satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第113話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界を過ごす物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
レイ学の楽しい雰囲気はどこにもなかった前回でしたね。今回? 知らね。どうにかなるさ……最後には元の楽しいキャッキャッした雰囲気には戻るよ! それは保証するよ!!
今回の視点はティールです。


《Te side》
誰かが頭を撫でる。優しく、ゆっくりと。そして、小さく何かを呟くと、ろうそくを吹き消すかのように消えてしまう。
辺りを見回してもその人物は見えてこない。誰だったのか確かめようがなかった。
ぼくが瞬き一つすると、場面が変わったみたいに知っている人物を見つける。見慣れたブロンドの長い髪をなびかせる少女。
「ラル……?」
ラルはぼくの方をちらりと見る。無感情で、何を見ているのか分からないような瞳をぼくに向けた。そんな見たこともないラルに怯んでしまって、何も言えなくなっていると、彼女は背を向けてどこかへと歩き出してしまう。こちらの様子を気に留める素振りもなく、先へ先へと行ってしまう。慌てて何度名前を呼んでも、ラルが立ち止まることはなかった。
「待って!」
力の限り手を伸ばしても、触れられる距離にいないのか、空を切るばかりであった。

……ここで目が覚めた。
目の前に広がるのは、見知らぬ天井と自身の右手だった。ラルに向けたはずの手は、なぜか天井に向かっている。ぼんやりと考えつつ、ゆるゆるとベッドに手を下ろした。横を見ると、うつらうつらしているラルが視界に入る。器用に椅子に座ったままうたた寝しているらしかった。
……よくもまあ、椅子から転げ落ちないものですね。ぼくだったら一発で床に倒れてるよ。
しかしまあ、彼女がここで寝ているのなら、さっきのは夢だったんだろう。なんて、縁起の悪い夢なんだろうか。
「……ここ、どこなんだろ」
少し冷静になってきて、寝かされている場所が気になった。自分の家でもないし、かといって、誰かの自宅でもない。しかし、病院という雰囲気もない。となれば、答えは一つだけ……
「ギルド……なのかな」
ラルとの『お約束』を完全に頭からすっぽかした結果、やらかして、今の今まで寝かされていたと考えるのが妥当だ──あんまり覚えてないけど。部屋の明暗からして、夜なのは間違いない。こんな時間までラルは残ってくれていたらしい。子供じゃあるまいし、ギルドなら放置して帰ってくれてもよかったのに。
……あぁ、でも、あんな夢を見たあとだ。ラルが近くにいなかったら、いてもたってもいられなくなって、家に帰っていたかも。
夢のことなんて、ラルには関係ないのに。
「なんであんな夢見たんだろ」
確かに、ラルは気がついたらどっか行くし、ぼくの言うことなんて何一つ聞きやしないけど。
あの夢のラルはいつものラルじゃなかった。空虚で何も感じなくて。ろくでもないことを思い付いたときによく見せる、天真爛漫な笑顔も、仲間に向ける優しい笑顔もなかった。本当に、何もない。
ぼくと初めて会ったときみたい……いや、それよりももっと酷かった。なんで、そんなラルがほくの夢に出るんだろう。記憶にはないはずの、あんな表情を見せたんだろうか。
考えても仕方がなくて、ぼくは掛け布団を引っ張り、頭から被る。そして、そっと目を閉じる。
閉じるものの、眠気なんてのはなく、謎に印象に残ってしまった夢のワンシーンが鮮明に脳内で再生されていく。無機質なラルの顔とぼくから離れていくあの光景だけが、なぜか頭から離れない。
たかが夢。気にする必要もないはずなのに、どうしようもなく不安になる。
不穏な気持ちを振り払いたくて、掛け布団から抜け出し、上半身を起こした。そして、こっくりこっくりしているラルに話しかけた。
「ラル、ちゃんとベッドで寝ないと危ないよ?」
「……ん」
聞こえているのかいないのか、曖昧な返答だけが聞こえてくる。ほんの少し触れるだけでばったりいっちゃいそうだ。いや、本当に危ないから、空いてるベッドに行ってほしい。
でも、動く気はないのか、座ったまま。完璧なバランス感覚で睡眠中のようで……ここまでくると、狸寝入りなのではと疑ってしまう。
「……あの、ラルさん……起きてます?」
これには無反応。
寝てる……? マジで?
そうなると、起こすのも悪いか。えーっと……どうしようかな。どうしたらいいんだろ。
ぼくが悩んでいると、ラルががくんっとバランスを崩し、椅子から落っこちた。突然のことで、ぼくは何もできず、呆然としてしまった。
「……いった」
「だ、大丈夫……?」
思ったよりも淡白な反応だけど、そこそこ痛そうな音は聞こえてきていた。覚醒していないから、反応も薄いのかもしれない。
「あぁ……大丈夫。気ぃ抜いた私が悪い……」
床にぶつけたらしい頭を擦りながら、ラルがゆっくりと立ち上がり、ラルはふわりとあくびをもらしつつ、こてんと首を傾げる。
「今、何時?」
「あー……時計見てないから分かんないや」
「そう。……まあ、何時だとしても今は夜中だろうね。……寝直すわ。おやすみ」
「寝るってどこで? え、家に帰るの?」
「うんにゃ。ギルドには説明して、部屋貸してもらった。朝にはまたここに来るから、ちゃんと一人で起きろよー」
「あっ……待って」
ぼくは分かったと言いかけるも、それが出てくることはなく、代わりに、別の言葉が無意識に飛び出していた。
「ん。なぁに~?」
思わず、出てしまった「待って」という言葉に、ラルは眠そうにしながらも、出ていこうとしていた動きを止めてくれた。
「あ……と」
待ってとは言ったけれど、その理由はラルが知るはずもない。だって、単なる夢なんだから。
誤魔化せるような言い訳も、理由も全く出てなくて、ぼくは気まずそうに笑うしかなかった。
「その……ごめん。何でもない。おやすみ、ラル」
ラルはじっとぼくの方を見て、何か考えているみたいだった。それを読み取れるような能力は、残念ながらないから、今、ラルが考えてることが何なのかさっぱりだ。
少しの沈黙のあと、ラルはどう結論付けたのか、部屋を出ていく……訳でもなく、再び椅子に座り直した。その意味が分からず、今度はぼくが首を傾げる番だった。
「よく、分からんけど、一緒にいてあげる。よく分からんけど」
「え、でも」
「うっさい。寝ろ」
あっはい……
起こしていた上半身を倒し、仰向けになった。さっきまではあんなに冴えていたのに、少しずつ眠くなってくる。ぼんやりとした意識のまま、彼女を呼んだ。
「ねぇ、ラル……?」
「んー」
「ラルはさ、一人でいなくなったりしない?」
「? どゆこと」
「さっき、そういう夢見たから……」
「あぁ……そういう。……んなことで不安になるなよ。ティールが私と組んでる限りは傍にいる。私の相棒はティールだけなんだからさ」
「……うん。そだね……」
ラルはぼくの大切な友達で、親友で……大好きな相棒だ。昔も、今も。そして、きっとこれからも変わらない。
ラルの手がぼくの頭をふわりと撫でた。あの夢で撫でられたときみたいに。結局、あれは誰だったのか分からないけれど。
「おやすみ、ティール」
「……おやすみ、ラル」
ラルと話して、触れてもらったからだろうか。感じていた不安はどこかへ行き、ぼくは暖かな気持ちで眠りにつけたのだった。



~あとがき~
ラルは他人の心を読むのが上手い。

次回、そろそろ締めていきます。この休日回!

久しぶりのティール視点でした。
最初の夢でティールを撫でた人。何も考えずに出したわけではなく、とある人物なのですが、作中では明かされない……というか、少なくともこの休日回の中では明かされないかなと思います。
私の中ではこの人、みたいに思ってるのはありますが、作中にヒントも何もないんですよね。なので、てっきとーに当てはめてもらっていいです←

関係ないけど、これティールがラルを押し倒す展開も案としてありました。なくなりましたけど。

ではでは。