satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第220話

~前回までのあらすじ~
雑に花火大会を終わらせました。
ここから本題ですね。
ピカ「だねぇ~」
フォース「あれか。今度やる長編の?」
そうだね。次の長編の序章みたいなものです。次の長編はそこそこ重くなりますよ。今のうちに忠告しとこ……
ピカ「あはは~♪ はぁ。さっさと終わればなぁ」
フォース「無理だな」
今回の話は結構、物騒(過激表現あり)なので、苦手な方はご注意を。


花火大会を終え、イブとチコはギルドへ戻り、ピカとポチャは自分達の基地へと戻っていった。賑やかだった祭りとは対照的に、海岸は波の音が規則正しく聞こえてくるだけで、心地よい静けさに包まれていた。
フォースはすでに就寝したイブからそっと抜け出し、ピカとの約束を守るために海岸へと訪れていた。呼び出した本人はまだ来ていないらしいが、待っていればいずれ来るはずである。適当なところで腰を下ろし、ぼんやりと海を眺めた。月明かりに照らされ、淡く光を反射する水面を見つめていると、深くまで吸い込まれるような感覚に陥る。
「瞑想には持ってこいって気もするけど、波の音で眠くなりそう」
「眠いなら、明日でもいいよ。私とのお話」
「別に眠くないよ。……さっきぶりだな、ラル」
声のした方を振り向けば、呼び出した張本人であるピカが立っていた。首にスカーフを身に付けているだけのいつもの彼女。
ピカは何も言わずにフォースの隣に腰かけると、同じように海を見つめる。
「落ち着くよね。私、海好きなんだ」
「ふうん?」
「ポチャとの出会いの場ってのもあるけど、単純に波の音とか、ここの雰囲気が好きなんだよ。……それに、ここ、案外人が来ないから」
「人の喧騒から逃げるために来るってことか」
「あは。……まあ、そういうこと」
話があると呼び出されたものの、本題がこれだとは思っていない。これは単なる世間話、他愛ない話に過ぎない。少しの間、二人して話もせずに海を眺めていたが、やがてピカが口を開いた。
「……さて。色々話したいんだけど、実はどう話したらいいのか分からないんだよね。楽しい話じゃないから」
「今更、そんなん気にする仲かよ。ペンギンにも言えないようなことを言うつもりの癖に」
「……フォース君の読心術嫌いだなぁ」
苦笑混じりにぽつりと呟いた。嫌味でもなんでもなく、困ったような表情を見せる。
「でもまあ、正解だよ。本当は誰にも言うつもりなんてなかったんだけどね。……フォース君と仲良くなっちゃったから、言っておこうかなって」
「? どういう……」
「遠回しに言っても仕方ないから、単刀直入に。……ピストが動いた。ようやく尻尾が掴める。この先は……言わなくても、分かるよね?」
ピストと言う名前は知っている。話したことはないが、見たことはあった。ピストはイブの父親であり、“強き力”を持つイブを監禁していた張本人。そして、そのピストの本性も知っていた。
胸の奥底から沸き上がる黒い感情を抑え付け、あくまで冷静に落ち着いた声で言葉を紡ぐ。
「あいつが……何をするつもりなんだ?」
「それは分からない。でも、今回の騒動、私はイブちゃんが狙いなんだって思っていたの。バックにピストがいるのは知っていたから。……でもまあ、その予想は外れたけど。……多分、イブちゃんを連れ戻すつもりなんじゃないかって思ってた」
「すぅは何もしてないけど……あぁ、違うか。力を危惧して」
「多分ね。少しの危険分子をピストは逃さない。例え、実の娘でも。……きっと、あの人は」
これ以上、ピカは続けなかった。言わなくても分かるだろうとでも言うように、ピカはフォースを見つめた。
「……それで、お前はどうするんだ」
「ずっと追いかけていたの。ミーさ……エルンさんっていう四天王に頼まれて。なんで私なのかは分からないけれど、一年前からずっと、あいつを捜してた。いいところまで行ったこともあったけれど、結局は逃げられて……でも、今回はそうはいかない。今回は必ず、仕留める」
ここで一度、言葉を区切った。次の言葉を言ってもいいものか、考えているらしかった。ここでピカが言わなくても、フォースは悟ってはいたのだが、彼女は意を決したらしく、迷いのない真剣な眼差しをフォースに向けた。
「……私は、イブちゃんの父親を殺す。あなたの主の家族を手にかける。……仮に止められても、止まらないから。フォース君を敵に回しても、やり遂げる覚悟だって伝えるために来てもらったの」
誰にも言わずに計画を進める選択肢だってあった。わざわざ言う必要はない。誰かに止められる可能性があるならば、黙って実行に移すべきなのだ。しかし、ピカはそうしなかった。それは客観的判断ではなく、自分がそうした方がよいと考えたからだろう。自分の義理を通したとも言えるし、自己満足であるとも言える。フォースはそんな彼女に自分の考えを伝えるべきだと感じた。
「あいつは……ピスト・フォレスは我が主、ステラ・フォレス様にとって邪魔でしかない。……すぅが幸せになるためにあいつは必要ないと判断している。ラルがやるなら、おれは止めない」
「イブちゃんが止めろって言っても?」
「そうだな。そう言ったらラルの邪魔にならないように上手くやっておくけど。……おれ個人の意見としては、今すぐにでも殺ってもいいんだ。元来、おれの性格はそんなもんだから。邪魔なら排除するのが一番だよ。けど、鈴琉が嫌うから、やらないだけ。本当にやらなくちゃいけない状況に置かれなきゃ、おれは動かない」
自分のために誰かの血が流れるのを極端に嫌がっていた、最愛の妻の笑顔を浮かべる。例え、イブのためと正当化しても、彼女は怒る。もっと別の手段があると、甘い夢物語を聞かせてくるはずなのだ。フォースにしてみれば、主を守るために主を殺すと言う最大の矛盾を含むと反論したくなるが、鈴流の場合、そうなったら仕方がないと困ったように笑うだろう。イブの場合、そうも言ってられないが。
「きっと、すぅは優しい奴だから、親を庇う。できるなら、知らないところで終わらせてくれよ」
「うん。善処する……まあ、ピストの動きと情報が揃い次第って感じかな。ごめんね、こんなことで呼び出して」
「いや。知れてよかったよ。知ってる奴が一人でもいた方ができることもあんだろ?」
「あは。そうかもね。……じゃ、明日から仕事でここ離れるから、帰ってきたときにでも話すよ」
「おう。……なあ、ラル」
完全にお開きムードだったのをフォースが遮った。ピカはすでに立ち上がり、フォースに背を向けていたが、こちらを振り返って次に出てくる言葉を待っている。
「……あ~……おれもお前に言いたいことあったんだけど、まとまったら話すわ」
「ん? それ、重要な奴?」
「多分ね。……将来の話、かな」
この一言で知識のあるピカは何なのか察したのだろう。妙に納得した様子で、わざとらしく首を傾げた。
「……あぁ、なるほどね。それ、確実なの?」
「そうだな。まあ、中途半端に投げ出すなんてのはしない。しっかり見届けるよ」
「そうしてよ。まだ、フォース君に退場されたくない。……で、その話は誰かに?」
「お前が最初。そして、これからも誰かにするつもりはない。ラルは……うん。リーダーだから?」
正直なところ、なぜ目の前の彼女にこのことを吐露してしまったのか、自分でも分からなかった。ただ、言っておかなければと思ったのだ。取って付けた理由にピカは苦笑を浮かべた。
「てっきとうな理由だなぁ……今日はお互い、ここまでにしよう。今度、詳しく話そうか」
「りょーかい。……おやすみ、ラル」
「うん。おやすみなさい」
ほんの少しの平和な時間を過ごすため、日常へと戻っていく。それとは別に大きな流れへと飲み込まれているとも知らずに。



~あとがき~
最後の文は適当につけたので、あまり意味はない。(多分)

次回、ほのぼの! 日常話! ピカとポチャの二人でお送りします。
珍しくポチャ視点だよ☆

本当はもう少し別の話をするつもりだったんですけど、ちょっと後回しにすることにしました。後回しでいいなと思ったのと、夏祭り編があまりにも長すぎたってのが……話数的には127話~220話までなんです。計算したら、93話も夏祭り編やってました。日数で言えば、2016年2月末~2019年6月末なので……3年と4ヶ月、かな? なっが(汗)
このあとも何年も通してやるような長編が待ってるぞ~い!!(泣)

はてさて。今回はなんだか焦臭い話で終わりました。しなくてもいい話だけど、ちょっくら話しますかね。なんとなく、思ったことをね。
フォースは二人のピカチュウの女の子に変えられたんですね。一人は鈴流、もう一人はピカですね。鈴流はフォースに人を愛するってのを教えた人で、優しさを芽生えさせたと言うか、大切に思う気持ちを教えたと言いますか。そんな感じです。
で、ピカは人との関わりを教えました。必要以上に関わりを捨ててきたフォースを外へと引っ張ったのはピカです。そんな二人があって今のフォースがあるんだなーと。んでもって、二人ともピカチュウっていう。作り手の私からすれば、そうなるように作ってるわけなので当たり前なんです。でも、フォースからすれば、ピカと出会うのも運命だったのかもしれません。
なんてことをふと思ったので、つらつらと書きました。正直なところ、フォースがここまで丸くなるなんて思ってませんでした。

ではでは!