satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第266話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でだらだらしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ルーメンさんに夜にお話ししましょーと提案し、受け入れられたところで終わってまーす。
今回はワンクッション回。ゆるりと楽しんでくれよな~
ラル「正直にまとまりませんでしたと言え」
……ひぇえ。すみません!


《L side》
今晩、話す約束を取り付けた私達は一度、親方部屋を後にする。本当なら、このまま自分達の部屋へと直行したいところだが、如何せん、雷姫をリランに渡したままだ。渡したままというか、奪われたままというか。
「……流石にリランも落ち着いた頃かな。返してくれるかな」
「ちょっと行ってみようか。雫も迎えに行かないとだし」
そだね。雷姫の回収ができなくても、しーくんは迎えに行かないと。
雷姫は……最悪、私が呼び戻せば勝手に帰ってこれるもんね。うん。そういうことにしておこう。
なんてことを考えながら、再びギルドの正面入口へと戻ってきた。そこには別れたときと変わらずの面々がいて、唯一の違いと言えば、リランが静かになっていることだった。
「ありゃ? リラン、寝ちゃったの?」
寝ていても雷姫は離さんとする意思なのか、がっちりホールドした状態である。
私の言葉に、ツバサちゃんが困ったように笑いながら小さく頷いた。
「泣き疲れたのか、さっき、こてんっと寝ちゃいました」
ふぅん……?
そんな状態のリランから抜け出すのは容易いはずだ。それでも大人しくホールドされているのは、リランを思う優しさなのだろう。
「雷姫、ただいま」
『む。マスターか。早うこの駄犬から我を助けよ』
「助けるけどさ。……でも、自力でも何とかなるんじゃないのぉ?」
『ふん。……無論じゃ。だが、下手に刺激して起きてこられても困る。ならば、マスターの帰りを待つ方が得策だと思うただけのこと』
あはは。まあ、そういうことにしておこうかな。
私はリランを起こさぬよう慎重に雷姫を抜き取り、腰へと装備させる。
「さて。一旦、部屋に戻るかな~? しーくんとティールはどうする?」
ツルギ君とセラフィーヌさんに挨拶をしていたらしいティールが私の方を振り返る。そして、少しだけ考える素振りを見せつつも、にこっと笑った。
「ぼくも部屋に戻るよ。着替えたいからね」
「ラルとティールがもどるなら、ボクもいっしょにいく!」
はいはーい。決まりだね。
ツバサちゃん達とは夕食を一緒に取る約束だけして別れ、私達は部屋へと向かう。
いつもの流れで約束してしまったけれど、セラフィーヌさんはよかったのだろうか……? まあ、今更だけど。

部屋に戻って、ベッドにダイブ~……といきたいところだったが、流石にシャワーの一つでも浴びないと気持ち悪い。何せ、今日一日は探検三昧とも言える日だったのだ。敵との戦闘も多かったし、何より洞窟に籠りっぱなしだったから、気持ち的にもさっぱりしたい。
「私、先にシャワー浴びてくる」
「うん。行ってらっしゃい」
着替えを手にバスルームへ。扉を閉めたことを確認して、身に纏っていた探検服を全て脱いだ。
鏡に写る自分をパッと見ても、そこまで目立つ怪我は見当たらなかった。疲労はあれど、痛みもそこまでないし、最後のベヒーモスの咆哮のダメージは問題なさそうか。
「数年前の私だったら、もっと怪我してたんだろなぁ」
普段はあまり実感はないけれど、過去に負けた相手を負かせたというのは、私達が成長している証の一つである。
とはいえ、嫌な思い出には違いないので、ベヒーモス相手は今後もあまりしたくはないのが本音なんだけれど。
浴室へ入り、何の迷いもなくシャワーの栓を捻る。暖かなお湯が体を撫でていき、ほっと一息ついた。
「……はぁ」
とりあえず、今回の依頼の一つはこれでおしまい。まだ女神祭関連が残っているから、手放しに安心はできないが、一応、大きな一つが終わったことによる解放感は感じていた。
……まあ、ミルティアの件は残っているんだけれど。
先程の報告でルーメンさんに明かしていない手札がある。それは、私が『女神の精神体と話した』という事実だ。それを上手く使えば、女神の真実とやらを明かせるのだろうか。
マント男との関係性。女神の罪。その他諸々。
「あはは……とはいえ、明かしていいものなのか微妙な気もするなぁ」
女神本人は親族……ケアルに伝える分には問題なさそうな雰囲気ではあったが。
……そういえば、女神の件以外にもまだ聞いていないことがある。
私達に課せられていただろう、試練についてだ。なぜ、そんなことをしたのか真意を教えてもらっていない。
それに、数いるボス級モンスターの中で、ベヒーモスを選んだ理由も不明なままだ。
……いや、見当がつかないわけではないのだが。あくまで、可能性の一つでしかない。たまたまということもありえなくはない。
しかし、ここまできて、『偶然』の一言で片付けるのも都合がよすぎる。きっと、何らかの理由が存在するはずなのだ。
その辺りも聞けたらいいんだけれど……
「どう話を展開していこう」
気を付けないとルーメンさんのペースに乗せられ、のらりくらりとかわされる可能性がある。本当に、気を付けないと。
はぁ~……やだやだ。口が上手い相手をするのは、神経を使う。しかしまあ、今回は私のペースで、聞きたいことを聞き出してやる。
なんせ、打倒ルーメンさんを胸に依頼を頑張ったのだ。あと少し、頑張らねば。

一時の休息後、いつも通りの時間に夕食を取るべく、食堂へとやってきた。そして、いつもと変わらず、ケアルの双子と合流をする。
ここに来てから、ツバサちゃんとツルギ君とご飯を食べるのが習慣化されているが、よくよく考えて、親であるアルフォースさんと一緒でなくていいんだろうか。今日はセラフィーヌさんもこちらへと帰ってきてるのに……所謂、一家団欒という食事をしなくてもよいのだろうか、と思ってしまうのだ。
ま、その辺に突っ込むのは野暮かもしれない。私に一家団欒なんてものを語れるはずもないのだから。
……いやいや? 別にチームやギルドの皆で食べるご飯もある意味、一家団欒かもしれないけれど……一家、なのか。あれらは?
「ラル? 何、微妙な顔してカレー見てるの? 嫌いなものでもあった?」
「別に。嫌いなものはないけど……」
一家団欒って何だろうね、という問いかけをここで投げるのはあまりにも場違いである。あまり家族と仲良しではない相棒に、家族の話題は微妙過ぎる。一般論として話してくれるとは思うけど、なんか心配されそう。何か、別の話題はなかろうか……
ぐるりと辺りを見回せば、ふととある疑問が浮かぶ。
ここの夕食はバイキング形式で様々な料理が並ぶ。和洋折衷様々な種類の料理を好きなような組み合わせで食べられる……バイキング形式なのだから、そんなものかもしれないけれど。しかし、今夜はそうではないらしい。大して考えてなかったけれど、異様にカレー料理が多い。スタンダードなカレーから、キーマカレーグリーンカレービーフにチキンに色々。
かくいう、しーくんやツバサちゃん、ツルギ君も各々好きなカレーに舌鼓を打っているところである。
「……なんでこうもカレー一色なの?」
「アリアが多種多様の香辛料を持ってきたって話だよ。カズキさん達に聞いた」
……へぇ。
アリアちゃんがどこからギルドのバイキングを賄えるほどの香辛料を手にしてきたかも気になるところだが……それよりも彼の言動で気になったことがある。
ティール、いつの間にカズキさん達と交流を深めてるの。初日、あんなに睨んでたくせに」
次の日にはけろっとしてたとは思うが、それでもカズキさんと親交を深めようとしていたとは知らなかった。
「アップルパイ効果?」
「アップルパイ怖いな!? あのさぁ、もしも私が敵に捕まったとして、交渉の場にアップルパイ持ち出されたらどうするの」
「え……どんな状況だよ、それ。仲間とアップルパイを天秤にかけても、仲間の方が大切だろ」
言い出しっぺの私にも分からん。
「超人気店の限定アップルパイをくれてやるから、リーダーは寄越せ的な……なんかそういう交渉するかもしんないじゃん」
「なるほどね……じゃあ、アップルパイ貰おうかな」
にゃにおう!?
「で、敵が油断している間にラルを助けて、敵は全滅させる。で、いこうかな」
馬鹿馬鹿しい話題ではあるのだが、私よりもアップルパイを先に取るのは何なのだろう。そこだけは気に食わん。
「あの……そこは私を助けてからアップルパイ奪取でもよいのでは?」
「アップルパイって言った方が敵が油断しそうだから」
「……さいですか」
彼は彼なりの理由があった……ということで、いいんだろうか。うん、いいんだよね?
ティール、アップルパイとくらべちゃダメだよ! ラルのほうが、だいじっ!」
どこから話を聞いていたのか、しーくんが膨れっ面でこちらをじっと見つめながら、抗議する。そんなしーくんにティールは「大丈夫。例え話だよ」と楽しそうに笑った。
「本当にそうなったときは真っ直ぐ、ラルを助けるから。安心して、雫」
「むー……やくそくだよ!」
「はい。約束」
いや、アップルパイと私の命を天秤にかける状況なんぞあるわけないけどね?
「敵の人達、ティールさんがアップルパイ好きってどこで知ったんでしょうね?」
「あっはは! そんな奴らに捕まるラル、だっさいな~?」
「ツバサちゃんは真面目に考えなくていいから。ツルギ君は笑いすぎです。実際問題、そんなのに捕まってたまるかぁ!」
……なんて、どうでもいい話に花を咲かせつつ、和気あいあいとした夕食を楽しんだ。
私自ら撒いてしまったとは言え、こうも真剣に考える純粋天使二人には恐れ入りました。



~あとがき~
本当、どうでもいい話ほど、楽しいもんはねぇな!

次回、スカイとルーメンさんによる夜会話
答え合わせの時間よ!

短編というか、超短編みたいな感じで適当に書いた今回の話。覚えていなくていいやつばっかでしたね。えぇ。
次回は真面目に話すと思うんで、箸休め程度に楽しんでいただけたら、幸いです。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第265話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で話す物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回はリランに雷姫奪われたり、いつものようにラルとツルギ君の仲の悪さ(?)が見え隠れしたりでした。
ラル「もっとあったと思うよ。ネロのこととか?」
ネロは今後、どっかに出てくるんすかね……? リランと仲良くできるのか……?
ラル「それは……大して重要ではないかな」
リランに幸あれ。


《L side》
雷姫の件は一件落着……してないけど、したことにして、ルーメンさんのところへ向かおう。さっさと報告して、仮眠取りたい。
「……そうそう。少し、いいかしら?」
ふと、何かを思い出したのかセラフィーヌさんが私達を呼び止める。何か伝え忘れたことでもあるのだろうか?
いや、私達とセラフィーヌさんが会ったのは、ある意味、偶然だ。何かあるとは思えないが……
「今回の探検の件、話は聞いているわ。二人としては、どうだったかしら? 大変だったとは思うんだけれど、楽しめた?」
ふわりと微笑みながら、そう問いかけてきた。
誰から聞いたのやら。誰でもいいけど。
言い淀むティールに代わり、私は肯定の意を込めて頷き、小さく笑う。
「……えぇ。自分達の知らない場所に挑むのはいつだって楽しいです。それに」
この先はどうしようか。言わなくてもいいのだが……いや。言って、みるか。
「それに、今回は色々、分かりましたから」
私の返答に、セラフィーヌさんは満足したように笑った。
「そう。……それなら、よかったわ♪」
よかった、ねぇ?
分かったという部分に関し、何の疑問も抱かなかったように見える。それに、セラフィーヌさんは、かつて、ブライトさんとセイラさんと共に『奇跡の洞窟』へ挑み、二人に秘密を語ったと思われる。つまり、謎を知る人物の一人。
……セラフィーヌさんは、私達がミルティアの謎を知ったと確信を得た。だから、満足そうに笑ったのだろう。
とはいえ、これは私の推察。想像でしかない。だからと言って、本人にこの場でそれを聞けるはずもない。
私はセラフィーヌさんにこれ以上、何かを言うことも問うこともなく、ギルドへと入る。ティールも遅れて私の後を追ってきた。
「……ねぇ、ラル? あの質問はどんな意味があったの?」
「色々あるとは思うよ。思うけど、大部分は単純に感想を聞きたかっただけじゃない?」
「そ、そうなの?」
「多分。……ま、そこまで気にしなくていいよ。大して重要じゃないから」
今、重要なのはルーメンさんに報告する。これだけだ。
はてさて、どう転ぶかな……

さて。
色々ありましたが、『明けの明星』の親方部屋の前まで来ました。
ティール、入る前に少しいい?」
「? なんだい?」
「この報告は簡潔に終わらせる。依頼完了しましたくらいのやつでいこうと思ってる」
「それは構わないけど……女神の話もするんじゃなかったの?」
「それに関しては一応、考えはある。これは、ティールにも協力してもらうけどね?」
「協力? ぼくにできることなんだよね?」
疑うなぁ。できることだよ。安心しろ。
「……分かった。協力する」
ありがと。ってことで、ノックしてくれ~
私の言葉にティールは「なんでだよ」と呟きつつも、素直に従ってくれた。ノックした直後、中から返答があり、そのままティールがドアを開けた。
「失礼します、ルーメンさん」
「おぉ~♪ ティールにラルか! 無事に帰ってきて何よりじゃ! 待っておったぞ。……その様子じゃ、依頼は無事に達成できたかの?」
ユウアちゃんから聞いていそうなものだけれど……わざわざ聞くのは、私達の口からも聞きたいのだろうか。
「ご依頼された品はこちらに」
私はバッグからルーメンさんから渡された袋を取り出す。その袋には言われた通り、女神の涙が入っている。
「そうかそうか。ならば、早速確認しよう。そこに座ってくれるかの?」
ルーメンさんは目の前のソファを指差し、自身は向かいのソファへと腰かけた。
袋はルーメンさんに手渡し、受け取ったルーメンさんは、そのまま中身も確認する。数秒の沈黙の後、満足そうに頷き、私達の方へ向き直る。
「依頼内容通り、奥地にある石……緑色の『女神の涙』を持ってきてくれたようじゃな。助かったぞ、スカイの二人よ♪ あそこはなかなかに大変じゃったろう?」
知ってて送り込んでるくせに~……とは、言わず。
「そうですね。探検の内容の濃さはそれなりにあったと思います」
「そうかそうか。ユウアから報告は受けておったが……二人が怪我なく帰ってきてくれて安心したぞい♪」
怪我なく、か。
この言葉にどこか引っ掛かりを覚えるものの、それを口にはしなかった。今は端的に報告するだけと決めていたし、詳細はまた後で問いただせばいい。……そのときまで私が忘れていなければ、だが。
まあ、報告と言っても、ユウアちゃんがある程度、ルーメンさんに伝えているだろうから、私から言えることも大してないのだが。
とりあえず、簡潔に『奇跡の洞窟』での出来事を話していく。ゴーレムとの戦闘、中間地点での出来事、奥地での戦闘等々……
ちなみに、“時空の叫び”で視た光景の詳細は伏せておいた。あれを話すと長くなりそうだから、こんなのを視ました程度に留めておいた。
「……以上が今回、『奇跡の洞窟』で起こった出来事です。途中、ユウアちゃんのサポートももらいながらの探索となりましたが、よろしかったですか?」
最後の最後で、これに疑問を抱いてしまったのだ。ユウアちゃんからの協力を聞いたときは断る理由がないから受け入れた。だが、それはルーメンさんの試練とやらに関係しているか全く考慮していなかった。
これが仮に誰の力も借りず、二人だけの力を見たかった場合、少々まずかったかも、と思ってしまったのだ。まあ、それに気づいたのは、奥地でベヒーモス型ゴーレムを倒した後だったんだけれど。所謂、後の祭りであった。
だから、ユウアちゃんのサポートは受けてもよかったのかという懸念が今更ながらに出てきてしまったのだが、ルーメンさんはニッコリと笑った。
「大丈夫じゃよ。あそこのダンジョンは下手すると、迷ってしまうからの。ある意味、ユウアの案内を受けるのは必須じゃ。だから、何も問題はない」
なるほど。なら、よかった。
んじゃまあ、依頼の報告はここまでとして、本題に移りますかね。
「ルーメンさん。依頼完了報告とは別にお話ししたいことがあります」
「分かっておるよ。『女神の罪』について、じゃろ?」
……そりゃ、ユウアちゃんから報告受けていれば、それを私が知っているのは把握済みだろう。この話を持ちかけてくるというのは、ある種の必然とも言える。
「ラルよ。お主は今回の依頼より、こちらの方が気になっておるのではないか? 隠しきれてないぞ?」
「……あは。ポーカーフェイスは得意な方なんですけれど。バレました?」
「ふぉふぉふぉ♪ 年寄りは年寄りらしく、いろんなものを見ておるからの~♪ しかし、その話はワシも軽々と話せるもんではない。それに、ワシの仕事はまだ終わっとらんからの。今から話すのはちと厳しい。お主らも帰ってきたばかりで疲れとるだろう?」
「私は問題ないですよ。……と、言えたらよかったんですが、その通りです。それに、雷姫をリランに預けてるので、早々に戻りたいです」
長時間放置なんてしたら、雷姫に殺される。すぐ戻るって言っちゃったもん。確実に殺される。やだ。怖い。
私の言葉で気づいたのか、ルーメンさんははて、と首を傾げる。
「どうりで妖刀の気配を感じんとは思ったが……リランに預けとるのか?」
「それは、まあ、色々ありまして」
ティールが私が雷姫を持っていない理由を簡単に説明してくれた。ルーメンさんは、リランとネロのやり取りを聞いた辺りから、少し呆れた様子で笑う。
「リランもネロも相変わらずじゃの~……そういうことなら、ラルは早く愛刀のところへ戻った方がよかろう。……ティールも今日は疲れたろう? 今晩は無理せず来んでもよいぞ?」
「いえ。ぼくは大丈夫です。それに夜にルーメンさんと話す時間、ぼくは好きなので。よろしければ、今夜もお願いします」
いいなぁ。私も大丈夫です! 元気です!……と、即答できる体力がほしい。
ティールの返答にルーメンさんは嬉しそうに笑い、頷く。
「世辞だとしても、そう言ってもらえるのは嬉しいの~♪」
「まさか! お世辞なんかじゃないですよ!」
……と、いけない。ぼうっとしている暇はなかった。このまま、二人の話が終わる前に割り込まないと、お開きの流れになりそうだ。
「あの、そのことについて、少しよろしいですか?」
「うむ? どうかしたのかな?」
「お邪魔かとは思うんですが、今晩の二人のお話しの時間、私も同席してもよろしいですか?」
この提案に二人はきょとんとする。当然だ。いきなり言い出したのだから。しかし、ティールは入室前の話を思い出したのか、少し合点がいったような表情になる。
「私はこの後、雷姫の回収もありますし、ルーメンさんはお仕事がある。それに、私はともかく、あなたは多忙な方です。後日改めて、先程のお話の続きを……なんてのは、少々難しいのではありませんか?」
「そうじゃの。報告を受けるような短い程度ならまだいいが、それ以上は難しいな」
「分かっています。なので、今日の夜、二人の時間を私にいただけませんか? もちろん、無理にとは言いません。急を要することでもないし、ましてや、仕事終わりのルーメンさんに仕事絡み話をさせるのは少々気は引けるのも事実なので」
曖昧に提案しているものの、私の勘が正しければ、きっと、乗ってくる。私はそう確信していた。
けれど、そうだな。……駄目押しにもう少しだけ、付け加えておこうかな。
「しかし、ルーメンさんは『女神の罪』について、私に話したいのではありませんか? でなければ、女神の秘密が眠るあのダンジョンへ向かわせたりしませんから」
過去を知る手立てのある私を向かわせたりしない。隠したいなら、私を行かせるべきではないのだ。もちろん、私の能力を知らないとは言わせない。愛する孫娘から、信頼する家族から聞いているはずだから。
……さあ、どう出る?
私の予測が正しければ、話すつもりはあるはずだ。今までの会話からも、話してくれる気があると思っている。
でなければ、私が女神を気にしているのを指摘などしない。
私の言葉にルーメンさんは、ピクリと眉を少しだけ上げ、驚いた様子だったが、それも一瞬だった。
すぐにいつもの調子に戻り……いや、戻ったかと思ったが、なぜか豪快に笑い始めた。
大笑いするルーメンさんに今度は私と、ついでにティールが驚く番だった。
「あっはははっ……!! いやぁ、すまんすまん。まさか、ラルからそんな提案をされるとは思わんくてな? 不意打ちを食らってしまったわい♪」
大笑いして思わず出てきた涙を拭いながらも、ルーメンさんは未だに笑い続けていた。
……そこまでおかしかっただろうか。不意打ちをしたつもりはなかったのだけれど。
ひとしきり笑い続けた後、ようやく落ち着いたのか、一呼吸置いて、いつもの表情に戻る。
「そうさな。ラルの言う通り、ワシはラルに……二人に『女神の罪』について、話したいと思うておる。ラルの提案、受け入れさせてもらおう。ティールもそれでよいかの?」
「ぼくは構いません。ラルに協力するって決めてましたから」
「ふむ、そうか。……ならば、今晩、二人でこの部屋に来るといい。待っておるよ」



~あとがき~
二週間程、期間が空いてしまい申し訳ない。完全に投稿し忘れてました(滝汗)

次回、ショートなネタ詰め編。
所謂、箸休めです。お楽しみに。

長かったんで、さらっと終わりましょう。こんなところ読まなくていいです!
体感、スプランドゥールでの夏は半分終わったよなと思ってます。思うだけです。この後、どれだけかかるのかは謎です。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第264話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ギルドに帰ってきたラルとティール。そこで、ツルギ&ツバサ兄妹の母、セラフィーヌさんが登場!
そしてそして、今回もまたギルド出入口付近からスタートです。
ラル「今更だけど、入口で滅茶苦茶騒いでんな、私達」
ティール「本当に今更だな……」


《L side》
リランの声が聞こえた方を見てみると、見知らぬ黒猫がリラン(犬ver.)の顔面に猫パンチ─結構、ガチなやつ─をヒットさせまくっていた。
その猫パンチが効いたのか、リランは黒猫から逃げようと泣きながら走り回る。そんなリランを逃がさんと、黒猫は追いかけ回していた。
……えーっと、何事?
普段なら、リランが追いかけ回す側だと思うんだが、黒猫の方が追いかけている。しかも、そこそこお怒りのご様子で。
そんな黒猫も普通の猫ではなく、尻尾は二股に分かれ、赤い目をしている。目の色はともかく、尻尾が二股になっている以上、普通の猫じゃない、はず。
「あらあら……ネロ~? あまりリランをいじめちゃ駄目でしょう?」
リランと黒猫の喧嘩に気づいたのか、セラフィーヌさんがやんわりと止めに入った。ネロと呼ばれた黒猫は怒りが収まらないのか、リランを追いかけ回すのをやめない。
「ネロ! めーっ!!」
『あー! ねっちゃ、だめよー!』
『りら、いじめちゃ、めー!』
そこにしーくん、スイちゃん、セツちゃんの制止の声を聞いて、ようやく黒猫は大人しくなった。それでも、どこか不機嫌そうではあるが。
また、ネロから解放されたリランは、ツバサちゃんに保護され、事なきを得たようだ。
「リラン、大丈夫? だから、ネロにちょっかい出すのやめなさいって言ってるのに」
「くぅ~ん」
ツバサちゃんの口振りから、どうやらあれはいつもの光景らしい。ツバサちゃんもセラフィーヌさんもそこまで慌てた様子がなかったから、深刻な状況ではないとは思ってはいたが。仮にあれがいつものだとすると、リランも懲りずにネロと言う黒猫に絡んでいることになる。
……リランらしいと言えば、それまでだが。
状況を理解していないのは、私だけではなく、ティールもだ。この場にいる私とティールだけがいまいち、理解できていない。
『ふふん♪ なかなかに愉快な見世物だったぞ。駄犬の癖にやるではないか♪』
うん。雷姫は黙っててね。
「ラルさん達はネロと会うのは初めてですよね? あの黒猫さん、名前はネロって言って、お母さんの精霊なんですよ」
と、リランを落ち着かせたツバサちゃんが説明してくれた。
ふぅん……精霊。精霊?
私と同じ疑問が浮かんだのだろう。ティールも不思議そうに首を傾げていた。
「あの黒猫が、セラフィーヌさんの精霊?」
「うん。母さんが子供の頃から契約してる精霊なんだって」
と、ツルギ君が補足してくれる。
精霊……精霊ねぇ?
セラフィーヌさんはどう見ても、兎族。系統は炎と光属性を得意とするピンク色。……普通、黒猫の精霊と契約なんてなさそうだが。
「ふふ♪ 実はね、ネロは元々、野良精霊だったのよ?」
セラフィーヌさんがネロに目線を送りつつ、ふわりと笑う。そんな視線に興味はないのか、ネロは呑気に欠伸をしながらギルドの扉付近で丸くなっていた。
野良精霊……なるほどね。
自然界で生まれた精霊のことだよね?
「うわ! ラルにしてはよく覚えてたね……?」
なんだ、うわって。うわって。
「精霊は基本、魔法使用者の“召喚魔法”によって作り出されたり、呼び出されたりするわ。けれど、野良精霊は言葉通り、自然に生まれた、主のいない精霊なの」
「原理は魔力石とほぼ同じですよね。空気中の魔素が結晶化したものが魔力石となり、魔力となり、自我が芽生えたものが精霊へと変わる……でしたよね?」
「えぇ。ほとんどの場合、魔力石となるから、野良精霊の存在自体、滅多に見かけないんだけれどね。……それにしても、ティールくん。よく勉強しているのね~♪ 流石ね」
「え! あ、いえ! そんなことは。この前のテスト範囲で……あ、だから、君も覚えててんだ?」
ギリギリな。
「誇るな。そのまま覚え続けて」
……善処しまーす。
まあ、すんなり野良精霊なんて言葉が出てきたのは、『奇跡の洞窟』でゴーレムを見たせいでもあるのだが。……言わなくていいか。
「ネロの話はとりあえずここまでにして……リランと喧嘩しちゃってた理由を話しましょう」
あぁ、そっちが本題か。
とはいえ、あれを見れば、リランはネロに嫌われてるんだろうなって予測はつく。単に相性の問題なのか、何か原因があるかは分からないが。
「ネロと仲良くないから、リランはいっつもネロに攻撃されちゃうんです。でも、リランは仲良くしたいみたいで、それでネロにちょっかいを」
あはは……それは難儀な。
「私達にとっては日常茶飯事なんですけど……もう。リランも諦め悪いね~?」
「くぅん……」
ツバサちゃんの慰めにも悲しそうに鳴くリラン。これもまた、日常茶飯事なのだろうか。
リランはギルドの扉付近で丸くなっているネロをじぃっと見つめてる。が、当のネロは全く興味がないのかそっぽ向いたままで、相手にしようとしない。
「あう~ん……」
「あらまあ……こんなリラン、初めて見るわ」
『はんっ! 我を雑に扱う報いよ。良い仕置きになるだろうて』
雷姫を雑に扱うのと、ネロとの仲の悪さは別物でしょ。仕置きになってるか怪しい気もするし。……けど、雷姫がいいなら、いいか。
「! わふっ!!」
え? うわっ!?
雷姫の声が聞こえていたのか、リランが突然、私に……正確には、私の腰にぶら下がっていた雷姫に向かって突撃してきた。そして、気づいたときには、雷姫はリランの手の中……基、口の中であった。
『マスター!!』
「ご、ごめん。そんな簡単に外れるような装備じゃないはずなんだけど……おっかしいな?」
雷姫を咥えたリランは私達から少し離れたところで、雷姫を包み込むようにくるりと丸くなる。そして、甘えるように雷姫に擦り寄った。
「わふーーん!」
『勝手にマスターから引き剥がした挙げ句、慰めろだと!? なぜ、我がそのようなことをしなければならんのだ!』
「くぅーーん!」
『人の話を聞かんか! そのような性格だから、あの黒猫にも嫌われるのではないか!? 人の迷惑を理解をしろ、駄犬めが!』
……なんだかんだ言いつつ、リランの面倒見ている雷姫って優しいよね。なんにもなさそうなので、放置しよう。いつものいつもの。
「……そういえば、二人はダンジョンからの帰りだったわね。これから、お父様……親方に報告へ行くのかしら?」
セラフィーヌさんもなかなかのスルースキルをお持ちなようで、リランと雷姫は意にも介さず、話しかけてくる。
「そのつもりです」
「そう。この時間なら……親方の仕事も一旦落ち着く頃かしらね。きっと、今から行っても大丈夫だと思うわ」
「本当ですか? では、そうします。……ラル、行こっか? あ、雷姫さんは」
「うーん、と……雷姫は~」
……本当は放置はよくないけど、あのリランから取り返すのは難しいし、何より、かわいそうだ。不用意に触らなければ、問題はないはず。
「……リランが振り回しているわけじゃないから、置いていく。ルーメンさんの報告もそこまで長話にもならないと思うからね。ってことだから、しーくん」
「ん!」
「雷姫が誰かに触られないよう、見ててくれるかな? お願いできる?」
「はーいっ! まかせて~!」
幼いしーくんに頼んでしまっていいのかと思うかもしれないけれど、流石の雷姫もしーくん相手に全力の電撃反発はしない。というか、反発を受けているところを見たことがない。多分、それはしーくんが雷姫と近いからだと思う。フォース君と雷姫の仲が滅茶苦茶悪くても、反発しないのと同じ原理で。
まあ、フォース君と雷姫は喧嘩するほどなんとやらって方かもしれないけども。
「ってことだから、ツバサちゃんとツルギ君も触らないようにしてね~」
「はい!」
「えー? そんなに危ないの? あの妖刀」
疑い深いなぁ……信用しないなら、雷姫に吹っ飛ばされても知らないけど。
ツルギ君の様子を見たティールが苦笑を浮かべつつ、ツルギ君の方を見た。
「危ないよ。ぼくも一回触ったことあるけど、大変だったんだよ?」
「そうなの!? じゃあ、触らない!」
……なんか、納得いかない。
「まあまあ。これでツルギも触らないだろうから、いいだろ?」
納得いかない!!
いかないが、まあ、いい。今はルーメンさんへ報告するのが優先だ。
「雷姫! 少しの間、リランの相手、してあげて? すぐ戻るから」
『なっ!? マスター、我を置いていくのか! この駄犬に我を任せると言うのか!!』
「違う違う。雷姫にリランを任せるの」
『マスター!?』
雷姫の悲痛な叫びに私は微笑みを返すのみに留める。
どんな言い方をしてもこの場に雷姫を放置するのは変わらないし、リランに託しているのも変わらないのだ。まあ、なんだ。私に言えるのは、一つだけだろう。
健闘を祈るよ、雷姫!



~あとがき~
わちゃわちゃしている方が書きやすい。

次回、スカイとルーメンと報告の話。

小説書くの、下手くそになってないかと疑い始めている今日この頃。なぜかって?
ここのあとがきのネタが出てこないからだよっ!!
まあ、それはさておき。
初登場の精霊、ネロがいました。
相方曰く、黒猫で猫又な精霊だそうな。それを聞いて、精霊よりも妖怪に近い気がしたのは気のせいだろうか……(笑)
どうでもいいけど、精霊がいっぱいいますね。ネロ、リラン、ユウア、クルス、ソイル、クーちゃん、ノワール、ふわ……くらいか。現状、名前があって出てきてる子は。忘れてる子がいたら申し訳ね!
精霊だけで何か書けそうなくらいいっぱいいるわ。ひえ~

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第263話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、『奇跡の洞窟』を見事、踏破したスカイの二人。のんびり帰宅中です。
長かったなぁ……ダンジョン探検……
探検は終わりましたが、奇跡の洞窟編はもう少し続きます。お付き合いくださると幸いです!


《L side》
ティールの計らいによって、短時間ではあるが休憩を挟んだ私は、幾分か元気を取り戻した。どれくらい元気かって言うと、とりあえず、真っ直ぐ歩けるくらいには回復しました。はい。
それでも、もう少し寝て回復したいところではあるけれど、それは部屋に戻ってからでも問題はないだろう。
そんなこんなで、色々ありつつも、無事にスプランドゥールへ戻ってきたわけで。
「とーちゃくっすね~……色々、お疲れ様です。お互いに」
「だね。まあ、ぼく的には初めての場所だったから、結構楽しかったよ」
ほう。幽霊云々のくだりも含めて楽しかったと。
「……そこだけは楽しくなかった」
「あっはは! そっかそっか。けど、安心してよ。なんにもいないから!」
さて、と。探検は無事に終了。頼まれた依頼もクリア。……今回の仕事、現段階では最低限の条件を満たしている。
残るは今回手にした情報をどうするかである。ユウアちゃんから報告されているだろうから、ルーメンさんに報告しないわけにもいかない。そして、この情報を使って、ルーメンさんから残された謎を聞き出さなければならない。
ミルティアのこと、試練のこと、その他諸々を。
個人手に口は立つ方だと自負している。だから、相手から情報を聞き出すのは得意だ。が、ルーメンさんはあまり相手にしたくない。のらりくらりとかわされそうで、上手いこと論点をずらされそうで、やりにくそうだから。
とはいえ、今回得た情報はルーメンさんと戦うためにはいい武器だとは思う。話していないこともあるにはあるし……なんとかなる……と、思いたい。いや、なんとかするしかない。
「ルーメンさんからあれこれ聞き出せるといいんだけど……どうなるかなぁ」
「それは君に任せるよ。ぼくじゃ力になれそうにないからさ」
「うん。任されました~」
「あっ! ラル! ティール!」
ギルド前に到着してすぐ、しーくんが笑顔で私達のところへと駆け寄ってきた。私がしゃがみ、手を広げると何の迷いもなく、私の懐へと飛び込んでくる。
「しーくん! たっだいまー!」
「ただいま。雫」
「おかえりなさいっ!」
はぁぁぁ~……癒されるぅ~♪ うちの子、滅茶苦茶可愛くないですか?? これだけで疲れなんて吹き飛んでしまうよ。しーくんが栄養ドリンク代わりだよぉ~♪
「ラルさーん! ティールさーん! お帰りなさい!」
ティール、おかえり!!」
しーくんと共にギルドの入口で遊んでいたのだろうか。ツバサちゃんとツルギ君もしーくんに少し遅れつつも、私達を出迎えてくれた。ツバサちゃんは私の方へ、ツルギ君はティールの方へと駆け寄ってくる。
ツバサちゃんもしーくんに負けず劣らず、さいっこうの笑顔である。
「お仕事、お疲れ様です。ラルさんっ♪」
「ありがと、ツバサちゃん。……お疲れついでにお願い事してもいいかな」
「はい。私にできることなら」
「ぎゅっとしてもいいっすか。もふもふしてもいいっすかっ!!」
「! もちろんです♪」
私の要望を笑顔で受け入れてくれたツバサちゃんは、何の躊躇いもなく、私の腕の中へ。
天使二人が私を抱き締めてくれているなんて……ここは天国だろうか。私は今、死ぬのだろうか。やばい。死んでもいいです……!
「どうせなら、ツルギ君もこっち来てくれてもいいんだよぉ?」
お出迎えのお礼なのか、ティールになでなでされてご満悦のツルギ君に問いかけてみる。まあ、彼からの返答は反応も含めて、予想できているのだが。
「ぜぇぇ~………ったいに、やだ! ラル、さりげなく僕のしっぽ、触ろうとするんだもん!」
案の定、目をつり上げ、猛反発。うん、知ってたけど。ここまで、予想通りの反応されるのもなんか面白い。
いや、しかし、しっぽを触る? んなことした覚え……いや、一回あるか。いつものようにツルギ君が私に勝負を挑んできたとき。
「ラル。それは犯罪チックだよ? ツバサには許可取ってるから、流してたけど……嫌がる相手にそれはないんじゃない?」
「待て待て待て!!?? 事故だ! ツルギ君のあれは事故だって!」
触ろうと思って触ってないのだから、ノーカウントだ。触ろうとした覚えはない。故意に触るなら、本人の許可くらい取るぞ。嫌がらせでもない限り。
しかし、ツルギ君は疑いの目を私に向け、ムスッとした表情を浮かべたままだ。そして、ティールの影に隠れる。
「……信用できない」
「だってさ。諦めたら?」
ツルギ君が私に抱きついてくるのは予測していないので、それはいい。それはいいのだが……
なんで、私がこんな惨めな思いをしてるんだよっ!! あれは! 事故だってば!! そこだけは認めてくれよっ!?
「べぇーっだ! しーらないっ!」
「ツルギ君!? 流石に知らないはないんじゃないな!?」
「……ふふっ♪ すっかり、仲良しさんなのね」
……? 誰?
声のした方を見てみると、とある女性が楽しそうに微笑んでいた。そして、その女性を見た私とティールは呆然とした。
涼しげな水色に紺色のスカートの漢服に身を包んだその人は、ツルギ君とツバサちゃんの母親であり、私達の通うレイディアント学園祭の理事長……セラフィーヌ・ケアル、その人であったからだ。
普段の格好とは違うものの、突然の理事長の登場に動揺しないわけがない。私とティールは、並んで背筋を正した。
……いや、別に学校ではないのだから、こう畏まる必要もないとは思うのだが、反射って恐ろしい。
「ちょ、ラル……どうしたらいい? どうしたらいいの、これ!?」
「知らないよ……! なんでこんなところに理事長がい……ても、おかしくないのか」
『明けの明星』はルーメンさんのギルドであり、居住区。そして、ルーメンさんは理事長の父親。つまり、ここは理事長にとって、生家……実家だ。
「夏休み中だし、実家に帰省しても変じゃないよね。理事長がいても、いいんだよ。変なところなんもないわ」
「…………あ、確かに。なんで、そんな当たり前のこと忘れて慌ててんだ、ぼくら」
ルーメンさんが濃すぎるんだよ。ルーメンさんが悪い。
「んな無茶苦茶な責任転嫁ある?」
うっせ。
「あらあら♪ 大丈夫かしら?」
相変わらず、楽しそうに微笑んでいた理事長が問いかける。私とティールは黙って何度も頷いた。
「そう? あぁ……遅くなったけれど、二人とも、お帰りなさい♪」
「……た、ただいま戻り、ました?」
戸惑いつつ、ティールが返答する。彼が返答したので、私は黙ることにした。
いや、だって、どう返答していいのか分からん! 分からんて!!
えぇい! 分からんついでに質問してしまえ!
「……あの、理事長……いや、外だから、セラフィーヌさんの方がいいのかな。……なぜ、外で出迎えを? それとも、たまたま戻ってきたところに出会しただけですか?」
「実は丁度、向こうでの仕事をある程度終わらせてこっちに戻ってきたの。そうしたら、ここの出入口であなた達の帰りを待つツバサ達に会ってね。それなら、私も一緒に待とうかな~って♪」
「待とうかな!? そんな軽いノリでぼくらを出迎えてくれたんですか?」
「えぇ。便乗しちゃった♪」
しちゃった……!?
理事長って、こんな人だったか?
私はそこまで顔を会わせていないが、少なくともこんなお茶目な印象はなかった。うちの親方でもあるまいし……
私の視線に気づいたのか、セラフィーヌさんが人差し指を口にあて、小さく笑う。
「私にもオンとオフの切り替えがあるってことですよ」
あぁ、これは理事長の雰囲気そのものだ。
そりゃ、誰にでも仕事とプライベートの切り替えくらいする。セラフィーヌさんもそれに当てはまる人ってだけだ。
「……みたいですね」
「うふふ。納得してくれてよかった♪」
『おわぁぁぁ!!!』
『ふぃー! おひさしなのだー!!』
突然、聖剣二人の声が響き、剣から液体と冷気へと変化。同時にティールの顔がさっと青ざめる。
「ばっ……! また、お前らはっ!」
「あらあら。すっちゃん、せっちゃん~♪ 久し振りね~♪」
うん。もう、ここ数日で見慣れたよ。
ダンジョン内で、二人はセラフィーヌさんと顔見知りだって言っていた。今更、驚きはしない。ティールは勝手に飛び出したことにヒヤッとしているだけだろう。
「キャン! キャン!」
デジャブ光景をぼんやり見ていると、どこからか犬の鳴き声が聞こえてくる。そして、動物の威嚇と思われる声も聞こえてきた。
……犬の方はリランだろう。が、威嚇の主は誰だ?



~あとがき~
ほのぼのが! 帰ってきた!!

次回、リランと威嚇の主の話。

戦わなくていいって楽でいいですね←
最近、学パロと銘打っているのに、学パロしてなくて詐欺だなと思い始める私です。いや、夏休みに冒険してると考えれば十分学生なのかもしれん。しかし、こいつらの夏休みはどこで終わりを迎えるんだろうか……?

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第262話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で思案してる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ようやく、最終目的である石の採取をしました! ようやく!!
今回で終わればいいなって思ってます。
うん。無理な気しかしない。


《Te side》
ラルが楽しそうに女神の涙を選別している横で、一足先に回収を終えたぼくはボーッと休憩していた。
度重なるゴーレムとの戦闘、最終地点でベヒーモスを模したゴーレム二体との戦闘、道中で何度も使用した能力……今回の探検はラルの負担がいつも以上に大きかったと思う。戦闘面は同年代と比べてもトップクラスの彼女だけど、体力面は怪しいところなので、多分、限界越えてると思うんだけどなぁ……
「なんであんなに元気なんだろ」
楽しいことを目の前にして、体に限界なんてないんだろうか。疲れが吹っ飛んだ状態なんだろうか。……それ、危なくない?
『だいじょぶなのら。そのための、てぃーだよ!』
スイの言葉に苦笑しか出てこない。いやまあ、ぼくは平気だから、別に構わないんだけどさ。
深夜テンション的なやつかな。それとも、ランナーズハイ的なやつ?
「お待たせ! 終わったよ」
「あぁ、うん。お疲れ様」
「これで、ルーメン様からのご依頼は達成ですね! おめでとうございまーす!」
と、ラルの隣で飛んでいたユウアが自分のことのように嬉しそうにしていた。
「ユウアも色々とありがとう。ここまで、案内や説明までしてくれて」
「いえいえ! これが私のお仕事ですので、お気になさらず」
「……あ」
ユウアを横目で見ていたラルが何か気づいたみたいだったが、即自己解決したらしい。ぼくは首を傾げるも、彼女は「なんでもない」と返すだけだ。
「帰ろっか。名残惜しい気もするけど、仕事は終わったし」
「うん。それに早く帰らないと雫達が心配するかもね」
なんでもない一言のつもりだったのだが、ラルの表情を見て後悔した。完全に病気を発症させてしまった、と。
「はうぅ……しーくんに心配はかけさせたくないっ! ないけど、不安そうな顔で待ってくれてるのもある意味……可愛いし、健気でありかもしれないっ! 少しだけ影ながら観察したい……!」
はいはい。帰りますよ、リーダー?
ラルが拗らせる前にさっさと帰ろう。じゃないと、雫大好き病が悪化してしまう。
「では、私とはここでお別れですね。お二人ともお気をつけてお帰りくださいね」
「うん。ありがとう、ユウア」
ユウアに見送られる中、ぼくらの帰りを待っているであろう雫の妄想で忙しいラルを引っ張りながら、『奇跡の洞窟』を後にした。
仕事モードから普段モードに移行してしまったラルは本当に大丈夫なんだろうか。
仕事モード……真面目モードとも言うけど、そのときのラルは何があっても、しゃんとしている。どんなにフラフラでも、安全地帯までは自分の足で歩くし、危なっかしくも戦闘もする。本人曰く、緊張の糸を保っているから、最低限の自衛はできるとのことらしい。
けれど、奥地できゃっきゃしてたし、テンションもいつものラルに戻ってしまっている気がする。そんな状態からまた真面目モードになれるのかどうか……
「ラル、ダンジョンの鍵を警備員さんに返さないとだよね? そこまで歩けそう?」
「ん~……正直言っていい?」
「そう言うってことは、大体予想できるけど……どうぞ」
「ギルド戻るまで……ホテルの部屋に戻るまで頑張りますって言いたいところだけど、無理。しんどい」
うん。そう言うと思いましたよ。
ふにゃふにゃっとその場に座り込んでしまうラルに寄り添うようにぼくもしゃがむ。
「奥地ではしゃぐからじゃないの? 戦闘中に言ってた余力はどこ行ったのさ」
「どこ行ったんだろうねぇ~……最後の“時空の叫び”が持ってったかなぁ。色々と」
あぁ、これは完全な作り笑いだ。結構、無理してるな。
「バッジの機能で先に帰ってもいいよ。鍵の返却も、ルーメンさんの報告もぼくがやるからさ」
「ん……鍵はともかく、報告は私がしたいんだよね。それに、しーくん達に心配はかけたくないかな。可能性としては微妙だけど、ツルギ君に会う場合もあるから、この姿は見せたくない」
ツルギの件に関しては、知るかって感じだけど……報告はラルがするって言うなら、何か考えがあるのかもしれない。それなら、別の案を提案するか。
「じゃ、途中までおぶって帰ろうか? あ、抱っこでもいいけど」
「……え」
「流石にこっから街まで徒歩帰宅はあれだから、警備員さんのところまで、のんびり歩いて行くよ。それなら、少しの間だけど休めるでしょ?」
「それはそうだけど……でも、ティールが大変じゃない?」
「今更、そこを気にする? 大丈夫だよ。ぼくは君と違ってまだ元気だから」
ラル程動き回ってもないし、ダメージも受けていない。そもそも、ぼくと彼女とでは体力差もある。
「……んじゃあ、お言葉に甘える」
うん、了解。
ぼくはラルを背負い、のんびりと歩き始める。程無くして、小さな寝息が聞こえ始め、完全に力尽きたんだなと悟った。とは言え、何かあればすぐに起きてくるくらいはするだろう。一応、ダンジョン近くなのだし、何かしらの敵が出てこないとも限らない。
「ほんと、この一日でよく頑張ったよ」
ラルからすれば、当たり前のことをしている感覚なのだろう。それでも、能力を連発させるわ、予定外のボス戦攻略させられるわ、ルーメンさんからの試練させられらるわで、いつもの仕事とは別要素も多かった。それに対処しつつ、通常業務も行っていたのだから、本当に凄いなって思う。
……試練と言えば。
ユウアは、戦闘面は合格を貰えたけれど、他項目は言及していなかった。それについては、ルーメンさんからあるのだろうか?
そもそも、どんな一面を見られているかも曖昧なままだったな。ラルはミルティアの情報をどうするか見られてるかもとか、“時空の叫び”がどこまで通用するのか見られてるのかもとか言っていたけれど。
前者の場合、ラルに全面的に任せてしまえば問題はないだろう。どこまで開示するのか、扱いに関しては彼女の得意分野だ。
後者の場合、ルーメンさんの期待するところまで視れていないと合格とはならないだろう。そもそも、ラルの能力を試して何になるんだろう?
更に何かをさせたい?
“時空の叫び”の詳細を確認したかった?
……或いはもっと別の何かがあるんだろうか。……分からないな。
第一、ルーメンさんの試練に全て合格したら、何があるんだろう?
単にぼくらの実力を知りたいから、試練なんて言葉を用いているだけなんだろうか。それなら、特に何も問題はなさそうだが。
いやいや。ぼくらの実力を知るためだけにこんな大がかりなことをするか? 普通。
絶対、目的があるはずだ。試練をさせる目的が。
ギルドで試練というと、入門試験や、卒業試験。遠征等の特定の仕事をさせるためのテストなんかを思い浮かべる。
でも、ぼくらは『明けの明星』のメンバーではないし、ルーメンさんがそういうことをする意味はないよな……?
うーん……ラルはその辺、見当がついているんだろうか。いや、検討をつけるにしても、情報がなさすぎる、かな? 流石のラルでも、確証を持ってこれだってのは、考えてなさそうだ。
ま、なんにせよ、こういうことはラルに任せるしかない。それに、どんな結果になろうと、ぼくはラルに従うだけだ。
脈絡もなくあれこれ考えていると、目的地である警備員のいるところへ辿り着いた。
軽く挨拶を交わし、鍵を返却。あとは、適当なところでラルを起こして、街へと戻るだけだ。
……なんだか、色々あった一日だ。これほど、濃厚な一日も早々ないだろう。しかし、そんな一日もまだ、終わりそうにないのだけれど。



~あとがき~
ティールは今回のことをどう考えてたのかなーと思ってつらつら書きました。まとめりのない文章で申し訳ねぇ……!

次回、ギルドに戻った二人を待っていたのは……?

ちょいちょいルーメンさんの目的みたいなのを考えさせてます。私が忘れないためってのが一番なんですが、それだけ気にしてるってことでもあるんすよね。
まあ、繰り返し考えなくてもええやんって気もしますがね!←

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第261話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、謎空間でラルとミルティアさんが会話するという展開になりました!
いやぁ、びっくりびっくり。
また、があるんですかね?
あるなら、いつになることやら……(汗)


《L side》
「──ま………ってえぇぇっ!!??」
「っくぅ……ったぁぁぁ!!」
「あ、あわ……だ、大丈夫ですか~? ラル様、ティール様……?」
現実に戻ってきた私に待ち受けていたのは、ティールとの衝突事故でした……
私といたしましては、強風と共に離れていくミルティアに手を伸ばし、追いかけたつもりでしたが、それは叶わず。その代わり、寝かされていた私を覗き込んでいたらしい相棒に頭突きする羽目に。
く、くそぅ……なんだって、寝かされてたんだ? しかも、本日二度目の相棒(男)による膝枕をされるなんて……なんたる屈辱……!
「きゅ、急に起き上がるなよ! 危ないだろ!?」
「知るか!! つーか、なんつー頭してんだよ!? 馬鹿なの! 石頭なの!?」
「突っ込んできたの、君じゃないか……痛いのは、ぼくも同じだよ。ってか、馬鹿とか関係なくない? それに、いきなり罵倒はないんじゃないの? こっちは心配してたのにさ」
「心配?」
「突然、ふらっと倒れたら心配するだろ。今日だけで何度も使ってるわけだし、それに今回はなかなか戻ってこないから、余計にね」
「……それは、ごめんだけど」
「だけどぉ?」
「……いえ。ごめんなさいでした」
ここで更に反発したら、倍の小言が返ってくる予感がした。それは駄目。いつもなら、そういうノリも嫌いじゃないけど、今は面倒臭い。
「よろしい。……で、真面目な話、大丈夫?」
「うん、大丈夫。……ユウアちゃんにも心配かけちゃったかな。ごめんね?」
「いえ! ラル様がお元気ならよいのです♪」
……さっきの。さっきのは、何だったんだろう。
“時空の叫び”で視たのは、ここまでの道中で視てきたものの続きだと思う。ミルティアとマント男……アルマとの会話風景。これからの相談というか、予定というか……ミルティアがいろんなものを、人を守るために何をするつもりだったのか、そういう話だった。
そして、その後のミルティア自身の干渉。あれは、私の能力ではない。まさかとは思うが、ミルティアの思いを視た、とでも言うのだろうか。
いや、それはない。それにしては、きちんと意志疎通できていた。あのミルティアだって、花に残る思いと魔力が原因だと語っていた。つまり、花に残るミルティアの意思が……魂が私と会話したとでも言うのだろうか。
あの場ではなんとなく、押し切られたというか、考える余裕がなかったが……
あり得るのか? そんなことが。
いや、実際にあり得たのだ。そこに何かしらの原因があったとして、それが理解できなくとも、起きたのだ。いないはずの女神に出逢ったのだ。
それはそれとして、納得するしかない。
で、そのミルティアは私に頼みごとをした。
伝言……「ウィルくんに私は幸せだったよと伝えてくれ」か。
そう言ってほしいということは、生前─という言い方が正しいかは不明だが─それを伝えられなかった、のだろうか。
ウィルさんはミルティアの幸福を案じていた? なぜ?
ウィルさんから見て、ミルティアは幸せに見えなかった? その割に、ミルティアには、子供いたり、愛し合える相手もいたわけだが……それでもなお、幸せだったと言わなければならない、のだろうか。
……私の知る情報だけで推測するなら、ウィルさんがそう思った原因は、ミルティアが自らの命を捧げる決断をしたから?
それをウィルさんが案じていた?
……うぅん? なんか、違うような気がする。しっくりこないというか、なんというか。
それに、その後の言葉。お願いの内容だ。転生体とこれからも仲良くしてほしい? 転生体という言葉も不明だが、「これからも」という言葉。つまり、今も仲良くしてるから、今後もそのままでよろしくという意味だろう。
そうなると、私は、既にミルティアの転生体とやらと交流がある?
それは、誰なのだろう。
容姿だけで決めるなら、ツバサちゃんだ。容姿だけで決めるなら、だが。
しかし、理由が似ていたからでは……根拠としては弱い。なんせ、ケアル家はミルティアの直系の子孫である可能性が高い。回り回って、ミルティアそっくりの子孫が産まれてもおかしな話ではないと思う。……確率はあれだけど。
転生体がミルティアの関係者だとして、私と仲良くしていたのは、ルーメンさん、理事長、双子の四名。……ルーメンさんや理事長を仲良くしていた部類に入れていいかは謎だ。
こう考えると、可能性が高いのはやはり、ツバサちゃんか……?
……まあ、これからも仲良くなのだから、今更、何かを変える必要はないか。
伝言の件といい、お願いの件といい……今の私ではどうすることもできない。ウィルさんと会う約束はしばらくないんだし、転生体に関しても予想はできても、確証はできないのだ。今まで通りにするしかない。
「ラル? ねぇ、ラルってば」
「……ん?」
「ボーッとしてるけど、本当に大丈夫?」
「ん。大丈夫。考え事してただけだから。……いい加減、仕事しよっか。緑の石の採取……の前に、“時空の叫び”で視たやつの共有が先か」
ミルティアとアルマの会話をかいつまんで話していく。そして、その後のミルティアとの会話に関しては、話さなかった。別に能力で視たわけではないし、伝える必要はないと思ったからだ。
少なくとも、ユウアちゃんには、だ。
「なるほどなるほど~……共有、ありがとうございます! ラル様!」
「どういたしまして。……じゃ、今度こそ、採取始めよっか。ねぇ、ユウアちゃん。これ、採取方法とかある?」
ただの水晶の花は軽く力を入れただけでも、簡単に壊れてしまう程、脆かった。流石に女神の涙はそこまで脆くはないとは思うが、普通の花や鉱石類とは訳が違う。
「そうですね~……花の根本を折って回収してくだされば、割れる心配はないかと思います!」
「花の根本ね。ルーメンさんからもらった袋に入れてくかぁ~……ティール、緑多めでたまーに他の色も混ぜてく的な採取でよろしく」
「了解」
二人で手分けして回収した方が早いだろう。どれくらい回収したらいいかは……ユウアちゃんに確認を取りながらでいいか。
「そうだ。ラル様」
「ん~?」
「ルーメン様に依頼された採取とは別件で、ラル様達も持ち帰っていただいても構いませんよ。報酬の一部ってことで」
「……マジで?」
「はいっ♪ 過剰に採られるのは流石によくないですが、少しなら問題ありませんので」
ふむふむ。……そういうことなら、予定変更!
ティールは依頼された分を回収よろしく。私は自分ら用のやつ、吟味するんで!」
「えっ!? それ、サボりでは」
「人聞きが悪い! 持って帰れるなら、いいやつ持ち帰りたいじゃん!? 必要な行為だよ! はい! よろしく!」
「……なんか、ズルくない? いや、いいけどさ」
いやぁ~……持って帰りたいとは思ってたけど、まさか叶うとは思わなかったね! やばい! ここに来て、一番楽しいかもしんない!!
ティールが黙々と仕事をする横で、私はウキウキ気分でお持ち帰り(自分)用の『女神の涙』を選別していく。
できるなら、全種類が欲しいけれど、それは流石に駄目だろう。なら、数種類の色をいただいていこう。しかし、どの色がいいだろうか?
スタンダードな白は決まりとして、他の色は……うーん。悩むな。
「ラル様、ここに来てすごく楽しそうにしてますね?」
「あぁなったら、しばらくは自分の世界に入り込むよ。つまり、ユウアがラルの変なスイッチ押したってことだね」
「あ、あはは~♪」
という、ティール達の会話はガン無視である。答える必要がないからだが。
本来なら、十数分で終わるであろう採取だが、倍以上の数十分かけて採取した。理由は……まあ、言わなくても分かるだろう。
例えるなら、女の子の買い物は長い。……そういうことだよ!



~あとがき~
お、洞窟編の終わりが見えてきた!

次回、ティール視点でのんびり帰宅。

特に言いたいことはないな……
前回も言いましたが、明らかになっていない項目については追々とって感じだと思われるので、もう少々お待ちを。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第260話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界での物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、奥地に咲く女神の涙に触れ、能力を発動させたラル。ミルティアとマント男改め、アルマとのきゃっきゃうふふを見ました。
ラル「シリアス雰囲気だったんだから、きゃっきゃうふふとか言うな!!」
最後の方、きゃっきゃしとったやん?
ってなわけで、そんなきゃっきゃうふふの続き~……ではないですが、そんな後の続きです。
ラル「きゃっきゃうふふ言いたいだけでは」


《L side》
背後から聞こえてきた謎の言葉にハッと意識が覚醒し、無意識に回避行動を取っていた。
距離を取って振り返ると、目の前に広がっていた光景はなくなり、真っ暗な空間にぽつりと佇む、一人の女性。
先程まで、アルマと共にいたはずの女性。
女神、ミルティアがそこにいた。そして、彼女は私に話しかけてきた?
「……な、んだこれ」
“時空の叫び”は過去や未来の映像を視る能力。そこに出てくる人物が、私に干渉するなんてあり得ない。こんなことはあり得ない……はずなのに。
なぜ、私に話しかけた?
いや、そうじゃない。なぜ、私に話しかけられた?
ここはどこだ。過去でも未来でもない。
私の夢? 私の精神世界?
或いは、ミルティアの精神世界?
仮に私の夢なら、精神世界なら……
本来ならあるはずの所に手を伸ばす。そして、強く念じてみる。私の愛刀、雷姫があると、強く念じた。
すると、慣れた感触が手のひらに伝わってきた。声は聞こえないけれど、雷姫は私の手の中に収まっている。
なら、一応の対抗策はあるってことか。
ミルティアから視線は外さず、雷姫を構える。そんな私を見て、ミルティアは小さく笑った。
「ふふ……ごめんなさい。そこまで驚かせるつもりはなかったの」
また、話しかけてきた。
ミルティアは“時空の叫び”で視たものと変わらない笑顔を見せる。
「はじめまして、人の子さん。私はミルティア。他には『癒しの女神』とも呼ばれています」
……知ってるけど。さっきまで色々視てきたし。
だからと言って、警戒を解いていいとは思えなかった。こんなこと初めてで、何があるか分からない。
ここで私の力がどこまで通じるかも怪しいところだが。そもそも、女神に対して、抵抗できるのかも怪しい。ミルティアの戦闘力やんて知らないが、癒しの女神とは言っても、神様だ。……私の人生、終わったかもしれない。
「う~ん……そこまで警戒しなくても大丈夫だよ?」
警戒心剥き出しの私を安心させるためなのか、柔らかで砕けた口調で語りかけてきた。そして、敵意のない証明なのか、ひらひらと両手を振る。
「今の私は思念体みたいなもので、何かできるわけじゃないんだ。あなたが触れた花に私の思いと魔力が少し残っていたの。その残滓でできてるって言ったら、分かるかな?」
物に命が宿るという話は……まあ、信じるけども。
「つまり、花に残った私の思いと魔力があなたの能力を通じて、私と会話しているの」
んなことある? 初めてなんですけど……?
……相手は神だ。そう考えると、できなくはないのか? 分からない。
信用していいのか。話を続けても大丈夫なのか。判断ができない。
「それに、あなたの生きる時代に私はもういない。例えるなら、幽霊と話してる感じだよ」
……幽霊と話すのが安全かはさておき。
確かに、あの昔話通りなら、ミルティアはもういない。既に存在していないのに、私に危害を加えられるとは思えない。
第一、ミルティアに何かした覚えもないのにどうこうされても困るのだが。どうこうされる前に、雷姫がどうにかしてくれるだろうか。うん……そう、願うしかない。
私は雷姫を下ろし、じっとミルティアを見つめる。完全に警戒は解けないが、とりあえず、攻撃の意思はないと伝えておく。
「ふふ。それにしても、驚いたなぁ。まさか、未来で私の過去を視る人がいるなんて」
「え、あ……それは、その……すみませんでした」
「? どうして謝るの?」
「必要があったからあなたの過去を視たけれど、本来なら視てほしくないはずだと思って。その、あまりいい過去とは思えないので」
罪だとか贖罪だとか色々言ってたし。
それはきっと、ミルティアにとって、人に知られたくない過去だろう。人間に知られるには、都合の悪い過去と言ってもいいかもしれない。
「ん~……確かに少し恥ずかしいけれど、まあ、過ぎた過去だもん。それに、私はもうこの世界にはいないから。知られるのが嫌だとは思わないかな」
……そういうもの、だろうか。
「あなたは、私の過去を知って何かするつもりはないでしょう?」
「……え?」
「誰かに言いふらしたり、悪さをしたりしないかなって」
ふぅん……私を疑わないんだ。
「これでも一応、謎を解き明かすのが本業の探検隊なんですが。随分と私を信用しているんですね」
「うふふ♪ あなたは賢い子だもん。まあ、私の子孫に伝えるくらいはするとは思うけれど、それは必要だからするだけ。不用意に言うつもりはない。……違う?」
「違いません。あれを言ったところで私にメリットがない。なんなら、デメリットしかないでしょうね」
スプランドゥールではミルティアは女神として崇められている。そんなところで、今回知ったものを言えるわけがない。
信仰心は恐ろしい。よくも悪くも、人の心の支えになりうるのだから。それを意味もなく、興味本位で壊す必要なんてどこにもない。
実際、ミルティアがこの国を救ったのは事実だ。過程や原因ががなんにせよ、だ。
「ほら、あなたは賢い。……ふふっ。よかった~♪ ありがとうね」
ツバサちゃんとよく似ているその顔で大人びた微笑みを見せられると、変な気持ちになる。なんというか、違和感がある。
「あ……もう時間がないかな? 人の子さん、あなたに頼みたいことがあるの」
「私に……?」
ミルティアは笑顔で頷くと、私に近づき、そっと両手で手を握る。
「伝言とお願い、かな? ウィルくんに伝言いいかな」
思いがけない名前に呆然としてしまった。
ウィル、さん? ウィルさんて、あの、ウィルさん? フォース君のお兄ちゃんの? あのお気楽神様のウィル兄さんでお間違いない??
いや、まあ、神様同士だし、交流があってもおかしくはないが。ないけど、なんで私と交流があるって分かったんだろう?
「ウィルくんにこう、伝えてくれるかな。……私は幸せだったよ……って。いいかな?」
「え、えぇ……分かりました。けど、意味は分かりませんが」
「えへへ。そうだよね。でも、ウィルくんは、分かってくれると思うから、そのまま伝えてくれて大丈夫だよ。……それで、お願いの方なんだけど」
「あぁ、はい。一般人の私にできることでお願いします」
「うん、それは大丈夫! お願いはね……これからも、私の転生体と仲良くしてくれると嬉しいなって♪ よろしくね、ラルさん」
「転生体? それってどういう……っ!」
質問を投げ掛けようとした瞬間、突然の突風に阻まれ、会話が中断してしまう。
気がついたら、繋がれていた手も離れ、ミルティア自身からも離れてしまっていた。
困惑する私とは裏腹に、ミルティアは笑顔であった。時間がないと言っていたし、こうなると予測していた可能性はある。だからと言って、あの満面の笑みはどうなんだ。
「あっ! 近いうちにまた逢えるかもしれないから、そのときはよろしくねー!」
「はあ!? どういう意味ですかっ!?」
私の質問に答えず……というか、答えていたとしても、謎の突風のせいで聞き取れなかった。私を追い出そうとする謎の力でも働いているのかと疑いたくなるくらい、謎の強風が私を襲う。
「くそっ……待って! まだ、話は……っ!」
……まだ、終わっていないのに。



~あとがき~
ラルと女神様の邂逅でした。

次回、お花(石)採取の時間だ!!

ミルティアの話がいろんな所で出てきたので、こんがらがってるかもしれません。大丈夫てす。私も混乱中ですので、ご安心を←
まあ、どっかでラルがまとめてくれるでしょうし、謎として残っているものはどっかで明らかになるとは思うので、ご安心を!

ではでは!