、計三連撃の攻撃を繰り出す。これで怯めばよいと思ったのだが、ガオガエンは二、三歩よろけただけで、大したダメージにはならなかったらしい。振り向き様、大剣による一文字に斬りつけられ、大きく横方向へと飛ばされる。咄嗟に防御姿勢は取っていたため、真っ二つになることはなかったものの、これによってぷつりと糸が切れてしまった。
「げほげほっ!……けほっ……これ、立てる気、しない……トリス、折れてないか」
『折れるわけないでしょ。……あれ何? めっちゃヤバいんだけど。あと! 斬ったとき! 手応えなさすぎ!』
ピカが来るまでの時間稼ぎをと思ってここまで戦ってきていたが、どうにもこちらが消耗するばかりでダメージを与えられている気がしないのだ。そして、トリスの言う手応えは、ヴァルツも感じていない。撤退も視野に入れているが、そもそも相手が邪魔で逃げることも不可能に近い。仮に逃げ道があったとして、敵が大人しく逃がしてくれるとも思えなかった。
「あー……にげ……てもなぁ」
『進行方向、敵に阻まれてるんだけどぉ?』
「そうなんだ、よな…………どう、しようか」
『ねえ、ヴァルツ? ここで寝るとかやめてよ? お前を守りながら突破は出来ないから。寝るな!』
「……ねては、ないけど、なんかもう、思考が……追いつかない」
実際、トリスが指定してきた三分はとうに過ぎている。ヴァルツがここから戦いの場に戻ることは出来ないだろう。それはトリスも分かっている。分かっているが、諦めは死に直結してしまうのも事実である。トリスはヴァルツに色々と要求してきた身であるが、別に彼を死なせたいわけではない。だからと言って、どうにか出来るような案も出てはこないが。彼らの頭脳であるヴァルツがほぼ動けないため、どうしようもないのだ。
「ガ……ヴヴ……」
『獣みたぁい……ほんとに理性の欠片もないねぇ……醜いなぁ』
「お前が言うか……けほ……あ」
『え、なあに……っ!?』
ヴァルツに何かに気が付き、それでトリスもあるものに気が付く。そして、何も言わずに剣からリーフィアに姿を変えると、ヴァルツを抱え、大きく横へと飛び退いた。先程いた場所は激しい電撃の直線状にあったらしく、地面に焦げ跡を残して電気は宙に散った。電撃を直接見たわけではないが、かなりの大技であったことは、焦げ跡を見れば嫌でも認識せざるを得ない。ガオガエンが巻き込まれたかは分からないが、結果的に二人の退路は目の前に現れた。電撃が飛んできた方向へ走り出しつつ、トリスは背中に冷たいものを感じていた。
「こっわ……え。何。これ……この終盤にこんなの撃ってくるの」
「本気……ってこと、だろ」
「そーゆーことでぇす♪ 遅くなりました~」
前に立っていたのは現れたのはピカだった。目を赤く光らせ、雷姫を構えている。目が赤いのは雷姫の能力だろう。雷姫の使い手に与えられる能力は攻撃力上昇、素早さ上昇など、肉体強化が一つ挙げられる。他にもあるらしいが、トリスもヴァルツも詳しい内容は知らない。
「ヴァルツさん、死にそうな顔してますね。でも、まだ死ぬには早いですよ?……雷姫。二分、稼いできて」
「はあ!? あれ見て、道具の僕らにどうにか出来ると思えるの!? 頭おかしいね!」
「ふん。我と貴様を同類に語るな。マスターがやれと言うのなら、それに従うのみ。それに、我になら出来ると思ってくれているからこその命令だ」
実体化した雷姫はトリスを一瞥するとふいっとそっぽを向く。そして、そのまま敵に向かって走り出してしまう。いつの間にか地面に座っていたヴァルツがガオガエンと雷姫を見つめつつ問いかけた。
「ピカ、いいのか?」
「はい。人の子ごときに雷姫を倒せるわけがないので。……でも、雷姫はあくまで時間稼ぎしか出来ません」
ピカはヴァルツのポーチに手を突っ込み、いくつかの薬と注射器を何本か取り出した。ざっと目を通し、適切なものだけをヴァルツに投与していく。
「……これくらい、自分でやってくださいよ~? まだ、やってもらいたいことがあるんですから」
「瀕死のやつを捕まえて、よく言えるな……」
「ヴァルツさんにしか出来ないんだから仕方ないでしょう? 私は私でやることやりますんで」



~あとがき~
はー……あと十話くらいで終わればいいね……無理だね。めっさなげぇ……

次回、ピカVSガオガエン
片方、意識飛んでるとはいえ、神器使い同士の戦いになります。ヴァルツもそうだったけど、ほぼカットしましたからね((←

今回の話で一番不憫なのは、ポチャだと勝手に思っています。ヴァルツもなかなかだけどね。

神器同士……この場合は神霊同士ですかね。彼らはお互いの面識があるわけではないです。ですが、ピカとヴァルツは顔見知りですんで、トリスと雷姫はお互いを認知してます。だからって仲いいとかそういう話ではないんですけれどね!

ではでは!