satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第213話

~前回までのあらすじ~
暴力表現、過激表現に注意。
VSガオガエン戦が終了。色々、ありましたね。見るからに布石! という展開が続いておりますが、残念。まだ続きますよ。
ピカ「どんでん返しはいらねぇつったろー!!」
ポチャ「も、もう、やだ……」
はっはっはー! そんなことを言われても、これは前々から予定していたのだー! 展開は違うけど!
ピカ「……流石、ガバッガバっすね。作者さん」
言うな! んなことは知ってるだぁよ……


紅と名乗るキュウコンはゾッとする程のオーラを放っていた。ポチャが感じた感覚は間違いなく彼女の気配を察知したせいである。対する紅はポチャの警戒等、興味もないのか小さく首を傾げる。
「各地のお人形達がやられているのは、貴方のお力かしら?」
「……は?」
「いいんだけれどね。元々、時間稼ぎ用だったもの。……そんなことより、あのガオガエンの彼、倒したのは……貴方のパートナー?」
「だったら、何? 彼女に何かするつもりなら、阻止するけど」
戦う力はどこにもないのだが、それでもどうにかかき集め、スイをなんとか向ける。そんなポチャを見た紅がふるふると首を振った。心外だと言うように。
「雷獣と呼ばれる彼女を見てみたいだけなの。貴方に攻撃はしないわ」
「敵の言葉を簡単に信じられるか」
「本当よ。……!」
突然、紅は宙を舞いある人物からの攻撃を避ける。ポチャがそちらを見ると、隣にピカが立っていた。手には雷姫が握られており、その刀で攻撃したのは容易に想像出来る。しかし、攻撃を仕掛けた彼女も状況が分かっていないらしく、横目で戸惑いながらポチャに話しかけた。
「めっちゃ嫌な雰囲気だったから攻撃したけど、正解だった……?」
「分かんない。ぼくはまだ何もされてないよ」
「え。喧嘩吹っ掛けたの私!? や、まぁ、こんなところに突然出てくるなんて、普通じゃないもんね。……味方ではないなら、敵だ。敵」
「そうだね。……ピカ、こんなときに何だけど、神器は?」
「壊してきた。最期は穏やかに終われたと思う」
その言葉を聞き、ホッとした。とりあえず、一つの脅威は去ったと確信出来たためだ。が、現在進行形で別の脅威にさらされているのだが。
その脅威の元凶である紅はピカをじっと見つめたまま動かない。出方を窺っているのかとピカもポチャも構えるものの、返ってきた反応は攻撃ではなかった。
「うふっ♪ いいわぁ~……雷獣さん。貴女を我が主の贄にしましょう」
「は、はあぁ!? 私が贄って何言って……」
ピカの当然の反応に紅は無視をした。彼女は頬を高揚させ、興奮している様子だった。
「最高の人材よ。強くて、空っぽなんて、そうそう見つからないわ。大丈夫。貴女の心は消えても、肉体は有効活用するわ」
完全に置いていかれているピカとポチャは紅から距離を取りつつ、こそこそと話をしていた。二人とも戸惑いの色を浮かべている。
「やだ。話通じない……私、殺人予告でも受けてるのかな。え、怖い」
「でも、体は使うって言ってるから……体は無事、なんじゃない? ちょっと状況分からないけど」
「私が私じゃなくなるなら、死も同然だわ!! よく分からないけど、お断りだ! お断り!」
「ぼくだって受け入れられる訳ないだろ。ピカが行くとか言ったら、縛ってでも阻止する」
「愛がおもぉい……それくらい、私のことを愛してるのねっ☆」
「冗談きつい……」
「んだと、この野郎。本当のことだろうが」
「この状況でふざけたこと言うから……で、どうするの? 倒す?」
ポチャの言葉にピカは紅を見た。彼女は依然として目を閉じて、何やら物思いに耽っているらしいく、二人の後退に気付いていないらしい。が、今現在のコンディションで勝てる相手だとも思えなかった。倒したいのは山々だが、ここは逃げの一択だろう。
「ポチャ、走れる?」
「なんとか。……でも、追い付かれるかも。あいつ、“テレポート”に似た何かを使って出てきたから」
「そんときは……応戦するしかない。じゃ、三カウントで走ってくださいねぇ。本部方面」
「了解」
ポチャは走りやすいように二振りを一度消した。ピカは雷姫を持ったまま、走るつもりらしい。何かされたときに、対応するためだろう。俊敏性はピカの方が上である。走りながらでもある程度の攻撃は任せてしまっていいはずだ。
「三……二……」
ピカのカウントを聞きながらも、視線は紅へと向いていた。こちらの様子は気にしない紅だが、警戒しておくに越したことはない。しかし、全力で走るには一度、紅に背を向けなければならない。そこだけは懸念材料ではあるものの、仕方がないと割り切るしかないのだ。
「……一!」
彼女の合図で勢いよく身を翻し、走り出した。ピカはポチャの後ろを走っているらしく、隣にはいなかった。走る中、ポチャはピカに話しかけた。
「今更なんだけどさ! バッジとか、道具使って逃げればよくない!?」
「ポチャの持ってるバッジの転送装置はダンジョン内のみ適応! あと、バッグは救護室に置いてきたんだよ!! 察しろ!!」
ピカが姿を消したとき、バッジの反応がどうのという話をしたことをそこで思い出した。今の今まで忘れていたが、現在のピカはスカーフと雷姫という装備のみで必要最低限の物しか持ち合わせていないのである。
「っあぁぁ!! 忘れてたぁぁ! じゃあ何!? 回復アイテムもなし!?」
「ない! 身軽でいいだろ!」
「馬鹿ぁぁぁ!!! ピカの馬鹿!!」
「黙ってはし……っ!? ポチャ、このまま振り返らずに走れよ! リーダー命令な!」
「え、あ、ちょ!?」
後ろを走っていたはずのピカの気配が遠くなる。振り返るなと言われてそうですかと従えるはずもない。ポチャは若干スピードを弱めつつ、後ろを振り返る。後ろを見れば、ピカが紅と対峙していた。紅が二人の後を追いかけてきていたということなのだろうが、それにしても早すぎるのではと思った。先程の“テレポート”のような移動手段を用いたのだろうか。何にせよ、一人でやるよりは二人で戦った方がいいに決まっている。
「ピカっ! ぼくも……!」
「馬鹿! 走れって……」
「あはっ♪」
一瞬の隙を紅は見逃さなかった。ピカと相対していたはずなのに、瞬き一つでポチャの隣へと移動してきたのだ。防御体勢の取れないまま、紅は笑う。九つの尻尾全てをポチャに向け、それで貫かんとしていた。
「貴方を消してしまえば、雷獣を……あのピカチュウさんを手に入れられるかしら?」
「攻撃しないんじゃなかったのか」
「目的が変わったの。さようなら」
鋭い尻尾の槍を一斉に放つ。何もしなければ串刺しにされるだろう。ここまで来て、死ねるわけがなかった。頭に浮かぶ雑念を振り払い、愛する剣達の名を呼んだ。愛称ではなく、真名で。
「……重なれ! 水泉、雪花!!」
『あいっさー! やるよー! せっちゃ!』
『いいよ! めちゃおひさぁぁ!!』
見慣れた氷の剣と水の剣……ではなく、ポチャの身長の倍以上もある大剣が現れる。水晶のように透き通ったそれは、ガラス細工のようで少し触れただけでも壊れてしまいそうな見た目をしているが、ポチャはそれを器用に振るうと紅からの攻撃を防いだ。
「あらま。とんだ隠し玉ね」
「やっばい……久々でおっもいんだけど、お前」
『久々に呼び出しておいてひっどいわねぇ。でも許すよ♪ 我らが王よ』
スイでもセツでもない声が聞こえてくる。何年ぶりかに聴く彼女はすんなりとポチャを受け入れていた。
「……それが、過去にパートナーさんを傷つけた武器ね。聖剣二つからなる上位の存在……精霊を呼び出す技。聖剣の合体技とも言えるかしら?」
「答える義務はない。……やるぞ、白雪」
白雪と呼ばれた大剣は小さく笑うと、力強く答えた。
『いつでもどうぞ。王よ』
紅は再び、尻尾からの突き攻撃を繰り出してくる。それを全て防ぎきると、ジャンプをし、白雪を大きく振りかぶった。両手にかかる重さに思わず、手から滑り落ちそうになったのを何とか耐える。
「手から抜けそう……っ!」
『あら、嫌よ~? 頑張って♪』
「分かってるっ!」
真上から一気に大剣を振り下ろした。大振りの攻撃は避けられやすく、紅も簡単にバックステップで後方へと避けていた。が、それはお見通しである。
「ピカ!」
「あぁくそ! 結局こうなるんだよねぇ!! 雷姫!」
「なっ!?」
紅の避けた方向にはすでにピカが待ち構えていた。赤い電撃を纏わせた刀身を構え、一閃を放とうとする姿が見える。
「やあぁぁっ!!」
「……ふふ。いいわ。こうでなくっちゃ」
ポチャの目から見れば、ピカの一撃を避けられるわけがない。一太刀を受け、上手くいけば立ち上がることもないはずだ。少なくとも、致命的な一撃である。それを裏付けるかのように、紅はピカの攻撃で何メートルも吹き飛ばされる。
「戻れ、白雪」
『……でも、相手はまだやる気あるかも』
「かもしれないけど、ぼくはもうお前を保てるほどの気力がないんだよ」
『残念。それじゃあね、我が王』
水晶の大剣を二振りの剣に戻したところで、ポチャは膝をつく。スイとセツの心配するような声が聞こえてくるものの、それに答えられる余裕はなかった。ここで再び、走って逃げるべきなのは分かるが、それすらも出来なくなるほどに消耗してしまっている。顔を上げると、ピカも肩で息をし、今にも倒れそうになっていた。
「あは。あはは! いいものを見た。あれが聖剣を……武器を合わせる……なるほどねぇ。貴方が使い手だったの。海の国の次期国王様。あれが貴方の国の女神様?」
吹き飛ばされた紅はかすり傷はあるものの、致命傷は免れたらしい。ゆったりとした足取りでこちらへと近付いてくる。立ち上がらねばと思っても、力が入らず、反対に意識が遠くなっていく。
「ピ、カ……」
揺れる視線の先に、ポチャのパートナーであるピカを捉える。彼女はポチャの方を振り向くと、安心させるような笑顔を向けた。
「大丈夫。任せとけ」
その言葉を最後に、ポチャは意識を手放した。



~あとがき~
白雪なんて出す予定なかったわ!!!

次回、ピカと紅。
そろそろ終わって欲しい。切実に。

はぁ~あ! 白雪の説明がどこにもないですね。まあ、あれっす。聖剣に宿る命が呼び出す武器の神様的なそれです。(適当)
水と氷の聖剣を合体させて、別のものが呼び出されるというか……上位交換? みたいなそんな技です。そうなると、各タイプの聖剣がこの世界には存在するでしょうね。(適当)
聖剣の使い手はポチャ以外出てこない(予定)なので、いいか。こんな設定。

ではでは!