satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
引き寄せられたのはヴァルツの親戚達でした。なんなんじゃ……
ヴァルツ「知らん。なんで来たんだろうな」
トリス「あはは♪ 予想出来ていてその台詞は白々しいよ、ヴァルツ?」
ヴァルツ「……」
やだ、黙らないでぇ~……
前回のあとがき通り、戦闘はカットします。ぐだっぐだな戦闘なんて見たくもないですもん!!(私が)
ヴァルツ「私欲……」
トリス「忠実だねぇ~♪ いいね!」


戦闘慣れしていない大人達だったらしく、子供の俺でも簡単に倒すことが出来た。この場から離せば、とりあえずは問題ないらしい。恐らく、あの状態だったときの記憶はなく、何をしていたかも覚えていないだろう。
「マリー、こいつらを外に。それで……」
「はい。事情を聞けばよろしいのですね。すぐに戻ります」
大人数人を一人で引きずりつつ、入口へと向かった。命令しておいて何だが、俺も行った方がよかったのだろうか。しかし、一応はトリスが狙われたのだから、近くで見張っておきたい。マリーは一人でも問題ないだろう。
「俺が平気なのはお前と契約を交わしているからなのか?」
『うん。まあ、それもあるけど、単純に僕との相性がよかったんだよ』
「……」
『あは。嫌な顔してるねぇ♪』
祠の扉を閉め、もう一度辺りを見回す。今まではマリーに周りの情報を探ってもらっていたが、ここではそれが出来ない。自分の勘しか頼れないということになる。トリスに聞いてもいいが、それはそれで癪だ。
「この辺りにふぃーはいないみたいだな。……? トリス、ここに入れば無条件にここに引き寄せるのか?」
『え? そりゃあ、僕のことを手に入れたいって少しでも思っているなら、ここに呼び寄せるけど?』
「思ってなかったら?」
『引き寄せる。そして、美味しく魂を食すだけ』
「結果は同じか。……両者ともお前に操られてるって考えでいいんだよな」
『そおね。意図的にしろ無意識にしろ、そうなるのかなぁ?……えー? 何々?』
「もしかして、ふぃーは……」
そこまで言いかけて、俺は反射的に後ろに飛び退いていた。俺が立っていたところに何かが通過していくのが見えた。
「あの親戚以外にもいたのか」
『僕、あれで全員なんて言ってないしぃ』
「……クズが」
『あっはははっ!! ヴァルツの本音ウケるー!』
「うるさい。誰がいるのか言え」
『マリーじゃないから、細かいところまでは分からないけど、五、六人ってところかな。なかなかの人数かもね』
通過したものが何なのか確認するために、近くの木を観察していく。すると、投擲用の小型ナイフが刺さっていた。完全に一般人ではない。……裏社会の奴らか。
「悪人にも狙われるとは。トリス、人気者だな」
『んふふ。そっちの世界も面白そう♪』
「そうか。そうなれば俺はお前から解放される。いい話かもな」
『あー! やだやだ! 僕は同じ人の子に使われるなら、ヴァルツに使われたいのー!』
抜いたナイフを気配のする方へと投げる。短い呻き声と共によろよろと人が出てきた。丁度、腕に当たったようで、片腕を押さえながら出てきた。種族はニューラだ。
俺は素早く祠の前まで戻り、トリスに触れられないようにする。
「どこの組織だ。ここは一応、私有地と言うことになっているんだが」
「深緑の悪魔を頂きに来た。現所有者が死んだって聞いたんでな」
言動がはっきりしている。少なくとも、トリスを扱う素質くらいはあるのだろうか。
『ヴァルツ程ではないけど。ほらほら、僕のこと守ってよ?』
ふむ。……守るにしても、こちらは武器を持っていない。トリスを使えるわけではないし、マリーは今、ここにいない。マリーが戻るまで、時間を稼ぐしかないか。
「悪いが次の所有者は決まっている。お前たちのような奴らに渡すわけにはいかない」
「だが、今はここにある。……フリーってことだろ? そこを退け。ガキが」
『僕、今まで以上にモッテモテ! モテ期ってやつかな? でもでもぉ、好みじゃないな~? 素質はあっても好きになれないってあるよね? そういう人だな、こいつは』
……じゃあ、食えばいい。というか、その方法なら自分の身も守れるじゃないか。俺が危険を冒してまでお前を守る必要がない。
『いいの? こいつのこと、食べちゃっても。ほら。教育上よくないってあるし。ヴァルツも一応、子供じゃん? 一応!』
「今更、配慮する意味が分からない。やれ、トリス。俺が許可する」
『わは~♪ ここに来て、久し振りのお食事! いっただきまーすっ!』
一度閉めた祠の扉を開ける。そこには変わらず、トリスが鎮座していた。それを見たニューラは突進する勢いでこちらへと走ってくる。俺はぶつかるのも嫌だから、トリスから離れた。
相手からすれば、俺が観念して受け渡したとでも思っているのだろうか。突っ込んできたということは、トリスと俺の会話は聞かれていないことになる。まあ、元々、俺の頭に伝えてきたものだから、他人に聞こえるわけがないか。
「これが……神器!」
無造作にトリスを掴むと、ニューラはゆらりとこちらに体を向けた。そのまま襲いかかるのかと思ったが、体を向けただけでばたりと倒れた。
『私欲まみれで自己中な魂は美味~♪』
「早いな」
『ヴァルツの感覚で言うなら一口だったの』
こんなやつに食われるなんて、なんて儚い命か。……というか、食われるってことは大したこともないのか? しかし、祠から出したトリスをどうしよう。触って代償払えなんて言われたくもない。
『触ったくらいでお命頂戴しないよ! 使わなきゃいいんだから!』
あぁ、そう。じゃあ、戻そうか。
すでに力尽きたニューラの手から簡単にトリスを奪い返す。するりと手から抜けたそれは、近くで見れば見るほど、その彩飾の細かさに驚かされる。昔の人が神格化して崇めてしまう気持ちも分からなくはない。中身はとんでもない奴だが。
「それを離せ」
「……は? まだいたの」
『だから、五、六人はいるんだってば』
忘れてた。そのうちの一人は勝手に死んだけど、残りがいるのか。
声のする方を見て、驚いた。探していたふぃーが捕まっていたからだ。意識はなく、敵に抱えられた状態だが、確かにそこにいる。ふぃーと残りの敵数人はボスっぽい奴がふぃーを捕まえ、残りが俺を囲むように群がる。とは言え、片手で足りる程度しかいないものの、全員が武装済みで素手で勝てるとは思えなかった。
「そのイーブイは?」
「人質って奴だよ。見りゃ分かんだろ?」
そうだろうな。しかし、ふぃーが人質になりえるかは分からないはずだが。
「はんっ! 前、あんたがこいつを助けたのは聞いてんだ。知り合いなんだろ」
……聞いた、ということは、苛めっ子達の中にこういった仕事をする身内がいたのか。なんという運命というか、確率に当たってしまったのか。計算なんてしたくはないから、やめておくけれど。
ボスが引き金を引いた銃をふぃーの頭にくっつける。早くしろと急かし、脅しているらしい。経緯がどうであれ、抵抗するにはふぃーをどうにかしなければならない。仮にマリーが戻ってきたとしても、なんとかなる相手にも見えなかった。周りを突破するのと同時にふぃーが死んでしまう。
『わ~……結構、絶望的なシチュエーションだよね? どうする?』
そうだな。仮にお前を使ったとしたら? お前を渡すことなく、ふぃーを助けられる?
『……そういうシナリオが望みなの?』
聞かれたことだけを答えろ。
『はいはい。今のヴァルツが僕を使ったとしたらでしょ? まあ、問題ないだろうね。けど、本来の契約は先の話。ここでするっていうなら、それ相応の代償を貰う』
その代償はどれだけのものを要求する?
『命は貰わないって保証してあげる。それしか言えないなぁ』
……十分だ。
『あっはぁ♪ いいね、好きだよ! そういう自分勝手で先のことを考えずに決めちゃうところっ! ふぃーちゃんなんて放っておけばいいのに! ううん。そういうヴァルツが好きだよ!』
ぐっとトリスを握り、落ち着かせるために深呼吸をした。これから、俺は掟破りのようなことをする。しなくてもいいことをする。……ただの自己満足のためだけに、こいつを利用するんだ。
「トリス、俺に力を寄越せ!」



~あとがき~
ついにやってもうた……

次回、ヴァルツ視点終了(予定)です!

ヴァルツが払わなくてもいいような代償を払ってトリスを手に入れたのか、それが今回の話で分かりましたね。一定期間が来れば、何事もなくトリスを手に出来たのに、ふぃー……もとい、もえぎを助けるためにトリスを使うことになりました。そんな経緯です。はい。健気なヴァルツですね(笑)
分からないことあれば質問どぞ!!

このヴァルツ視点が終われば、もえぎ視点に移し、さらに時間を変えてもえぎがトリスを手にした話をやるつもりです! ヴァルツ視点ではあれだから。大きな代償を払った理由を語っている(つもり)ので!

ではでは!