satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第297話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界な物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
ラルとアルフさんの会話をお送りしてます。今回もその続きですね。
ところで、ラルの貰った加護。それを活かす話はありますかと相方に伺ったところ、今のところは未定と返答をいただきました。
まあ、学園っぽさ溢れる(?)このお話に不要っちゃ不要ですもんな。
ということで、隠れスキルゲットしたラル。
よかったな、ラル。
ラル「……よかった、のか?」


《L side》
「驚いたよ。魔力を纏っているだけでなく、あの子からの伝言を聞くことになるなんて思ってもみなかったよ?」
あぁ、伝言な……あの伝言、ウィルさんだけでなく、アルフさん宛てでもあるんだったか。
「なぜ、ミルティアは自分の父親へではなく、ウィルさんにしたんでしょう。それに、なぜ『幸せだった』なんて伝言をあなたに向けたんです?」
「ウィルくん宛にしたのは、ラルちゃんがウィルくんと交流があったからじゃないかな。そっちの方が伝わるじゃない?」
まあ、確かに?
あの場で私の父に宛ててくれと言われても、それは誰ですかと聞く羽目になる。こうやってアルフさんが接触してくれたからいいものの、それがなかったら、一生伝わらない可能性すらあったわけだ。
しかし、ミルティアはどこで私とウィルさんの関係を知ったのだろう。あの場でウィルさんの話を切り出したのは、ミルティアからだ。私からではない。
「ミルティアはどうしてウィルさんと知り合いだと分かったんでしょうか。あれが初対面だったのに」
「うぅん……ごめんね? それは神である僕達からはなんにも言えないや」
出た出た。神様の禁止項目。
じゃ、これ以上は何も言うまい。
「あと、二つ目の質問なんだけれど……」
どこか言いにくそうに、頬を掻きつつも、苦笑気味に口を開いた。
「昔の僕は……今みたいな僕じゃなかったから……かな?」
それ、答えになっているのか?
思わず首を傾げると、アルフさんは小さく笑い、話を続ける。
「ウィルくんから聞いたことあるかな。神様って、人みたいな感情を持たないんだよ。ないとは言わないけど、どこか機械みたいで淡々としてるって言えばいいかな。もちろん、ウィルくんみたいに最初から豊かな神様も存在するけれどね。……僕は、そうじゃなかった。あの子が死ぬまで、人らしい感情なんてなかったんだ」
「ミルティアが死ぬまで、ですか?」
「うん♪ 信じられないかもしれないけど、僕は天界でも一位二位を争う程、冷酷で厳しい神様で有名だったんだよ?」
どの辺が……? 申し訳ないが、今のアルフさんを見ていても、全く想像ができない。できないが、雷姫が角が取れたとか、昔はそんな姿じゃなかったとか言っていた。きっと、雷姫は昔のアルフさんを知っているから、そんな言葉が出てきたのだろう。
「……けれど、あの子が死んで、ようやく僕は理解したんだ。人の愛情、恋慕、慈しむという心をね。そんな感情を理解したと同時に後悔した」
アルフさんは少しだけ苦しそうに顔をしかめ、それでも無理矢理、笑みを見せる。
「自身の子に親らしい愛情をかけてこなかったんだ。むしろ、厳しく接してばっかりだった。そんな僕の態度が我が子の人生を台無しにしてしまったんじゃないかって……すごくすごく、後悔したんだよ。でもね」
そっと目を閉じ、一呼吸置いたときには、アルフさんの表情は晴れていた。一人の父として、優しく柔らかな笑みだ。
「ラルちゃんからあの子の伝言を聞いて、そんな思いも拭えた。本当にありがとう」
「……いえ、私は何もしてません。伝えろと言われたから伝えただけです」
「そんなことはない。その行為がずぅっと後悔を感じていた僕を助けたんだよ? だから、ありがとうって言わせてよ」
……本当に私は何かしたつもりはないけれど、言って満足できるなら否定するのも変な話だ。別に間違ってはないと思うし。
「ところで、あの子は他に何か言っていたかい? よければ教えて欲しいな」
ミルティアとの会話ねぇ……?
彼女のお願いを話すのも変だし、特別、何かを言っていたかと言われると……何もないような気がする。
「……そういえば、ミルティアは近いうちにもう一度会うかもしれないと」
「え、ラルちゃんと?」
「た……多分? でも、もう『奇跡の洞窟』へ行く予定なんてないし、ミルティアと縁のある場所へ行く予定もないので、前みたいな手法は使えません。だから、会うなんてことないと思うんですが」
そもそも、あれだってあの女神の涙にミルティアの思いが強く残っていたからこそ起きた現象のはずだ。そんなものが世界各地にあってたまるかって話だ。
しかし、アルフさんは笑って冗談だと流すことはなく、少し考え込むと、にこりと笑う。
「あの子がそう言うなら、そうなんだろうな。きっと、ラルちゃんはもう一度、逢うんだよ」
「もう亡くなってるのに? それとも、あのときみたいに強い思いが宿る何かに触れる機会があるとでも?」
「どうだろう。手段は分かんないけど……でも、あの子は神としては色々と規格外だったからなぁ♪ 死して尚、自分と会話できるような何かを一つや二つ、残してても不思議じゃないかな?」
んなことあるぅ? 楽観的すぎるだろう。
「それに今日は女神祭。あの子を祀るための祭りだ。……そんな日だからこそ、奇跡くらい起きるかもよ?」
……奇跡、ね。
くすっと笑い、アルフさんはベンチから立ち上がると、パチンっと指を鳴らして、くるりと回った。すると、アルフさんからフウガ君へと姿が変わった。
「さあ! そろそろウィルくん達のところへ戻ろ~♪」
「え、あ……はい」
まだ聞きたいことはあるけれど、ティールやウィルさんにはすぐ戻ると言ってしまっている。これ以上は言い訳がしにくいな。
というか、だ。
本来の話し相手であるウィルさんが先に戻って、私が戻らない理由ってなんだ!? なんて理由つけてるんだ、ウィルさん!

フウガ君に手を引かれながら、皆の待つ型抜き屋へと戻ってきた。
「あ、ラル、おかえりー! みてみて!」
開口一番、何を言われるのかと内心びくびくしていたのだが、そんな心配は不要だったらしい。しーくんが得意気にお菓子の詰め合わせセットを見せてきた。
かたぬきでもらったの! きれーにできたごほーびだよ!」
「へぇ~……ってことは、大成功したんだ。おめでと、しーくん♪」
しずちゃん、めっちゃ器用やん……俺らの中でも断トツだったんだけどぉ」
「ですね。器用さで負けた」
どうやら、私達が話している間、ウィルさんとティールも型抜きに挑戦したらしかった。しかし、彼らの目の前の欠片達を見れば、何があったのかは容易に想像できた。
ティール君、集中力はあるけど、器用さが足りなかったなぁ」
「まあ、そうですね。というか、ウィルさんも似たようなものでしょう」
「最後の方、面倒になったねぇ……あれが敗因だったよ」
「で……ラルの方の用事は大丈夫そう?」
あ、え~……うん! 大丈夫!
あの、ウィルさん? ティールとしーくんになんて説明をしたんですか。したんですか!
「よぉし! 二人も戻ったし、祭り探索、再開しよー!」
「おー!」
ウィルさぁぁん!?
──その後、どうしても気になったのでウィルさんに聞いてみた。適当に誤魔化してティールに勘づかれるのも嫌なので、フウガ君が二人に幻覚を見せ、私の後を追いかけたのは正直に話したという。
そして、私を追いかけた理由が「どうしても私と話がしたかった」としたらしい。
ある意味、どれも間違ってはない。そこに隠されたものはあれど、ウィルさんの話したものはどれも真実である。
本当に隠したい事実を隠すために嘘と真を織り混ぜるとは、ウィルさんもなかなかに策士である。
普段、そんな雰囲気ないくせに。

さて。
型抜き屋を後にし、その後も何店か一緒に楽しんだ。そして、ウィルさんとフウガ君は本格的に『用事』をすますため、ここでお別れとなった。
「ふーちゃん、またあそぼーね! やくそくっ」
「うんっ! やくそく!」
と、しーくんとフウガ君が仲良く抱き合う。こんな短時間で仲良くなれるのは無垢な子供の特権だ。……片方、無垢な子供ではないんだが。
「いやはや、微笑ましいですな~♪」
「そうですね~」
何も知らないティールは呑気でいいな!
正体を知ってしまった私としては、結構、複雑なんですけど。この約束、守られる日は来るのか。来なさそうだなぁ……



~あとがき~
最後、雑に終わらせてしまった。

次回、とある方とのお話。
お楽しみに。

とりあえず、アルフさんとウィルはここで退場です。今後、どっかに出てくるかな……?
ウィルはともかく、アルフさんが本編に出てくることはあるんだろうか……? わからぬ。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第296話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話ししてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、遂にアルフさん登場です!
番外編では主役級に活躍する可愛い神様ですが、まさかまさか、本編にまで来てしまうとは!
そんな神様とラルのお話です。お楽しみください。


《L side》
ウィルさんが私達から離れ、アルフさんと二人きりになった。もうどうしていいか分からないし、なんなら、私から話したいことは今のところないので、黙って突っ立ってることしかできない。
「ウィルくん酷いなぁ。僕は何にもしないのに。……さて、とりあえず、座って話そっか」
と、アルフさんは近くのベンチへ目線を送る。断れる雰囲気でもなく、私はおずおずとベンチへ腰を下ろした。
「さて、何から話そっかな~……まずは僕の正体を明かした理由についてからかな?」
それは……ウィルさんが言ってた、ふーちゃんの正体に気づいたから、ですか?
「うん、流石だね。それが主な理由だよ」
「でも、誰かに話してないし、あくまでそうだろうなって思っただけなのに……?」
そう。私は自己完結する形でフウガ君の正体を考察したに過ぎない。それを思考しただけなのだ。それを誰かに話すつもりも、口にするつもりもない。
「その辺、すっごくややこしいから説明はしないけど……つまりね? 僕の『正体について思考する』こと自体、危険なんだ」
「危険?」
「うん。そもそも、僕って大昔に色々しちゃったせいで天界では問題児扱いされててね? その結果、地上にすむ人間に正体を明かしてはならぬ!……っていう制約があるんだ」
あっけらかんととんでも発言してないか、この神様。
「でまあ、その制約は口伝だけでなく、思考も含まれてしまう。だから、今回、僕の正体に勘づいてしまったラルちゃんには近々、神によるコンタクトがある。口封じをするためにね」
次々ととんでも発言してないか、この神様!?
いや、それだけの理由で口封じされてたまるか! というか、口封じって何されるんだ。
「上の奴ら、容赦ないからね。最低でもラルちゃんの記憶抹消くらいはすると思う。……神ってのは、そういう奴らだから」
ほんの少し、アルフさんから冷たいものを感じ、思わず身震いする。
私は優しい神様しか知らない。友達として接してくれる、優しい神様しかいない。
もちろん、それは一面でしかないのだろう。色んな人々が生きるように、神にも色々あるのだろう。
それでも、そんな神の都合で、私の記憶が奪われるなんて許さない。許したくない。
「とは言え、ラルちゃんの中にいる雷姫がそんなこと許さないとは思うけどね? でも、そんな雷姫も所詮は神に創られた道具。いくら雷姫が強くても、僕らには勝てっこない」
『……ふん』
どこまで、抗えるのだろう。
いや、きっと抗う余裕すら与えてくれないんだろうな。理不尽に、好きなようにされてしまう。ちっぽけな人間ごときが神に勝てるはずもないのだから。
「安心して、ラルちゃん。僕は君の味方だ。言ったでしょ? 守るために現れたって」
アルフさんはそっと優しく私の頬を撫でる。そして、柔らかな笑みを見せた。
「……奴らに先を越される前に僕が手を打つ。そのために、ラルちゃんの目の前で正体を明かしたんだよ」
「アルフさん、一体何を」
「じっとしててね」
突然、アルフさんが私の頭を優しく叩く。それは、親が子供をあやすみたいに、自然なもので。
私は訳が分からず、目を白黒させる。これに意味があるのだろうか。これが理不尽な神の手から守る手段だとは思えなかった。
しかし、雷姫はアルフさんの行為を理解したのか、私を庇うように半霊体状態で姿を見せ、アルフさんを怒鳴り付ける。
『貴様! マスターに何をする!』
「わあ! そんなに怒らなくったっていいだろう? 君の主人を守るためにやったんだよ?」
『そんなのは理解しておる! が、我の許可もなく、勝手に加護を流したことに腹を立てておるのじゃ。気分が悪い! 我の!』
お前のかぁい!
……ん? 加護、とな?
「えぇ? 雷姫にすぐ馴染むように調節したつもりなんだけどな」
『そこではない。許可なく入ってくるなと言っておるのだ』
「ら、雷姫。加護ってなに? 私、なんにも感じないよ」
『む。神は人の子に力を分け与えることがある。近い例で言うと……『ばふ』効果とやらに似たものじゃ』
バフってことは悪いものじゃないんだ。
「うん♪ 僕が今、与えたのは『神隠し』の加護だよ。その名の通り、神の手によって存在を隠す加護。効果があるのは、僕を敵視する神のみだと思ってくれていい。だから、ラルちゃんが今まで会ってきた神様や、僕に普通に接してくる神様には効かないようにしてある。……要は何が言いたいかって、ラルちゃんは今まで通り、楽しく幸せに暮らして大丈夫ってこと!」
「えぇっと……全てがいきなりで、ついていけないんですが。つまり、私は記憶を消されたりしないってことですか?」
「そういうこと! だから、雷姫? そんなに怒らないでよ。それに君は気づいてないみたいだけど、すでに似たような加護がかけられてるみたいだよ」
『……何!? マスター、我の知らぬところで浮気したのか!?』
え、知らない。思い当たる節もない。浮気してないですが。……いや、浮気ってなんだ!
アルフさんはじっと私を見つめると、困ったように笑った。
「この感じ、どうやらあの子の思い出の場所でもらってきたみたいだね? 我が娘ながら、大した子だよ~」
そういえば。
一気に色んなことが襲ってきて、ウィルさんに聞き返すのを忘れてしまっていたけれど。
ウィルさんは伝言の相手は俺だけじゃないと言った。ミルティアに関係する神であり、そして、それは自分の上司に当たる人であると。
そして、今の言葉。我が娘って。
「君と会ったときから、なんとなく気になってたんだ。あの子の力が周りを漂ってるからさ」
「……ミルティアの関係のある神……ミルティアは神の子……って、まさか。アルフ、さんはミルティアの父?」
「うん? ふふ。うん、そう。僕がミルティアの父親だよ」
父親がいるってことは、母親も存在する?
「そうだね。あの子の母は君と同じ、普通の人間だったから、寿命はとっくに終わって今は存在しないけれど」
……?
なんだろう。この引っ掛かるような言い方は。別に変なところはないように思えるけれど、何かがおかしい。
人間だったとか、寿命は、とか。
それだとまるで……
しかし、アルフさんの顔を見て、思考を止める。それ以上は考えるなと言われているようで、踏み込んではいけないものなのだと察した。
先程のアルフさんの例もある。これはもう考えない方がいいかもしれない。
『転生の娘の加護とは、なんなのじゃ』
アルフさんに向かって、訝しげに問い掛ける。そんな雷姫にアルフさんは「言った通りだよ」と答えた。
「簡単に言えば、悪意のある神からの攻撃を守る加護かな。そんな加護が君の心の奥深くにかけられてるんだよ。……実は、それもラルちゃんに接触した理由の一つでもあるんだ」
私にあるミルティアの加護が接触の理由?
「そそ。さっきも言ったけど、君の周りにあの子の力……もっと言えば、魔力をほんの少し感じたんだ。だから、僕の探し物の手がかりになるかなぁ~……なんてね」
探し物……そういえば、ウィルさんも言っていたな。探し物をするためにここへ来たと。
「ミルティアの力、加護。……探し物ってミルティアに関係する何かですか?」
「正解♪……十数年前からかな。年に一度だけ、あの子の気配を微かに感じるんだ。すでに死んでしまったはずのあの子の、ね。……で、ウィルくんが神様として復活してからここへ探しに来ているってわけ!」
ウィルさんの封印を解いたのは、私達が高校一年のときだ。つまり、今年で三年目となる大捜索ということになる。
「過去に二回、ここへ訪れてるんですよね。神様二人で探して、見つからないなんてこと、あります?」
「あはは~♪ 返す言葉もないよ。でも、気配が希薄で追いにくいのと、その気配が僕らから逃げているようでね。全く捕まらないんだ。今年もそんな感じに終わるのかな~……と思っていたところにラルちゃんが現れた」
……ミルティアの力を多少なりとも纏った私がいた。去年、一昨年となかったことが起こっている。
そういえば、ミルティアの思念体と話したとき、手を握られた。あのときに加護をつけられたのだろうか。私に触れた瞬間なんてあそこしかない。ティールにはなくて、私のみに加護があるのなら、あの場面しかあり得ない。
「一応、気配の出所に心当たりがない訳じゃないんだよ? でも、普段はまーったくその気配を感じないわけだし? それだと僕から会いに行けないからさ。ほら、僕は神様だし。理由なしに人の子と話しちゃ駄目だし?」
神様でもがっつり絡んでくる人は絡んでくるけれど……それはともかくだ。
アルフさん、私にはがっつり絡んでません? 滅茶苦茶話してません? それはいいんですか??
……まあ、今更か。これ。



~あとがき~
ラルに神様の加護とやらが付き始めました。これが神に愛されるというやつ? 流行りの転生無双シリーズかな??

次回、ラルとアルフさん。その二。

ラルの神様交流記録としては、概ね、空海と変わらないっちゃ変わりません。色んな人とお知り合いです。ただ、関り合いのない神もいるので、なんとも言えません。分かりやすいのはディアルガパルキアに当たる神様とは会ってません。だって、出会うきっかけとなる事件がこの世界では起こらないんだもの!
反対に湖の守り神とはお知り合いです。
ユクシーエムリットアグノムですね。その三人モチーフ神様とは知り合いです。仲良しです。はい。
そんな設定あるけど、本編じゃ出る予定ないけどな~……(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第295話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でお話ししてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、三人から五人へパーティーが増え、わちゃわちゃ感が増えました。ネタ切れ感も否めませんが、大丈夫……もうそろそろ真面目な話を始めるんで……!
ということで、ラルとウィルの話です。


《L side》
私とウィルさんは夏祭りの喧騒から離れ、人気のない小さな公園へと移動した。
お祭りで賑わう大通りから少し離れただけで、こうも静かになるのだから、どれだけ通りに人が集まっているのかが分かる。
少しの木々と茂みに囲まれたこの空間なら、他の人もやってこないだろう。
「で、話ってなぁに? こんな静かなところに俺を呼び出し……はっ! これが噂の告白イベント!? 駄目だよ、ラルちゃん。ラルちゃんにはティールくんがいるだろう!?」
「何一人で勘違いして突っ走ってるんです。何、告白イベントって」
「あはは♪ ごめんごめん、冗談だよ。少しは場を和ませようって思ってさ。改まって話がしたいなんて言うってことは、真面目な話なんだろうなーって?」
分かってて悪ふざけに全振りするんですね、ウィルさんらしいですけれども。
にこにこと笑顔を絶やさないウィルさん。本当に真面目な話をすると思っているんだろうか。
「……話の前に確認しても?」
「うん。何かな」
「かつて、地上に降り立った癒しの女神、ミルティアのことは知っていますよね」
「……ん。知ってるよ」
一瞬、真剣な表情を見せるものの、それはすぐに消え、にこりと笑顔に戻る。
「懐かしいね、その名前。俺、彼女のことはティッピーって呼んでたの」
ティッピー……相変わらず、変なあだ名つけるな。でも、あだ名をつけるくらい、親しい間柄でもあったのだろう。
「ティッピー、かなりのお転婆でね? 世話するこっちも色々と大変だったよ」
「世話? ウィルさん、ミルティアを世話してたんですか?」
この質問にウィルさんは素直に頷く。
「あの子、他の神とは少し事情が異なってて、特殊な生まれなんだ。まあ、そういう理由もあって主に俺が世話してたかな?」
ウィルさんの口振りから、ミルティアが神の実子であることは確定なのだろう。しかし、その親はウィルさんではない、か。
仮にウィルさんがミルティアの親なら、この状況下でもっと興奮気味に昔話してきそうだもの。弟のように可愛がるフォースくんの話ですら、滅茶苦茶興奮するのだ。実子だとしたら、その比ではないはず。
でも、そんな雰囲気はウィルさんから感じない。なんなら、憂いすら感じる。
「……それで? ティッピーの名前が出てきたってことは、それ関連の話?」
「えぇ。全てをお話しすると長くなりそうなので、簡単に話しますね」
私は『奇跡の洞窟』で知ったこと、視たものを全て話した。
女神の涙のこと。
ミルティアとアルマのこと。
そして、能力を通じて、ミルティアの思念体らしいものと会話をしたこと。
それら全てを静かに聞いたウィルさんは、苦笑しつつも驚いた様子で手で口を覆う。
「うっそ、ティッピーと話したの? まあ、なるほどね。ティッピーなら、あり得なくはないか……“予知”を使って、ラルちゃんに過去を視られると分かってたんだな」
“予知”?
「……あぁ、ごめん。今のなし。聞かなかったことにして」
ウィルさんの真剣な声に触れてはならない領域なのだと悟る。所謂、神様の禁忌なのだろう。
じゃ、聞かなかったことにしよう。
「まあ、ここまでは単なる経緯の説明でしかなくて。本題はミルティアから伝言を預かってるってところです」
「伝言……? ティッピーから? え、俺宛?」
「じゃなかったら、ウィルさん指名しないですって。……私には意味が分からなかったんですけど、ウィルさんに伝えれば分かる、と。……『私は幸せだったよ』だそうです」
ミルティアからの伝言を伝えた瞬間、ウィルさんはにしては珍しく、かなり驚愕したらしく、数秒の間、言葉を失っていた。
そして、ようやく安心したような表情を浮かべ、一言、「そっか」と小さく呟いた。
「ティッピー、あんなことがあったのに、『私は幸せだったよ』……か。それなら、俺も安心したよ」
一頻り、一人で納得したかと思えば、くつくつと笑い始める。
「……あぁ、でも、流石だな。俺がこのタイミングで知るって把握してたんだろうな。本当にあの子ってば」
あの、ウィルさん、そこそこ情緒不安定だけど、大丈夫かな。伝えて大丈夫だったんだよね?
どう踏み込んでいいのかも分からず、言葉を探していた私だったが、そんな私にウィルさんは優しく笑いかけてきた。
「ありがとう、ラルちゃん。伝言、届けてくれて」
「いえ、その……役に立てたのなら何よりです。で、結局、伝言ってなんだったのですか?」
……って、聞いてもよかったんだろうか? もう質問しちゃったけども。
「うん? あ~……そう、だな……? あ、ごめん、ちょっと待ってて」
ウィルさんは私から目線を逸らし、別のことに意識を集中した。そして、何かに対して頷くと、再び私の方へと向き直る。
「話が少し逸れるんだけど、ラルちゃん。ふーちゃんの正体に気付いちゃってる?」
え、なんだ。いきなり。けど、ここで誤魔化す理由はない……素直に言うか。
「そりゃ、ウィルさんの人間……? まあ、その辺りの関係とかフウガ君に対する態度とか見ていれば、なんとなく予想はできますよ。それに雷姫もフウガ君に対して反応を示したので」
「えぇ、ばーちゃん、反応したら駄目でしょぉ? まあ、それなら仕方ない。……さっきの質問なんだけど、あれね、俺以外にも宛ててるんだよ」
「と、いうと……ミルティアに関係する神がウィルさんのお知り合いにいるってこと?」
「ご名答。それが俺の上司にあたる人だ。……ね、ルフさん?」
ルフさん? それがウィルさんの上司さんの名前?
ウィルさんがちらりと見た茂みの中からひょっこりと現れたのは見知らぬ神様……ではなく、型抜きに夢中になっているはずのフウガ君だった。
誰かがここへ近づく足音や木々の揺れる音……気配すらも感じなかった。
「あはは♪ そうみたいだね」
それが当然のように、フウガ君はウィルさんの隣に立つと、無垢な少年の笑みを浮かべた。
「ラルお姉ちゃんがビックリしてるみたいだから、あらためて、『じこしょうかい』するね?」
そう告げると、パチンと指を鳴らした。その瞬間、フウガ君は風に包まれ、姿が見えなくなってしまった。
風が消え、そこにいたのは、今度こそ、見知らぬ人物。
ツバサちゃんやツルギ君くらいの見た目の少年。白髪で綺麗な赤い目をこちらに向け、こてんっと小首を傾げた。
「この姿では初めまして。僕はアルフ。『転生の神』と呼ばれ、そこにいるウィルくんの上司みたいなものだよ。……いつも、ウィルくんがお世話になっているね」
……私が何気なく予測し、推察した仮説が立証されてしまった瞬間だった。
「ルフさん、ラルちゃんにバラしちゃってよかったの?」
突然の登場になんの言葉も出てこない私に構わず、ウィルさんはアルフさんの方を見て、困ったように問いかけた。
ウィルさんの問い掛けにアルフさんはニコッと笑いながら頷いた。
「バレたとしても上の奴らに負けるような僕じゃないからね♪ 伊達に何千年と嫌われ者やってないよ?」
「さっきも聞いたし、それ、誇るようなことじゃないから。……本当に色々と大丈夫?」
「大丈夫♪ それに、今代の雷姫の所有者相手じゃあ、遅かれ早かれバレてたと思うし」
雷姫の名前を出し、さも当然のように、私の腰に装備された刀に向かって話しかけてきた。
「ってことで、雷姫、久し振り! 話にはなんとなーく聞いてたけど……見ない間に随分と丸くなってるじゃない? 今の主さんの影響?」
『……ふん。それはこちらの台詞。転生の。貴様もかなり角が取れたように思うが? それに、昔はそのような珍妙な姿なぞしとらんかったろう』
無視するわけにはいかなかったのか、渋々といった様子で返答する雷姫。が、そんな雷姫の様子は気にならないのか、楽しげに話を続ける。
「んふふ♪ そりゃ、僕にも色々ありましたから♪ この姿は今の地上の流行りを取り入れた結果だよ! ほら、男の娘ってやつ、流行ってるんでしょ~?」
『知らん。ウィルの小僧にでも聞け』
「ちょ、ばーちゃん! 巻き込み事故しないで!」
え、流行ってるっけ……? いや、今はそんなことどうでもよくてだな。
雷姫とアルフさんが面識あるのも驚きポイントではあるが、それよりも、私にバレても問題ないとはどういうことなのか。そもそも、そこを気にするということは、普通はバレるとまずいってことになる。それがなぜ、問題ないとなるのだろう。
「──うん、そうだよね。色々と気になるよね?」
雷姫と穏やかに─楽しそうにしていたのはアルフさんだけだったが─談笑していたアルフさんが突然、こちらへと話題を振ってきた。
神様とだけあって、独特の雰囲気のある人だ。どことなくウィルさんに似た、掴み所がない、やりにくい相手。いや、ウィルさん以上かもしれない。
無意識に雷姫へと手を伸ばす。そして、私の心情を察した雷姫もアルフさんに対し、少しだけ、語気を強める。
『それで、転生の。わざわざ正体を明かしてまで、我がマスターに何用だ。万が一、何かするつもりなら、我が許さんが』
「あっはは! 君が神である僕に何ができるって言うのさ? けど、本当に主思いの神器になったんだね。大丈夫だよ。君の主さんを取って食おうとしてるわけじゃない。むしろ、雷姫の言う『何か』から守るために僕は現れたんだ。警戒じゃなく、感謝してほしいかな?」
『む……』
会話に入り込めない私も私だが、私抜きで話が進んでいく。つまり、アルフさんは私を守るために正体を明かしたのか? 何かって何。私、何をされるんだ。
「ねえ、ウィルくん」
「なんですかぁ?」
「僕と彼女、二人きりで話がしたいんだ。実は僕、黙って抜けてきちゃったんだよね」
「……ルフさん!?」
黙って抜けてきた……まあ、そうか。あのティールがフウガ君を一人にするわけがない。何かを仕掛けて、ティールとしーくんにバレないようここにやって来たのだろう。
「全く。どうせ、ティール君達に幻覚系の魔法使ったんだな?」
「えへ♪ だって、あのティールって子に『ラルお姉ちゃんのところにいってくる』なんて素直に話しても、通じなさそうだったから」
「うぐ……まあ、そうだけど。それはティール君の真面目な性格であってだな~……はぁ、分かったよ。俺が上手いこと説明してきますー! ルフさん、時間かけるつもりはないんだよね?」
「もちろん。そこは信じてよ♪」
少しだけじーっと疑うような目を向けるものの、ウィルさんは諦めたように「りょーかい」と一言告げ、くるっと踵を返す。しかし、何か思い出したのか、ちらりと私の方を振り向いた。
「ラルちゃん。ルフさんになんかされそーだったら、俺を呼んでいいからね~♪」
「は、はい……信じてますよ、ウィルさん」
「うんうん♪ じゃ、また後で」
今度こそ、ウィルさんは公園の出口へと向かって行く。
……そして、私とアルフさんの二人きりになってしまった。



~あとがき~
フウガ君改め、アルフさんです。

次回、ラルとアルフ。
お楽しみに!

はい。毎年の番外編で楽しそうにしている神様組の一人、アルフさんです。まさかこうして本編に出てくるなんてなぁ……
そして、そんな神様がラルと対話するとは思ってませんでした。言ったらあれですが、一生交わらない相手かなと思ってた。

ではでは。

空と海 12周年

え!? 人で言うところの小学校卒業ってまじぃ!!??←
……ってことで、今年で12周年です。
このお知らせもついさっき書いてます。つまり、なんの準備もしてない。計画性0だ!!
毎年毎年、何も学ばないアホな作者で申し訳ない。

最早、懐かしい響きであるうごメモで連載開始してから、12周年です。当たり前ではありますが、うごメモ終了後にこのブログを開設しているため、ここで連載してる小説版はもう少し期間が短い?若い?です。それもまあ、来月くらいに周年なんですけど。
それと合わせてなんかお絵描きでもします。はい。合わせてお祝いしますね……っ!!
だから許せ、ピカ様……っ!!

なんかこう……無理矢理お祝いしてる感が否めないですが、空と海って作品は私が初めてポケダン二次創作作品として始めたものなので、思い入れがあるんです。……鈍足更新で何言ってんだ感凄いけども!! 雑なお祝い記事出しといて何言ってんだ感凄いけども!!!!
今年の空と海目標はあれだ。ポチャの話を終わらせて、とある子の長編(予定)の話をすることです。はい。頑張るぞい♪

駆け足となってしまいましたが、ゆるりと続けていけるのも、続けようと思えるのも、読者様がいらっしゃるお陰でございます。
覚えている人がどれだけいらっしゃるのは不明ですけども、これからものんびりまったり更新いたします。少なくとも、年1で更新はありますので……はい、お願いします←

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第294話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、三人でお祭りを楽しむ中、ウィルとフウガと名乗る少年が現れた!
そんなお二人と三人とのお話です。


《L side》
男の子のフウガ君にところどころ女の子ちっくな雰囲気を感じるのはなぜなのか。単純にフウガ君の好みなら何も言わないけれど、ウィルさんがやらせてるのだとしたら……少し、いえ、かなりドン引きいたしますが。
私の訝しげな視線にウィルさんは慌てたように弁明する。
「……待って? 俺の趣味じゃないよ? そもそも、ふーちゃんは俺の子ですらないからね??」
「人類みな、俺の愛すべき子供達とか言うような人の言葉、信用できないです」
「信用してよ、ラルちゃん! あと、そんな俺が連れてるんだから、それに当てはまらない人種なのは分かるよね!?」
……そっち系か。まあ、そうだろうなとは思ってましたが。
つまり、フウガ君もウィルさんのお仲間、天界の人ってことだ。それがフォース君みたいな従者側なのか、ウィルさんみたいな神様側なのかは分からないが……ふむ。
「俺の知り合いの人……まあ、ふーちゃんの親なんだけど、その人に頼まれて、ふーちゃんとここに来ただけなんだよ~! ふーちゃんの見た目もその人の趣味だからー! 俺の趣味じゃないのは理解して?」
「え、と、必死ですね、ウィルさん……?」
「や、だって! そう思われるのは心外だからね! あと、かーくんに誤解されたくないもん! ふーちゃんもなんか言ってください!?」
と、なぜかここにいないフォース君に嫌われたくない一心でティールに訴えまくるお兄ちゃん。けど、すでに手遅れな気がするのは黙っておこう。
しかしまあ、珍しいこともあるものだ。
ウィルさんは地上に仕事でいるときは基本、単独行動を好む人だ。連れ歩くにしても、信頼しているフォース君を側に置くことが多い。
そんな人が知り合いに頼まれたという理由で、ここへ来る理由が分からない。探し物と言っていたが、それをするなら、子供なんて不要だろうに。……ま、フウガ君も天界に住む人なら、その姿は偽りなのかもしれないが。
それに、ウィルさんは上手く隠しているのかもしれないが、所々にフウガ君を気遣うような仕草が見え隠れしている。と、いうことは、だ。フウガ君は従者ではなく、神様である可能性が高い。そして、ウィルさんよりも地位が上の神様である。
私の知ってる中で、ウィルさんよりも地位の高い神様。且つ、ウィルさんを好きに扱えそうな人ってのは……時折、ウィルさんの話に出てくる上司さん、なのだろう。恐らくだが。
「……! えへ♪」
私の視線に気づいたフウガ君が無邪気に笑いかけてくる。私もまた、そんな彼ににこりと笑う。
『これはまた……珍妙なことを』
……え?
思いがけないタイミングで雷姫の声が聴こえてきた。が、それ以上は何も言わず、沈黙を貫く。
雷姫が反応するってことは、私の仮説は仮説ではないのかもしれない。確かめるには、本人……に聞くのは怖いな。ウィルさんにでも聞いてみるのが一番だろう。ウィルさんには例の伝言の件もある。どこか、タイミングを見て、二人きりになりたいな。
「ねえ、ウィルお兄ちゃん!」
「ん? なんですかー?」
「しずくくんと、いっしょにあそびたいなーって! いいでしょ?」
「え? 俺は構わないけど、しずちゃん達は大丈夫? 三人でのびのび楽しんでたんだよね。俺ら、邪魔にならない?」
「ボクはいーよ! ボクもふーちゃんとあそびたいっ!」
え、まあ、しーくんがそう言うなら……
「ぼく達も問題ないですよ。一緒にお祭りを回ろうか?」
「やったー! ティール、ありがとー!」
「ありがとー! ティールお兄ちゃん!」
もしかして、チャンス来たのでは?
キャッキャッとはしゃぐ二人とティールから少しだけ離れ、ウィルさんの肩をちょんっとつつく。
「ウィルさん、少しいいですか?」
「ん? どしたの、ラルちゃん」
「この後、ウィルさんと二人きりでお話ししたくて」
ウィルさんは不思議そうにするものの、ニコッと優しく笑ってくれる。
「もちろん、いいよ。そだな……適当に回って、抜けられそうなときに抜けちゃおっか? あ、もしかして、時間かかるような話? それなら、改めて時間作るよ」
「いえ。そこまで長話するつもりはないので、それで大丈夫です」
「オッケー! じゃ、後でね!」
よし。これでミルティアからのお使いも完遂できそうだ……ん?
誰かの視線を感じて、とりあえずぐるっと見渡してみる。が、特に怪しい気配も視線も感じない。気のせいだったのだろうか。まあ、雷姫やティール、ウィルさんも反応しなかったのだし、気のせいなんだろう。ついさっきまで、悪党退治してたのが悪かったかな。
──この時、私は全く気づいていなかったのだ。彼、フウガ君に時折、見られていたことに。

ウィルさんとフウガ君という新たな仲間を迎えた私達は、五人で色々な屋台を見て回ることになった。
まあ、主にしーくんとフウガ君がキャッキャッしているところを三人が見ているだけなのだが。
……いや、今はとある屋台の前でちょっとした小競り合いしています。
「マジで、やめろ! いい加減にしてくれぇぇ!!」
「せっかくの祭りだよ!? 今日楽しまなくていつ楽しむのさぁぁ!!」
「さっきので最後にしろって言ったよね! リンゴ飴は禁止ですーー!!」
「えぇぇぇ!!??」
えぇ!?……じゃないんだよ、馬鹿!
最早、そう仕組まれているのかと思いたくなるくらい、自然な動作でリンゴ飴の屋台に行くから驚きだ。慌てて腕を掴み、がっしりと捕まえて正解だった。
「あはは~♪ ティール君のリンゴ好きもここまで来ると病気だねぇ? 不治の病ってやつだ」
「ウィルさん! こいつのリンゴ大好き病、治してください。私、そのためならなんでもしますからぁ!」
「ごめんね、ラルちゃん。なんでも治せる俺でも、こればっかりは無理だよ。俺がかーくんめっちゃ好きなのと一緒で、一生付き合ってもらう病気だね。つまり、俺と同志だね、ティール君!」
「あれと一緒にされるのは心外ですね」
「あれぇ!? 意外と毒吐くね!?」
これ以上、ここで騒ぐとこちらが不審者扱いされる。さっさと移動しよう。
「ウィルさん、こいつ運ぶの手伝ってください。ほら、歩け歩け!」
「りょーかい♪ ほら、ティール君。こっちだよ~♪」
「うぅ~……二人とも意地悪だ~」
うっちゃい! 駄目ったら駄目!
「おかえり、ラル! ティール、つかまえられた?」
ふらふらっといなくなろうとしたティールを追いかけた一方で、しーくんとフウガ君には近くの金魚掬い屋で遊んでもらっていた。……どうやら、ここでは掬って遊ぶのが目的で、獲るのは目的ではない屋台らしい。
「ごめんね。捕まえられたから、次行こうか? どこか行きたいところ、ある?」
「ん~……とね。あ、ラルお姉ちゃん、あれ何?」
フウガくんが指差したのは型抜き屋だ。
あそこの屋台では、大人子供問わず、真剣に小さな板から決められた形をくり貫こうと必死になっている。
「型抜きって遊びだよ。溝が予め掘られてる板状のお菓子をその形通りにくり貫くんだ。花だったり、家の形だったりね」
「あ、俺も知ってる~♪ 一般的にはお金がもらえるんだよね! ま、あそこはそうじゃないみたいだけど~」
ふむ?
ウィルさんの言う通り、あそこはお金を渡すのではなく、ランクによってもらえるものがお菓子だったり、おもちゃだったりするようだ。
ま、子供にお金を渡すのは道徳的によろしくないとかで、そういう取り決めでもあるのかもしれない。そうなると、あそこの大人達は子供に頼まれ、おもちゃを獲ろうと必死なのかもしれないな。親って大変だ。
説明を聞いたフウガ君は目をキラキラさせ、「やってみたい!」とウィルさんへ告げる。そして、しーくんも興味津々なご様子で、じーっと私の方を見てきた。
「……じゃ、次はあそこだね?」
「やたー! ありがと、ラル!」
「ふーちゃんもしずちゃんと一緒にやろうね~」
「うん! どれにしよっかな~♪ しずくくんはどーする?」
「んとね……えっと~」
小さな子に型抜きは難しいかもしれないけれど、意外と器用なフウガ君─先程、輪投げで見事な命中率を披露してくれている─と、なんでも夢中で取り組むしーくんだ。もしかしたら、失敗せずにできちゃうかも。
……型抜きって終わるまで時間かかるよな? それなら、今がチャンスか?
隣のティールをつつき、そこっと耳打ちする。
「私、今からウィルさんと密会してくるから、二人を見ててほしいんだけど」
それを聞いたティールは少し首を傾げ、呆れ顔を見せる。
「密会なら、ぼくに報告しないでよ……まあ、いいけど」
「ありがと。まあ、密会と言うか、単純に二人で話をしたいだけなんだけどさ。心配しないで」
「分かってる。心配なんてしてないよ。ほら、いってらっしゃい」
深く追求しないでくれる、ティールが好きだよ。説明できたら、後でします……!
「よし、ウィルさん。今からいいですか?」
「うん。今がいいタイミングっぽいもんね。いいよ~♪」
三人……正確には、フウガ君としーくんだが、気付かれないようにその場から離れる。
「? ふーちゃん、どーかした?」
「……ううん! なんでもないっ!」
──気付かれないように離れた、つもりだったのだろうか。もしかして、今、フウガ君に見られていた? まあ、見られていても問題はないのだが。
あの、フウガという神様は、私に何かあるのだろうか。……私は特に用はないんだけどなぁ?
私は特に気にする必要もないと判断し、さっさとそこから離れたのだった。



~あとがき~
ちょこちょこ怪しい動きをするフウガ少年でした。

次回、ウィルとラル。

私、型抜きってそこまでやったことがないけど、あれ難しくないですか?
すぐに割れてしまった記憶しかない……(笑)

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第293話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、輪投げしたり、悪者退治をしたラルさんでした。一話を通して、ラルがかっこよかったね? 意図してなかったけど。
ということで、今回もまた、ラル、ティール、雫の屋台巡りです。そろそろ、別の風を吹き込みたいよ?


《L side》
私達は屋台探索しつつ、たまーに悪者退治もしながら─その度にアラシ君から小言を言われているが─祭りを楽しんでいた。
現在、私達はちょっとした休憩スペースに腰を落ち着かせ、各々、屋台飯に舌鼓を打っているところです。
しーくんはフライドポテト。ティールは例のリンゴヨーグルトゼリー。私は焼きそば。
「ラル、さっきのすごかったね! ぱしってやって、ばんって!」
「相手の攻撃を受け流して、反撃しただけだよ。……それにしても、捜せばいるもんだね、悪党」
「君の場合、祭りを楽しむって目的だったはずなのに、悪党捜しに変わってるからね?」
大丈夫です。お祭りも十二分に楽しんでますので!
「あのね? 祭りを楽しむ人は武器を装備しないんだよ?」
と、ティールは私の腰に目を向ける。そこにはいつもの黒のベルトが巻かれ、そこに雷姫が装着されていた。
いや、もうここまでくると、雷姫を出したり消したりするのが面倒になってしまったのだ。そのため、いつもみたいに雷姫装備してしまった方が楽ってもんでして。
「アラシ、もう諦めテンションだったよ? 誰をどこでぶっ飛ばしたって聞いてきたから」
「もう、失礼しちゃうよね? 吹き飛ばしてないのに」
「そこじゃないから。ぼくはアラシに同情する」
「そう言うなら、ティールが私を止めたら?」
ティールはスプーンを咥え、じぃっと私を見つめる。そして、行儀悪くも、そのスプーンを私に向けてきた。
「……ラルはさ、ぼくの制止で止まるつもりはあるわけ?」
「まあ、ないね」
「だろうね。……ま、正直、ラルは悪いことをしているわけじゃないから、ぼくは止めないよ。でも、余程の事がない限り、手も貸さない」
「ふふん♪ ティールのそういうとこ、好きぃ♪」
「はいはい。ありがとう。……雫は楽しめてる? ラルが脱線しまくってるけど」
美味しそうにポテトを頬張るしーくんは嬉しそうに頷く。
「こーやって、ラルとティールとおでかけするの、たのしーよ! こんなおまつりも、はじめてだから、たのしい!」
そう言われてみれば、そうかもしれない。
夏休みに限らず、長期休暇中は稼ぎ時と言わんばかりに私とティールは家を留守にする。そのため、こんな風に風物詩を楽しむこともあまりない。いや、ないわけじゃないが、三人で、というのは本当に珍しいかもしれない。いつも、チームの誰かも一緒にいて、或いは、ギルドの人達がいて……大勢で騒ぐのが普通で。
「思えば、三人でお祭り回るの、初めて?」
「あぁ、そうかも。そもそも、三人で遊ぶこと自体が久しぶりだ。……蔑ろにしていたつもりはないけれど」
そうだなぁ。こういう時間も案外、大切なのかもしれない。
「ごめんね、しーくん。私ら、勿体無いことしてたかもしれない。普段からこうやって、遊んであげられてなかったね」
「う? ボク、ラルとティールがそばにいてくれるだけで、すごくうれしーよ? それにね、ながいおやすみのとき、ふたりがいなくても、そうじゃないときは、いつもいっしょだもん」
うぐうぅぅ!! うちの子、天使なんだけど! いや、天使通り越して、仏様では!? 神様だよ、神様!!
「しーくん、私の知らない間に成長しすぎだよぉ? もっと甘えておくれよ~! 我儘におなり!?」
「うりゅ? ボク、いーっぱいおねがいしてるよ? ワガママ、いってるよ?」
「あはは。ラルはもーっと我儘言ってくれって言ってるんじゃない? ぼくもそう思うよ。……だから、今日は雫のしたいこと、全部しような」
「! うんっ! じゃあ、こんどはヨーヨーつり、したい!」
「分かった。これ、食べ終わったら行こう。ね、ラル?」
「もちろん! 屋台のヨーヨー、全部ゲットじゃ~♪」
「それは迷惑だからやめろ」
分かってるわ。冗談だよ。

近くにあったヨーヨー釣りのお店で心行くまで遊んだしーくんは、そこでゲットした─当たり前だが、貰ったヨーヨーは一つだけである─青と白のグラデーションが可愛らしいヨーヨーで楽しそうに遊んでいた。
「しーくん、ヨーヨーは振り回さないでね? 周りの人に当たっちゃうと危ないから」
「ん! だいじょーぶ!」
流石に肩車中に、ヨーヨー遊びされるのも危ないので、今は自分で歩いてもらっている。
そんなしーくんは、私と手を繋ぎながら、ぽよぽよと弾むヨーヨーに夢中だ。
はぁ……うちの子、可愛すぎです。可愛すぎて、天に昇っちゃいそうだよ~♪
とまあ、私がしーくんで舞い上がっている横で、ティールはティールで別のものに舞い上がっているらしく。
ティール、ずーっとしあわせそーだね!」
「そうだね。ここに来てから、いくつ目のリンゴ飴食べてんだろうね?」
「ボク、しってるよ! いつつめだよ!」
あらぁ~♪ ちゃんと数を数えられて偉いねー! でも、五つはいくらなんでも食べすぎだよな??
ティール、それで最後にしてくれ」
「ふぇ!? 酷い!」
どこが!? むしろ、五つも許してた私は慣用だと思うんだけれど!? せめて、リンゴ飴以外にも食べてほしいんですけど。例えば……そうだな。
「──はい、ふーちゃん。ベビーカステラだよ~♪」
ベビーカステラは甘味だからなぁ~……リンゴ飴とそう変わらない……ん?
どこか聞き覚えのある声に私は歩みを止める。そこには兄弟なのか、あるいは親戚同士なのか……一人の青年と一人の子供がお祭りを楽しんでいた。
「わぁい! ありがと!」
青年からベビーカステラを手渡された猫族の子供─後ろ姿なので、男女の見分けがつかない─は、美味しそうにカステラを口に含む。
「ふぉしたの、ふぁる~?」
「お前は一度、リンゴ飴を食べるのやめろ」
「……んっ。いや、仕方ないだろ。タイミングが悪かったんだって。それで? どうかした?」
「いや、あれ。ウィルさんっぽいなぁって」
「ウィルさん?」
「ほあ! ウィルお兄ちゃん、いるの!?」
いやいや、まっさかなぁ~? こんなところにウィルさんがいるわけないよね! だって、あの人は神様だもん。こんなところで遊んでるわけ……
「ウィルお兄ちゃんー!」
「あ、しずちゃん! ラルちゃんとティールくんも~! やほやっほー!」
……遊んでたわ。
しーくんの呼び掛けに、私達の存在に気づいたウィルさんはこちらに向かってぶんぶん手を振ってきた。これがフォース君ならガン無視するところなのだろう。なんなら、今なら彼の気持ちも理解できそうですらある。
「ウィルお兄ちゃん! どして、ここにいるのー!」
「えー! 夏だし、お祭りは押さえとくイベントじゃなーい?」
きゅるんと悪ふざけモード全開のウィルさん。久しぶりに会ったけど、この人、こういう人だったなぁ。
「あの、ふざけてます?」
「うんっ!……まあらそれはそれとして。実は、ちょっとした探し物をしててね。あと、ふーちゃんの保護者役も兼ねてここに来てたんだ」
と、ウィルさんの後ろからひょっこり顔を出したのは、先程の猫族の子だ。
ふわりとした銀色の髪を腰の長さにまで伸ばし、藍色の甚平がとてもよく似合っている。見た目やふーちゃんというあだ名から、普通に考えれば、完全に女の子なんだけれど……
「ふーちゃん、お姉さん達にご挨拶できる?」
「うん! はじめまして、フウガです! いつもウィルお兄ちゃんがおせわになってます!」
……男子だなぁ。名前的に。
「ふーちゃん、はじめまして! しずくです!」
「男の子、だよね?」
「男の子っすね。可愛い見た目してるけど……これが噂の男の娘ってやつだ」
これがウィルさんの趣味だとしたら、完全に引くんだが……そこのところどうなのだろう?



~あとがき~
新キャラ、フウガ君。

次回、ウィルとフウガ。
お楽しみに~♪

ウィルが本編中にラル達と話すのは初めてか? そもそも、ウィルが頻繁に本編に出てくるようなキャラでもないのですが。
そんな彼と新キャラと三人がどんな会話を交わすのかは今後をお楽しみに。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第292話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界で茶目っ気溢れる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ラル、ティール、雫の三人でお祭りを見て回るぞ~……とぐるぐるし始めてます。
やりたいことを詰めただけで、順序立ても得にしていない謎構成になってます。ゆるっとご覧ください。


《L side》
次にしーくんが指差したのは、とある輪投げ屋。決められた数の輪っかを渡され、何点取れるか競うものらしい。
動かない的に投げるだけなら誰だって満点狙えるだろうと思うのだが、ここのお店のは動かない的ではなく、動く的なのだ。しかも、得点の高いもの程、不規則な動きをしていた。
「……しーくん? これ、本当に私がやるんですか」
「うん! やって?」
あう!? 我が天使の無垢な笑顔に逆らえない! お断りできない……!
「ま、ラルなら楽勝だよね。がんばれ~」
程よく棒読みな応援やめろ! くそ! やってやる!!
私は半ば投げやりになりながらも、輪投げの人にお金を支払い、輪っかを受け取る。
使える輪っかの数は五個。点数は十点が最高得点。つまり、五十点が満点となる。
どう動かしているのか知らないが、不規則に動くとしても、動く範囲には限りがある。それなら、ある程度の予測は可能だ。
私は懐から眼鏡─見通し眼鏡をちょいちょいっと改造したお手製アイテムの一つ─を取り出すと、それを装備して、一つの輪っかを構える。
「……そこっ!」
私が狙いを定めた先には十点の的が。からんっと乾いた音を鳴らしつつ、そこへと収まった。
こんなんに時間をかけても仕方がない。さっさと投げて終わらせてやる。
「せやっ!」
ある程度、狙いを定めてから残りの輪っかを一度に全て投げた。それら全ては全部、同じ的に吸い込まれるように入っていく。
「おわー!! ラル! まんてんだ!」
「君、一時期は投擲武器も嗜んでたもんね。その腕は健在ってことだ?」
「現役探検隊を舐めんじゃないわよ。このくらい楽勝だわ」
「狙いを定めるだけなら誰でもできるけど、最後の予測は誰でもは無理じゃない? あと、現役探検隊でもあの芸当は無理だと思うよ」
不規則に動くように見える的にも、どこにどう動くか考えれば、ある程度の予測はできると思うけどね。
「ラル、ボクみたいにたんち、じょーずだもんね!」
「しーくんのと同等には語れないよ。あと、これは単なる予測だし。……それで、しーくんの見たかった私は見れた?」
眼鏡を外し、にっこりと笑う。
しーくんは満足そうに頷き、パッと明るい笑顔を見せる。
「うん! やっぱり、ボクのパパとママ、すごい!」
「そだろ~? もっと自慢していいよ、しーくん♪」
「あぁ、もう。そうやってすーぐ調子乗るんだから。でも、どうして雫はぼくらの得意なこと……っていうのかな、それを見たかったの?」
何気ない質問だったが、しーくんはなぜかしゅんっとした様子で答えていく。
「おやすみするまえ、ほいくえんのおともだちと、おはなししたの。みんなのおとーさんとおかーさんのはなし」
しーくんの話をまとめると、だ。
しーくんの通う保育園にて、親の仕事の話になったそうな。よくある親の職業自慢というやつだ。そこで、しーくんは当然ながら、私とティールの自慢をした。二人は探検隊をしていて、とっても強いんだ、と。
しかしまあ、保育園の子達は私達を単なる高校生……もとい、ただのお姉さんとお兄さんにしか見えてなくて、そんな風には見えない、と言われてしまったらしい。……むしろ、ティールは王子様でそんなことしないとかなんとか言われたそうだ。なぜ、ティールだけそういう見え方をされているかは、今は置いておこう。
まあ、確かになと思う。保育園へ迎えに行く私らは学生服だし、あれで凄い探検隊なんだぜ!……と言われても、子供の心情的には嘘だとなるかもしれない。なんなら、大人ですら、私らを舐め腐る奴らはいるわけで。
「みんなに、いっぱいいわれて、ふあんになったの。ラルとティールをしんじてないわけじゃないよ! でも、みんなにおはなしできなくて、わかんなくなっちゃって」
否定的なコメントにしーくんの気持ちが負けてしまったのだろう。もしかしたら、上手く説明できなかった自分を責めているのかもしれない。
「そっかそっか。じゃあ、今度はお友達の前ですんごいところ、見せてやらないとな~♪ 何したらいいかな? ティールと試合でもしてみよっか?」
「する必要ある? さっきみたいに的当てとかして見せたら凄いってなるって」
「そうかな? ま、しーくんは何にも気にしなくていいよ。お友達に嘘つきだって言われたんなら、その子を連れてきたらいい。その子の目の前で私達の強さを証明してあげるからさ。ね、ティール?」
「……ま、そうだね。それで雫の信用を得られるのなら、ぼくは構わないけど。危ないのは禁止ね」
あはは。そだね~♪
「ラル、ティール」
「しーくんのパパとママはちゃあんと強いよ。で、そんな探検隊スカイは皆強いってことだ! はい、解決!」
「強引だな~……けどまあ、皆強い、は同意する。ぼくらだけじゃなく、雫もその一員だからね?」
「……うんっ」
私達としーくんの関係は複雑で特別だ。それを万人に知ってもらう必要はないし、理解される必要もない。
ただ、こんな家族の形もあると知ってもらえるだけでいいと思う。そこに理解も得られたらラッキーくらいの気持ちでいいのだ。
ま、個人的には誰に理解されなくとも、私とティールとしーくんの三人がそれらを認めて、理解していればいいと思うけどね。

再び、街中をぶらぶらしつつ、散策していたときだ。
「……んぐ? ね、ラル」
ティールに肩車をされながらチョコバナナを頬張っていたしーくんが少し先にある曲がり角を指差す。
「あそこから、へんなかんじする」
「ほう。変な感じとは?」
「うーん? なんだろ。くろいもやもやーみたいなの。わるいひとがいるのかも」
黒いモヤモヤ、ね?
もし、しーくんの言うことが本当なら、アラシ君に連絡案件かもしれないな。しかしまあ、実際に見たわけでもない。それだけで連絡するのもお手数お掛けします、というやつで。
「じゃ、ちょっと見に行くか」
「は? いや、ラルの見に行くは見るだけですまないだろ」
すむすむ。なんにもなければ、見に行くだけですみますよ~♪ ティールとしーくんはそこにいてね。
心配そうな─或いは、何かやらかしそうという不安な─表情のティールは放置し、私はしーくんが指差した曲がり角を覗いてみる。
そこで、酔っ払い達によるだる絡み現場に遭遇した。
詳しく明記するのもあれなので、端的に言えば、酔っ払い達が一人の女性を囲み、「お姉ちゃん可愛いね~♪」ってやつである。ナンパである。
一方、言い寄られている女性は酔っ払い達の勢いに圧倒されているのか、恐怖で声も出ないのか、子犬のように震えてしまっている。
……これは殴ってもいいやつだな。いや、実際には殴りませんけども。
「こんにちは、おじさま達。楽しそうで何よりですが、お相手、大層嫌がってるのでは? あ、それとも、私はお邪魔?」
もしかして、女性の方が誘い出し、酔っ払い達を成敗する的なシーンなのかもしれないと一応、聞いてみたのだが……私の言葉に女性はこれでもかと首を横に振る。完全否定である。じゃあ、助けるか。
私はぽかんとする酔っ払い達を横目に女性の元へ歩み寄り、安心させるように微笑むと女性の手を包むように握った。
「大丈夫ですか? あの通りの先に私の友達がいるので、一緒に行きましょ」
「は、はい……!」
「あんだぁ? おじょーちゃん、大人の話に首突っ込んじゃあ、いけねぇなぁ?」
ナンパは大人の話なのだろうか。いや、彼ら的にはナンパではなかったのだろうか。
「それとも、おじょーちゃんが、俺らを楽しませてくれんのかぁ?」
「さあ? とりあえず、こういう強引なお誘いは女性に嫌われますし、やめた方がよろしいですよ?」
「んだとぉ! ガキが舐めた口聞いてんじゃねぇぞぉ!」
うわぁ……! 話が通じねぇ!! 流石、酔っ払い!
勢いに任せ、酔っ払いAが私に殴りかかってきた。仕方がないので、その拳を受け止め、ぐるんと投げ飛ばしてやる。Aさんは何をされたのか理解できてないのか、目を丸くしながら、私を見上げていた。
「あは。ガキ相手に手を上げるのもどうかと思いますよ、おじさま? あ、その他のおじさま方、逃げないでください? お姉さんを困らせてたんですから、同罪ですよ」
その辺に転がっていた小石を拾い上げ、おじさま達に向けて素早く投げつける。もちろん、怯ませるために投げたもので、怪我はさせない程度に、だ。
投げられた小石に一瞬、驚いたのか足を止める酔っ払いBさんとCさん。その隙に二人の手を掴み、勢いよく後ろへと引っ張ってやる。酔いもあるのだろう。おぼろ気な足取りのまま、数歩後ろへ下がると、情けなくその場に尻餅をつく。
「あ~……逃げられると面倒だな。……警備隊の人達が来るまで、麻痺か気絶でもさせるか。雷姫!」
愛刀の名前を呼び、何もないところから電気をバチッと光らせると、すらりと妖しく輝く刀を出現させる。そして、雷姫を使って麻痺させようかとおじさまの一人に刀を向けた……のだが。
「……は、嘘ぉ?」
刀を向けられ、何を思ったのか、三人とも勝手に意識を手放したのである。
酔ってたから、幻覚でも見たのだろうか? そうでなければ、刀を向けられた程度で気絶とかあり得んだろ。まあ、手間が省けていいけど。
せっかく出した雷姫だったが、とりあえず、手元から消しておく。そして、女性の方を振り向いた。
「やれやれ。……改めて、お姉さん、大丈夫ですか?」
「は、はい! あ、あの、ありがとうございました……!」
いえいえ、ご無事で何よりです。
「ラル、終わったぁ?」
角からひょっこり顔を出すティールとしーくん。事が終わるまで、大通り側にいたらしい。まあ、我が天使にこんな野蛮なところを見せるわけにはいかないので、ティールの判断は正しい。
「うん、終わったよ~♪」
「……あぁ、確認だけじゃなくて、揉め事もラルが片付けたのね。で、連絡は?」
「……連絡? してないよ?」
「先にしてあげなよ。主にアラシのために」
そだな。酔っ払いおじさまを放置するわけにはいかないもんな。
「いや、だから、先にしてあげてって話ね?」
聞こえませーん。
ということで、アラシ君には事後報告だ。やってしまったもんは仕方ないのである。
「やほやほー! アラシ君?」
『……ん。ラル? 何かあったか?』
「うん。酔っ払い達がお姉さんを困らせててね。場所は北西エリアなんだけど」
『分かった。じゃあ、近場の警備隊をそこに向かわせる。お前の言動からして、そこまで大事じゃなさそうだから、数人で大丈夫そうか……』
おや。この返答、現在進行形だと思ってる?
「あ、事はもう終わってるんで、おじさまの回収だけお願いしてもいいっすか」
『……は?』
「三人、いい年したおっさん転がってるから、回収よろしく。あと、私の代わりに説教とかしてくれると助かる。する前に気絶しちゃってさ~」
『俺、見かけたら連絡だけして、何にもしなくていいって言わなかった?』
アラシ君の不満が通信機越しに伝わってくる。言う通りにしろや、という圧も感じなくはない。
「覚えてるよ。でも、恐怖に震えるお姉さんを放置するのは同姓としては許せなくて?」
『ぐ、そ、それは……』
「アラシ君だって、ツバサちゃんが変態おじさんに絡まれてる現場を見たら、連絡だけして他人に任せたりしないよね。それと一緒」
『……ぐ。ズルいだろ、その質問』
「まあ、そういうことだよ。ってことで、後処理は任せるね? じゃあね!」
『あ、ちょ! ラル!!』
文句を言いたげなアラシ君だったが、きっと彼も忙しい身だ。さっさとこちらから切ってあげよう。
……よし、報告も完了。あとは警備隊の人達が来るまで、このおじさま達を見張ってればいいかな?
ティール、しーくん。このお姉さんと大通りで一緒に待っててくれる? こんな変態おっさんと一緒なんて嫌だろうし」
「了解、リーダー」
「うん! お姉さん、ボクたちといっしょにあっちいこ? あのね、ボク、おいしーチョコバナナ、しってるの!」
先程まで怯えていた女性はしーくんの無邪気な笑顔に安堵したのか、思わず小さな笑みを溢した。
それを見たしーくんもまた、嬉しそうに笑い、楽しそうにお姉さんの手を引いていく。
……にしても、こんなところに出会すとはね。あるわけないだろ、と思っていた部分はあったのだが。
ま、これも楽しいからいいんだけどね?



~あとがき~
ラルさん。屋台で遊ぶより、悪者退治の方が生き生きしてませんか?? だって、今回の字数が多めだもの(汗)

次回、まだまだやるぞ、三人の屋台巡り。

今回は悪者退治をきちんと描写しましたが、この後も描写はなくとも、いくつか首突っ込むと思います。だって、ラルさん、楽しいって言っちゃってるもの。
それを全て事後処理する可愛そうなアラシ君です。忘れていたけれど、こういう役回りでしたね、彼。

ではでは。