satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

未熟な新芽が華開くとき

~前回までのあらすじ~
《この物語は死ネタ、暴力表現等の過激な表現が含まれます。閲覧する際はご注意ください》

っていうのをつけなきゃなって思った……そういう話だわ、君達のやつ。
ヴァルツ「……今更?」
あい。……今更です……あぃ。
もえぎ「あぅぅ……」
とまあ、気を取り直して! 前回はあれだね。ほのぼのっと終わったわけで! 本題に入れなかったんですね! はい!! 今回こそは、やりますよ。はい!!
ヴァルツ「なぜ、ここまでテンションが違うのか」
もえぎ「あ、あげないと、やってけない……のでしょうか?」
ヴァルツ「一理ありそうだな」


あれからしばらくして、難しくないお仕事をいくつかこなした後のことでした。お休みと言うお休みもなく、やっと一段落ついた頃。
「ぬー」
「あ、えと……ナエさん? どうかしましたか?」
親方様の右腕のナエさんがどこからともなく現れました。私はまだ、ナエさんの言うことはなんとなくしか分かりませんが、ヴァルさんはしっかり汲み取れるようで、嫌な顔をしています。
「呼び出しに応じたくないって言ったら?」
「ぬん」
「……了解」
今回は多分、親方様が呼んでいるから、来てくれないかって話みたいですね。
ナエさん先頭に二人で親方様のお部屋へと向かいます。こういうときって、基本的には難しいお仕事を任されるイメージがあります。過去の経験から、そんな風に考えてしまうのです。
「今回は何するんでしょう……?」
「ろくなことじゃないだろう。……最近、平和で楽だったから、気が乗らないな」
ぬんぬん」
「同意するなら、面倒なことを任せないで欲しいんだが?」
「ぬー」
「……好き好んでこの地位にいない」
あうあう。話のテンポが早すぎて、ナエさんの言っていることが変換出来ません。
お部屋の目の前につくと、ナエさんが扉を開けました。……いえ、開けようとしました。こちらが開ける前に勝手に開いたのです。自動ドアではありませんから、誰かが親方様の方から開けたことになります。……先客、でしょうか?
中から出てきたのは、私達のギルドに加入していない人でした。ピカチュウの女の子で私と同い年くらい。空色のスカーフを身につけて、肩掛け鞄を持って……可愛らしい人です。
「あ、なーさん。それにヴァルツさんも」
「ぬー」
「来ていたのか。相変わらず、面倒事に首突っ込んでいるのか?」
「そんなことはないですけど……まあ、色々ありまして。ミーさんに会いに来たんですよ。主に親方に任されたお使いです。変なことはしていませんっ」
困ったように話すピカチュウさんは、私に気づいたらしく、こちらに目を向けると、にこりと笑いかけてくれました。どう反応していいか分からず、硬直している間に、ピカチュウさんの目線が外れてしまいます。
「それでは、私はこれで。相方を待たせているので早く行かないと。……ヴァルツさん、近いうちにまた会いましょう」
「そうだな。また」
「はい。では、失礼します」
ぺこっと頭を下げると、私達が来た道を歩いて行ってしまいます。結局、誰なのか自己紹介する間もありませんでした。
「ヴァルさん、あの方は……?」
「探検隊スカイのリーダー、ピカだ。四天王補佐をやっているから、今回はそれ関連で来たんだろう」
探検隊?……スカイって、あの、有名な?
「ぬ~」
「ふえぇ……あんな可愛らしい方がチームを率いているんですね。……凄い人です」
「人は見かけによらないってね」
……ヴァルさん、前からお知り合いだったんですか? 会話がそれっぽかったです。
「そこまで深く付き合ってはないが、何かと話す機会はあるな。……とにかく、俺達も入ろう」
「ぬぬん」
「あう。……そうでした。行きましょうか」
ピカさんが出てきた扉を私達は潜ります。その部屋は両側を本棚に囲まれ、膨大な資料に囲まれている場所でそんな部屋に親方様はいました。
「ご苦労様、ナエ」
「ぬぅ」
「親方、今回はなんですか」
ぶっきらぼうに聞くヴァルさんに私はひやひやします。親方様はギルドのトップ。そんな方に失礼のないように心がけるのが普通なのに……あぁ、ヴァルさんに言ってもあまり意味はないですね。きっと。
「あはは♪ 君に世間話なんていらないよね? 単刀直入にいこう。ヴァルツ、君は『神殺し』の噂は知っているかな?」
「いえ。……あ、いや、どこかで聞いたな」
思い出そうと考え込むヴァルさん。その間、私はおずおずと質問を投げ掛けます。
「あ、あの、神様、死んじゃうんですか……?」
「さあ? 一応、あくまで通称……比喩のようなものではないかと僕は思っている。けれど、実際のところは判断はしかねるね」
あう。曖昧です……
「……あ、ギルドの奴らが騒いでいた件の?」
「そうそう! 流石。話が分かるね」
「ヴァルさん、その話って……?」
「今から約二週間前、ある場所の調査に出て行った奴らが戻らないと騒ぎになっているんだ。それを探しに行った部隊も戻らずだ」
「行方不明……ですか?」
「一言で済ますならな。被害人数は二桁後半ですよね。……そろそろ三桁の大台にでも?」
「そうなりたくないから、君を呼んだんだよ? いやまあ、こういう謎解きっぽいやつは探検隊に任せたいところで、ピカちゃんにもさらっと聞いたんだけれど」
親方様のため息をつく様子から、断られた……みたいですね。被害がたくさん出てますし、出来ることなら誰も触りたくない案件ではあります。
私はそう感じたのですが、ピカさんが断ったという事実が予想外だったらしく、ヴァルさんは少し驚いたように息を飲みました。
「ピカが親方の頼みを? なんて言ってました?」
「単純。『危ないのでやりたくありません』ってね。いつも危ないことしてるのにね」
「……手を引くべきでは?」
「引きたいけれど、そうもいかない。そこは近くに村もあって住人の安全を確保するのが最優先。いなくなったって話は聞かないけれど、明日以降もいないとは言い切れない。せめて、危険はないと確証が欲しいんだ。やってくれる?」
「俺が嫌だって言ったら?」
「あは。嫌だなんて言う権利、君にある?」
あ、あわわっ! ピリピリムードです! どうしましょう!? ええっと……!
このまま一触即発もあるのではと危惧しましたが、そうはなりませんでした。ヴァルさんが大きなため息をつくと、くるりと身を翻します。そして、部屋を出ていこうとしました。
「明日、現地に向かってね。よろしく、ヴァルツ」
親方の言葉に振り返ることも返事をすることもなく、ヴァルさんは出ていってしまいました。思わずじっと扉を見つめてしまいましたが、置いていかれていることに気付き、慌てて親方様のお部屋を後にします。もちろん、出る前にお辞儀はきちんとして。
部屋を出ると、置いていかれることはなくて、ヴァルさんは扉の近くにいました。そして、誰かに連絡を取っているみたいです。
「ヴァルさん、その、あのお話は……」
「受ける受けないで片付く話じゃない。俺達は結局、あの人の駒なんだ。……あ、繋がった。まだ近くにいるか? 話がしたいんだが」
駒……まあ、そうですね。偉い人に使われるのが普通です。行けって言われれば、行くしかありません。やれと言われれば……やるしかないのですから。
「OK。そこにいてくれ。すぐに行く……あぁ、いいよ。それじゃあ」
「誰かと会うんですか……?」
「さっき会った奴にね」
……ってことは、ピカ、さん……?



~あとがき~
前回更新から、三ヶ月以上も空いてました。そんなに空いてるとは思ってなかったです。申し訳ない!

次回、ピカが知る事件の内容とは?

こんな早くにピカが出てくる予定はなかった。
次はポチャもいると思います。そこまで喋らないと思うけど。

ナエさんも出てきましたね。もえぎはまだ解読出来ないみたいですが、いつになったら習得出来るんだろう? 私は書いていて、「こんなセリフを言わせるゾッ!!」ってイメージはありますが、読み手には絶対伝わらないですね。……周りが言ってくれてるから、いいけど、言わないときもあるから。そういうときは察してね!

きな臭い話が出てきましたが、最後までお付き合いください。

ではでは!