satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第11話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で好き勝手する物語です。本編とは一切関係ありません。この世界では擬人化された設定で話が進み、友人と設定を練っています。苦手な方はブラウザバック!
前回は三つ目の見学先、剣術部へ! 今回はその続きです。一話で終わると思ってたけど、終わりませんでしたね。他の部活は一話で終わると思われ。
ラル「そうやってずるずるいくんだろうね」
……わかるぅぅ~(泣)


周りにどう見えているのかは私には分からない。そのため主観的な話になるが、舞を舞うときはいつも神経が研ぎ澄まされる。冷たい空気を感じ、周りの目がどこを見ているのか、どう魅せるべきなのかを考え、体を動かす。
舞にも様々なジャンルがあるようで、技の切れ味、スピードを魅せる構成や技の精度を強調し、優雅に魅せる構成等々。私はどちらかと言えば後者だ。速さよりも一つ一つの所作を丁寧に気を使って、剣技をより際立たせる。普段の立ち会いでは悠長にそのようなことはしないが、舞の場合は別だ。これは魅せる競技であり、速さはなくてもいい。
なんとなくの流れを頭で構築させながら、雷姫を自分の胸の高さまで掲げる。そして、右足を前に出しつつ、刀で一文字に斬る動作をする。次に流れるように体を捻りながら、体勢を整えて、突きの動作。刀を腰の位置に戻しながら、一呼吸置いた。ふっと息を吐くのと足の踏み出しは同時だ。体を回転させ、抜刀する。抜ける訳がないんだけれど、そんなイメージを浮かべ、左斜め下から斬り込み、反対の右斜め上に斬る。そして、再び体を回転しつつ、もう一度横一文字に斬りつけた。自分の周りの風を斬る感覚がしたのを確認して、ゆっくりと姿勢を正す。雷姫をベルトに固定して、片足を半歩後ろに引いた。最後に片手を雷姫に添え、もう片方の手でワンピースの裾を掴み、軽く頭を垂れる。
「ありがとうございます」
私の一言と周りの歓声は、ほぼ同時に発せられたように思う。拍手の中でそれを気にも留めず、雷姫に巻き付けていたリボンを解いた。そのリボンを首に巻きながら、心で雷姫にお礼をする。そして返ってきた言葉は……
『……忘れてなかったのだな』
その一言である。
あはは。……そっすね。
剣術部所属をしておらず、更に習ったことがない舞をここまで出来るのは、雷姫が教えてくれたからである。教えてもらった理由は単純で、剣術部の助っ人を頼まれたためである。大会ではなく、何らかのイベントだったと思うが、詳しくは覚えていない。そのイベント開催日が近くなった頃、メンバーに欠員が出たとか何とかで、どうにかならないかとキーくんに頼まれたのだ。そこで色々あって、二、三日で形にし、本番に挑んだ記憶がある。そこでは制服ではなく、舞の演出にあった衣装を着せら……あぁ、嫌な思い出だ。これ以上はいいか。とにかく、その経験があり、私は多少の心得があるというものだ。しかしまあ、それ以降、雷姫に教えを乞うたことはない。
体で覚えたことはいつまで経っても忘れないんだよ。雷姫。
『そういうことにしておこう』
満更でもない声色はふっと消える。やれやれ、難しいお姫様である。フォース君が時折、雷姫を拒絶する素振りを見せるのも分かる気がしたのは、雷姫には内緒だ。

ラルの舞を見ている間、ツバサは彼女を目で追いかけていた。入学式からずっと気になる先輩は、格好よくて、凛としている憧れの存在になりつつある。会って幾ばくもない自分のために時間を割いてくれるラルへ深い親しみを感じていた。
「会長、衰えてませんね」
「あ~……イツキが助け船求めたのって去年か。それ以来、ラルがこうしてるのは見たことないから、約一年振り……?」
「そうですね。さっすが、ラルせんぱーい! そこに憧れます!」
ティールとイツキの話に耳を傾けながら、ツバサは隣に立つアラシを見上げる。彼は部門が違うとはいえ、ここの部員である。そんな彼にどれだけ凄いことなのか聞いてみようと思ったのだ。
「……マジかよ」
アラシはかなり驚いた様子で、じっとラルを見ていた。その様子だけでも、ラルが離れ業をやってのけていることが窺えた。質問は口を出ず、そのままふっとラルに視線を戻す。ツバサには、技の一つ一つが大きな一つの作品に感じられた。知識のないツバサでさえ、そんな風に考えてしまうのだから、知識のある彼がどう考え、見えているのかが気になった。が、そんな質問が出来る程、余裕もなさそうなのは明白である。終わってから聞いてみようと考え、再び、ラルの生み出す芸術と化した舞に酔いしれる。
対するアラシは、ツバサに様子を窺われていたことにも気付かず、舞を見ていた。ここに来る間の会話から、多少の知識はあるのだろうと察してはいたのだ。ここまでだとは思っていなかったが。更に、突然言われたのだから、何も考えてなかったはずである。つまり、構成はその場で考え、練り上げたものになる。それなのに、形になってしまっているのだ。鞘から刀を抜くことなく、技も使用しない。それなのに、ここまでの完成度を魅せられる力を持っていた。そんな彼女の力量はアラシの目で測れなかった。
もし仮に、ラルが乱闘のルールに則って試合をすればどうなるのだろうか。そればかりを考えてしまう。芯の通った体感から、ふわりと柔らかな動作を得意とする彼女がどのように戦うのか。そして、それを目の前にした自分自身は如何にして攻略するのか。
「にしし。表情がマジですな、アラシさぁん?」
「んなっ!? ビックリした……」
いきなり目の前にレオンが現れ、思わず後退りしてしまった。レオンは隣から顔を覗かせただけなのだが、今のアラシには効果抜群だったらしい。
剣術に精通するアラシがこうも夢中になるのだから、ラルの舞はさぞ凄いのだろうと思う。しかし、レオンの興味はそこにはなかった。興味はただ一つ。彼女の持つ刀である。
「アラシ、ラルの持ってる刀、神器だぞ!」
「ん? あー……そうなの?」
「興味なさ過ぎかよー! まあ、いいけど」
世界にどれだけ存在しているのか確認が取れていない武器の一種、それが神器だ。考古学を学んでいるとたまに目にするし、神器に関する内容もある。実際に目にしたのは今回が初めてであった。その興奮を共有したかったのだが、アラシの興味はそこにはなく、ツバサはラル本人しか目がいっていないようである。
「刀型の神器かぁ~……あんま聞いたことないけど、雰囲気はそれだよね~♪」
「あれは雷姫っていう神器」
話が聞こえていたのか、ティールが笑顔で答えてくれた。レオンが質問する前にティールが続ける。
「触らない方がいいよ。雷姫さんはラルにご執心だからね」
「……へぇ? それが本当ならラルってただ者じゃないな♪」
神器の扱い難さは知る人にとって有名な話だ。そんな相手に好かれるなど、よくある話ではない。レオンは、ツバサやアラシとはまた違った理由で、ラルのことが気になり始めている。この先、楽しくなりそうだと内心、心が踊っていた。
ラルが舞を終わらせ、全員に向かって礼をする。見ていた人々の対応をしつつ、こちらに近寄ってきた。ティールから脱いだカーディガンを着直し、アラシ達に笑顔を見せた。
「ラルさん、かっこいいです! きれいでした!」
「ありがとう、ツバサちゃん。いやぁ~……ひっさしぶりで足がもつれたらどうしようかと思ったよ」
「普段から刀振り回してるんだから、転けることないでしょ」
「いや、頻繁に振り回してないからね」
ティールの突っ込みに冷静に返すラル。その二人を見たアラシは、いつもこんなやり取りをしているのだろうかと関係ないことを考えてしまった。
「ツバサちゃん、とりあえずここに来たけど……こんなガッチガチの体育系部活、どうだった?」
ラルがツバサの目線に合わせながら問いかけた。アラシとレオン的に危ないことはなしである。ここで興味を持たれたら、どうしようかと考えてしまうが、ツバサの表情はなんとも言えないものである。
「私もあんな風に出来たらなんて思いましたけど……私、ラルさんみたいにくるくる回れないです」
言うほど回ってはなかったが、ツバサでなくとも、ラルのように出来る人はそういないだろうとアラシは思う。そこを突っ込むのかと思ったのだが、ラルはあっけらかんとしていて、ツバサの頭をそっと撫でる。
「そっかぁ。……じゃあ、次だ~♪」
「えへへ……はいっ!」
ラルに撫でられ、ツバサは嬉しそうに笑う。対応してくれたイツキにラル達は礼を言い、練習場を後にした。



~あとがき~
剣術部見学、終わりです。
長かった……なぜ……?

次回、新たな部活へ!

いつかラルVSアラシもあり得るんですかね。ラル自身はやる気なさそうですか。どうなることやら。今んところ二人が戦う計画はありません!

入学式でもちょいちょい出てましたが、ここでも雷姫さんは健在です。本編よりも我儘なお姫様でいきたいと思ってます。……きっと、レイ学世界は平和で呼び出し回数が少ないんですね。きっと。

ではでは!