satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第229話

~前回までのあらすじ~
入口手前まで来ました。そこでいつものくだらないやり取りをするイブとフォースでした。
チコ「聞いてる方は仲良しだなーって思ってるだけだから、全然いいんだけどね~」
フォース「仲良しに見られたくない」
イブ「はあ!? じゃあ、どう見られたいの?」
フォース「そもそも認識されたくないんだよねぇ。制御者ってナイーブなの~」
イブ「……嘘だ。外出ると面倒しか起きないからだよね。だから、誰にも会いたくない。違う?」
フォース「お、長年一緒にいるとおれを分かってくれるんだな。正解ですよ、お嬢様」
なんか、日常パートだと、フォースはてっきとうなことしか言わないなぁ……
では、始めまーす!
フォース「あ?……馬鹿にしてんの?」
チコ「してはない、かな?」
イブ「事実だけどね」
フォース「……こんにゃろう」


すーくん先頭に山道を登っていく。警告通り、思った以上に険しい道のりで、これも修行の内だと思い込むにも限度ってものがある。
「しんどーい! 何これ、上級者コース!?」
「そこまで元気に叫べるならまだいけるだろ。文句言うなよ」
文句じゃないもん……
流石、すーくんは息一つ上がっていない。一応、後ろをついて行く私達を気にして、ペースは抑え気味ではあるが、涼しい顔して先に進んでいく。
「イブ、もう少しだよ。頑張ろ!」
意外にチコちゃんも思いの外、元気だった。自然の中でテンション高いのかもしれないけれど。楽しそうにすーくんの後ろを歩いていた。私もそうしたいけれど、坂道がずっと続いていて、終わりが見えないのが気持ちを削いでいく。
「ちょっと休憩したいです……」
「さっきもしませんでしたっけ……?」
ぐぬぬ……
「するのはいいけど、帰りが遅くなるだけだぞ? 最悪、このうっそうとした森の中で一夜明かさないといけなく……」
「よおし! どんどん行こ~!!」
幽霊の話がある森の中で野宿なんて無理! 絶対今日中に帰る!
「……ちょっろいわぁ」
「フォース! やる気満々のイブにそんなこと言っちゃダメ!」
聞こえてるからなぁーー!?
しかし、ここでふてくされては、それこそお子様だなと笑われるので、ここはぐっとガマンだ。

このあとも何度か弱音を吐きつつも、すーくんの嫌味っぽいお小言のおかげで、立ち止まることなく山道を進んでいく。
「ここだな」
はにゃあ~……ここだけ、なんか開けてるね」
「人が住めるように開拓でもしたんだろ」
やっとついた集落はこじんまりとした村だった。普段、トレジャータウンの賑わいを見ていると、ここまで静かなのもびっくりだ。チコちゃんの故郷も森や草原だったから、似たようなものだと考えていたけれど、ここは何かが違う。なんだろう。
「なんか……人気を感じないよね」
チコちゃんの言葉で納得した。
人が住んでいる確信が持てないのか。生活感がないと言いますか……全体的に暗い感じがする。
「人の気配はするから、誰もいないことはねぇよ」
ま、まあ、そりゃあ、親方さんに頼まれたお仕事だから、いて当たり前だろうけど……うぅん。
村を歩いていても、誰一人としてすれ違わない。すーくんの言う通り、気配はなんとなくするから、いないわけじゃないけれど、この歓迎されていない雰囲気はなんなのだろうか。こちらとしても、居心地が悪い。
「すぅ、行けよ」
「ふぁ!?」
ここまでずっと先頭を歩いていたすーくんが、ある家の前で私に道を譲った。こんな不気味なところで不用意に放り出してほしくないんだけど!
慌てる私を完全無視するすーくんは、くいっと顎で目の前の家を示した。
「ここ、依頼主の家。村だと仮定するなら、村長の家。群れだと仮定するなら、そのリーダーの家ってところかな。どう呼称してもいいけど」
あ、そ、そういうことか……
「意地悪で放り出されたのかと……」
「は? ふざけたこと言ってないでさっさと行け」
あ、はい……
簡素な木の扉の前で緊張しながら、数回ノックをする。扉から少しだけ離れ、反応を待った。
「……道具届けたら終わり、だよね」
「大丈夫だよ、イブ。なんにもないって」
変に緊張気味の私を落ち着かせるためにチコちゃんが励ましてくれる。
なんにもない。大丈夫。
がちゃっと扉が開かれ、中からおじいちゃんコロトックが出てきた。……多分、おじいちゃん。
「おや……客人ですかな」
「は、えと、プクリンギルドの者ですっ! お届け物をしに来ました!」
「ほお。もうそんな時期ですかねぇ……いやはや、全く、時が経つのは早いものです。……どうぞ、探検隊の方々よ。何もなくて心苦しいが、歓迎しましょうぞ」
コロトックさんは私達を家の中へと招いてくれた。遠慮するのも考えたけれど、荷物をお家へと運ぶべきだと判断して、お言葉に甘え、中へと入っていく。
家の中も質素な雰囲気で、必要最低限な物しかない。光源もろうそくが入っているランタン一つしかなかった。
コロトックさんは私達を部屋の奥まで通すと、ぺこりと頭を下げた
「初めまして。儂はここの長をしております、ザゼルです。プクリンギルドには大変お世話になっております」
「い、いえいえ! そんな! お仕事ですから!」
「仕事とはいえ、このような辺鄙なところまで、大変だったでしょうな。ゆっくりなさってください」
は、はわ……! なんだ、この低姿勢!!
「イブ、荷物!」
あ、そうだった。出さなきゃ。
「すーくん、出してくれる?」
「……おう」
どんな物でも収納しちゃう謎のカバン、トレジャーバッグから明らかに容量オーバーな大きな麻袋を取り出した。中に何が入っているのかというと、基本的には人工物ばっかりだ。この家で言う、ランプとかろうそくとか。自然の中では手に入らない物ばかりを詰め込んでいる。まあ、頑張ればろうそくは作れそうだけれど、材料がなければ意味がない。それなら買い付けた方が早いってやつだ。
すーくんは取り出した袋をコロトックさん改め、ザゼルさんの目の前に置く。そして、私達の後ろへと戻ってきた。
「お願いされたものはすべて揃っていると思います。確認をお願いします」
ザゼルさんが確認している間、ここに入ってからまとっている雰囲気が変わったすーくんをちらりと見上げる。変わらず、目隠ししたまんまだから、表情は分かりにくかった。
「すーくん……?」
どうしたのか聞こうとすると、すーくんは小さく首を振った。ここでは聞くなってことなんだろうか。
「確認したところ、全て揃ってましたよ。ありがとうございました」
「それならよかったです!」
「では、恐れ入りますが……」
ザゼルさんが差し出してきたのは、小さな箱と恐らく報酬の入った袋だ。箱の方は郵便とかかな?
「今回のお支払いと、こちらは村の者が手紙を出したいとのことでしたので、こちらもお願いします」
「はい。ちゃんと預かりました。責任持って、持ち帰りますね」
ザゼルさんから受け取った物をしっかりトレジャーバッグに入れる。それを目視で確認したザゼルさんはまたぺこりと頭を下げる。
これで頼まれたお仕事は終わりだ。後は帰るだけ。よしよし、順調だ。
「それでは、私達はこれで失礼します。また別の人が物資のお届けしますので」
「もう行ってしまいますか?……大して構えませんで、申し訳ないですなぁ」
私とチコちゃんは出口の方へと向かう。しかし、すーくんだけはザゼルさんを見据えたままその場から動かなかった。
「一つだけいいか。ザゼルとやら」
「ちょ!? ザゼルさんでしょ、すーくん!」
「お前ら、どこに隠した。……お前らが預言者と崇め奉る人はどこだ?」
え、預言者……?
全く理解ができていない私達を置いて、すーくんは続ける。声に感情はなく、淡々とした冷めたものだった。
「おれの目的はその人の保護だ。軟禁なんてよくやるよな。どこの時代も、異端者は蔑まれるか、利用されるかの二択だ。……反吐が出る」
「……どこでそのようなことを聞いたか存じませぬが、儂は何も知りません」
「あぁ、そう。じゃ、勝手に捜させてもらうよ。おたくらに迷惑はかけないと約束してやる」
ぴりっとした空気の中、どうしたらいいのか分からない私とチコちゃん。
すーくんは何を言っているんだろう……? 預言者……?



~あとがき~
やめて! シリアスに突っ込まないでー!!
今年最後の空海にして、今年最後の記事投稿じゃ。

次回、フォースの言う『預言者』とは誰だ!
そこまで行かない気がする! まあ、いいか……

最初はコメディっぽかったのに、後半はこんなんだよ……謎だよ……なんでこうなったんだろう……?
楽しく山登りしてたはずなのに……(汗)

後半の台詞にある「おれの目的は~反吐が出る」までのやつ。フォースが言うと冷たさだけじゃなくて結構な重みがあるなと思ってしまいました。ピカとかポチャが似たようなことを言ったとしても、冷静なだけに感じなってたかも? ピカはともかく、ポチャは怖いだけかな?(笑)
フォースの場合、鈴流がもろにそうでしたからね。もしかしたら、鈴流だけじゃなくて、他の継承者も似たような境遇だったのかもしれません。

あとがき冒頭でも言いましたが、これで2019年ラスト記事です! 本当はポケモン剣盾の話をどっかでしたかったんですが、ここ最近は忙しくて触れてませんでした。エンディング後のストーリークリアしたのも最近です。おっせぇ…(笑)
まあ、あれです。来年にあれこれ感想をつらつらと書いた何かを出しますね! うん!
それでは皆様、よいお年を!

ではでは。