satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第67話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で日常っぽい非日常を楽しむ物語です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ようやく開会式が終わりました。やったね。今回から、大会(予選編)です! このあと、トーナメント編なんかもお待ちしてるんで……ちゃっちゃといきたいね。無理かな。
そして、今回は誰の視点とも決めず、第三者視点でいきますよ。中心人物はいますがね!


開会式も終わり、待ち望んだ大会予選が開始される。観客の熱狂も出場する生徒達にも伝わってきていた。
大会のルールとして、戦闘不能、あるいは場外……厳密にはその下にある水路へ落ちてしまうと失格扱いである。これは勝ち残り戦であるため、自ら落ちてしまっても何かペナルティーがあるわけではない。が、そのようなことをする生徒がいるとは思えなかった。なぜなら、ここにいる全員、志願して出場しているからだ。こんな人数になるとは予想してなかったにしろ、激戦なのは想像に難くない。
あるとすれば、勝てないと実感し、痛い思いをするくらいならばと考えるくらいしか思い付かない。そのような考えで、戦場に立つとも思えないのだが。
『Aブロック出場者は全員揃ったぞ! ここはまんべんなく割り振られてるっぽいけど、若干冒険科が目立つな!』
試合を始める前の前口上なのだろう。さっとAブロック出場者の傾向を伝えているらしかった。司会兼解説者のリュウの声が響いていた。
『大会始まって一番手を飾る、Aブロックの諸君に敬意を表して! 早速、開始のゴングを鳴らすぜ!! 相棒!』
『ひゃ!? は、はいっ!! それでは、Aブロック、試合開始、ですっ!!』
リュウの相方、キャスの合図で試合が始まった。狭いとは言い切れないフィールドではあったが、百人もいると、一概に広いとも言えない。周りは手当たり次第に、近くにいる相手を攻撃しているようだ。属性はごちゃ混ぜ状態で、色鮮やかな光やら魔法やらが見えている。外から見れば綺麗なのかもしれないが、当事者達はそのような気分になれる程、余裕はなかった。……一部を除いて。
「さて。やりますかね!」
その例外の一人であるレオンは、冷静に素早くフィールド端へと移動する。その間、狙われない訳でないが、身軽なフットワークで攻撃を避け、無事に端へと到着。直ぐ様、胸の高さで手を合わせると、レオンの周囲に電撃が走る。レオンがそれに気を取られることはなく、何もない空間から出現させた長刀を手に取った。
レオンの使った魔法は、別空間から持ち物を取り出す魔法である。しかし、出すだけでいいものを、魔力の加減を忘れ、電撃が周囲に飛んでしまったのだ。その余波を受けてしまった不運な生徒がいたようで、何名かは電撃に痺れ、場外へと落ちてしまった。
「ぶはっ! おい、一年! 武器出すだけにどんだけの魔力使ってんだよ!! アホか!」
「いやぁ~……先輩方、すんませーん」
落ちてしまった魔術科の先輩─もちろん、レオンと面識はないが─からのお叱りを、詫びる素振りもなく、けろっとした様子で返答した。
この場で謝る必要なんてない。これは勝ち残り戦。油断し、対応できなければ負けていくのだ。この場合、レオンが思った以上の魔力を注ぎ、電撃が発生したのを、他の生徒達は対応できなかった。それだけである。運がなかったとも言えるし、意識が低かったとも言える。
そしてこれは、レオン自身にも言える。対応できなければ、終わり、なのだから。
「隙あり!」
落ちた先輩数人を見下ろしていたレオンの背後からの物理攻撃。小回りの利く短剣によるものだ。対応しなければ、状況は違えど、先に落ちてしまった先輩達の二の舞である。しかし、狙われた本人は至って冷静だった。
「ははっ! 人が礼儀を尽くしてるってのに、いい趣味してんな~♪」
この状況にレオンは振り返ることはなく、先程取り出したばかりの長刀を鞘から出さずに相手の攻撃を防いだ。
「なっ!?」
「まあ? ここは戦場ですし? そういう手もありだよな。けど、やるなら徹底的に……なっ!!」
振り返るのと同時に、長刀を器用に扱い、相手の短剣を宙へと飛ばす。相手の表情から、一瞬ではあるが、武器を手放してしまったという焦りが見える。その隙をレオンは見逃さなかった。
気配を殺して相手の背後に回り込むと、躊躇なく背中を蹴り飛ばして場外へと落とした。
「にしし♪ 猫ってのは音も立てずに近付くもんだぜ~?」
にやりと猫らしくいたずらっ子な笑顔を浮かべているものの、場外へ落ちた相手にその言葉が聞こえているかは定かではない。実際問題、聞こえていなかったとしても、レオンには何ら関係はないのだが。
レオンは、場外から目を離し、フィールド中央へと移した。今現在、近くには誰もいないのを確認し、そっと地面に触れる。それは長い時間ではなく、ほんの数秒だけで、すぐに地面から手を離した。
「よしっと。このまま準備すっかね~」
にこやかな笑顔のまま、そして、手に長刀を持ったまま、フィールドの端を沿うように走り出した。

レオン同様にフィールド端で応戦する生徒が一人。生徒会所属のイツキだ。
イツキは腰に二振りの剣を差し、背には竹刀袋のような物を背負っている。しかし、装備している剣を抜かず、体術のみで相手からの攻撃をあしらっていた。気絶させたり、場外へ飛ばしたり、時には意識を逸らして、戦闘を回避していた。
「ひゃ~……みーんな、脳筋プレイ大好きかよ~」
イツキ自身、何かと力任せに解決しようとする節はあるが、今回の場合、それでは体力が持たないと悟ったのだ。……否、悟ったのはイツキの相棒、ユーリであり、試合前にあまり体力を使わない方が得策だとアドバイスされた。頭を使うのが苦手なイツキは、向かう敵、全員相手にした方がシンプルで楽だと思っていた。しかし、この激戦を体験するとそうも言ってられない。
「親友の忠告をありがたーく受け取った俺、偉い」
端にいる理由としては、相手が突っ込んできた勢いを利用して、外へと飛ばせるからで、それ以外の理由はない。また、単純に得意な剣を使って戦うのなら、中央の広い場所で乱闘する方がいい。しかし、それだと、場外失格を恐れた生徒達の猛攻を受けることになり、ユーリの言う無駄な体力を使うはめになる。要は端の方が楽だと知ったのだ。
「……?」
右から何か向かってくる気配を感じるものの、イツキを狙っている訳ではなさそうである。ぶつからないように中央寄りへ避けるか、攻撃を仕掛けるかの二択が頭に浮かぶ。そして、答えを出す前にイツキの体は中央へと向かっていた。ほぼ、直感。言わば、なんとなくである。そして、気紛れで後ろの様子を窺った。そこで見えた生徒に、どこか見覚えがあった。
「あり、あの子。……アラシとツバサの友達……だっけか?」
ちらりと見えたぴこぴこ跳ねた癖っ毛の金髪にオレンジの猫耳の少年。それは、イツキの後輩の友人によく似ていた。
「ん~と……レオン、だっけ」
レオンはイツキに気付いていないようだったが、彼はフィールドの端をぐるりと回っているように見えた。何かをしているのか、逃げているだけなのか。
前者だとすると、レオンは何かを仕掛けている途中であると予想できる。が、後者だとすると、この状況下にはありがちな光景だ。気に留める必要もない。レオンがどちらの立場なのか、イツキには判断材料がなさすぎて、さっぱりであった。
「余所見するなよ、二年!」
「はぁい。してませんよ~? 三年の先輩さん!」
中央寄りへ移動したからか、どこを見ても乱闘騒ぎである。イツキの前に斧を振り上げた男子生徒が現れた。流石のこれには、剣を抜かない訳にもいかないだろう。左に差してある片手剣を素早く抜くと、振り下ろされた斧を受け止める。
「ぐへぇ。おっも」
「重量級の武器だしなぁ! お前みたいなひょろいやつなんて、一撃だぜ」
「……あ、そ。まあ、せいぜい吠えてればいいよ。そういうの、慣れてるから」
イツキの言動に怒りのスイッチが入ったのだろう。表情が一変し、見るからに怒りを露にしていた。
「余裕ぶっこいてんのも今のうちだぞ、二年……!」
「そっくりそのままお返ししますよっと!」
イツキは剣を斜めに倒して剣の刃と斧の刃を滑らせると、対面から脱出すると相手の背後へと回る。そこで攻撃を仕掛けるのかと、相手は身構えるものの、そこにイツキの姿はなく、周りを見渡しても見つけられなかった。
次の瞬間、上からの衝撃に耐えきれずに前のめりに倒れた。倒れた生徒の上にはイツキが剣を鞘に納める姿が。
「どこ見てるんですか、先輩。俺は上にいたんすけどねぇ……なぁんて、もう聞こえてないか」
近くで乱闘していた人の肩を勝手に拝借し、空高くジャンプしていたのだ。そこから勢いをつけ、斧使いの背中めがけて膝蹴りならぬ、膝落としをお見舞いしたのだった。
イツキは生徒の上から飛び降りると、イツキを更なる獲物と捉えたらしい数人がが走ってくるのが見えた。
数は減っているとはいえ、裏を返せば、残った人達はここまで残れるくらいの実力を持っていると言えるだろう。納めたばかりの剣を再度抜くと、イツキは無意識にため息をついた。
団体戦になると、ユーリの妨害魔法のありがたみを感じる~……なんでブロック違うんだろ」
運よくと言うべきなのか、彼とは全く別のブロックに振り分けられたのである。ユーリには、イツキのお守りなくて楽とかなんとか言われてしまったのだが。個人戦とはいえ、こういうときに協力した方がさっさと終わると言うもの。そっちの方が効率よく、且つ、確実だった気もするのだ。
しかし、この場にいない友人を嘆いても仕方がない。イツキにできるのは、襲ってくる相手をねじ伏せるだけだ。
「ふっふっふ~……一対多は慣れてるよん♪」
襲ってきた数人を器用にさばいていると、フィールド端で見かけたレオンを遠くで見つける。いつの間にか中央付近へと移動してきていたらしい。
「……ふーむ?」
なぜ今になってこちら側へと移動してきたのか、その理由は分からない。しかし、イツキは考えなしに突っ込むようなことをしないだろうと思った。根拠があるわけではないが、ただそんな風に思った。所謂、勘である。
そして、その勘は見事的中したらしかった。
リング端、六ヶ所から電気が発生し、その電流は中心に立つレオンへと向かっていた。それと同時に、地面に巨大な魔法陣が現れる。魔法知識に乏しいイツキに、魔法陣を見たところでこれだと明確に分かるはずもない。巨大な攻撃魔法らしいのは雰囲気で察せなくはないが。
「……こういうときって、使ってる本人の近くが安地……だよね?」
仮にレオンを中心に強力な電撃でも放たれてしまえば、近くよりも遠くにいた方が防ぎようがあるのだが、イツキはその可能性を検討する暇もなく、レオンの近くまで寄っていく。
レオンが発生させている電気を受け、倒れてしまっている人達もいるが、しっかり避けている人もいた。イツキの接近に攻撃を仕掛ける人もいるものの、一撃で黙らせ、スピードを落とさずに近寄った。レオンの声が聞こえる範囲まで近付くと、あと少しで魔法を放つところであった。
「そんじゃまあ……御同輩、先輩方。この勝負、俺がもらいますね!!」
レオンに集まる電気がバチンと一際大きな音をたてて弾けると、イツキは勢いに任せて、レオンの上空に浮いていた魔法陣の範囲へと飛び込んだ。ここまでほぼ勢いにしか任せておらず、どう転ぶかなんてさっぱりであった。
「“雷龍波”!!」
イツキが飛び込んだ瞬間とレオンが魔法を放つ瞬間はほぼ同時であった。
フィールド上に大きな雷が落ちたかと思うと、電流がフィールドそのものを飲み込んでいく。しかし、上空に現れていた小さな魔法陣は避け、レオンとイツキにはダメージはない。フィールドを飲み込んだ電撃はやがて、龍へ姿を変える。まさに雷龍となったそれは、天へと登り、地上には静寂が訪れた。
「ありり? なーんか思ったより威力強かったなぁ……ま、いっか♪」
レオンの呟きに、なんとも恐ろしいことを口にするものだと若干の呆れと冷や汗をイツキは隠せない。いつだったか、相棒も似たようなことを言っていた気がすると思いつつ、片手に構えたままだった剣を納める。
「あ、イツキ先輩! 先輩も残ったんすね~♪」
ようやくイツキの存在に気付いたらしい、レオンが地面に刺さっている長刀を抜き、鞘に納めながら話しかけてきた。どう対応したものかと一瞬考えるが、繕うのも誤魔化すのもどうにも違うと思い、いつも通りの自分でいることにした。
「いやいや。俺はレオンのおこぼれをもらえただけさ。いやぁ、魔法って怖いねぇ」
「にゃはは♪ そんな謙遜を~♪ 先輩が残れたのも、俺の魔法をかわせたのも、自分の実力ですって。まあ、あれはちょーっと加減を間違えただけっす。ま、死んだ訳じゃないんで大丈夫ですよ」
「救護班もいるし、理事長のかけてる魔法もあるし。あとはプロに任せとこ」
「そうっすね♪」
逆に言えば、このフィールドの効果がなければどうなっていたのだろうか、と考えが過るも、答えを出すのは精神的にも教育的にもよろしくない。浮かんでしまった疑問をゴミ箱に捨てながら、イツキとレオンのトーナメント進出のアナウンスを聞いていた。



~あとがき~
強引に収めてやったぜ……

次回、Bブロック!
こちらも一話で終わらせます! 予定!

レオン君のメイン武器は長刀です。長いやつ。
リアルで長い刀なんて操れねぇわ! って思うけど、創作の中だと無限大ですね!! 前は三刀流とかしてたけど、ここでもやるんでしょうかね? 聞いてないですけど……どうなんだろね。
イツキは意外となんでもござれ状態です。戦いの場においては、器用なんですよね。ここでは片手剣二つと背中に竹刀袋に突っ込んだ刀を持ち出してますが、それ以外も扱えるやつです。つっても、フォースみたいな万能さはない。あくまで、ある程度使えちゃう。プロ級ではない。くらいです。ラルと似たようなタイプです。
まあ、言うて、近距離武器、剣や刀といった斬撃を与えるタイプの武器に限ります。例外はあるけど。

ではでは!