satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第209話

~前回までのあらすじ~
ソル、チル、コンの三人組の話が終わりました。三人……というか、ソルからの情報提供でピカは今回の事件の把握と黒幕の目星をつけました。誰とは言わない。
ピカ「ヒントも何もないからねぇ」
ないね。全く出てきたことがないとは言わないけど。まあ、ピカがずっと追いかけてる奴らと言えば……分かるかもしれない。
ピカ「かもね。はっきり出てきたことはないけど」
それな。
ポチャ(……意味なくない?)


電撃による拘束も長くは持たず、数分で破ってきた。そもそも、相手は生きてないのだから、痺れるも何もないのかもしれない。
防戦一方な戦いを強いられ、ピカも突破口が見出だせないまま、応戦していた。否、あるにはあるが、それに踏み込めないだけである。
「ガァア!」
「うわっ! あっぶな」
大剣を大きく振り回し、周りの敵を凪ぎ払わんとする勢いで攻撃を繰り返す。大振りな攻撃が多いのは、武器の大きさ故なのだろう。そして、武器の能力でもある超回復のお陰でもある。それがあるから、死んだ体でも朽ちることも脆くもなく、死兵として残れるのだ。これが乱戦の世であれば、大いに活躍し、厄介で禁忌な術として名を残していたであろう。
『マスター、どうする?』
「いやぁ……どうしよう? 手がない訳じゃないけど、最終手段って奴? やりたくないんだよね」
『しかし、このままではマスターが死んでしまうぞ。いや、マスターだけでなく、周りの者、全員を殺すまで止まりはせんだろう』
バーサーカーガオちゃん」
『ふん。可愛いげのない名じゃ』
自分でもセンスがないと思っていたため、これ以上は何も言わない。相手の名前なんてどうでもいいのだ。
「仕方ない。やるしかないか……」
『マスター、来るぞ!』
覚悟を決めた直後。斜めからの突然の斬撃に対応が遅れる。何とか雷姫で受け止めるも、相手の威力に押されてしまい、後方へと飛ばされた。飛ばすだけでは満足しないガオガエンは追い討ちとばかりに、体を捻って再び剣を振るう。幸いにも飛ばされ、若干の距離はあるが、すぐさま対応出来るほどの軽いダメージではない。
「げほっ……! いってぇ」
何もしなければ斬られると他人事のように考えた。その後で生き残れるのかも考えたが、自分の身長以上の刀身からの攻撃を耐えられるはずもない。ダメージを軽減するだけなら、どうにか対応出来そうだと考え、どうにかして雷姫を構えた。限界が近いのは百も承知である。そもそも不調ながら、無謀にも飛び込んだのは自分自身なのだ。最悪の場合も想定はしていた。まあ、そんな最悪を持ち込むのは雷姫が許さないだろうが。
「耐えろよ、雷姫!」
『誰に申しておる。我は神器、雷姫。そして、マスター唯一無二の愛刀じゃろ? マスターの命は我のもの。こんな小童に渡してたまるか』
最後の一言は聞かなかったことにし、敵の攻撃を受け止める。雷姫の能力の一つである肉体強化を使用し、どうにか飛ばされずに踏ん張った。そして、雷姫の発する電気を暴発させ、相手の目眩ましに利用した。ふっとかけられていた圧力が消えて、相手と距離を取る。ゾンビとはいえ、視界が一瞬奪われると怯むらしい。
「隙がないな。もっと速く動きたいんだけど」
『今のマスターでは無理だ。死んでしまう』
「だよなぁ……状態異常もピンキーの前では意味がないから、動きも封じられない。一人じゃどうしようもないな」
体調が万全なら、更に雷姫の力を引き出し、倒すことが出来ただろう。その条件での突破イメージはいくらでもある。しかし、残念ながら今は病み上がりもいいところだ。力を引き出すにも一苦労している状態では、これ以上は望めない。
「ポチャはどこ行ったよ! いっつもタイミング悪いんだから!」
『マスターが置いてきた気がするの~』
「ちっ……まあ、ポチャはポチャで疲弊してるし、無理はさせられないけど……」
スタミナ型のポチャですら、疲れの色が出ていた。本人は何も言ってなかったが、出会ってからずっとチームのリーダーとして、また、パートナーとしてやってきたのだ。それくらいは簡単に見抜ける。
『だからと言って、マスターが無理していいという理屈にはならないぞ?』
「え……あー、私はいいんだよ」
『よくない。そろそろ、マスターは己に何かあれば、周りの者達が悲しむということを学んでおけ』
「う。そんなこっ……! 雷姫!」
雷姫の刀身に電気を溜め、刀を振るうと同時に電気の刃として飛ばした。突然だったが、雷姫は難なく指示通りに動いてくれた。
前からの気配に思わず、牽制のつもりで攻撃を飛ばした。その攻撃はあまり意味はなかったらしい。ガオガエンはピカを斬り殺さんばかりに威力をつけ、襲いかかってきていた。
「ふっざけんなよ……!」
“まもる”で防ぎきれるものではない。しかし、避けようにも体に力が入らないのだ。目の前がチカチカし、視界もぐらついている。その瞬間、身体中に刺されたような鋭い痛みを感じ始めた。
「つぅっ!……こんなときにっ」
“雷龍”を放った代償ダメージがここに来て響いてきたのだ。今まで、雷姫の力で抑えていたり更に、激しいバトル、緊張感の続く戦場を駆け巡っていたため、意識することなく、ここまで来ていた。が、それも通用しなくなるほどに消耗しきってしまったのだろう。パートナーの助けるために放った一撃で自分が危険に晒されては本末転倒であるが、後悔しても遅い。せめて、雷姫を実体化させ、応戦させるしかないだろう。
「させるかぁっ!!」
雷姫に命令しようとした瞬間、ピカとガオガエンのや間に割って入ったのは、パートナーのポチャだ。愛剣二振りを使い、ガオガエンの斬撃を防ぎきった。ガオガエンは力任せに押し込もうとするも、ポチャはびくともしなかった。押し負けるどころか、ガオガエン後ろへと後退させる。
「“氷水擊”!」
瞬時に無数の氷と水で出来た矢を生成し、一斉にガオガエンへ放つ。ガオガエンの苦手とする水を使ったことにより、嫌がる仕草を見せた。その隙にポチャはピカを抱き抱え、ある程度の距離を取る。念のためにセツを防御壁に姿を変え、ピカを地面に下ろした。
「もう! 無茶苦茶ばっかりするから、こんなことになるんだからね! 死んじゃったらどうするのさ!?」
「げほげほっ……うえ。あー……遅かったね? 何かあった?」
仁王立ちで説教姿勢のポチャにピカはなるべく触れないように慎重に話しかける。むすっとした表情は変えないまま、これまでの道中を手短に伝えた。
「向かう途中で逃げ遅れた一般人の保護をしてた。ピカも心配だったけど、優先順位を変えさせてもらったよ。……それで、あれが本命ってことでいいのかな」
「うん。……周りの雑魚と比べれば、あいつがボス級だろうね」
「了解。どうすればいい?」
「……私がどうにかする。そのためにポチャは敵の足止めを。……っと、その前に時間稼ぎをお願いしたいかな」
「時間稼ぎ? どれくらい?」
「五分……あーいや、三分でいい。寝る」
「は、ね、寝るぅ!? この中で!?」
「体力が風前の灯なの。察してくれ。……“ねむる”」
詳しい事情を聞く前にピカは、ぐらりと体をふらつかせる。慌てて手を伸ばし、支えたときには目を閉じて眠ってしまっていた。落ち着いた呼吸ではなく、荒い呼吸のままだった。そっと地面に寝かせると、長いため息をつく。
「だから、戦いが終わるまで寝てろって言ったのに。ほんっとうに君って奴は。……さて。戻れ、セツ!」
『はいな! でも、ぴーはどーするの?』
壁になってくれていたセツを剣の姿に戻す。セツの言葉に答えることはなく、無言でスイを地面に突き立てる。
「スイに守らせる。いいね、スイ」
『うん! ぴーはすいちゃがまもる! まもるけど、てぃーは?』
「セツがいるから大丈夫。……でも、三分か。長いけど、耐えるぞ」
『あい!』
元気よく答えてくれたセツを構え、前に走り出す。ここを抜けられるとスイがいるとはいえ、ピカに被害が及ぶ。彼女の指示通り、三分耐えきるしかないのだ。



~あとがき~
今日で空と海(小説版)丸六年経ちました。七年目突入じゃー! 七年目だけど、小説的にはまだまだ終わりません。こ、これは……倍掛けても終わらないのでは?(恐怖)

次回、ポチャVSガオガエン(ゾンビ)!
あ、ポチャ君。ガオガエンがゾンビみたいって知らなくね? まあ、いいか。

ピカさん、満身創痍で動きも鈍っておりますが、まだまだ頑張るつもりらしいです。いい加減にしないと死んじゃうぜ……ポチャ君が可愛そうになってきたね。彼も彼で満身創痍なんだけどな。

ではでは。