satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第75話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃする話です。本編とは一切関係ありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバックです!
前回でようやく予選終了! トーナメントへ進む八名が決定しました。やったね。
今回は救護室へ戻るラル達の話ですので、時間がDブロック開始直前になります。


《L side》
私達四人が救護室へと到着すると、私らが出ていく前と今では部屋の雰囲気ががらっと変わっていた。
「おい! 追加の薬草どこだ!?」
「追加ぁ? そんなのそこにまとめて置いて……って、もうない!」
「はあ!? ちょ、誰か園芸部の許可貰って、分けてもらって!!」
なんていう救護班のやり取りと、その近くで寒そうに震えている男子生徒二名。それもそのはず、なんせ二人とも氷漬けの状態のまま、ここに運ばれているのだ。
「さ、さむ……しぬ……」
「なんか、俺……寒い通り越して……ね、ねむ……」
「「「寝るなぁぁぁぁぁあ!!!!」」」
寝そうになる一人に対して、近くで言い争っていた─その間も手は動いている辺り賢い─救護班三人の叫びがこだまする。
ちなみに、それが救護室全体であちこち起きているため、寒くて死にそうになっている人達は大勢いるということになる。
……大会が行われているフィールドは参加者……つまるところ、生徒達の戦場であるが、ここはここで戦場化しているらしかった。
そんなもう一つの戦場の入口付近で、立ち尽くしている私達。口を開いたのは、イグさんだった。
「う、うわあぁ……アリアがやっちまったのを見た辺りから、想像はしてたけど……予想以上だなぁ」
「これ、ほぼBブロック出場者ですね。救護室、広い部屋を割り当ててもらったつもりだったんてすけどね……地獄絵図。極寒地獄」
「だな。なるほど。これが阿鼻叫喚って奴か」
どこか他人事の私とイグさんの横で、ツバサちゃんがアルフォースさんを見上げていた。
「お父さん、あびぎょうがんって??」
「うーんと……『あびきょうかん』、ね。そうだね……とっても苦しくて助けてくださいってなってる……って言えばいいかな?」
と、言葉の勉強会のようなものを親子で話していた。なんとも微笑ましいが、こちらも他人事だ。恐らく、状況が飲み込めなくてとりあえず、何でもない会話で気持ちを落ち着かせ……いや、ツバサちゃんだもんな。普通に気になっただけだろう。うん。
「あら! 皆、お帰りなさい。……って、アルフォースおじさま?」
「あっ! 会長さまあぁぁぁ!!!」
たまたまこちらに気がついたリアさんと、リアさんの近くにいたリリちゃんが私達に話しかけてくれた。イグさんも知っていたし、リアさんだけがアルフォースさんを知らないなんてないと思っていたから、そこにはもう突っ込まない。
そのアルフォースさんの登場に驚いているリアさんは、彼の登場が予想外らしかった。リアさんがルーメンさんに頼んだ訳ではないようだ。まあ、アルフォースさんの言い方だと、ルーメンさんの独断だったんだろうな。
同じくして、リリちゃんは半分泣きそうな顔で、私の方へと駆け寄ってきた。一応、生徒側のリーダーなので、そんな顔はしないで欲しいんだけれど、それは酷な願いというものか。
リリちゃんの頭をぽんぽんと優しく撫でる。涙目の彼女は「会長様~」と落ち着くどころか、うるうるが倍増してきた気がする。
「おーおー……どした。落ち着け~?」
「そ、それがぁ……」
「大丈夫よ、リリアーナちゃん。私が説明するわ」
泣きそうなリリちゃんから聞くよりも、リアさんから聞いた方が早いだろう。苦笑を浮かべたリアさんに、同じような表情のイグさんが話しかけた。
「リア。説明つったって……どうせアリアだろ?」
「まあ、そうね。イグの言う通りよ。あの映像で察してはいると思うんだけれど、Bブロックの被害者はアリアちゃんとアラシ君を除いた全員なのよ」
そうだろうなぁ。あれを逃れた人がいれば、放送部で促しているはずだ。
「今回の賞品が賞品だから、アリアちゃん参加は警戒していたの。それで、凍結解除用の道具は多めに用意していたんだけれど……まさか、フィールド全体を凍らせちゃうなんて思ってもなかったから……その……」
アリアちゃんを前から知っていたリアさんですら、これなのだ。初見の救護班メンバーはてんやわんやだろう。
「あうぅ~……それで、凍結解除用のポーションとか薬草とか全部使いきっちゃったんです。まだまだ凍結状態の生徒達はいっぱいいるのに」
「参加者以外にも別の被害が出てるとは……やっばいな、アリアちゃんは」
「あうう……あーちゃん……」
ざっと見ただけでも、参加者の半分は未だに寒さに耐えている。これらは、あくまで魔法による副産物。意識を保っている間なら、凍結状態だからといってすぐに死ぬことはほぼないだろう。しかし、それが永遠と持つはずがない。一度意識を手放せば、一気に体温低下し、死に至る危険はゼロではないのだ。
道具がないなら、魔法や技で解除する方法が一番手っ取り早いが、それ関連の専門に扱う人が、この中に果たして何人いるのか。仮に魔法や技で解除していくにも時間がかかるし、こちらが持たない。それくらいの人数が状態異常になっているということだ。
対策を考えていると、ふとアルフォースさんの荷物に目が向く。あれの中は状態異常回復のための道具が入っていた。そして、なぜあれを持たせたのかも、推測したではないか。
「……なるほど。アルフォースさん、荷物の中身、ちょっと見せてもらっていいですか?」
「うん? 構わないよ」
アルフォースさんが抱えたままの箱から薬草とポーションを一つずつ取り出すと、リアさん達に見せる。
「リリちゃん、リアさん。ツバサちゃんのお父さんが持ってきてくれたこの箱に入ってる薬草やポーションで、どうにかなりそう?」
「あら……それはアシン草ね? うふふ。おじさま、グッドタイミングだわ♪」
「状態異常回復用のポーションまで……まさしく神のお恵みですよー!! これ、わたしたちが使ってもいいんですか!?」
若干、食い気味にアルフォースさんに迫る、リリちゃん。泣いたり興奮したりと忙しい子である。そんなリリちゃんに向かって、アルフォースさんは優しく微笑んだ。
「はい。元々、そのつもりでこちらに運んだので。どうぞ遠慮なく♪」
「はわわ……ありがとうございます! ツバサちゃんのお父様は神様なのですー!!」
「えぇっと……神様は大袈裟かなぁ……?」
神様呼びにちょっと困り顔のアルフォースさんだけど、その言葉はリリちゃんに届いていないご様子で、その場で小さくぴょんぴょん跳び跳ねている。あれで高等部二年生というから驚きである。ツバサちゃんよりもいくらか高いくらいで、小柄なリリちゃんは動作だけ見れば、中等部と思われても不思議ではない。
対するリアさんは、私の持っていたポーションをそっと手に取ると、何やら考え事をしているらしかった。
「……これがあるなら……あとは……」
そう呟き、ちらりと見た方向には、未だに私服姿のツバサちゃん。リアさんの視線に首を傾げた。ツバサちゃんに何か言うでもなく、リアさんはリリちゃんに話しかけた。
「リリアーナちゃん、頼めるかしら?」
「はいっ♪ 先生! これを元にポーション追加しますっ!」
その一言だけで意図を汲み取ったリリちゃんは、アルフォースさんから箱を丁寧に受け取ると、部屋の中腹部まで行ってしまった。それを見送ったリアさんが次に目を向けたのは、先程ちらっと見ていたツバサちゃんだった。
「ツバサちゃん、お願いがあるんだけど……」
と言ってから、その続きはツバサちゃんの耳元でそっと話していく。傍で見ている私達にすら聞こえないくらいの─もしかしたら、獣の聴覚を持つ、イグさんやアルフォースさんには聞こえているかもしれないが─音量で話している。
リアさんの話が終わり、ツバサちゃんから離れると、ツバサちゃんは、こくんと笑顔で頷いた。
「それくらいなら大丈夫です! じゃあ、準備してきますね♪」
「えぇ。お願いね、ツバサちゃん♪」
それを聞く限り、リアさんはツバサちゃんに何かお願いをしたんだろうけれど、その内容はさっぱりだ。まあ、今の状況を打破できる何かなのはなんとなく想像できるけれど。
私達にぺこっと頭を下げてから、ピューッと部屋を出ていってしまう。私には詳しいことは分からないけれど、イグさんは察しているのかなぁ……なんて思いながら、様子を窺うものの、イグさんもよく分かっていないらしい。少し不思議そうにツバサちゃんを見送っていたものの、見ていても仕方ないと考えたのだろう。ぱっとこちらを振り返った。
「んまあ、よく分からないけど……俺がここにいてもやれることはないし……いなくても、どうにかなるだろ。ラル、後は任せるぜ♪」
「は? いや、任せるって何を」
私の問いには答えず、イグさんはアルフォースさんに目線を移していた。
「おじさんはどうします? 戻るのであれば、ルー爺のところまで案内しますよ?」
「ん~……いや、もう少しここに残るよ。忙しそうだし、僕にも手伝えることがあるかもしれないから」
「そうっすか? んじゃまあ……ルー爺のところに戻るときはどうすっかな。……んー……あ、ラル」
「……はい」
イグさんはにこっと曇りのない笑顔を見せる。大変好印象の笑顔だが、私には危険信号にしか見えない。こういうときは、大抵……
「おじさんが戻るってときは、俺に連絡寄越してくれ♪ それまではお前に任せるからさ」
今日が初めましての私に、後輩の父親預けるとはこれ如何に。一応、意味のない反論ではあるが、しておくか。
「イグさん。私達、今日が初対面なんですけど」
「あっはは! 大丈夫だって! おじさん、いい人だからすぐ仲良くなれっから♪ 俺も仕事あるから、ずっといれないし? じゃ、そういうことで」
「……マジっすか」
イグさんは、ひらひらと手を振って、さっさと救護室を出ていく。確かに、イグさんも非常勤講師とはいえ、今回の大会では、仕事を任されているのは知っていた。ずっとそこを離れるわけにはいかないのも分かる。分かるんだけれど、さっさといなくなるのは如何なものですかね。
「イグニースくん、またね~♪」
ほわほわっとした空気を纏ったアルフォースさんは、イグさんを見送った後、少し離れたところでお仕事中のリアさんに近付いた。
「リアちゃん、何か手伝えることあるかな? 部外者の僕でよければ、だけど」
「あら、いいんですか? それじゃあ、ポーション作りをお願いします。正直、手が足りてなくて」
「分かった」
ポーション作りはやり方を知らないと作れない。ここにいる救護班全員が作れるのかと言われると、素直には頷けない。誰にだって得意不得意はあるというものだ。それに、仮に全員がポーション作りができたとして、全員にさせる訳にもいかない。難しい問題である。
さて、イグさんに任されてしまった以上、アルフォースさんがここにいるなら、私も残っていなければならない。
若干の手持無沙汰感が否めず、私はちらりと救護室に備えてあるモニターに目線を移す。そこにはDブロックの真っ最中らしく、生徒達が戦っている映像が映し出された。私の記憶が正しければ、確か、Dブロックにはユーリ君とシエル君がいたはず。大人しく観戦できればよかったんだが、この救護室の状況を見るにそうもいかないだろう。
手近な救護班の子達に近付いて生徒の手当てに混ざることにした。



~あとがき~
あばば。一話で終わらない、だと……!!(知ってた)

次回、成り行きで救護室のお手伝いをするラル。救護室の危機(?)を救うのは誰だ!?
いや、別にそんな大それたやつじゃないけどね??

特に言いたいことがなあい。
んー……そうだな。友人のキャラについて何か補足することはできないので、私のキャラの補足をば。
ラルのスキルは本編通りだと思ってくれていいです。大抵のことはこなしちゃう天才少女。だからまあ、手当てと言うか、医療的なこともできちゃうって話ですよ。本編でもそうですし。おすし。
できないこともありますけれどね。当たり前ですが。一番の器用キャラは間違いなくフォース様です。この場にいないけど。性格的な問題抱えてますけどね~!!

ではでは!