satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第195話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、紆余曲折ありましたが、ティールはルーメンおじいちゃんの部屋に来ました。がっちがちやけど。
今回もルーメンおじいちゃんの部屋でのお話です。


《Te side》
わいわい騒ぐスイとセツがいるから、まだ沈黙にならずにすんでいるが、正直な話、その二人の声もあまり入ってこないくらい緊張している。
はぁ……さっきまでの威勢はどこにいったんでしょ、ぼく……
ぼくの緊張を感じ取って、アルフォースさんもハーブティー淹れてくれたんだろう。カモミールの香りがふわりと漂ってきて、半ば無意識に一口飲み、そっと息を吐く。
気持ち、落ち着いてきた……気がする。いやこれ、気がするだけだ。絶対。
『てぃー、かちんこちーん』
『せっちゃ、なーんもしてないのにねー』
お前の冷気でやられるようなぼくではない。お前の冷気に耐えられるように日々、鍛えてますんで……
「ふむぅ……そこまで緊張せんでもいいんじゃがの~? 取って食うわけでもないぞい」
「う、す、すみません」
気軽に話しかけつつ、ぼくの正面に腰を下ろす。更に緊張が増した気がする。
考えてほしい。この世界に存在する探検隊をまとめる組織のトップだ。父親の件がなくても緊張しない方がおかしい。あのラルですら、会う前はなんかおかしくなるくらいだった。そんな人と一対一で話すなんて……や、やっぱり、来るんじゃなかった。
この部屋に来た後悔を感じつつも、ルーメンさんの様子を窺う。
ルーメンさんはのんびりした様子でアルフォースさんが淹れてくれたお茶を飲んでいた。
「ここでは『親方』だの、『連盟のトップ』だの、偉い肩書きのワシではなく、『ただのおじいちゃん』と思ってくれてよいんじゃが……すぐには難しいかの?」
すぐにって言うか、無理だと思います。……恐れ知らずなフォースじゃないんだから。彼なら、ルーメンさんすらも呼び捨てしそうだもの……ぼくもそれくらいの度胸があればな。
……恐ろしくてできない。
『けーあいしらないもーん』
『ねー?』
フォースだとしても、敬愛は知ってると思う。するかは別として。
ティールや」
「あ、はい……なんですか?」
「勝手なジジィのお願いなんじゃが、ちぃっと女神に会わせてくれんかの?」
話が百八十度くらい変わってないか……?
女神。ぼくに言うってことは、白雪のことだろう。お祖父様や父上と交流があるなら、女神の話も、王家との繋がりすらも、知っていてもおかしくはない。
白雪と会うには、聖剣であるスイとセツを使い、呼び出す必要がある。白雪の依り代は聖剣二つを使って呼び出す大剣なのだ。
剣を呼び出すだけならまだいい。ぼくもごく稀に大剣の白雪を使うから。なんなら、仲間にも見せたこともあるくらいだ。けど、会わせろって言うのは、ちょっと。
白雪も雷姫さんみたいに人の姿になる。しかし、それは、ぼくの家のとある部屋でしかやってはいけないと言われている。
「水氷の女神様にちょっとした確認をしたくての。……確認というよりも、許可かの~」
そんなことを言われても。ルーメンさんとはいえ、初対面だしな。……何かあっても、ぼくだけじゃ対応しきれない。
「まあ、当然の反応じゃのぅ……今日知り合ったばかりのジジィが一国の女神を呼んどくれと言っておるしの」
うっ……信用してない訳じゃないんですけど。
「よいよい……そうじゃな。それ」
ルーメンさんが軽く片手をあげると、部屋の空気が変わった。何かの魔法か術を使われたのは分かる。しかし、それが何なのかまでは分からなかった。状況から推測するのはぼくは苦手なのだ。それは、ラルの専門分野。
「部屋全体に防音魔法をかけたんじゃよ。ついでに部屋にも誰も入れんようにした」
な、なるほど?
「ワシは人の姿をした女神と会いたいわけではない。声だけでよいんじゃ」
『てぃー! じっちゃのまほー、つよいんら! だからね、しらゆきとおはなししてもだいじょーぶ!』
『あとね、しらゆきもじっちゃのはなし、きょーみあるって! あいたいいってる! だからね、おはなし、いいよーって!』
「えぇ!? 白雪がぁ!? 嘘!」
「ほほう?」
ルーメンさんは少し驚いたように反応をする。本人からのアプローチまでは予想外だったのかもしれない。
ぼくはルーメンさんに気づかれないように意識を集中させ、白雪に問いかける。さっき話をしたばかりだ。すぐに答えてくれるだろう。
本当か、白雪?
『嘘なんて言ってないわぁ』
……いいんだな。ここで呼んでも。
『えぇ。よろしく』
そう……分かった。女神様の仰せのままに。
「……女神がそう仰るのなら、ぼくはその意思に従います。来い、スイ、セツ」
ソファから立ち上がり、昼にツバサ達が駆け回っていた少し広いところに立つ。
呼び掛けに応じ、スイとセツは元の剣の姿に戻る。その剣を軽く振り、決まり文句を紡ぐ。
「重なれ、水泉。雪花」
その言葉を合図にスイとセツは水と冷気になり、螺旋を描いて連なるように合わさる。
水と冷気が弾け、その中から、部屋の明かりを反射し、宝石のようにきらびやかな光を帯びる大剣が姿を現した。
ぼくが白雪を手に、再びソファに戻ると、ルーメンさんが懐かしそうに目を細めた。
「久しいな、水氷の女神よ」
『ふふ。えぇ、久し振りね、ルーメン? いつ振りかしら』
「確か、ライトとセイラさんがくっついた頃が最後じゃ。じゃから、二十年以上前か。しかし、ワシのことを覚えとったんじゃの」
白雪の声、聞こえているんだ。
スイとセツの声を聞く人はいるが、女神の声は女神と波長が合い、且つ、許した相手でないと届かない。そこは雷姫さんと似ている。
『貴方みたいな面白い人、忘れる方が難しいわ。アルドアーズとの旅も、ブライトとセイラが一緒になったときも……ルーメン。貴方が率先して面倒を見ていたわ』
と、そこで言葉を切り、くすくすと笑ってから、再び話を進めた。
『人の子は自分より立場が上……というよりは、王は敬うものと認識しているわぁ。それが他国の者でも、ね? 正体を知れば、出過ぎた真似は慎むものよ。けれど、貴方は違う。我が王達を一人の男として対等……いいえ。振り回している』
「お気に召さんかの?」
『いいえ? 話は最後まで聞きなさい。……貴方が振り回してくれるおかげで、アルドアーズもブライトも、王としての立場を忘れられる。私、楽しそうな王達を見るのは好きなの』
「ほう~♪ それはそれは嬉しいことを言ってくれるの」
楽しそうっていうか、振り回されてるお祖父様が面白いだけなんじゃ。というか、楽しそうに話しているな、この二人。
ぼくのことは完全に放置し、二人で楽しそうに話し始めた。中身はほとんどがお祖父様とルーメンさんの旅について。
色々話していたが、基本的にはお祖父様がルーメンさんの魔法の巻き添えだとか、モンスターと一緒に吹き飛ばしちゃったとか、お祖父様のかわいそうな話ばかりである。
「──そういえば、暴走したドラゴンの討伐依頼。あれもアズと一緒に行ったんだったか。いや~……あれもなかなかに傑作じゃったの~♪」
『ふふ。あれは貴方の魔法に踏ん張れなくて、吹き飛ばされたアルドアーズが砂の山に突っ込んだのよ』
「ほっほっほ♪ あれくらい、避けてもらわねば困るわい! それに白雪だって、愉快そうに笑っておったろう?」
『ええ。あんな簡単に人が飛ばされるのはおかしくってよ?』
お祖父様の味方はどこにもいないらしい。
久しく会ってないけれど、今度会ったら、少し優しくしよう。いつも、お祖父様の言葉に突っ込んでばっかだから。



~あとがき~
一国をまとめる一人と一国の王子のお喋り会(?)、スタート。

次回、お喋り会続きます。

こちらでもちゃんと出てきました白雪。
空海よりも、絡みは多そう。少なくとも、ここではですが。
そして、全く姿が見えないアルドアーズのかわいそうな話がてんこ盛り。
一言も喋ってねぇのにな……(笑)
アルドアーズはレイ学オリジナルキャラです。ティールのお祖父ちゃんなんだけど、空海には出てくる予定もないので、設定すらありません。なのに、こんなキャラの濃い子になっちゃって……!

ではでは。