satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第111話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でどたばたする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラルとヒマワリによる恋愛トーク? ガールズトークしてたね。今回はいなかったティールも加わり、更にあちこちいく気がします……大丈夫か、私……


ティール!」
ギルドの受付で何やら手続きをしているティールに呼び掛けると、私の声はしっかり届いていたらしく、こちらに向かって手を振ってくれた。
私とひまっちはティールと近くまで寄ると、ティールはにこりと笑う。
「ラル、話は終わったの?」
「大分前にね。ティールこそ、仕事は終わったの? 早かったね?」
「まあ、配達依頼だったからさ。討伐ではなかったし……一応は」
一応は?
じっとティールを観察すると、私の視線から逃れるように明後日の方向を見る。
ふむ。これは何かを隠しているな。
「まさかとは思うけど……やりました?」
「な、何を?」
「あら。そこまで私に言わせるかい?」
じとーっとこれでもかと睨み付けてやると、ティールは観念したようにこちらに向き直る。
「……やりました。偶然、討伐対象の群れと遭遇したもんだから……つい」
「あはは! これで私に無茶するなとか言うんだから、滑稽だよなぁ!? このやろぉぉー!! 覚悟しろ!」
「いたぁぁ!?」
油断して……というよりも、注意力散漫になっているティールに回し蹴りを入れる。いつもの彼なら、こんな蹴り、素直に受けるはずもない。
この様子を見ていたひまっちも状況を察したのか、呆れた様子で困り顔になる。
「あらあら、ティールってば。能力使ったんですの? ラルがいないのに?」
「だ、だって、五十体くらいいて、仕方なく……あぁぁ!! ラル、ごめんっ! 痛いってー!」
私は、ぽかぽかと本気でもないパンチをティールの脇腹に当てていく。
私が怒りの鉄槌(お遊び)をしている間にも、ひまっちとティールの会話は続いた。
「そのまま、家に帰ればよろしいのに」
「あ、せっかく倒したし、ドロップ品の換金と討伐したから、なんか報酬あるかなぁって思ったんだよね~」
「ラルも強かですけれど、ティールもちゃっかりしてるわねぇ……」
「貰えるものは欲しいだろ?」
ティールが王子様とは思えない発言をした後、奥からひょっこり現れたのは、今日の受付担当の─ほぼほぼ彼女だが─リンだった。
「お待たせしました、ティールさん。討伐対象の確認がとれました~……と、あら、ラルさんにヒマワリさん! ずっとお話しされてたのに、どうかしました?」
「どうもこうもない! 約束破りの我がパートナーに、怒りの鉄槌を食らわせていたところだよ!」
「いたたっ……ごめんってばー!」
一方的な暴力が目の前で行われているにも関わらず、リンは小さく首を傾げた程度で止めはしなかった。流石、フェアリーギルドの優秀な受付嬢である。
「とりあえず、ティールさんの言う通り、討伐対象として挙げられていた魔物でした。こちらで手続きをして、処理を行いますね♪」
「あ、ほんと? やったね」
「ドロップ品から魔物数も予測できましたから。処理が終わるのは明日以降ですから、また来てもらうことになりますね。……ところで、よくお一人で倒せましたね?」
「そこまで強いやつじゃないし、近くに水辺もあって立地もよかったから」
「だからって能力使うなんて聞いてないっ!! 私のいないとこで使うなぁー!」
「ごめんなさぁあいっ!」
ばしっとチョップをお見舞いしたところで、ようやく腹の虫がとりあえずは治まったので、ふんっと鼻を鳴らし、腰に手を当てる。
「帰るよ、ティール」
私に怒られてしょんぼりしてるティールの手を引き、ギルドの入口へと歩き出そうとした瞬間、ばんっと両開きの扉が大きく開け放たれる。外から差し込む逆光で、大きなリュックを背負ったシルエットだけが映る。
「たっだいまー!」
シルエットだけでは誰だか分からなかったが、今、聞こえてきた声で一瞬のうちに判断できた。
フェアリーギルドの親方、プリン親方である。
「あ、え、ただいま……って?」
「あら、ラル。知らなかったんですの? 親方、一週間くらい探検家としてお仕事行ってましたのよ」
「はあぁぁぁ!?」
親方の次は私とティールの声が辺りに響いた。当然である。つい昨日行われていた剣技大会を欠席した校長が、実は探検行ってましたなんて、誰が信じる。いや、私は信じない。信じたくない!
「え、誰と行ったの。ヒマワリ」
「ミュールさん達ですわ」
「あぁ……チャームズかぁ」
納得するんじゃない。相棒!!
チャームズとは、リーダーでセクシーなミュールさんと、メンバーの清楚系美女のサナさん、肉体派レムさんという女性三人組の探検隊だ。このタイプの違う女性が世の中の男性達のハートをがっちりと射止めているらしく、定期的にモデルの仕事やら何やらが舞い込んでくるとか。その美女達と、なぜか古い付き合いのある親方は、何かと呼び出しを受け、仕事をする。
「やぁ♪ ラル、ティール。いらっしゃい!」
私達の存在に気がついたのだろう。親方はこちらへと挨拶をしながら近寄ってきた。
「いらっしゃい!……じゃないですよ! 親方、剣技大会放置して何してるんですか。探検!?」
「うん。楽しかったよ!」
そうじゃねえ!!
「何か成果はありまして? 親方様」
というひまっちの質問に対し、親方は……
「んー……まあまあかな? ボクは楽しければ何でもいいから、成果は気にしなぁい!」
という返答をした。できれば、成果を気にしてほしいところである。
「まあ、いいです。終わったことを愚痴ってもあなたには何の意味もないですから。……では、私達は帰るとこなので」
「あ、まってまって、ラル~♪ ちょっとお話があるんだけどー」
「明日でもいいですか」
一刻も早く帰りたい私だったが、親方がそれを許すとは思えず、黙って笑顔を向ける。「え~? 親方命令だよ~?」と言わんばかりの圧だ。ここまでくると、言っているのと同義だ。
「行ってきなよ。親方がこう言ってるんだし」
私が渋っていると、ティールが苦笑を浮かべながら提案してきた。
「誰のせいで早く帰りたい欲が出てると思ってるんですかねぇ」
「それは謝るけど……まあ、大丈夫だって」
「……でも」
「ラル、行ってきてください。私が見てますから」
ひまっちにもこう言われてしまうと、私が我儘振り回してるみたいになってくる。
あーもう。なんだかなぁ……
親方の提案というか命令に頷くと、にっこにこ笑顔の親方の後ろをお供することになった。

ギルド二階にある親方部屋へと到着すると、部屋の主はバーンっと扉を開け放ち、中へと入室する。私は一礼し、それに続く。
「剣技大会、お疲れ様だったねー」
「それをあんたが言うか」
「あはは♪ ごめんね? 思いの外、探検が延びちゃって。帰れなかったんだよ~♪ 忘れてた訳じゃないよ?」
よいしょっと背負っていたリュックを下ろし、親方は部屋の正面に置いてある椅子にどっかりと座る。そして、くるくると回し始めた。
「信じられるか。あなたの代わりを理事長が勤めるという申し訳ない展開になってたんだからな。自覚しろ。自分の立場を!」
「話はノウツから聞いたよ~♪」
「あぁ、私の叫びは聞いてくれないのね……」
「ラル、ゲストさんの代わりやったんだって?」
「まあ、はい……それは仕事として請け負ったので、問題はありません」
「あはっ♪ そこは正しい判断だったね! 流石、ラル~♪ 大人~♪」
未練たらしくぐちぐち文句言ってましたけどね。
「んでも、あんまり無茶しちゃダメだよ~? “雷龍”はリスクのある技なんだから。ねー?」
ティールにも怒られたし、反省してますよ」
……一応は。今後使わないなんて約束はしない。必要があれば使うし、それで私に何かあっても自己責任だ。後悔などない。
「ほんとかなー? ま、いいや! これからは気を付けること!」
「はい。……で? 話ってそれだけですか? それのためだけに私を呼び止めたと?」
「んーん? 別件!」
親方はぴたっと椅子の回転を止める。
「まあ、大したことじゃないんだけどね。ラル、夏休みの予定どうなってる?」
「夏休み? 現時点で決まっていることはないですよ。これから予定立てるつもりです。例年通り、長期遠征でしょうね」
候補地はいくつかある。明確な場所や計画はまだないが、普段では遠すぎて行けないような遺跡やダンジョン攻略、魔物討伐をメインに稼ぎまくる激動のお仕事月間となる……予定だ。
「じゃあ、大丈夫だね! ラル、夏休みは空けといて!」
「は?」
「確定じゃないんだけど、ラル達に特別な依頼をしたいって言ってる知り合いがいてねー?」
「はあ?」
「詰め込み厳禁! いいね?」
出たよ!! よくわかんない拘束!
「夏休みは私達学生の稼ぎ時なんですが……」
「特別な依頼だから、報酬あるよ~♪ たぶん?」
たぶん!? そんな言葉信じられるかぁぁ!!
……いや、分かっている。こんな文句を言ったところで、「そう? じゃあ、仕方ないね~」と諦めてくれないのは分かっているのだ。理解している。親方の弟子入りをし、卒業してもなお、彼の下で働き続けているのだ。拠点を移さない限り、いいように使われるのは目に見えているんだ、私。諦めろ。
最後の抵抗として、大きなため息を一つつき、言いたくもないが、分かりました、と小さく答えた。
「ありがと、ラルー! ボクの方から話しとく!」
「はい。お任せします……で、誰なんですか、その人って」
「明確に決まってないから教えちゃダメって言われてるのー」
なんだそりゃ。……変な人じゃなかろうか。
「だいじょーぶ! ボクの知り合いだからっ」
親方はレイ学の校長だけでなく、ここら一帯の地域を取り仕切る人だ。領主とか、町長とか、群れのリーダーとか、なんかそんなニュアンスのお偉い様である。こんなんでも。こんなんでも!!
そのため、「ボクの知り合い」なんて、一口に言っても大勢いるのが現状。多くの探検隊や探検家の知り合いも多いし、地域を取り仕切るが故にできた縁もあるし、他のギルドマスターとの縁だってあるだろう。もう候補なんてたくさんだ。
きっと、親方の人柄も好かれる要因……なんだろうなぁ。
「分かりました。じゃあもう聞きません。詳細が決まってから教えてくださいね」
「もちろん! とりあえず、忘れないうちに伝えたかったの。よろしくね、ラル」
「了解です、親方。では、これで」
軽く一礼して、親方部屋を後にする。部屋を出ると、ひまっちが扉の前で待っていた。困ったような笑顔を見せながら。
そんな彼女の姿を見て、なんとなく状況を察した。
「持たなかったか」
「残念ながら。ティールは一人だと駄目ですわ」
「私も私だけど、ティールもティールってことだよねぇ。……で、医務室?」
「ええ。寝ているだけなので、命に別状はないですわ」
はぁ……これで私に対して文句言うんだから、本当におかしな話よね?



~あとがき~
親方の無茶苦茶命令、健在。

次回、眠るティールを見て、ラルは何を思うのか。
彼の詳しい説明は次回にやりますが、用語集のあるところを見れば、おおよその見当はつくかな。見なくても分かる人は分かる!

私、ここまで親方の容姿の描写してないなぁと思ったんですけど、まあ、考えてないからなんだけどさ。童顔っぽいってのがイメージにありました。
ノウツもしてないけど……口うるさそうな年相応な大人かな……(笑)

ではでは。