satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第208話

~前回までのあらすじ~
ソルとジュペッタとゾンビパニック。
ピカ「説明雑か」
ソル「でも、間違ってませんね」
コン「じゅーよーなキーワードだけぬいたって感じだね!」
チル「もっと説明しなければならないことはないのでしょうか?」
どうだろ? まあ、いいじゃない!
始めるぞー!
ピカ「話が尽きてるからってさっさと締めに入ったぞ」


ソルの目の前に帰って来たジュペッタを見るにソルの予想通りであったらしい。わなわなと体を震わせ、怒り狂っている……というよりは、信じられないという恐怖に似た感情に包まれているようだった。
「僕の言った通りだろう? あんなので止められる彼女達じゃないって」
「くっ……セめて、オ前だけでも!」
再び拳銃を構え、ソルに銃口を向ける。安全装置を外し、引き金を引けば簡単に弾が出る状態だ。体の自由が利かない今、この至近距離で撃たれてしまえば確実に致命傷である。しかし、ソルはあくまでも余裕の表情を見せ、慌てることなく冷静であった。
「さっきも言ったろう。お前の負けなんだよ。僕を見つけてすぐに攻撃しなかったのが敗因だって話もした。……悪足掻きだってね」
「ふん! 余裕ぶっていらレるのも今のうちダ。この状態からどうやって勝つっテ? 聞かせてホしいナ」
「僕はアブソル。災いを察知するポケモンだ。自分に降りかかる災いを感知出来ないわけがないだろ?」
ここに来て初めて、明確に殺意を感じたジュペッタはソルから離れた。それを感じたのは、体の自由を奪った相手からだった。
「……舞え。風の刃達よ」
その一言で風の刃が四方からジュペッタ目掛けて飛んでいく。刃に発砲してみても、相手は風……実体のない刃物だ。対抗出来るはずもなく、ジュペッタの体を切り裂いていく。刃は深く傷つけるようなことはないが、何分手数が多い。
「ギャアァァァ!!」
ジュペッタが攻撃され、ソルに掛けていた能力も弱まったらしい。少しずつ、体の自由が戻ってきた。ゆっくり体を起こし、そしてジュペッタを見下ろした。
「安心しろ。お前を殺すようなことはしない。重要参考人として確保する」
器用にジュペッタだけを狙った彼の瞳もまた、刃のように鋭く冷淡なものであった。ジュペッタに彼の言葉が聞こえていたかは定かではない。

ジュペッタが逃げ出さないように適当なロープで縛り上げ、念のためにとピカから受け取っていた道具で相手の自由を奪った。
「しばられのタネを改造……いや、改良? したって言ってたけど、僕はこれ、試したことないんだよなぁ」
ピカは実験感覚で様々なものを生み出す。それが失敗作でも成功でもとりあえず試してみるのが彼女のモットーである。これも貰ったときも、試したから大丈夫と言われたのだが、ソル自身、使ったのは初めてであった。
彼女の場合、試したのは相手なのか自分なのか微妙なときがあるのが難点ではある。
「おー! ソル! 終わったなら終わったー! って言わなきゃダメだぞー!?」
「今言うところだったよ。終わったって」
入ってきたのは、大暴れしたであろう、相方のコンだ。コンに続いてチルも入ってくる。チルには目配せをし、簡単な意思疏通を済ます。これが通じる相手は楽でいいと考えている中、コンが隣で話し始めた。
「ねえ、この人は?」
動かないジュペッタを指差し、小さく首を傾げて聞いてきた。チルも気になるらしく、じっと見つめていた。
「多分、ここを使ってた黒幕側の敵かな」
「こいつに黒幕の場所、吐かせるの?」
「……してもいいけど、きっといい情報は出ない」
「幹部クラスならそう易々とやられませんからね。それに、重要人物なら黒幕さんが乗り込んできそうですわ」
「あ、なるほど~♪ つまり、ただのたーいんってことだねっ?」
「一言で済ませるならそうなるな。……さて。当初の目的通り、ここを脱出して燃やすぞ」
待ってましたと言わんばかりにコンがソルの目の前で、ぴょんぴょん跳ねながら主張する。
「分かってるって。チルさん、お願いします」
「はい。もちろんですわ♪」
ソルとコンを背中に乗せ、足でジュペッタを掴むと、飛びながらも器用に部屋を出ていく。一度、地下から抜け出してしまえば、コンが空けた穴を目指して一直線である。
その道中、コンがやったであろう元ゾンビ達を見て、派手にやっているなと思った。ソルが下を見ていることに気がついたらしく、コンが状況説明をし始める。
「みぃんな、こーやっておそってきたんだよ! びっくりしたー!」
「動きは俊敏じゃないだろうけど。……何か理由でもあるのかは分からないけれど」
「そういえば、“あやつり”の能力みたいですよね? 私は空気、ポチャさんは液体ですけれど。人を操っていて……そう、洗脳みたいですね」
「でも、“あやつり”って、王家に伝わる能力ですよね?」
「ええ。私はそう聞いてますわ。ポチャさんも同じ認識だと思います」
「えーでも、陸の国には王様いないじゃん。似てるだけっしょー?」
勉強嫌いなコンにしては、よく覚えているなと感心した。しかし、本当に偶然なのかまではハッキリしなかった。
「まあ、考えても分からないものは分からないな。……コン、いける?」
「おお! もちのろんだー! いっくよー! ていっ!」
アジト上空まで来ていたが、コンは躊躇なく飛び降りる。空中で何度か回転し、回転する度に体の奥に力を込めるイメージをした。そして、込めた力を一気に吐き出す。
「“絶火豪炎”!」
絶えることのない青色の炎を吐き出し、アジトだった建物を一気に燃やす。対象物が燃え尽きるまで永遠に灯り続ける炎。例え、生物でも同じことだ。仮に生き残りがいたとしても、これで根絶出来る。
「綺麗ですね~♪」
「確かに綺麗ですけど、あまり近付くと僕らまで燃えます」
「うふふ、大丈夫ですよ。私が囲ってますから。さて! コンさんを回収しに行きましょうか」
飛び火を受けないところまで移動し、コンが来るのを待った。彼女はすぐ二人の下に帰ってきた。自信満々な表情を携えて。
「えっへん! ほめてくれてもいいんだよ!?」
「偉い偉い」
「あー!! 心こもってなーい! もう一回! やり直し!」
「何度やっても同じなんだけれど。……よくやりましたねー?」
「むがー! あたしをバカにしてるだろー!」
「まあまあ♪ 私達のお仕事は終わりましたし、戻りましょう。あちらはまだ戦場となっていることでしょうし」
「そうですね。うかうかしていられない。……行くよ、コン」
「むー……わかったよぅ! ほめてもらうの、後にする!」
今でも後でも変化はないとは言わなかった。どうせ、すぐに忘れているだろうと思ったからだ。
再びコンが乗ると、チルは大きなもこもこの翼を広げ、あっという間に高度を上昇させた。この調子だと、祭り会場までそこまでかからないだろう。とはいえ、ソル達三人が戻ったところで、状況がよくなるのかは不明である。ピカの考えがどう動いているのかにもよりそうだった。しかし、ソル達は自分のリーダーを信頼している。あの状況を打破してくれると確信しているのだ。
そしてソル達は、確実に敵の数を減らしている仲間達の姿を目にするのだった。



~あとがき~
はい! スカイの三人の話は終わり! やれば出来る子、コンちゃんです!

次回、ピカ視点に戻してラストスパートじゃあ!!

コンの使った技の説明です。
絶火豪炎(ぜっかごうえん)と読みます。そのままです。絶対に絶えることない青色の炎。ちらっと書きましたが、対象物を(その気になれば使用者以外の奴も)燃やし尽くすまで燃え続けます。なので、火の粉に当たっただけでもたちまち火が強まり、燃えちゃいます。怖いね。
今回はチルの能力と組み合わせて屋敷だけを燃やすように範囲を狭めていますので、大丈夫です。多分。

本来なら、今日出すつもりはなかったんですけど、空と海の連載開始(うごメモ時代含む)記念日なのを思い出して、投稿しました。お絵描きはしてなかったので、小説をば。いやはや、今日で九周年だって。ヤバイね! ん? ということは、来年は十周年……?

ではでは!