satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第114話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティール視点で二人の夜をお送りしました。ちょっぴり真面目な空気だったけど、今回からはそれをぶち壊していこうかと思います。
視点は戻って、ラルちゃんです。


部屋を出ていこうとして、ティールに呼び止められたとき。
あのときのティールがとっても苦しそうだったから、残ると決めた。それを言う必要はないからぼかしたけど。
結果、よくない夢を見て、不安になったというどこか子供っぽい理由で呆れはした。同時にティールらしいと思う。そういうのも真面目に捉えてしまうティールが、ぽいなぁって。
だから、傍にいると伝えた。そこに嘘はない。ティールが私を必要とする間は、あいつの相棒で居続ける。もし、必要なくなったそのときは……
極力、誰にも気づかれないように……わからないように、静かにいなくなるだけだ。
「けどまあ、それはもう少し先の話だよねぇ……ってことで、起きろ。朝だ」
閉められていたカーテンを開け、ティールが被っていた布団を剥ぎ取る。ティールは差し込む光から逃げるためか、猫のようにくるりと丸くなった。そんなんで逃げられるはずもないのだけれども。
「うぅぅ~……まぶしぃ~」
「朝です。おはようございます」
「……まだ、眠いです……お母さん」
「誰がお母さんだ! 自宅じゃないんだから、起きてくれ!!」
「うー……意地悪……」
他人の家で午後まで寝かせられるか!!
ティールは嫌々体を起こし、ベッドから降りる。寝ぼけ眼のまま、Tシャツを脱ぎ捨て、綺麗に畳んであったシャツを手に取る。私がいると言うのにお構い無しだ。まあ、上くらいなら今更なので気にしないけども。
「……そいやぁ、ラルが着替えさせたの?」
「ん? あぁ……」
「上下?」
本当は私じゃないけど、曖昧な返事をしてしまったせいか、ティールは私がやったと思ったらしい。少し反応が気になったから、このままにしておこう。
「そうだったら何かあるの?」
「何もない。気にしたところで今更かなぁって」
そりゃあ、そうだね。
ティールがお風呂入ってるときでも普通に脱衣場入るし、部屋で着替えているティールとご対面したことも数えきれないくらいある。今更だ。
私はティールの裸なんてどうでもいいが、─いや、全裸は見たことない。流石に─ティールはその辺気を付けているのか、私の着替え中に突撃されたことも、入浴中に脱衣場に来ることもない。あぁ、いや。数えるくらいはあるけれど、どれも事故だな。俗に言う、ラッキースケベ的な、なんかそんな場面。一緒に住んでいるし、何年もいるとその辺は希薄になっているような気がする。よくないのは分かっているけれど。
「このまま帰るの?」
下のスエットに手をかけた辺りで、ベッドメイクをしていた私はティールに背を向ける。
「帰ってもよかったけど、親方が「朝ごはん一緒に食べよ! 美味しいよー」って言ってくれたから。朝ごはん集る」
「うわ、ラルらしい……」
なんだそりゃ。
「……よし。お待たせ。着替え終わったよ」
ティールはきちっとしたフォーマルな私服姿へと着替えていた。一応、この格好で探検行くんだよなぁと思うと場違いな気もするんだけれど。
白のワイシャツにリボンタイを結び、紺色のベストの前は止めずに羽織るだけだ。ズボンは流石にスーツみたいな素材ではなく、動きやすいタイプのものでアーミーブーツを履いている。これに上からポンチョを被れば探検隊スタイルのティールの出来上がりである。私と同じで、これはいくつかあるパターンの一つでしかない。
ティールって緩い感じの私服ないよね」
「んー……そうだね。そういうの着てこなかったからな」
フォースくんもどちらかと言えば、シンプルでクールなものを好むからか、緩い感じの私服は見ない。アポなし訪問をすると、ジャージ着てることはあるけど。対するティールはジャージとかも着ない。
……これが文化の違いなのか。
「あってもいいかなーとは思うけど、なかなか機会なくてさ~……ラル? 食堂行くんだろ?」
いつの間にか準備を終えたティールが医務室の扉に手をかけて、こちらを見ているところだった。彼の質問でようやく現実に帰ってきた。
「あー……うん。行く。忘れ物ない?」
「ないよ。大丈夫」
「ほいほいっと。じゃあ、行きますかね」
ティールが開けてくれた扉を潜り、私達はギルドメンバー専用の食堂へと向けて歩き出した。

今日のメニューはトーストと目玉焼きにグリーンサラダ。そして、自由に取っていいフルーツの数々。いやはや、トースト、サラダまではいいとして、目の前の、ホテルのバイキングですかと問いたくなるくらいにフルーツの量がエグい。
そして、私の隣で目を輝かせている相棒は無視しておこう。
「うちらも食べてよかったの?」
トーストにベリーのジャムを塗りながら目の前に座るリンに問いかけた。リンはギルドの受付嬢であると共に、食事係の一人でもある。
「はい♪ 一人二人増えたところでなんにも変わりませんから! たっくさん食べてくださいねっ! ティールさんのためにりんごをいつもより多めに用意しましたので♪」
「わあぁ! ありがと、リン! 朝からこんなにりんご食べられるなんて幸せ!」
こいつ……さっきまでは私の朝ごはん集る発言に対して引いていたくせに。
「他のも食べてよね、ティール」
「うんっ! りんごは別腹だから大丈夫だよ」
聞いたことないし、微妙に噛み合ってないぞ。
「その様子だと、体調は問題なさそうですわね」
美味しそうにりんごを食べるティールを見て、私の左隣にいるひまっちが笑う。まあ、この光景を見たら、笑うしかないけれども。
「寝れば回復するからね。それでも駄目なら病院だよ。びょーいん」
「そうですわね。……ところで、ラル?」
ひまっちが突然、声を潜め、ずいっと耳元に近付いてきた。この場合、大抵どうでもいいことなんだけれど、黙って聞いておこう。
「ずぅっとティールと一緒だったんですのね?」
「看病してたら、私も寝入っちゃって」
まあ、嘘だけど。ティールに呼び止められて、あれからずっと起きてたんですけどね。
「何もないんですの?」
「ないよ。何、期待してるの? 残念でした。別にティールにあーんなことやこーんなことされてないもーん」
「夜に年頃の男女が同じ空間にいて、何もない……!?」
ねぇよ。……厳密に言えば、あったけど。口が裂けても言えるか。それにあれは、ひまっちが期待するようなことではないだろう。
「ひまっち、夢見すぎだってば。私とティールはなぁんにもないって話したでしょ?」
ぐぬぬ
「置き換えてみなよ。ひまっちとドームが同じ場面に遭遇したとして、何か起こる?」
「ないですわよっ!」
「そういうこと。ひまっちが私に聞いてるのとおんなじことだよ」
「ドームとティールを一緒にしては駄目ですわよ、ラル! スペックが違いますもの。スペックが!」
ひまっちは立ち上がると、少し遠くに座るドームを指差し、続けてティールを指差した。ドームはこちらに気づいたけれど、ティールはりんごに夢中で興味なしだ。
「なんだぁ!? おい、ヒマワリ! 何か用かぁ!?」
「何もありませんわよ!! ただ、貴方とティールとでは、差があるって話ですわ!」
「なんだとぉ!? ワシの方が強いに決まっているだろうが!」
何を勘違いしたのか、ドームが的はずれなことを主張してくる。話の流れを知らないから仕方がないかもしれないけれど。
一方のティール。ドームの大声にようやく気づいたのか、トースト(りんごジャムのせ)を咥えて、ひまっちとドームを交互に見た。そして、当然ではあるが理解できなかったようで、小さく首を傾げた。
「……んぐ?」
「なんでもない。気にせず堪能しなさいな」
「ん~? んっ! 分かった!」
りんご食べてるこいつは扱いやすくて助かるわぁ……食べてなくても扱いやすい部類だけども。
ちなみに、ドームとティールの実力云々は、ティールに軍配が上がる。武器の扱いも技の練度も、知識も、私の相棒の方が何十倍にも格上だ。ドームは探検家として先輩で立場は上だけれど、元からある素質に関してはティールが上。
「うちのティール君が強いに決まってるやろが! ドームなんて、けちょんけちょんだぞー!! 私のティールをなめるな!!」
「むぐ? ぼく、いつの間にラルの所有物に……ま、困らないし、構わないけど」
困れ。ツッコめ。りんごに絆されるんじゃない!! ボケだよ! 私の!
「なぬっ!? ラルまでワシを疑うのか!」
「そうで……って、そこじゃなくってよ!? 男性としてのスキルですわよ!!」
知ってる。
このあとも、ひまっちとドームの痴話喧嘩……いえ、口喧嘩は収まるところを知らず、朝ごはんが終わるまで永遠と続く……はずもなく、ノウツの一喝で喧嘩は中断した。流石、ノウツ。こういうメンバー同士のいざこざを止める損な役回りをするだけのことはある。
そんなノウツを笑って見つめる親方。本来は親方がストップかけるべきだと思う。セカイイチに夢中たから無理か。
なんだかギルドメンバーとの久しぶりのご飯は楽しくて、たまにはいいかなぁなんて、思ったり……思わなかったり。
うん。ティールがりんご食べ過ぎるから、よくないわ。今後、お世話にならないように頑張るわ。
「そいやさ、ティール」
「ん?」
ティールのお陰で臨時収入入りそうだから、何か食べたいものとかほしいものある?」
手柄はティールだもんね。労わないと。
「ラルのアップルパイ。ほしいものはないからね」
即答で返ってきたのは、当然と言えば当然の、りんご料理。しかも、デザートて。
「……目の前にたくさんあるりんごを食べてるのにまだりんご?」
「いくら食べても飽きないだろ?」
私は見るだけで飽きましたけど。
「えー? ぼくは飽きないけどな。それに、ラルの大好きだから。久しぶりに食べたい」
きらきらの笑顔を向けてきた。これが耐性のない女の子なら一瞬でイチコロの王子様スマイルというやつだ。私は散々見慣れてしまったので、何とも思わないけれども。
「……あっそ。ならいいけど。言い出しっぺだからね。ちゃんと約束は守るよ」
「ほんと!? やったぁー! ラル、大好き!」
「はいはい。私も大好きだよ、ティール」
ティールの言う、『大好き』は何なのかは分からないけれど、私はずぅっと貴方に恋しちゃうくらい、大好きだよ。
これからもよろしく、相棒。



~あとがき~
いつもの調子に戻って終わりです。

次回、学園パートに戻ります!
三年メインの話です。よろしくねー!

家族みたいな距離感のラルとティール。家族よりも近いかもしれないですね。
いやぁ……恋愛発展しねぇなぁ、こいつら。
お互い、大好きなんですけどねー! 愛あるんだけどね!?

ではでは!