satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

気ままな神さま達の日常記録 vol.3

こちらは『学びや! レイディアント学園』の番外編でございます。スピンオフというか、なんというか。全く本編に関係のない皆々様に焦点を当てたお話となっております。
前回の続きなので、登場人物紹介は省略しております!


★天界に存在する魔窟の話★
なぜ、マスターの部屋が魔窟とか呼ばれているのか。その理由は単純明快だ。
壊滅的に部屋が汚いから。以上。
「うっわぁ……何これ、物が廊下まで出てきちゃってるよぉ? なんでここまで入るんだ。無限収納魔法とか使えんの、あの馬鹿」
本来、そこには扉があるはずなのだが、その扉は開け放たれ、そこから雪崩でも起きたように物が流れ出ていた。本や紙束。小物なんか、よく分からん道具の数々まで。一体、どこにこんなものを隠し持っているのやら。
「マスターは魔力ない人だから。ないっつても、似たようなことはできるんだろうけど。……にしても、これ、二人ともどこにいるんだ?」
「にぅ……みゃあ……」
ミィは悲しそうな鳴き声で鳴いた。おれの腕から離れるも、行き場がなく、その場でうろうろしている。本当なら、中に飛び込んで探したいはずだ。しかし、ミィの体では探すどころか、自分も埋もれてしまう可能性が高い。だから、おれ達を呼びに来た……という経緯のようだ。
二人の気配は感じる。二人とも、ここにはいる、らしい。いるのなら、このゴミの山……もとい、マスターの私物に埋もれてしまっているのだろう。しかし、二人とも物に隠れてしまっているのか、全く見当たらない。
「ルフさぁぁん! どこー!! 助けに来たよ!」
「みぃ……みぃ……」
「……──…─」
一人と一匹の声に、誰かが答える。何を言ったかまでは分からなかったが。しかし、場所は掴めた。
「……聞こえた。多分、アルフ様!」
「さっすが、俺のかーくん! 指示して。助けてくる!」
かつての制御者として得た姿らしい、ハーピィへと姿を変え─といっても、今の姿に羽が生える程度の変化でしかないが─、唯一、安全な空中へと移動した。
「了解。マスターは知らん。アルフ様を優先してくれ、兄貴」
「はいはぁい!」
「──! ───!!!」
あ、マスターの抗議の声が聞こえたわ。……まあ、今は無視安定だな。

「いやぁ、助かったよ! あんなんで死ぬことはないけどさ~……一生埋もれたままかもって思っちゃった」
魔窟から救出されたアルフ様は、椅子に座りあっけらかんとしていた。永遠にも等しい時間を生きていると、こういう問題も些細なことだと笑い飛ばせるのかもしれない。下界じゃそうもいかんけど。
主人が無事に帰ってきたのが嬉しいのか、ミィはアルフ様に抱っこされつつ甘えていた。
「アルフ様、申し訳ございませんでした! うちのマスターが……もう、なんてお詫びをすればいいのか分からないくらいですよぅ……!」
基本、能天気なエルが土下座しそうな勢いで頭を下げ、マスターの代わりにと謝罪していた。隣に立っているユウも同じように頭を下げている。
ちなみに、ラウラは黙って傍観しているのみだ。マスターの不手際を謝るわけでも、弁明するわけでもなく、だ。まあ、こういうやつなので、今更気にしても仕方がない。
「マスターの自室があそこまで悪化しているとはこちらも気づかず……」
「えー! いいよいいよ! 頭上げて? 僕、怒ってないし、君達はなぁんにも悪くないじゃない♪」
顔面蒼白な二人にも優しく気遣う神様の鏡である。エルの頭を優しく撫でた後、ユウの頭を撫でていた。二人は申し訳なさは消えないものの、自分達よりも立場の高いアルフ様に言われてしまえば、それに従うしかない。
が、兄貴は別だ。神様歴はアルフ様が上だが、だからと言って意見が言えないほど、兄貴の位は低くない。
「確かにそーだけど、ルーフさーん! もっと怒っていいんだよ! 制御者達じゃなくて、あのクソジジィに対してだけど」
「ん~……まあ、埋もれちゃっただけだからね。平気だよ。あと、フォースくんが怒ってくれてるじゃない?」
アルフ様の言う通り。マスターこと、クソジジィ(兄貴命名)様はおれのお説教タイム中である。
なので、こちらは気にせずに談笑していて構わない。こっちはこっちでやっとくし。
お説教なんて聞いても大して面白くもない。こちらの話は置いておいて、アルフ様達の話を特筆しよう。
不満げな兄貴に、アルフ様はエル達と同様に優しく微笑みかけた。「大丈夫。いいんだよ」と言わんばかりの笑顔だ。
「にゃあ……にゃあ♪」
「あはは。……ミィもごめんね? 心配かけちゃったね~? フォースくん達を呼んできてくれてありがとう」
甘えたりないミィはアルフ様の頬にすり寄っていた。そのお返しに、アルフ様はミィの額にキスを落とす。
まあ、何も知らん人からすれば、単純に猫好きの人がやる愛情表現……にも見えなくはなかった。
「アルフ様とミィちゃん、ラッブラブですねぇ♪ ミィちゃん、アルフ様の部下なのに」
「そりゃあ、そうだよ。エルエル♪ ルフさんとりゅっちはふーふだもん。ラッブラブに決まってるじゃん。ねー? りゅっち!」
「にゃぁん♪」
「ふーふ?? ふーふ、て、あの、夫婦!?」
エルが大袈裟にリアクションし、ユウはびっくりしすぎて言葉も出ないらしい。そして、ラウラですら、少し驚いたように目を見開いていた。すぐに元に戻ったけれど。
そんな制御者三名の様子を見たアルフ様はこてんっと首を傾げる。ミィも真似したのか、同じようなことを思ったのか、少しだけ小首を傾げた。
「ありり? 僕、言ったことなかった?」
「この反応はないんじゃなぁい? んもう、ルフさんったらうっかりさんだ!」
「だねぇ♪ もう言ったとばかり思ってたよ~♪ あのね、ミィはフォースくんと同じで元々は人間だったんだよ?」
ここでおれを引き合いに出してくるとは思いませんでした。間違いではないけれど。
「ミィと初めて会ったのは……地上で戦争が始まる前だったね。その頃、人間の少女だったミィに出会ったんだ~♪」
「……あ、ユウちんの質問も答えられるね。りゅっちの本名はリュミエール。だから、俺は昔からりゅっちって呼んでるってわけ」
この辺は、おれもいつだったか聞かされていたので、兄貴がミィを『りゅっち』と呼ぶ理由も、ミィがアルフ様に付き従う理由も承知済みだ。
おれ以外の制御者達は初耳だったのか、ぽかーんとしているようだが。
と、ここでラウラが何かに気がついたのか、珍しく会話に参加してきた。
「……でも、魂って輪廻転生、だよねぇ? となると、ミィちゃんは転生しなかったってことになりますけれど」
「そーだ! ラウラの言う通りだ!!」
「人だったフォースが今、制御者してるのは、その力を受け継いだから……じゃあ、ミィは?」
うん……間違ってないけれど、おれを引き合いに出さないでくれない? なんか恥ずかしい。
「あー……その辺はねぇ……」
アルフ様は一瞬だけ、何かを考える素振りを見せた。どこまで言おうか思案するような、そんな感じ。しかし、隠しても仕方がないと思ったのか、いつもの笑顔に戻ると話を再開した。
「実はね、事故で死んじゃったミィを僕自身の血を使って生き返らせたんだ。それが原因で、魂になんらかの不具合が起きた……って言えばいいかな? それで、二回目の死が訪れた後に、僕も気づけなくて、転生できなくなっちゃったの」
ラウラやユウはともかく、エルはこの話についていけてるのやら。
アルフ様の話は続く。
「ミィのことが原因で、神様としての力も剥奪されてた時期もあって……あ、それでウィルくんが産まれたんだけれど」
「あっは! そうだった! なっつかしー! 今、俺とルフさんで仕事が分かれてるけど、俺が産まれる前はルフさん一人でやってたし、ルフさんが力を剥奪されてた時は、俺一人でやってたのよ? 魂の管理と転生!」
かなり明るく話してはいるが、おれの制御者として動いていた頃の兄貴……あえてウィルにぃって呼ぶけれど……ウィルにぃは、当時の立場を結構嫌がっていたように思う。それは、アルフ様にではなく、そういった立場に指名した他の神様に、だったと思う。今にして思えば。
ウィルにぃはマスターとは違い、仕事に対しては真摯に向き合うし、丁寧で真面目な人だ。放り出したことなんて一度もない。
……おれに力なんて渡すから、結果、放り投げてしまったけれど。
「と、話が逸れたね? で、再会した後、転生ができないのは僕の血が原因だって分かった。……けど、どうすることもできなくてね。転生の輪にも戻せないし、かといって、人に作り替えることもできない……ってことで、猫にしました♪ 人じゃないから、話せなくなったんだけどね~」
「にゃあ~♪」
毎回思うんだけれど、なんで猫なんだろう?
「可愛いじゃん?」と同意を求められることがしばしばあるのだが、実際のところ、どうなのか。
「ほえー……?」
「理解してるの~? エレルちゃん」
「し、してるもん!! アルフ様とミィちゃんにそーぜんとした過去があったってことだよね!」
「うん。……騒然の意味、分かってるのかな?」
ラウラの質問にエルはぐっと言葉をつまらせた後、じぃっとラウラをたっぷり見つめ、絞り出すような声で答えた。
「むっちゃやばい……みたいな?」
お前の語彙力にこちとら、騒然としてるわ。お前が言いたいのは壮絶だろ。
「神の血が混ざってることで、フォースくんの能力も効かないし、こっちも読心術のような能力持ちがいないせいで、彼女の言葉が分からないってわけ。でも、大体、仕草でわかるし、問題はないかなって。むしろ、ずっとミィといられるから、僕としては結果オーライだよっ」
アルフ様はミィを愛おしそうにそっと撫でる。それにミィはすり寄ることで応えた。
「うちのマスターには、そういう話ないですもん。聞いたことないもん。ん~……この場合、ない方がいいのかな?」
全てを飲み込めたのかは怪しいところだが、エルは別の話題へと切り替える。エルの言葉に、アルフ様とミィはきょとんとしていた。
「……ファウスさんも、色々あったけどねぇ。君達が知らないだけでさ」
「にゃう」
きっと、この場でそれを知るのは、アルフ様とミィ、兄貴とおれだけなんだろう。マスターは、ファウス様は、多くを語りたがらないから。
「まあ、今はフォースくんがいるから、ファウスさん、腑抜けてるけど♪」
「ほんとだよ! とっても優秀なかーくんに頼りすぎ! 万死に値するね!」
マスター程ではないにしろ、兄貴も仕事頼んでくるけどね。普段の態度のせいで、そこまで頼られてる感覚はないが。
「まあ、何と言いますか。……アルフ様がご無事で何よりです。ほんっとに、マスターがごめんなさい」
「もういいってば、エレルちゃん♪ そこまで畏まる必要だってないんだよ? さっきの話の通り、一回は神様としての力を失くしたんだし……?」
「それは過去の話ですよぅ! 今は元通りなんですから!! なので! アルフ様はご自分の立場をきちんと理解すべきなのですよ!?」
エルにしてはまともな意見。
まあ、それを受け入れないのがアルフ様だし、兄貴もそれをアルフ様に助言することはない。ある意味、ほんわかしているのがアルフ様らしい。
……さて。ここからも彼らの他愛ない話が永遠と続くのだけれど。
ずっと会話に参加できていない、憐れなマスターが悲しそうな目でおれを見上げていた。
「ねぇ、フォース」
「何?」
「皆、俺に興味なし……? 埋もれたのは俺もなのに? 心配の一つない」
「あるわけねぇだろ。マスターの場合、自業自得だし、アルフ様はそれに巻き込まれただけ。どっちの方が心配されるかなんて、分かるだろ? 普段の行いのせいだよ。あんな魔窟に引き込みやがって」
「バッサリ!? え、魔窟!? 俺の部屋、そんな風に呼んでるの!?」
今更かよ。
「おれ達……制御者と兄貴の間じゃ、そう呼んでるけど? かなり前から」
「かなり!?」
「呼ばれたくなければ、片付けな」
なんて、前々から言っているが、自分から片付けたことなんて一回もない。
「ともかく、反省しろ。アホ」
「あい……すみませんでした……」
やれやれ……近い内にこいつの部屋、片付けるか。



~あとがき~
長かったな……

次回、神様のお忍び風景。

ファウスの過去やらフォースとウィルの過去とか、なんか色々匂わせてますが、書く予定はないです。まあ、気が向いたらどこかでね。お見せするかもしれません。
ちなみに、空海とレイ学では多少設定は変わっています。アルフさんとウィルの関係は空海にはないものなので……(笑)

ファウスに制御者がいるように、アルフさんにもお付きの者とやらがいるんだよって話でした。
話には出てきてませんが、ウィルにもいます。まあ、二人とは少し違う形ではありますがね。これは……まあ、いつか分かる。原作で多分!←

ではでは!