satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第164話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で大人しくしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
名前はまだ出てませんし、お知り合いにもなってないけど、イグ&リアの登場でした。
スカイとちゃんと話すのはまだ先です。
ラル「イグさん、あのベヒーモス、どうやって倒したんです?」
イグニース「“ブースト”っつー移動速度あげる魔法使って、敵の懐に潜り込むだろ? んで、炎属性の斬撃で一刀両断」
ラル「わー……カッケー」
イグニース「ほんとに思ってるかぁ~?」
ラル「思ってる思ってる」
今回もティール視点なのじゃ。


《Te side》
二人に運ばれた病院で適切な処置を施してもらった。挫いてしまった左足首に簡単な治癒魔法をかけてもらい、包帯を巻いてもらう。
念のためにと撮ってもらったレントゲンを見ながら、初老の先生はにっこりと笑う。
「骨は問題なさそうですね。回復力を上げる薬を使えば、一晩で治るでしょう」
医療発展してるなぁ……
自然治癒で治そうとしたら、一週間はかかりそうなものだけれど、多分、あの女性の手当てと回復補助が充実しているお陰で、早く治りそうだ。
「あなたと一緒に運ばれた彼女も命に別状はありません。かなりの大怪我ではありますが……それでも、致命傷は一つもありませんでした」
「そうですか」
運が良かったのか、ラルが意図的にそう仕向けていたのか。あるいは、無意識にガードしていたのか。……まあ、いずれにせよ、無事ならいい。
「しかし、骨折は回復力を上げ、安静にしていたとしても完治に一週間はかかります……ですが、今後の活動には支障は出ないでしょう。安心してくださいね」
「ありがとうございます。……失礼します」
「お大事に」
痛みはほぼ感じないとはいえ、体重をかけるのは怖いから、左足を庇うように診察室を出た。そして、待合室まで戻ってくると、辺りを見回す。ちらほら診察待ちの人がいるだけで、あの二人の姿はない。
「……いなくなってる?」
『もー、けらいもかんじなーい』
え。いないの。お礼言ってないのに。
一応、受付であの二人の容姿と多分、探検隊か何かだと伝えると、看護師さんは思い出したように頷いた。
「一緒に来ていた方々でしたら、もう行ってしまいましたよ。なんでも、依頼人の家に用があるとかで」
「そ、そうですか。ちなみに、あのお二人の名前とか分かります?」
「お名前……確か、シリウスって名前の探険隊なのだけれど……個人名までは。ごめんなさい。私達は探険隊とは、あまり関り合いがないものだから」
シリウス。聞いたことあるような、ないような。
……うん。こんなところで考えても仕方ないか。次だ。次だ。
「この辺に宿ってありますか? あの子残して自宅に帰るわけにもいかなくて。……それに、ここ、ぼく達が住んでる町じゃないので、一週間、泊まれる、場所……」
いや、待て待て。一週間の宿代なんて持ってないぞ。泊まれるわけなくない? え、どうする。野宿でもいっか……? いやいや? どこでするんだよ!? 夜営……え、一人で!?
「……それでしたら、付き添いの方用の仮眠室をお貸しします。そこでお休みなさってください」
「! い、いいんですか?」
混乱していたぼくの姿がどう映ったのか分からないけれど、看護師さんは優しく柔らかな笑顔でありがたい提案してくれた。
「はい。そこでよろしければ」
「ありがとうございますっ!」

ラルが完治するまでの寝床を確保し、ぼくはラルの眠る病室へとやってきた。大部屋だけど、他のベッドはがらんとしていて、ここはラルしかいないみたい。
途中で回復薬を使ったぼくとは違って、彼女は一度も道具に頼らなかったみたいだ。頼る暇がなかっただけかもしれないけれど。それでも、ラルはぼくを逃がすためにと体を張った。……ううん。自分自身を犠牲にしようとしていたんだ。ぼくを助けるために。
病室においてある丸椅子に腰かけて、ラルの左手を優しく握る。
「ごめんね、ラル。痛かったよな」
つい成り行きで始まったこの探険隊だったけれど、今回初めて、命の危険に晒された。まあ、危ないなと思う場面は何度もあったけれど、死ぬようなものではない。せいぜい、大したことのないモンスターの大群に囲まれて逃げてみたり、立ち向かってみたり、その程度だ。どれも、ぼくらのレベルで勝てると確信があって立ち向かっている。けれど、今回はそうじゃなかった。
もちろん、頭の中ではダンジョンは危険だと知っていた。鍛練して、強さに自信のある人しか行っちゃ駄目だと知っていた。
「力を過信してた訳じゃないし、あれは事故みたいなもんだけど……そんなの、言い訳にもならない。だって、死んだら意味がない。言い訳なんて、意味がなくなる」
ぼくの選択は間違ってなかっただろうか?
そもそも、さっさと帰っていれば、ベヒーモスと対峙はしなかったわけで。いや、そこを気にしても仕方がないか……
ラルの撤退を命令通りに、外に出て連絡していれば、ラルはここまでの怪我をしなかったのか。
それとも、一度目の撤退をも無視してあそこに残れば、彼女を怪我させずにすんだのか。
……なんてね。どれも、結果論にもならないよ。もしも話なんて、あり得ないのに。
ラルとは、一緒にいるようになってからまだ半年しか経っていない。ぼくは、彼女を知らない。彼女すら、自分を知らないのだから、どうしようもないかもしれないけれど。
「それでも、ぼくは」
君を失うのはすごく怖いんだよ。それくらい、君を大切に思ってしまっている。だって、君は。ラルは、ぼくを贔屓目で見ずに接してくれた人だから。ぼくをただのティールとして受け入れてくれた人だから。ぼくの中で、ラルはもう普通の友達じゃなくなってる。大切な友達……親友だから。相棒だから。
だから、だからさ。
「……もう、あんなこと、しないでよ。お願い。……ぼくを、置いてかないで。一人は嫌だよ」
あのときみたいに、一人でやろうとしないで。
今回みたいに、一人で行こうとしないで。
「……てぃ、る?」
「! ラル……! 分かる?」
揺らぐ視界を慌てて手で拭い、ラルに呼び掛けた。瞼を震わせ、ゆっくり目が開かれる。
「ん……なんか、いろんなとこ、痛い気がするけど、大丈夫だよ。……ティール、無事で何より」
「それはこっちの台詞だからね!?」
「たはは……そっかぁ」
ふわりと笑うラル。そして、繋いでいた手に弱々しくも力を込めた。
「まあ。生きてるし、いいんじゃないかな」
「よくない。ラルのやり方、危ないんだもん。いつだって、自分は後回しで……」
「……うん。私なんかより、ティールが大切だから、そういうことしちゃったけど……そだよね。一人ぼっちはやだよね。ごめん」
……聞いてたの?
「ん~……ちょっぴりね」
申し訳なさそうに笑うラルに、ぼくは恥ずかしくなってそっぽ向いてしまう。
女の子に情けないところ見せちゃってるぞ……いいのか、これで。
「もう、死んじゃうような危ないことはしない。……無茶はきっとやめらんないから、せめて、死に急ぐようなことはやらないって約束する」
「何それ。……無茶をやめてほしいなぁ」
呆れつつ彼女を見ると、ゆっくりと首を振るところだった。そして、ふにゃっと笑う。
「やめたら、仲間を守れないもん。弱い私は、安全圏じゃなくて、危険地帯まで出て、全力で抗わなきゃ。だから、ティールはそんな私を守ってね。隣で、一緒に強くなろう……二人なら、きっと」
「……最強?」
「最強かぁ。大きく出るね。嫌いじゃないよ……なんて。この状態での励ましなんて、気休めにもならないかもだけど……強くなろうってのは、本音」
「うん。ぼくも、強くなる。君を隣で守りきれるくらい、強く……一緒に」
「うん。一緒に、頑張ろう。……ところでさ、ティール」
なぁに?
「私がどれだけ寝ちゃったのか分かんないんだけど……ギルドに連絡、した?」
「…………あっ」
してないな。やばい。怒られる。みんなに。
別の意味でさぁっと血の気が引く。ノウツの大激怒が頭に浮かび、冷や汗が止まらなかった。
「あの、ラ、ラルさん? ここはリーダーが連絡した方が……」
「あー! なんだか眠くなってきたわー! おやすみ、ティール!」
かつてないほどの元気なお休みの挨拶だな!? ふて寝しないで!! やめてやめて!!
しかし、ぼくの呼び掛けに答える気がないのか、大袈裟に寝息を立て始める。狸寝入りしてますよーと言わんばかりの態度である。
「もー!! やだぁぁ!!」
このあと、泣く泣く一人で連絡をし、ノウツにヒマワリにドームに……ギルドメンバーほぼ全員に怒鳴り散らされたのは、言うまでもないだろう。



~あとがき~
シリアスが台無しだよ、お前ら。

次回、時は流れて、怪我を治した二人がギルドに帰還します。

ここらで半分かな?
伏せていましたが、この話はスカイとシリウスの出会い編となります。シリウスの名前が出せなくてっな! 〇〇編ですー! と最初に言えませんでした。申し訳ない!
まあ、言えなかったからといって、支障はあんまりないですけどね! 言い換えはしてたわけだしな。

ではでは!