satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第226話

~前回までのあらすじ~
フォースがポチャに活を入れました。
多分、ピカとポチャのほのぼの回も終わります。
ちなみに、今回の話からは夏祭り編終わった後に書いてる奴です。だからなんだって話ではありますが。
フォース「久し振りに本編にも余裕が出てきたな。これ出すときは知らんけど」
ポチャ「シリアスから脱したからだね」
そうっすね……シリアスよりも断然ギャグテイストの方が好きです~♪
今回がそうなるとは限らないけどな!
ポチャ「……えっ!?」
フォース「www」


基地に戻ると、さっきまで五人もいた空間に二人だけになったからか、少しの寂しさを感じた。ここ最近、この基地に大人数で寝泊まりしていたせいもあるのだろう。なんだか、二人きりが新鮮に思えた。……いや、実際には先週、二人で仕事三昧だったんだけども。二人りきではあったけれど! そうじゃなくて、我が家に二人が随分、久しく思えた。
……ぼくは誰に言い訳をしているんだろう。
「まだ日が沈まないから、明かりいらないね~♪」
「そうだね。もう夕方のはずだけど、まだ明るいや」
「暑いのは嫌だけど、寒いよりはまし」
散らばった書類をかき集めながら、天気に文句を言っている。それを言うなら、ぼくは真逆の方がありがたいんだけれど、この話については堂々巡りになる可能性が大だから、話題に上げないのが得策だ。現にこの前もそうだったし。
ぼくはいつもの定位置に座り、ただなんとなく、ピカを目で追っていた。頭ではフォースと交わした会話が巡っている。
ぼくとピカは探検隊としてのパートナー歴、それに伴って友達、親友歴の方が長くて、今更、恋人になりましたなんて実感がない。一年以上はピカを友達ではなく、女性として意識していたはずだけれど、だからって何かが変わったわけじゃない。
ぼくは、何が望みなんだろう。今と、昔、何が違うんだ……?
「ポチャ、どうかした? あ、夏バテか。早いなぁ!?」
考え事をしていたら、ピカが不思議に思ったようで、呆れたような目でこちらを見ていた。ぼくは慌てて、首を振る。
「ちがっ……別にバテるほど、動いてないし、水分補給だってやってるよ」
「そう? ならいいけど。倒れるくらい我慢なんてしないでよね~」
「う、うん……」
この前の散策をデートだって言う割に、ピカ自身はぼくを意識しているようには見えない。いつも通りのピカ。探検隊スカイのリーダーであり、ぼくの大切な相棒で、親友のピカだ。それ以外が見えてこない。
「あのさ、ピカ」
「ん~?」
ある程度、片付けが終わったピカは、書類をまとめて保管している大きな宝箱のような木箱に手をかけているところだった。こちらは振り返らずに返事だけが返ってくる。そして、ぼくはこの先の言葉が出てこなくて、黙ってしまった。
箱を閉める重い音が響いた後、ピカがこちらを振り返り、ぼくの真正面に座る。そして、彼女はこくっと小さく首を傾げた。
「ポチャ?」
「あ……と、その」
言葉に詰まるぼくにピカは急かさず、じっと待ってくれていた。茶化さなかったのは、ぼくの表情から察したのかもしれない。おふざけモードだったら、ここで茶々を入れているところだから。
「あの、何て言うか……ピカは将来をどう考えてますか!?」
頭がぐちゃぐちゃで、やっと出た言葉は意味の分からないものだった。親じゃないんだから、何かもっと言い回しがあるだろうに。なんだ、これ!?
「あ、えーっと……最近、そこら辺気にしてるよね。ぼくがパートナーでよかったか、とかさ」
「ちょっとね……」
パートナーうんぬんは自信喪失して思わず聞いてしまっただけだ。時々、そんな不安を覚えてしまう、ぼくの弱さが嫌にはなるんだけれど。……いや、今聞きたいのは、そんな話ではないのは分かる。
ピカは少し考えながら、首に巻いてあったスカーフを外した。
「繰り返しになるけどさ、私はポチャ以外のパートナーなんていないって思ってる。だから、ポチャ以外の人とコンビで探検隊はやらないよ。それを踏まえて、さっきの質問に答えると、将来もずっと、ポチャと探検していきたいかな。いけるとこまで、二人で」
「ピカ……」
「仕事は嫌いだけど、探検は嫌いじゃないんだよ。だから、何を不安に思っているのか分からないけど、これからも私の相棒してくれると嬉しいかな。……あ、もちろん、ポチャが探検隊はいいやってなる日が来たら、それはそれでとめない。ただ、そのときはちゃんと言ってね?」
嘘偽りのない笑顔を浮かべ、今の気持ちを伝えてくれた。
真っ直ぐな、普段見えてこない心の奥の気持ち。
「ぼくも、そう思う。ずっと、ピカと探検隊やっていきたい。……だから、ぼくが探検隊いいやなんて言わないよ? 言い出しっぺはぼく自身だ。言い出しません!」
「あははっ! 確かに! でも、過去に一回あったからなぁ……?」
ぐっ……!? あ、あれは……!
ぼくが何か反論する前に、ピカはおかしそうに笑った。
「ごめんて。あれはポチャが探検隊を嫌いになって言い出したわけじゃないのは分かってる。……それは置いておいて、ポチャは王子様なわけだし、何かあれば国に帰らなくっちゃ」
「ま、まあ……そうだけど、でも、ぼくは何かあっても絶対にここへ帰ってくる。君を置いて、どこかになんていかないよ」
「うん。ポチャはそういう人だもんね。分かってるよ」
……あれ、なんでこんな話に……? ぼくが聞きたかったのはこれじゃない、よな? えっと、そうだ。結婚の……はな、し、だよね。フォースが確かめろって言っていたのはそれだったはず。けど、もう話の修正なんて出来ない。かと言って、直球に聞ける程、肝も据わっていない。今回は諦めようかな。
「……あ、そういうことか?」
ぽつりとピカが呟いた。そして、彼女にしては珍しく、顔を赤くして、ぼくから目を逸らした。ぼくは意味が分からず、戸惑いつつ、問いかけた。
「え、と、ピカ?」
「隣、行っても……いい、ですか……?」
「う、ん。いいけど」
ぼくとは目を合わせず、すとんとぼくの隣に座る。ピカの顔を見ようとしても、そっぽ向かれてしまい、どんな表情なのかが分からない。
「さっきのは、私の……ピカとしての思い」
「探検隊続けるってやつ?」
ピカは黙って頷く。
「探検隊の私……一部隊を率いる、リーダーの思いであり、そうでありたいっていう願い。……でも、一人の女の子っていうか、その、ラルとしては、違う」
「違う……?」
ここで、ピカがこちらを見た。顔を真っ赤にして、いっぱいいっぱいの彼女は初めて見るかもしれない。
「私は、ティールとずっと一緒にいたいって……添い遂げるって夢くらいはある」
「…………えっ」
今度はぼくが赤面する番だった。
「今は、まだ早いと思うけど、将来的には……五年とかもっと後になって、そういう話があるなら……考えなくはないって話!」
「ぷ、ろ……ぽーず? ですか、ラル、さん」
「ち、違う! 私からはしない!!」
しないんだ……
「しないよ。だって、確約出来ないから。私はふらふらしてる自覚あるもん。もしかしたら、明日、パッといなくなるかもしれない。だから、私からお願いなんてしない。……ティールにそんな私を受け入れる覚悟が出来たんなら……そのとき、私がティールの隣にいられるのなら。一生、家族として傍にいます! 以上!」
一気に捲し立てると、再び、ぷいっとそっぽ向いた。そんな反応がありがたかった。今のぼくも、ピカに負けないくらい真っ赤になっていると思うから。でも、それじゃあ……いつものぼくだ。
何度か深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。まだ顔が熱い気もするけれど、これは夏だから仕方がないと無理矢理思い込むことにした。
「つまり、ラルはぼくと、けっこ……」
「今は言わないで。めっちゃ恥ずかしい」
「……分かった。じゃあ、こっち、見てくれる?」
少しの沈黙の後、ピカがゆっくりとこちらを振り向いた。俯いたままではあるけれど、なんとか様子を窺えそうだ。
「ラル」
ティール……んっ」
名前を呼び、顔を上げたところで、そっとキスをした。軽く触れるだけのそれはすぐに終わって、代わりにピカを後ろへと優しく押し倒した。
「わっ……!」
「今ある問題を全部片付けて、安心出来るようになったら。……ぼくがラルといられるようになったときは……約束する。ちゃんとお願いするから、覚悟しててよ」
ぼくの下でピカがぽかんとしていた。普段のぼくじゃやらないから、びっくりさせてしまったのかもしれない。
「なんか……ティールがティールじゃない、みたい」
「こんなぼくは嫌い?」
「ううん。だぁいすき。……ね、ぎゅってしていい?」
「へっ!? わっ、ちょっ!?」
ピカの両手が伸びてきて、ぼくを抱き寄せた。耐えきれなくて、ピカの上に崩れ落ちる。退きたくても、ピカが離してくれなくて、がっちり密着してしまっていた。これは予想外で、ぼくの頭はプチパニックだ。
「わ、ラル、なんっ!?」
ティールのそのお願いを受け入れられるように、私、頑張るね。よろしくお願いしますって言えるように」
「ぼ、ぼくも、自分で納得できるように強くなる。……それまで、待っててね。今度は前みたいに待たせないよ」
ピカの手が緩むと、ぼくは四つん這いになって、ピカの上に被さるような体勢になった。ぼくの下でピカはふわりと笑う。
「うん。……ティール、大好きだよ」
「ぼくもだよ、ラル。愛してる」
どちらかともなく、もう一度キスを交わす。長くも短い時間を共有して、二人で甘い時間を過ごした。



~あとがき~
このあとはご想像にお任せって奴です。

次回、オーシャンの二人+フォースの話。
ピカとポチャをピックアップしたんでね!

こういう恋愛的なお話はしばらくありません。最後ですとまでは言わないけど、そう言っても間違いないくらいには予定がないです。
というか、久し振りでしたね。フォースと鈴流以来ですかね……?
そもそも、恋愛絡みのきゃっきゃっした話なんて、フォース&鈴流か、ピカ&ポチャにしか書けないんですけど、鈴流はもういないし、ピカとポチャはお互いにやる気がないんで……必然的に機会もない。私自身、こういうのは書き慣れてないので、単調な表現ばかりで申し訳ないですけどね~

今回でかなり進展というか、ポチャ君はかなりジャンプした気がします。そんなに飛んでいいのかってくらいです。ピカはピカで一途なので、問題ないと思いますが。
さて、二人は無事にゴールインするんですかね……(遠い目)

ではでは!