satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第65話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でとたばた日常を過ごす物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、放送を聞いていたラル達の話をやりました。一方その頃をお送りしました。ツバサちゃん達は何話もやったけど、ラル達は短かった。
ラル「あれくらいでいいんだよ。他が長いんだから」
それな。
まあ、頑張りますよ。今回で初めのゴング鳴ればいいけど……鳴らないかな……
ラル「さあ?」
他人事め……


《L side》
リュウ君の放送が流れた後、続々と生徒達が入ってきた。一週間前に顔合わせはしてあるものの、役員ではない人達の顔は正直、曖昧である。
「……私が統率すんのかぁ」
「頑張れ、会長」
「ファイトファイト~」
「……二人して、てっきとうなことしか言わな……あ、普段の私か」
人を統率するのは、生徒会としてだけではなく、探検隊としてもやるし、慣れてはいるけれど、こんな大人数はなぁ……まあ、大丈夫だろ。私一人ではないし。
「やあ、ティール、フォース」
「マル。ちょっとの間だったけど、楽しめた? 屋台とか」
人混みを掻き分けてこちらに近寄ってきたのは、今年の大会実行委員長、マル君だ。ティールの質問に、ふんわりした笑顔を浮かべて、ゆっくりと頷いた。
「おかげさまで、軽く回ってきたよ。毎年、人は多いけど、今年はそれ以上な気がするね。参加者の熱意も凄そう」
「四ブロック、百人ずつ。合わせて四百だろ? どこにそんな生徒いたんだよ……」
「うちの在校生はなかなかの人数だもん。そんなもんでしょ。……さて、マル君、そっちが全員揃ったかどうか確認してくれる? ティール、こちらも確認して」
「分かった。ちょっと待っててね」
「了解。部隊毎に並ばせる」
マル君とティールがぱっと集まった生徒達の方へと消えていく。そして、残っているフォース君をちらりと見る。
「フォース君、全員に通信機行き渡る?」
「数揃えましたよ、会長さん。後から合流するかもしんないから、一応、役員で大会出場予定の奴らの分と予備もある」
「手際がよろしいことで」
二人の人数確認も終わり、全員が揃ったのは、収集がかかってから十数分後だった。この人数なので、許容範囲内だろう。
注意事項の再確認、それぞれの担当範囲の話、軽い仕事内容の確認等々、話さなければならないものは全て話し終える。質問も出てこないのも確認し、私は全体を見渡した。
「今回は例年以上の参加人数で、予期しないトラブルや出来事に遭遇する可能性はある。しかし、それに迅速に対応するのが私達の仕事だ。……スポットに当たるのは、会場で戦う人達かもしれないけれど、あなた達も見られていることを忘れないで」
目立つのは大会出場者ではあるが、だからと言って、こちらに目が向かないわけではない。専門機関やギルドのお偉いさん達は、案外、裏方とも取れる私達も見ているものだ。強いだけが利点ではないのである。
「何かあれば、各班のリーダーを頼ること。それでも駄目だと判断した場合、私が対処する。……この先、臨機応変な行動を求められるようなこともあるかもしれないけれど、そのときは私の方から全体的に指示を出すので、通信機だけは手離さないで。壊すのも厳禁」
いやはや、臨機応変とか、予定外の指示を出すとかそんな事態には遭いたくないものだけれど。何が起こるか分からないのが、現場である。
「最後に、ここにいる全員が仲間だ。互いを信じて行動し、仕事に当たること。……以上! 開始時刻まで各班待機」
「了解っ!!」
生徒会役員、大会実行委員全員が声を揃え、返事をする。毎回思うが、こんな感じに話していると、生徒ではなく、何かの軍隊を率いているのではと思わざるを得ない。前にもこんなことを言った気がするけれど。
「ラルは開会式出るの?」
警備全体の指揮を任せたティールは、剣を腰に下げた状態である。何かあったとき、対応するためだろう。ただし、探検に行くときは二つ下げるところを一つだけではあるが。
「いんや。挨拶しろとも言われてないから行きません。ティールは?」
「出るわけないでしょ。会場にはいるけどね」
「あ、警備か。……今日はスイちゃんなの?」
ティールの持つ剣はスイちゃん、セツちゃん─正確な銘は水泉、雪花だが─という二つを所持している。スイちゃん、セツちゃんが対になっている武器……というわけではなく、それぞれ単体で成り立つものだ。それをティールが二刀流といいますか、なんちゃって双剣装備として普段から愛用している。この辺は話すときりがないので、本日は省略するけれど。
深い海のような色の鞘に収まるスイちゃんを見下ろしたティールは、少し呆れているような、冷めたような目をしていた。
「勝った方を装備してる」
『あのね! しりとりー! すいちゃがかった!』
「あー……心中お察しします。ティールさん」
私がティールの剣にちゃん付けしていた理由は、これである。雷姫のように喋るのだ。まあ、所有者のみに声を伝える雷姫とは違い、条件が幅広いスイちゃん、セツちゃんは私やフォース君にも、当たり前のように声が聞こえている。二人……? から、拒絶されないだけ、ありがたい話なのかもしれないけれど。
『るー! あのね、せっせんだったんだよー!』
「うるさい。しばらく喋るな」
『てぃーのいじわる~』
スイちゃんの相方、セツちゃんと白熱したらしいしりとりの内容を聞く前にティールが止めてしまう。そして恐らく、ティールはそのしりとりをリアルタイムで永遠と聞かされたはずだ。今は聞きたくもないんだろう。
スイちゃんを黙らせた後、生徒会の後輩君に呼ばれてしまったティールは、無感情な表情をぱっと笑顔に変え、そちらの方へと行ってしまった。いやはや、手慣れていらっしゃる。
「フォース君は……動く気ないだろ」
真面目なティールや委員長のマル君とは違って、私の近くにある椅子に座ったまま、のんびりとしていた。こいつはこいつで、生徒が出しているお店の管理やバックアップを指揮するような─簡単に言えば、店長とか、そんなもん─偉いポジションに置いたはずなのに、やる気ゼロである。
「店のトラブルなければなんもねぇんだって。備品壊れたとか、足りないとかそういうお手伝いしかしないし、大抵下の奴らが動く。おれがやる必要性なし」
放任主義が過ぎるなぁ。何もないならいいけど」
「どうにもならんときは、おれがやるからいいの」
ま、いいけどね。フォース君がやればできる子なのは知ってるし。
あぁ、そうだ。忘れるところだった。
私は救護班の集団へ近づき、ツバサちゃんの肩を軽く叩いた。真剣なお話をしているところ悪いけれど、少し話があったのだ。
「ツバサちゃん、そっちの話が終わったらちょっといい?」
「? はい。分かりました♪」
不思議そうにしていたけれど、何かを疑う様子も不信にも思わなかったみたいだ。笑顔と共に肯定の返事が返ってきた。
フォース君のところまで戻ってくると、私とツバサちゃんの様子を見ていたのが、小さいため息が聞こえた。
「……ろくでもないこと考えてんだろ」
「そんなことないよ。変なことじゃない」
……少なくとも、私からすれば、だが。

開会式の時間になり、生徒会と実行委員の子達はほぼいなくなった。私はというと、控え室から一歩も動いていない。いざってときに全体の指揮をしなければならないため、極力ここから動くなとの私の相棒にして、副会長からのご命令である。
『Ladies & gentlemen!! レイディアント学園、イベント会場へようこそ! 本日の司会を務めますのは、冒険科三年、放送部所属のリュウと!』
『同じく、放送部所属の……ま、魔術科一年、キャスでお送りします。……えと、よろしくお願いします』
生徒会控え室に備え付けられたモニターに映るのは、コロシアムのような会場に沢山の観客と、関係者席に座る教師やお偉いさん達。そして、聞こえてきたのは今回の司会を務める放送部の二人の声。片方は先程会ったばかりのリュウ君だ。もう一人は初めまして……いや、見たことはあるが、挨拶程度の会話しかしたことがない。淡い緑の髪を綺麗に切り揃え、かっこいいというよりも、可愛いという言葉が似合うような少年だった。
初々しい挨拶をするキャス君に、リュウ君が少々……いや、かなりのオーバーリアクションで絡んでいく。
『おいおい、相棒~? 初っ端からそんなに緊張してちゃあ、後半まで持たないぜ?』
『そ、そんなこと言われましても……今回の放送が初めての仕事で……って、そんな話はどうでもよくって! これ、生放送ですよ! 生放送!!』
すでに暴走気味なリュウ君の手綱を一年生の彼に操れるのか微妙なところである。というか、一年生なのに、リュウ君が相方なんて……
「この一年が噂の後継者?」
リュウ君曰く」
私と同じでなぜか部屋から出ていかなかった、フォース君が、放送部二人の雑談とも取れるやり取りを聞きつつ、うへと嫌そうな表情を浮かべた。
「相変わらずうっせぇな、こいつ」
リュウ君だからね。仕事はできる人なんだけど。このうるささをキャス君とやらが引き継がない未来を願うばかりです」
とまあ、私らは、キャス君が立派な放送部員になる姿を見届けることはないんだけれども。
「……で、聞いてもいいですか。ラルさん」
「なぁに?」
「姫様に何てことしてるんですか」
呆れ顔のフォース君は、会場の勢いに圧巻しているのか、モニターから目を離さないツバサちゃんを示す。当の彼女は救護室に行かず、ここで観戦中だ。理由としては彼女の格好にあった。
普段の魔術科女子制服ではなく、空色と白のエプロンドレスっぽいナース服に身を包み、頭には薄い水色のナースキャップ。そして、首元で赤いネクタイを締めている。これに着替えるためにわざわざこちらに残ってもらったのだ。ちなみに、同じ救護班にして、生徒側のリーダーを任せたリリちゃんにはツバサちゃんが遅れることに了承を得ている。
「可愛いでしょ? 私の姫ちゃん」
「天使なのか姫なのかはっきりしろよ」
「じゃあ、天使様」
「姫は『ちゃん』で、天使は『様』なの? 敬う基準が分からん。……ツバサさ~ん?」
「! は、はい! ごめんなさい! お話聞いてなくて……どうかしましたか、フォースさん?」
ツバサちゃんはフォース君に呼ばれると、慌てて画面から目を離し、こてんと首を傾げる。
「嫌なことは嫌だと言っていいんだぞ。おれとティールでこのアホ会長懲らしめとくから……」
「ほえ!? 全然、嫌なんかじゃありませんよ! とっても可愛いですし♪」
ツバサちゃんの満面の笑みに、何一つ嘘はないと判断したようだ。フォース君の口から諦めのこもったため息が漏れる。
「聞かなくても分かるが、これを用意したのは」
「ドールちゃん」
「……自分の分身に、んなことさせる気持ちをじっくり聞きたいわぁ」
「自分が着る訳じゃないんで、特には」
まあ、お勧めはされましたけれど。当然ながら、丁重に……且つ、キッパリお断りした。
朝に一人、生徒会室で“ドール”を呼び出した私は、その場の思い付きと言われても反論できないくらい、突然に服を見繕えと命令した。その命令を見事完遂し、今、ツバサちゃんが着ているナース服……と言うよりも、私服とも見える服を作り出した。これを出したときのドールのドヤ顔と言ったらない。たった数時間でツバサちゃんの服を作り出した理由については、恐ろしい考えが過るので、あえて聞かなかったが。
「ツバサちゃん、くるっと一回転!」
「わかりました~♪」
私のリクエストに笑顔で応えるツバサちゃん。その場でくるりと回ると、スカートがふんわりと揺れる。スカートの下はパニエでスカートのふわふわ感増し増しなのだ。このドールの気合いの入れようは予想以上である。
「次はポーズ取って~♪」
「はーいっ!」
スカートの裾をちょこんと摘まみ上げ、お嬢様のような挨拶ポーズをしてくれる。すかさず、私はカメラを構えて何枚か撮らせていただいた。
「はあぁぁ~♪ めっちゃ可愛い!!! いいよ、ツバサちゃん!」
「えへへ♪ ありがとうございます♪」
普段ならティールのツッコミが飛ぶところだが、生憎、彼は会場内の警備でここにはいない。ティールのお小言が飛ばない快適空間でツバサちゃんを堪能できるなんて、これは天国か何かなのかもしれない。
ティールいないんだから、余計なことすんなよ。変態」
「変態でいいよ! この可愛さの前じゃ、どんな罵倒も受け入れられるよ……何もかもが浄化されますわ……!」
「……おい、ティール! 戻ってこい。おれじゃ、こいつのお守りなんて無理なんですけど! 応答しろ!」
『……え? あっと、ティールです、けど?』
フォース君がティールに無線で連絡を取ったらしく、私の耳にもティールの戸惑った声が届く。回線は私とフォース君、ティールの三人らしい。
『あ~……よく、分かんないけど、変なことはしないでね、ラル。……どうぞ?』
「してないしてな~い! 今の私はテンションMAX! 何しても許せるくらいの聖女になってるから! どーぞ!」
『そう? じゃあ、この前、湿地帯周辺の依頼受けたので、今度行きましょうね~? リーダー』
「はぁ!? ざっけんな!! 聞いてませんけど!?」
「何でも許すとは一体」
「? どうかしたんですか? ラルさん」
『どうでもいいことに無線使わない。切るね』
衝撃的な告白をし、そのまま連絡を切りやがった我がパートナー様。なんなんだ、あいつ。
「テスト前に討伐系やるんじゃなかったっけ? それとは別件か」
「別件。……あの様子だと、いきなり言われて請け負った感じかな。まあ、いいや。今日帰ってからじっくりと問い詰めてやる」
私達三人の会話を聞けなかったツバサちゃんは不思議そうにしているが、説明したところで意味はないし、関係のない話だ。
私達がどうでもいいやり取りをしている中でも、開会式は粛々と(?)進められていた。次に意識をモニターに移す頃には、半分以上のプログラムが終わっていた。
『……実行委員長の話が終わり、続けてプリン校長からのお話~……といきたいんだが』
『ほ、本日、諸事情により、プリン校長は学園を留守にしているので……セラフィーヌ理事長からお話をしていただきます……!』
親方……否、校長の代わりが理事長ってどういうことよ。あの人は何処へ……?



~あとがき~
切るタイミングがなくて長いです。

次回、何気に初登場のセラフィーヌ理事長のご挨拶です! 開会式は終わらせるよ!!

長くなったので、さっさと終わります!
さっさと終わらせるけど、これだけ。
ツバサちゃんの衣装チェンジは予定(プロット)通りです。ラルがツバサちゃんの写真撮ってましたが、きっと専用アルバムでも作るんじゃないですかね。(適当)

ではでは!