satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第112話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で過ごす物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、大会不在だったプリン校長が帰ってきたり、仕事終わって何か知らんけど、ティールさんが夢の国行ったりと色々ありました。
今回はギャグ&コメディなんてどっか行ってるかもしれません。そんな日もあるさってことで流してくださるとありがたいですね!!←


私達以外誰もいない静かな医務室で、電気もつけずにぼんやりと相棒の寝顔を見つめていた。
しーくん達の世話は、成人組がいないためにフォース君に投げる他なかったのが痛い。なぜか電話越しなのに、土下座させられそうになるというハプニングに見舞われた。最終的には、土下座はなかったけど、盛大な文句と共に受け入れてくれた。あの文句は、「連日、二人揃ってなんなん? あり得ないんですけど」みたいなやつだと思う。だって、私もそう思うから。
「……気持ち良さそうに寝やがって」
医務室にいくつか設置してあるベッドの一つにティールは寝かされていた。誰が着替えさせたのか分からないが、Tシャツにスエットというラフな格好に変わっている。元々着ていた服は綺麗に畳まれて、近くのチェストの上に置いてあった。鞄も武器も側に置かれたままだ。こんなときに話してくれるのかは謎だけれど、物は試しにと私はティールの武器に呼び掛けてみる。
「ねえ、スイちゃん、セツちゃん。お話しできる?」
『あいっ!』
『るーなら、いーよ!』
いいのか。主でもなんでもないのに。
ティールの愛剣、スイちゃんにセツちゃんは楽しそうな声を聞かせてくれた。本来なら持ち主以外の呼び掛けに答えるのはよくないと思うのだが、これは信用されていると喜ぶべきだろうか。それとも、心を鬼にして、ティールに報告し、叱ってもらうべきなんだろうか。
どちらにせよ、今は関係ないため、この問題はそっと置いておこう。
「どれくらい、ティールは能力使ったの?」
『たぁくさん?』
『いつもいじょー?』
だろうなぁ……
ティールには“あやつり”と呼ばれる能力を保持している。これは複数の能力の総称であり、正確にはあやつりに分類される“水遊び”という能力だ。効果は至極単純で、液体を自在に操る。これだけ。水だろうがジュースだろうが、自由自在。なんなら、血液とかでも問題ないというから、操る液体に際限がない。
一滴の水滴から、その気になれば町一つ飲み込むくらい膨大な量まで操れるらしいその能力は、普通に使うぶんには問題はない。例えば、敵からの液体を用いた攻撃をピタリととめる、自分の技の軌道を変えるくらいなら日常茶飯事で使っている。
問題なのは自分の限界を越えた場合だ。技を出すにも魔法を出すにも限界はある。それと同じで、操れる限界が存在するのだ。まあ、明確に目で確認できる訳ではないし、メーターが視界の端に映るはずもないから、限界値なんて使っている本人ですら、「あ、そろそろ危ないかも?」という曖昧な認識でしかないようだ。
しかも、ティールはこの辺、鈍感なのか、元々の技量が高いのか……理由がなんにせよ、あまり気にしていない節がある。つまり、限界を知らない。知っていても気にしないのだ。
だから、稀に……本当に稀に、今みたいなガス欠状態を起こす。気を失う程度で済むならいいが、下手したら命を落としかねないのだ。ティールの場合、そうなるときはこの世界の海を一度に操る位をしないと消し飛ばなそうだが……それくらい、リスキーな能力だと私は解釈している。私が持つ“時空の叫び”なんて可愛いものだ。発動前の目眩こそしんどいが、あれで死ぬようなことはないんだから。
だから私は、『不用意にたくさんの液体を操らない』という簡単な約束をこいつと交わしている。……はずなのだが。
「……私といるときは無理に使わないくせに。なんなの、約束の意味ないよねぇ?」
『るーといるときは、あれだよー……ひつよーないからだよー』
『ひつよーさいてーげんでいーんだよー』
「それを一人の時も守れって話だよ。なんなんだよ。盛大なブーメランしやがって」
『はわわ。るー、おこらないでー!』
という、スイちゃんの言葉に嘲笑する。
「怒ってない。呆れてるの」
ティールの顔にかかる前髪をそっと払い、小さく息を吐く。
「私はさ、我儘なんだよね。……自分がこうなるならいいんだ。倒れちゃったり、怪我したりとか。私自身なら何も辛くないし、私一人の犠牲でどうにでもなるなら何だってやる。けど……仲間が、ティールがこうなってるのは見てらんないんだよ」
『るー?』
いつだって、私が無茶するときに止めるのはティール。怒ってくれるのもティールで、彼を守るのは私の使命で。
「……いなくなるなら、私だよ。私だけでいいの」
『るーがいないになったら、てぃー、かなしむよ! だめだよ!』
「もしもの話だよ。そんな状況にしないために鍛えてるんだからさ」
でも、そんな場面が目の前に現れたとき、私はきっと迷うことなく自身を捨てるだろう。元々が空っぽだから。
こんな気持ちをスイちゃんとセツちゃんに言えば、何て言われるか分からない。私は本音を隠すように笑った。
「大丈夫。いなくなるようなことにはならないよ。……だから、安心して」
『にゅ~……』
少し不満そうだったけれど、スイちゃんもセツちゃんも何も言わなくなった。
私はそっと目を閉じる。
これまでに色々言われてきて、思うことがないわけではない。きっと私は、ぱっと消えるには色んな人の記憶に残りすぎたんだろう。だから、ティールや皆は私を怒るのだ。
何かあったらどうするのか、と。
失敗していたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない、と。
もうあんなことはするなと。私に言う。
「けどもう、これは性分だもん。どうしようもないよ。私がいなくても世界は回るし、私はきっと、ここにはいらないから。何もなかった私は今、何かある私になっちゃったけど」
それでも、私は。
私は大切な誰かを守るために私を使う。
大切な相棒を。大好きなティールの未来のために。
「だから、その役目は渡さないよ。ティール」
無茶苦茶しでかすのは、私だけで十分だろう?



~あとがき~
きりがいいので、いつもよりは短め。そして、空海本編みたいなシリアスさ。
これ、レイ学です。学パロメインの! レイ学ですよー!!?? 生きてますかー!!←

次回、二人の夜は続きます。
まだギャグ&コメディにはもど……戻れるかな?

ちょこちょこラルの無茶苦茶っぷりはレイ学でも見せてきました。空海と大差ないってことですね。
むしろ、あれですね。明確な目的がない(空海は世界を守るという大きな役割を自覚しているので、一応の歯止めはある)レイ学ラルちゃんの方が危ういのかもしれません。それを繋ぎ止めるのは、ティールやフォースみたいなチームメイト、イグさんやリアさんといった先輩達、ギルドメンバー等々なんでしょう。ですが、彼らに危険が及べば、簡単に『自分』を手離す危うさは、こちらの方が上。よかったね、これがギャグ&コメディメインで……誰も死なない優しい世界でよかったな!! 私!!(笑)

あと、ティールの能力の話も入れました。
ぶっ倒れるくらい使いましたが、今後そんな場面はないと思います。少なくとも、そんな予定はない。

ではでは!