satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第231話

~前回までのあらすじ~
預言者捜し中(不法侵入中)のお三方は、謎の通路を発見し、先に進んで、新たな村人発見か!? みたいな感じですね。
フォース「不法侵入なんて人聞きの悪い」
イブ「鍵はかかってなかったけど、勝手に入ったのは事実だよぅ」
フォース「迷惑かけるって宣言してるからセーフ」
イブ「そういうことにはならないよね!?」
まあ、バレなきゃ大丈夫((
イブ「バレてなくてもダメなものはダメー!!」


遠くの方に見える明かりを発見し、思わず足を止める。そして、そっと息を潜め、小声で話した。
「ど、どうしよっか……?」
「今更、こそこそする必要なんてなくね? おれら、ここまでふっつーに歩いてきたぞ。音が反響しそうな場所だし、あっちも気づいてんだろ」
そ、そうなんだけど! 気持ち的に! なんかこう……ひそひそした方がいいのかなって!?
慌てる私を鼻で笑い、すーくんは勝手に先を歩く。暗闇でもばっちり見えてるすーくんに、ランプの光は必要ない。そのため、私達を置いて歩いていってしまう。チコちゃんは私が歩かないから、私を気遣って留まってくれていた。きっと、すーくんと二人だけなら後ろを着いていくんだろうな、チコちゃんは。
「んもう! チコちゃん、追いかけよ!」
「分かった。行こっか!」
先を歩くすーくんの後を追いかけ、走っているわけでも、早歩きをしているわけでもないすーくんにさっさと追い付く。すーくんの見る方向に目をやると、信じられないものを目にした。岩壁の窪みに木材を組み上げた簡素な檻がしてあり、簡易的な牢屋が作られていた。その中には、最低限の家財道具、村の人達が与えたであろうたくさんの本が積まれている。そして、囚われているのは、一人のキルリアの少年。少なくとも、私よりは年上だろうけれど、ピカさんと同じくらいなのか、少し上なのか……そこら辺は曖昧な見た目だ。
「あなたが、預言者……?」
思わず口に出た言葉をキルリアは理解したらしく、戸惑いつつも、困ったように笑う。
「あ、と……そう、呼ばれちゃってる、かな。あの、あなた方は?」
「私はイブ。私のパートナーのチコちゃんと、すーく……フォースだよ。私達、探検隊なの」
「た、たんけんたい? あ、えと、俺はアイトです。その、探検隊さんがどうして」
「おれらはお前をここから出すために来た。……ってのは、強引か。まあ、お前に出る気があるなら、連れ出してやるよ」
展開についていけてないアイトさんは、真意を探るためなのか、じっとすーくんを見た。でも、それは長い時間ではなく、ほんの十数秒で、アイトさんはすぐに目を逸らした。
「俺、は……ここから出てもいいんでしょうか」
……ん? それってどういう……
「いいか悪いかじゃなくて、出たいかそうじゃないかを聞きたいんだけど」
理由を聞こうとしたけれど、すーくんに遮られ、私の言葉はアイトさんに届かなかった。
すーくんの問いにアイトさんは黙りこんでしまった。何を考えているのか分からないけれど、出ていくのも抵抗があるのか。ザゼルさん達に恩がある、とか。
「えっと、俺、ほとんど何も知らなくて。多分、三人が常識として知っているようなことすらも……きっと、分からないと思う。そんな俺が出てもいい、のかな」
事情がよく分からない。記憶喪失……にしては、自分の名前は分かっているみたいだ。それに本を読む教養だってある。それなのに、何も知らないなんて……? ううん。そこは今、関係ないよね。
「アイトさん、私達と一緒に行こう。知らないなら、見てみればいいんです! 知らなかったこと、外にはいっぱいありますよ? 知りたいって思っているなら、私達がお助けします! 探検隊は、困っている人を助けるのもお仕事の一つだから」
アイトさんはどこか違うところを持っているから、その違いを見るのが怖いんだろう。他人と決定的に違うというのは、劣等感を抱いてしまう。そんな風に思っているのなら、そんなことないって言ってあげられれば。きっと、大丈夫。
「おーおー……リーダーらしいこと言うねぇ……つーことだ。どうする? 言っておくが、あの人達に恩義を感じる必要はないぞ。今の状況を冷静に判断できるなら、な」
普通の人は幽閉なんてしないもんね。
アイトさんが犯罪者って可能性も考えたけれど、それなら牢屋の中にあるたくさんの本の説明がつかないし、囚われているのに、アイトさんは不健康そうに見えない。食べ物なんかも充分な量を欠かさず持ってきてくれていたんだろう。だから、これはザゼルさん達がアイトさんを軟禁しているんだと思う。それもかなりの優遇で。それをしなきゃいけないくらいの人なのか、何かを持っているのかもだけど。
「……出て、この世界のこと、確かめたい。俺がいてもいいのか、俺自身で決めたい。その、なので、連れ出してくれますか?」
決心を固めたアイトさんを勇気づけるために私は力強く頷き、笑って見せる。
「もっちろん! でも、すーくん、ここから出すなんてどうやって? 木材とはいえ、ばっちりカギもかかってるのに」
「あ? んなもんぶっ壊すに決まってるだろ」
デスヨネ……
中にいるアイトさんになるべく檻から離れるように伝え、隅っこに移動してもらった。さっきみたいに蹴り飛ばすのかと思ったけれど、すーくんは手元に剣を二振り創り出した。
「斬るんだ」
「蹴ってもいいけど、格子一つ一つ蹴るのは時間かかるだろ。……一応は追われてる身。時間は有限」
そっか、うーん。ザゼルさん達をどうにかしないとなのか。せめて、お話くらいは聞きたいけれど、そんな余裕あるかな?
剣を構え、目にも止まらぬ剣技によって簡単に檻を壊してしまったすーくんは肩をすくめる。
「さてな。常識があれば話し合いですませられるかもね。そら、おいでなすった」
くいっとすーくんが示す方向には、ゆらゆらと揺れる光があった。チコちゃんの持つランプと、アイトさんがいたところにある明かりとは別のもの。
「俺を……ここに置かせるために……?」
「あー……戦うにしても、話すにしても……場所が悪いな。この先から空気の流れを感じる。きっと外にも通じてるんだ」
「一旦、外に出る……? でも、フォース、来てる人達はどうする?」
チコちゃんの疑問にすーくんはさも当たり前のように答えた。
「おれがある程度、足止めするに決まってんだろ。五分間、敵を食い止めてやるから、その間にお前らは外に出ろ」
ぜ、全員!? こんな狭いところなのに……大丈夫?
「おれを誰だとお思いで? イブ様?」
「……ごめん。そうだね。……すーくん、私のために……ううん。私達のために、時間を稼いで!」
「はいよ。……一応、これ渡しとくわ」
無造作に投げられたのは小さな拳銃だ。とっても軽くて、これが普通の銃じゃないってのははっきり分かる。自分の力を込めて撃つ……“強き力”を源にした銃。
「ま、使わないことを祈ってる。五分経ったら、すぅの中に戻るから。そんときに合流しよう」
すーくんから受け取った銃をカバンに入れ、アイトさんとチコちゃんに目配せをする。そして、最後にすーくんを見た。
「このチームのリーダーはお前だ。……行け!」
「絶対に、怪我なんてしないでよ! あ、あと、手加減! してね!」
二振りの剣を構えたままのすーくんに背を向け、私達は走り出した。光源はチコちゃんのランプだけ。三人の足元を照らすのには心許ないけれど、信じて走り抜くしかない。
走り出した直後、私の背後で大きな音と振動を感じるものの、振り返らずに前へと地面を蹴った。

三人が走り出したのと同時に、ここが抜かれぬように、柵を作る。そして、イブ達の気配が遠退くのを感じつつ、フォースは前から来る人達へと意識を移した。完全に対立した今の状態で穏便にすむなんて考えていなかった。まだ、ここの集落の人々に手は出していないものの、それも時間の問題だろう。
ドタドタと慌ただしくフォースの目の前に現れたのは、集落の男達だった。種族は統一されていない。ただ、全員が何かしらの武器を構えているくらいが共通点だった。
「お、お前……! そこにいらっしゃった方は」
「宣言通りのことをしたまで。……ここは通さねぇよ。そんなちゃっちい武器で、おれをどうにかできるなんて思うなよ?」
外に通じているのを知っているのは、この人達も同じかもしれない。そうなると、出口に待ち構えている可能性もある。しかし、ここ半年の期間で、イブもチコも強くなったとフォースは感じていた。これくらいのピンチを乗り越えられるくらいには。
「……逃がすか!! “チェーン”!」
後ろの方で遠ざかる……言うなれば、引き返すような気配を感じ、フォースは“鎖”を創り出して拘束した。その場に縛り上げたために、その男達が邪魔で、他の人達も引き返せなくなる。
何の変哲もない地面からいきなり鎖が飛び出し、更に身動き一つ取れなくなった仲間を見て、怖じ気づいたのだろう。フォースから数歩離れる。
「いつの時代も、未知なる力は煙たがられるもんだ。……はっ! 人の子らよ、貴様らの保身が欲しくば、このおれを倒せ。……行くぞ、童共が!」



~あとがき~
フォース無双は面倒なんで書きません。皆様、脳内補填でよろしく((

次回、フォースと別れたイブ達。どのように集落の人々と和解する……?

展開早いけど、まあ、こんなもんこんなもん。
なんか久しぶりにフォースの口調を変えた気がする。マジギレぷんぷんだと、おじいちゃんというか、偉そう(?)口調になるフォースさんです。雷姫みたいな話し方になりますね。なんとなーく?

ではでは!