satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第197話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお喋り会をする物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、チェス勝負を持ち出されたティール君。意味もわからず、受けてしまいました。
おじいちゃんと王子のお話は続くぜ。


《Te side》
駒を並べ終え、チェス勝負が開始される。ぼくは駒を動かしつつ、何でこんなことになっているのかを考えてみる。……けれど、その答えはどこにも存在しない。きっと、ルーメンさんの頭の中にしかないのだろう。
本当に他愛ない話─学校がどうとか、仲間のこととか。本当に何でもない話ばかり─をのんびりしながら、ゲームは進んでいた。不意にルーメンさんが誇らしげに笑う。
「いや~♪ まさか、アズの孫とチェスをする日がくるとはの~♪ 長生きはするもんじゃな!」
「お、大袈裟では?」
「いやいや。あの頃はワシもアズも若かったからの。こうなるとは予測せんじゃろ? 人生、何が起こるか分からん」
そういう話なんだろうか……?
「お祖父様とも、チェス、するんですか?」
「んお? おぉ♪ するぞ~♪ 意外やも知れんが、アズはこういう頭脳戦は得意な方での。熱い勝負を交わしたもんじゃよ」
どこかへふらっと出掛けては、女性の話しかしないあのお祖父様が。
「政治的手腕はピカイチじゃぞ?」
「……へえ?」
それは知らなかった。ぼくが物心ついた頃には父上が政治をしていたし、お祖父様は自由にしていた気がする。だから、本気で仕事をするお祖父様は記憶にない。たまに、手伝っていたような気もするけれど。
「昔の内政を整えようと奮起したのもアズじゃったからの。いやはや、長年染み付いた制度を短期間で変えておるあやつは、革命家と呼称すべきだの」
「女性好きなあのお祖父様が?」
「女ったらしなあのアズがじゃ♪」
酷い言われようだ。ぼくもだけど。
ティールはアズをどう思うとるんじゃ?」
それは難しい質問だな。どう答えよう。
「うぅん……女性好きは昔からっぽいんで、なんとも。けど、一つ一つの行動にはきちんとした芯のある人だと思いますよ」
かたん、とナイトの駒を動かし、ルーメンさんは楽しそうに笑った。
「それはアズ本人に言ってやるとよいぞ♪」
「しばらく会ってないんですよね。家にいないんで」
「あいつ、ふらふらしとるからの~」
それも昔からだとお祖母様から聞いた記憶がある。だから、自分も好き勝手するのだと。
「話は変わるんじゃが」
……?
「お主らはなぜ、探検隊を? プリンの話では二人が中学生かららしいの?」
「あぁ……成り行きです。本当に。……探検ってものには憧れはあったので、高校生になってから、ギルドに入ってみてもいいかなって思っていました。……蓋を開けてみれば、二年も早くに始めてましたね」
ラルと出会ったのも、偶然だ。たまたま公園を歩いていたら、彼女を見つけただけ。ぼくは、ぼんやりしていて、浮き世場馴れしている彼女が放っておけなかった。そこで、あれこれ話していたら、とある事件に巻き込まれ、その犯人を追いかけて。その場の勢いで、ラルと一緒にダンジョンに挑むことになって……気がついたら、ギルドに入門させられていて。
……いやぁ、あの怒濤の一日は今でも忘れられない。まあ、彼女の生い立ちなんて、ルーメンさんには言えないから言わないけど。
「ふらふらしていた彼女と、こうして五年も探検隊続けられるのはありがたい話です」
「そうかそうか……信頼しとるんじゃの」
「はい。一番の友達でパートナーなので……けど、あっちはぼくの気持ちなんて知らないんですよ。基本、無茶しかしないって言うか」
いつもとまでは言わないけれど。
「ふむ? そういえば、この前の大会でも随分と無茶をしていたように思うの」
ルーメンさんも大会に来ていたのだろうか。ギルドの親方だし、セラ理事長やツバサもいるから、いてもおかしくはないか。
ルーメンさんはそのときの場面を思い出すように、目を瞑る。
「あの雷の龍は随分、体に負担のかかる技じゃったな? とはいえ、あの若さであれだけの威力を引き出すのはそうはいないがの」
「ぼくと二人のときは、まだ控えめにしてるんです。それでも咄嗟に動くときとか、ぼくのいないところでは、当然のようにとんでも行動するから、気が気じゃないっていうか。……その大会のときだって、裏に引っ込んだ途端、エネルギー切れで倒れて」
雷姫さんが補助しているとはいえ、何もないなんて保証はない。それを彼女は分かっているんだろうか。
いや、分かっててやってるんだろうな。だからこそ、厄介なんだ。ラルの無茶行動は。
彼女を注意したところで、「大丈夫だよ」と笑うばかりだ。確かに、死にそうな場面はないけれど、ヒヤッとする場面は多い。
「自分をもっと大切にしろって言ってるのにな……イグさんやリアさんにも散々言われてるし、親方やギルドのメンバーにも……って、すみません。こんな話ばかり」
いつの間にかぼくの愚痴大会になってしまっている。主にラルのことだけれど。
もちろん、ラルや雫達……仲間や友人の秘密は言っていない。けれど、それ以外の世間話程度のものは適当に話していた。
そもそも、いつの間にかぼくが話すばっかになっていた。初めはルーメンさんの話を聞いていたつもりなのに。
「ん? ワシは構わんぞ♪ ティールのような不満を持つ探検隊や冒険家達の愚痴を聞くことは珍しくない。それに比べれば、ティールの話は若いもんよ」
わ、若い……?
ぼくが不思議そうにしていると、ルーメンさんは声をあげて笑う。
「ワシは二人のバトルや連携なんかを見とらんから、詳しいことは分からんが……ラルの無茶に関しては、なんとなく、理由は分かっとるんじゃないか?」
「ま、まあ、ラルは自分本意じゃなく、他人本意……それは、分かってますけれど」
大会のときも、アリアを勝たせるため、見ている観客を楽しませるための行動だったと推測している。
普段の無茶だって、ぼくを守るためだとか、仲間のためにする。昔から、出会った頃からそうだ。ずぅっと、ラルの根っこは変わらない。
「それをフォローしてやるのが、お主の役割ではないかの」
「……できますかね、ぼくに」
「むしろ、今まで共にいたのは、ティールじゃ。ラルを理解してやれるのは、お主だけだと思うぞい」
難しいことを簡単に言ってくれるなぁ。けど、ぼくは彼女の相棒だもん。やるしかないよね。
「努力してみます」
「うむ♪ まだお主らは発展途上。まだ伸びるチームじゃから、成長した姿が楽しみじゃの~♪」
「あはは。……伝説の冒険家にそこまで言われるのは、光栄ですね」
随分と駒が少なくなった盤上を見て、ルーメンさんは一つ駒を進め、ぼくのナイトを取っていく。
「……ライトはな、王としては優秀なやつじゃ。生真面目で礼儀正しい。民のことも大切に思えるやつで、国民にもそれは伝わっておる。だから、愛されておる……違うかの?」
「それは……その通りだと、思います」
その問いにぼくは声が若干、固くなったと感じつつも、できる限りはっきりと答えた。
高校に上がる少し前、父上と母上と共に社交パーティーに出向いたことがある。そのときの周りの反応や言動からも、父上が王としての信頼と人望が窺えた。だから、ルーメンさんの言っていることは正しいと思う。
「じゃがなぁ……何度も言うたが、ライトは不器用なんじゃよ。父親としてはホ~ント、どうしようもなく、ダメダメな父親じゃよ~」
……ん? あれ。風向きがおかしくなってきたぞ。
「自己主張が低いんじゃよ。ライトのやつめ……全く」
と、大きなため息をついて、お茶を啜る。ぼくの驚きと戸惑いは全く意に介していない様子で話を続ける。
「昔、ここでライトが修行しておったのは昼に話した通りじゃ。そこでの働きぶりも優秀じゃった。腕も立つし、冒険家としても大いに活躍しておったが……如何せん、柔軟性がなくての~? あ、頭の方の柔軟さじゃよ」
「……は、はあ」
「商人というのはな、如何に相手を満足させ、こちらの利益を出せるかどうかを瞬時に判断し、それを行動に移せる人が望ましい……んじゃがの。ライトにはそれができんくての~……よくハルやカズキに怒られておったわい」
ハルさんやカズキさん……? あ、アップルパイの人か。夕飯の前に会った……人族と犬族の二人組かな。
「む? アップルパイ?」
「あ、いえ。こちらの話です。……ですが、あの父が怒られていたんですね。ちょっと、信じられません」
「まあ、カズキの場合、説得力に欠ける。ワシからするとどっこいどっこいじゃよ。……して、ライトが怒られておるのは、意外かの?」
ルーメンさんの問いかけに、ぼくは小さく頷いた。
「ふむ。セイラさんによく叱られとるような気もするがの?」
「確かに母が父に何か言うのは珍しくないですが、叱られているというよりは、注意しているように思います」
「うーむ……言われてみると、そうかもしれんなぁ」
考えるように片手で髭を撫でる。
正直、あの父上が説教されるところなんて想像できない。だって、いつだってきちんとしている人だから。
しかし、ルーメンさんの言っていることも納得はする。父はきっちりしすぎて、融通が利かないのは、母上がよく愚痴っているから。そんな人が商売の交渉なんて向くはずもない。
……誰にでも、得意不得意があるように、父も完璧じゃない……んだろうな。



~あとがき~
もうすぐ200話やん。
けど、まだまだ話しますよ。

次回、ルーメンさんが話す、ブライトの話。
ティールの知る、完璧で優秀な王様の話ではないです。

スカイの結成秘話(?)を軽く載っけました。少し空海とは違う展開となってます。
とはいえ、ティールがラルと出会い、その場で事件に巻き込まれて、ダンジョンに行く……そして、ギルド入門という流れは一緒です。ただ、ティールが冒険バカを表に出してないだけで。すぐに明らかになりますんで、誤差です!
あと、この世界では住み込みしていたわけではなく、最初から通いですね。ティールが一人で住んでいた豪邸(?)にラルを住まわせてます。中学生二人で一軒家住むのヤバイね。まあ、ファンタジーだから許したってーな!

ではでは。