satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

学びや!レイディアント学園 第336話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界の物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ティールとブライトが対面で話すところをお見せしました。今回もその続きじゃい。


《Te side》
「だから──」
父上が先の言葉を紡ごうとした瞬間、この部屋の扉をノックする音が辺りに響いた。その音にぼくは椅子から立ち上がり、父上の様子を窺えば、じっと扉を見て、微動だにしていなかった。
タイミング悪いな……とか思っていたりすんだろうか。顔や態度には全く出てないのだが。
「……誰だ」
「私で~す♪」
……母上?
父上が入れと言う前に扉を開け、顔を覗かせてきたのは紛れもなく、ぼくの母だった。にこっと笑い、ひらひらと手を振っている。
「あなたにお願いがあってきました」
「今でないと駄目か」
「すぐすみますわ♪ ラルちゃん達が海に行きたいと言っているので、例の場所、立ち入りの許可が欲しいのです」
海? ラル達、この後海に行くつもりなのか。なんとも突発的な……まあ、ここまでの移動は馬車に揺られていただけだし、夕食前の暇潰しのつもりなのだろう。
海……国が所有し、王である父上の許可のいる場所……例の海底遺跡付近の海か? いや、なんであれ、いきなり許可をくれと言われて、ほいっとどうにかなることでもないだろう。
「沖合いまで行かないのであれば」
「さっすが、ブライト。話がはや~い♪」
「そんなあっさりいいんですか!?」
そりゃ、海底遺跡に近付かなければ危険はないだろうが、だからと言ってそんな軽々と決めていい件か!?
「ラルさんがいるなら問題はないだろう。彼女のことはある程度信用しているからな。それに、お前も行くんだろう」
「……ぼくも?」
いや、全く聞いてないけど。そんな話になってるの、あっちは。
「仕事が絡むと察しが良いですね、ブライトは。あなたのお察しの通り、私がティールも一緒にと言ってあります♪ そちらの方が許可も取りやすいかなぁと思いまして」
「お前はよくもまあ、そんな悪知恵を働かせるものだ」
「うふふ♪ あなたの妻ですもの~♪」
「どういう意味だ」
そんな父上の問いには笑顔のみを返し、母上は再びひらひらと手を振った。
「私の話はこれだけです。後はごゆっくりどうぞ~♪ 二人の話が終わる頃にラルちゃん達も準備を終えるでしょうし、そうでなくても私が皆さんとお話ししてるのでお気になさらず。思う存分、お話ししてくださいな♪」
そう言い残し、母上は扉を閉めてしまう。
いつものことながら、勝手に決めてったな……
「セイラの強引さは変わらずだが……あれでラルさんに迷惑をかけてなければいいのだが」
多分、ぼくと別れた後はいつものように着せ替え人形させられてたと思う。今回はツバサやレオンもいるし、ラルにだけ集中して~……ってことはなさそうだけれども。
「後でぼくから謝罪しておきます」
「うむ。私も機会を見て伝えておこう。……さて、話が途中だったな」
そうだった。母上の乱入で忘れそうになっていたけれど、父上は何かを言いかけていた。ラル達には悪いが、母上の言う通り、話を終えてから合流させてもらおう。
父上がこほんと咳払いをし、口を開こうとした瞬間、再び部屋の扉がノックされる。父上が入室を促すと、身なりの整った父上の部下らしき男性が入ってきた。手には複数の資料のようなものを抱え、申し訳なさそうにペコリと頭を下げる。
「次から次へと……今度はなんだ」
「お、お話し中、申し訳ありません! 陛下にお伝えしなければならないことが……」
「それは急を要するものか?」
「恐れながら……はい」
「分かった。少し待て」
「畏まりました」
部下の男性から目を逸らし、ぼくを見る。
「すまない、ティール。どうやらここまでのようだ。……明日の夜、ここへ来なさい」
「……はい?」
「残念ながら、今日はもう時間が取れそうにないらしい」
と、ちらりと部下の方を見る。急用がどれだけ時間がかかるか分からないし、その後も予定があるのだろう。元々、父上は多忙な人だ。むしろ、今日この時間をここまで長く取っているだけでも驚きなのだ。
「先程の話を聞き、私もお前に伝えたいことがある。明日の夕食後、気が向いた時にでも来てくれたらいい。……私はいつでも待っているから」
そう告げた父上はほんの少し、口角を上げた。気を付けて見ないと分からないくらいの微々たる変化だった。
きっと、昔だったら気付きもしなかった。
「はい。……失礼します」
ぼくは父と部下の人に頭を下げ、執務室を出る。そして、執務室から少し離れた曲がり角を曲がったところで、壁に背を預け、ずるずるとしゃがみこんだ。
「はぁぁぁ~……緊張したぁ……」
業務連絡みたいな淡々とした会話ではない……ぼくの本音に触れるような会話を父上相手にする日が来るなんて、思ってもみなかった。とはいえ、始めこそ、口から心臓が飛び出るかと思うくらい緊張していたけれど、途中からは思いの外、普通に話せていたように思う。
二人きりの状況であそこまで会話が続いたのはいつぶりなのだろう。……もしかしたら、お祖母様が生きていた頃以来かもしれない。そうだとしたら、十年以上も前になってしまうけれど……それくらい、父上と長く話す機会なんてなかった気がする。
ぼくから話したいなんて言わなかったし、そんなぼくを見た父上も不用意に近付かない方がいいと思っていたみたいだし、当然と言えば当然だ。互いに話そうと思ってなかったのだから。
しかし、今日は違う。
「父上が話したいって言ってくれた……誤解が解けたから……かな。そうだとしたら、父上はずっとぼくと話したいって思ってくれてた……ってのは、自惚れすぎか」
単純に話が中途半端に終わってしまったから、改めてきちんと話したいだけかもしれない。伝えたいこともあると言っていたし、それも関係するのだろう。結局、何なのか分からずじまいになってしまったから。
「というか、今日はなんであそこまで話してくれたんだろ? ぼくの方は向き合うぞ~とは思ってたけど、父上はそんなこと知るはずもないよな」
大体、話題を振ってくれたのは意気込んでいたぼくではなく、父上だった。最近どうだ的な雑なパスは今までにもあるけど、今日はそういうのでもなかったし。……となると、前もって母上辺りに入れ知恵されてたとかだろうか。それならまあ、分からなくもないが。
「……ま、いつまでも考えてても仕方ないか。ラルと合流しなきゃ。……スイ、いる?」
『いるよー! いつでもどこでもすっちゃはいるぞー!』
それはかなり鬱陶しいな。
呼び掛けに応じてくれたスイは液体の状態でふよふよと宙に浮いていた。
王宮にいるときのスイとセツは、決められた保管室に置く決まりになっている。とはいえ、二人ともとても自由なので、大人しくそこにいてくれない方が多いが。
『てぃー、どーかしたー?』
「うん。ラルってどこにいるかな」
『るー? せいちゃのおへやだよ~! およーふく、たーくさんの!』
母上のか。ってことはまだ母上に捕まってる可能性が高い? それは……その、御愁傷様です。
「えーっと……スイ、ラルのところへ行って、五分後に合流できるって伝えに行ってくれる?」
『あいあい! るーとあそぶの?』
「皆と海に行くって話になってるらしくて、そこにぼくも含まれてるんだって」
『うーみ! すいちゃもいく!!』
「まあ、スイだけなら」
元々、聖剣は王が持つ決まりとなっている。今はぼくが修行中且つ、父上の計らいで、スイとセツを好きに使っているのだ。しかし、王宮に帰ってきている今、本来の所有者の父上の手元にあるのが正しい。つまり、保管室で大人しく保管されてるのが正しいあり方である。……けど、こいつらはとても自由人なので、その辺は曖昧というか、守られてない方が多いけれど。
とまあ、そんな理由で、勝手に二人とも持ち出すのは気が引けるって訳だ。もちろん、父上は気にしないだろうし、持ち出しても問題ないって言うと思うけど。一人置いとけば、何かあっても王の身は守れる。そして、スイとセツなら、セツの方が父上との相性がいいらしいので、セツがお留守番ってことになる。
……うん。ごちゃごちゃ述べたけれど、結局のところ、ぼくが二人揃うとウザったく思ってしまうので、嫌ってだけですが。
『わーい! せっちゃにじまんするー!』
やめて。修羅場になる。
あいつにバレた日には『なんでせっちゃ、おるすばんなのー!』って言われる。絶対。いつかのしりとり対決みたいになる!!
「スイ、セツに内緒にできないんなら置いてく」
『やだ!! ないしょする!!!』
「ふーん? 約束できる?」
『あい! てぃー、やくそく、する!』
「よろしい。じゃあ、ラルんところへ行ってきて、さっきの言葉を伝えてくれる?」
『まっかせろー!』
やる気満々─というか、遊ぶ気満々─のスイはぴゅーっと飛んでいってしまった。あの調子なら、数秒後にはラルに伝言してるかもしれない。
さて、ぼくはぼくで準備しないと。とりあえず、着替えないとな。



~あとがき~
話が途中で途切れるのなんてお約束ってやつよ!

次回、海だぁぁぁぁ!!!!
夏らしいテーマだけど、時間経過考えると、海で遊べるの夕方なんだよな(笑)

突然ですが、スイとセツの相性の話!
ティールはどちらも同じくらいに扱いますが、強いて言うなら、スイの方が使用頻度は高いです。
対するブライトは断然、セツの方が高く、アルドアーズは気分で変わるタイプ。なんなら、スイセツよりも白雪を好むヤツです。
そもそも、この三人、同じ武器を使うにしても戦闘スタイルが違うんよね。
ティールは二刀流。
ブライトは今も昔も剣士。一本の剣でバシバシいけちゃう凄腕剣士さん。
アルドアーズは大剣使い。(今は知らん←)
同じ家で産まれて、同じ環境(?)、同じように学んでるはずなんだけど……こうも変わるんだなぁと。
純粋に師にしていた相手、適性等々が違うんでしょう。
ちなみに、三人以外で使用してるのは、作中だとラルだけですかね。彼女もどっちも扱えるけど、スイを好んで使います。理由は普段から持ってる魔力石が水属性だからです。
……え? なんでこんな話してるかって? ティールとブライトの話は後日やるから、語れないだけだよ!!

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第335話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界での物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回は豪華な服を着せられたり、セラフィーヌさんのあれこれ(?)を聞いたりしました。
今回は父と子の話。


《Te side》
二人で父上の執務室へ向かう道中、特に会話らしい会話もなく……かといって、何かあったわけでもなく、本当に何事もなく執務室の前へとやってきた。
父上は部屋の扉を開け、無言でぼくに入るように促してくる。それにぼくも黙って従った。
父上の執務室は綺麗に整理されており、物が多い割に散らかっている印象はない。固い空気を纏うような、無機質な空間だ。
父上が扉を閉め、この空間にはぼくらだけになった。父上はぼくがこちらに帰ってきたら、こうして話をする機会を設ける。だから、これはいつものことではある。内容は事務的なことばかりで会話ではないけど。
ティール」
父上は普段から使う仕事用の机に軽く腰しかけ、ぼくの名前を呼ぶ。
「その……先程は言えなかったが……おかえり」
「……ただいま」
ついこの前、前向きになろうと決めたはずなのに実際、本人を目の前にすると駄目だ。長年の蓄積があるせいか、変に緊張している。
こういうとき、ぼくから話題を振るべきなのだろうか。振るとして、何をどうすれば。
ここ数年、父親相手に雑談で花を咲かせた記憶はない。勝手が分からなすぎる。
そもそも、いつもなら、父上から滞在中の予定をざっくり聞かされ、その後は部屋に戻るように言われる。……だが、今回はそれすらない。なんで。怖いんだけど。
「……」
父上はぼくと目線を合わせず、腕を組んで何やら考え事をしているらしかった。
……滞在中の予定表を脳内で精査でもしてるのか。だから、黙りなのか。そうなら、話しかけない方がいいとは思うけれど……何が正解なのかが分からない。
「……それに座れ。少し、話したいことがある」
「? え、と?」
座れと示した先には本棚付近に置かれている椅子があった。なぜ、あんなところにポツンと置かれているのかは分からない。もしかしたら、本棚の近くで読書するための椅子かもしれない。いや、そんな椅子になぜ座れと言われたのかが不明すぎるけれども。今まで、そんなこと言われた経験ないのに。
ぼくの頭にははてなしか浮かんでないけれど、とりあえず、言われた通りにした。断る理由もないし、仮に断ったとして更に空気を重くするのも嫌だったからだ。
気持ち、父上の机よりに椅子を寄せてから腰かける。すると、父上も自分の仕事机の席に座り、ちらりとこちらを見る。
「ここには私達しかいないから、楽にしていなさい」
……この空気でどう楽になれと。いやでも、椅子に座れと言ったのは、もしかして、父上なりの配慮だったりする?
「話は聞いている。……『明けの明星』で世話になったらしいな」
「はい。仕事の依頼を貰って、その関係で色々と。ルーメンさんには随分とお世話になりました」
「ふむ。……何か聞かされたか」
「そう、ですね。スプランドゥールの街のことやギルドのことなど、丁寧に教えてくださいました。……それから、父上と母上の昔話を少しだけ」
ぼくの返答に父上はピクリと眉を動かす。しかし、それ以上の追及はなく、「そうか」と呟くだけだった。
せっかく、会話らしい会話をし始めたのに、また沈黙になるのは耐えられない。何か話題のネタはないかと考えていると、お祭りの時の言伝を思い出した。
「あ……理事長……ではなく、セラフィーヌさんから父上にと伝言を預かっていました」
「セラさんから?」
「はい。……『久し振りに色々と話したいからよろしく』と。近々、こちらで仕事があるようで、そのための伝言だとは思います。とはいえ、詳しい内容までは教えてくれませんでしたが」
「……ふむ」
父上は机の上の万年筆を手に取ると、くるくると回し始める。そして、その手をピタリと止めると、隠す素振りもなく、盛大にため息をついた。
「あ、の……父上?」
「もしかして、セラさんは『色々』という言葉を強調して伝えてこなかったか」
「え……? えー……と」
んー……これ、言ってもいいのか。
父上の言う通り、『色々』の部分は強調していたし、それはとても意味深だったけれど。それの意図はぼくには図りかねるし、理解もしていない。実のところ、意味なんてないかもしれないし。
「あぁ……その様子だとしていたのだな」
ルーメンさんやセラフィーヌさんから散々、超絶鈍感だと言われていた父上にさらっとバレた。え、そんなに分かりやすかった?
「……その、申し訳ありません」
「いや。ティールが謝るようなことではない」
そう答えた父上は頬杖をつきながら、再び万年筆をくるりと回す。そして、どこか苦い顔をしつつ、もう一度、ため息を漏らした。
「父上、大丈夫……ですか?」
「ん? あぁ、問題ない。……これは、そうだな。自業自得というやつさ」
「自業自得?」
「……ティールは先程、私達の昔話を聞いたと言っていたな。ならば、ルー爺やセラさんからは私のことを……そうだな。気にかけ半分、呆れ半分で話してたろう?」
ぼくは黙って頷く。素直に頷いていいものか悩みもしたけれど、さっき黙っててもバレたのだ。今更、隠す必要もない。
「だろうな。……では、ティールは昔の話を聞いて、どう思った」
「え……?」
「正直に言っていい。……あの二人から聞いた通りだ。どうやら、私は超絶鈍感な朴念仁らしいからな」
……だから、自業自得ってこと?
いまいち、繋がらない気もするけれど、父上の中では完結しているらしく、説明するつもりもなさそうだった。それに今の本題は昔話を聞かされた時の感想についてだ。
本人は正直に言えと言うが……本当にいいんだろうか。ルーメンさんの話で感じたことをそのまま言ってしまっていいのだろうか。下手したら、気分を害しかねないと思うんだけど……適度に誤魔化すべきか?
ごちゃごちゃ考えていたことが表情にも出ていたのだろう。父上は珍しく小さく笑いながら、真っ直ぐこちらを見つめてきた。
「私が言えと言った手前、叱責などしない。安心しろ」
「えぇっと……そんなに分かりやすいですか?」
「? 普段はそうでもないが、今はそれなりに、かな。……素直な所は相変わらずで何よりだ」
……なんか恥ずかしい! あと、いきなり父親面する父上も怖い!
あぁ……いや、最初から父上は父親だったのだろう。それをぼくが見なかっただけ……見ようとしてこなかっただけなんだ。
「昔の話を聞いて、最初に思ったのは……随分と不器用な人なんだなって」
ルーメンさんやカズキさん達に母上との仲を茶化されたり、お節介されてたり。
「ぼくの知る父上はどこにもいなくて、ぼくが感じていた父上のイメージとはかけ離れてて。……なんて、言うのかな。ちゃんと一人の人だったって……思った。言い方は変かもしれないけれど、そんな一面も父上なのだと」
ぼくは完璧な王であるブライト王しか知らなかった。国民から慕われ、臣下達に慕われる、善き王である父しか知らなかった。
だからこそ、お祖母様の亡くなったあの日から……気が付いたら、近付き難い存在になってしまっていて。
「……少し、昔話とは関係のない話をしても?」
「もちろん」
「ありがとうございます。……ぼくは父上の知らない一面を見なかった……見ようとしなかったせいで、父上のことが分からなくなってしまいました。多分、いつの日からか、貴方に期待しなくなってたんだと思います。貴方はぼくなんて気にも止めないのだと……見てくれないのだと、そう勝手に決めつけて」
仕事で忙しくなって、関わりが少なくなってしまってそう思ってしまった。当時のぼくはそれを声に出すことすらしなかった。父上が無口で感情が表に出にくいと知っていたはずなのに、自ら主張することを諦めてしまっていた。
だから、今の今まで期待することをしてこなかった。何かされても、どうせ本心ではないのだろう、と。何か意図があるはずだと。勘繰って、勝手に疲れてしまっていただけだった。
「でも、そうじゃないって教えてくれたのが、ルーメンさんとセラフィーヌさんでした。貴方が誰よりも家族思いで優しい父親だと」
「……そうか」
「はい。それと、昔、母上と大喧嘩して家出された時も大慌てでギルドまで捜しに来るくらい情に深いんだぞと言ってました。口下手で不器用だから、周りに伝わらないだけできちんと家族を思っているって」
「あの老人はそんな話までティールにしていたのか……? あのお節介にも困ったものだ」
今の今まで大して表情が変わらなかった父上だったが、母上の家出話だけは何か思うところがあったらしい。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、ふいっとそっぽを向いてしまった。
「あ、えっと……父上にとっては知られたくなかったかもしれませんが、ぼくは聞けて良かったと思っています。先程も言いましたが、父上の新たな一面を知れたので」
「……」
父上はどこか思案するように宙を仰いだかと思ったが、それも数秒ですぐにこちらに向き直る。
「すまなかった」
「……なぜ、父上が謝罪を」
「今までの態度について。……実のところ、お前に避けられているのは分かっていた。だから、私は好かれてないのだろうと思っていた。それならば、こちらから不用意に話しかけてはならないと……私から極力接触しないようにしていたのだが。……どうやら、そんな私の態度がお前を不安にさせ、傷付けてしまっていたのだな」
「……っ」
「先程語った全てがティールの抱えていたものだとは思ってはいない。しかし、末端には触れられたと思っている。だから──」



~あとがき~
これ以上は長くなるなと思ってやめました。
ティールとブライトの話はもうちょいだけ続きます。

次回、父と子の話の続き。

なんかこのままの流れで仲良くなれるんじゃねぇ!? って思ってます。なれそうだよなぁ?? ティールの本音はまだ語ってませんが(こっち見ろ、寂しかったんだおらー的なやつ)、大部分は見せられたのではなかろうか!?
けどまあ、ぶっちゃけ、ティール君は心を完全に開いてはないので……今後に期待。

ではでは!

お知らせ

投稿頻度下がります!

ここ最近、私生活が忙しく、小説書く暇があまり取れておりません。
つまり、投稿できる小説がほぼない!
ってことで、毎週金曜にレイ学更新に変更になります。
多分、早くて9月、遅くても11月までには通常の週2投稿に戻せたらと思っておりますので、それまでお待ちくださいませ。この間に小説頑張って書きますんで……!

ではでは!







そういえば、明日、ポケモンの最新情報公開っすね。めちゃ楽しみ。私はどっちを買うか決めてないし、パートナーどの子にするかも決めてないんですが。なんかみんな可愛いから珍しく迷ってる。
ポケモン好きのみんな、明日の22時はYouTubeでチェックするんだぞ!!
もしくは公式Twitterか……ともかく、明日はポケモン情報をチェックだ!!

では!

学びや!レイディアント学園 第334話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわいわいしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、ちゃんとブライト&セイラが登場し、お話しもしました。セイラがめっちゃ喋った感じだけども。
さて、今回はセイラチームです。何度も言うが、わちゃわちゃな未来しか見えん。


《L side》
ティール、アラシ君と別れた私達はご機嫌なセイラさんにとある部屋へと案内される。
「最初はやっぱりこれですねっ!」
大きな扉をガチャっと開け放ち、目の前に広がったのは数え切れない程の衣装が並べられた部屋……通称、セイラさんの着せ替えルーム。ちなみに、正式名はドレスルームである。
「ひろいおへや! およーふく、たくさん!」
「これは……街の服屋以上に服がありそうな部屋っすねぇ~?」
「ほえ~……これ、全部がセイラさんの私物ですか?」
「う~ん……私のって言っていいものか。実はこれ、私が着るものではありませんもの」
「? じゃあ、誰が着るんすか?」
レオン君の疑問にセイラさんはにっこりと笑い、私の肩をがしっと掴んできた。
もうこれ、本格的に逃げれんが……?
「ラルちゃんみたいな子♪」
「ラルみたいな……?」
「そうです。この部屋にあるのは趣味で作ったものだったり、集めたものを保管してある部屋なんです。そんなお洋服をラルちゃんみたいな可愛い子に着てもらうんですよ~♪ まあ、言ってしまえば趣味の一つですね、私の」
鉱石といい、服といい、何かと収集癖があるよな、この人は。
「さあ、遠慮せずに中へ入ってくださいな♪ そして、私にお洋服を選ばせてくださいっ!」
「はい♪ あ、でも私が着れるお洋服があるならですけれど」
「俺もいいっすよ♪ なんか面白そうだし? あ、男物もあります?」
なんでツバサちゃんとレオン君はこんなにも順応性が高いんだ。断ってもいいんだが。何なら、私のために断ってくれてもいいんだが!?
「大丈夫ですよ。ツバサちゃんが着れる服もありますし、男性の服も揃えていますもの♪ では、皆さんは部屋の中にあるソファにでも座っててくださいな。……そうだ! せっかくです。お茶も用意しますね。アンちゃん!」
パチンっと手を叩き、セイラさんの従者、アンちゃんこと、アンジュさんを呼ぶ。
アンジュさんは既にこの部屋にいたらしく、衣装の影からひょっこりと顔を出した。そして、私達の前に出てくると、ペコッと頭を下げた。
「セイラ様の専属使用人のアンジュと申します。何かありましたら、何なりとお申し付けくださいませ」
クラシックなメイド服に身を包み、淡い赤色の髪を後ろにまとめて、いかにもメイドさんって感じの人だ。
「お仕事中にごめんなさい。お茶の準備してもらえる?」
「畏まりました。紅茶でよろしいでしょうか」
「そうね~……あ、雫君はジュースがいいかな。アンちゃん、お願いできる?」
「はい。少々お待ちくださいませ」
お手本のようなお辞儀をし、アンジュさんは部屋を出ていった。そんな自身の使用人を見送ったセイラさんはくるりと私達の方を振り返る。
「まずはラルちゃんの服からですね!」
「地味なやつしか認めませんので、よろしくお願いします」
こうなったセイラさんは意地でも服を着せようとしてくる。抵抗したって無駄なのだ。それなら、せめてもの反抗として服の指定くらいは許されるべきだ。
「あら? お姫様チックなドレスもありますよ?」
「二度と着ません!! 地味なやつで! お願いします!!」
セイラさんはクスクス笑いながらもしっかりと頷き、服選びをし始めた。
最早、私の反応すらも楽しんでいるのではないかと疑いたくなる。
「なあ、ラル? あんな風に言うってことは前にも似たようなことがあったのか?」
「ご想像の通り、フリフリ地獄を味わいましたが、何か」
「……お疲れさん」
その台詞、まだ早いよ。全てが終わってから言うべきだからね。

セイラさんのウキウキ服選びの途中でアンジュさんがメアリーさんを連れて戻ってきた。
アンジュさん曰く、私達の荷物が運び終わったため、ツバサちゃん達を捜していたそうな。そこにアンジュさんが通りかかり、道案内がてら、お茶の準備も手伝ってくれたらしい。
そんなメアリーさんはお茶の準備が終わってから、セイラさんの洋服コレクションに目を輝かせていた。
「こ、これは……素晴らしいです……!」
思えば、お屋敷ではツバサちゃんの服を作ることに精を出しているメアリーさんだ。そんな彼女からしてみれば、ここは相当魅力的な場所に見えるんだろう。
メアリーさんの感嘆が聞こえていたのか、淡い空色のドレス─恐らく、ツバサちゃん用─片手にセイラさんが説明してくれた。
「ふふっ♪ その辺は昔、セラちゃんがデザインしたものなんですよ~♪」
「奥様が……!」
「セラちゃん、デザインはプロ並みですからね」
そう言えば、服飾関係はセラさんが取り仕切っているとかなんとか言っていたような気がする。若い頃から得意だったのだろう。
……ん? デザインは?
「作る方はちょーっと苦手で。セラちゃんって、物事は器用にこなしますけれど、手先は不器用なんです」
へぇ……そうなんだ。なんでも完璧にこなすような方だと思っていただけに意外な弱点かもしれない。
「あ、あの……セイラさん!」
「? なんでしょう、ツバサちゃん?」
「もし、よろしければ……お母さんの話、聞かせてくれませんか? さっき、途中だったので……その、気になって」
思いきったツバサちゃんの言葉にセイラさんはにっこりと微笑み、ゆっくりと頷いた。
「もちろん、私でよければ。……でも、その前に」
と、セイラさんは数着のドレスを私達の──正確にはツバサちゃんの前に差し出した。
「ツバサちゃんにはこちらを着てもらいたいですっ♪」
「! はいっ! いいですよ~♪」
セイラさんからの承諾を聞き、パッと顔を輝かせたツバサちゃんは素直に服を受け取った。そして、この部屋に備え付けてあるフィッティングルームに入り、お着替えタイムだ。
「あ、ラルちゃんとレオン君もこれ、着てもらってもいいですか?」
その、ついでにみたいなテンションで聞かんでくれませんかねぇ!?
「お、いっすよ~♪」
「ノリが軽いな、レオン君!!」
「お? そうか? まあ、いーじゃん♪ こういう機会でもないとお高い服なんて着ないだろうし、なんか面白いだろ?」
……そう、なのだろうか。え、そういうものか?
うーむ。私もそれくらいの能天気さか必要なのかもしれない。というか、セイラさんと付き合うためには自我を捨ててしまった方がいい気もしてきた。真面目にやり取りするだけ損する気がする。
ということで、レオン君のテキトー加減を見習い、無心で従うことにした。
数分後、私は比較的地味なワンピースを。
ツバサちゃんは異国のお嬢様が着そうな豪華なワンピースドレスを。
そして、レオン君はどっかの王子様ですかと聞きたくなるくらいの王子様服を着せられていた。
「これ、ティールのおさがりっすかね?」
「多分、そうですね~♪ でも、ティールの好みではなかったかで、結局着てくれませんでしたねぇ」
「セイラさん、私のは……?」
「ツバサちゃんのは、趣味全開でセラちゃんと作ったものかな。……ラルちゃんのも確か、そうですね」
つまり、どれもこれも、新品そのものってこと……? 金持ちのすることは分からん。
セイラさんはしーくんを膝に乗せ、しばらくの間、衣装チェンジした私達のことを眺めていた。
しかし、それも満足したのか、私達三人にも再度ソファに座るように促し、「セラちゃんの話でしたね」と先程、中断してしまった話へと移る。
「確か……セラちゃん、ツルギ君みたいによく脱走してたって話だったかしら? 理由は色々あったけれど、とにかく何かあれば逃げてました」
「そ、そうなんですか? お母さんが?」
「えぇ。例えばバトルの先生が手加減しててつまらない~とか、ブライトに変な魔法かけて~とか、そんな理由。……ふふっ♪ 私が旅してた頃はフェゴ君やブライト、ルーメンお爺様が大変そうだったなぁ」
当時の頃を思い出しているのか、楽しそうに笑うセイラさん。今では笑い話なのだろうが、当時としては笑い事ではすんでないんだろうな。多分。
「……あ、ちなみに、私が街にいるときは大抵、私の泊まってる宿にセラちゃんはいましたよ」
「お、お母さん、ブライトさんに魔法かけちゃってたんですか」
「そうですねぇ……あの頃のブライト、ルーメンお爺様の補佐だったり、セラちゃんの付き人だったりしてたから。……もちろん、冒険家だったり、商人だったりもしてましたよ? とまあ、そんな立場だったので、人一倍、被害には遭ってたかと。狼の耳と尻尾生やしたり、髪をさらさらロングにしちゃったり。攻撃魔法の実験台になったりもありましたね」
……一国の王子様になんてことを。
「ブライト自身は大して苦に思ってなかったみたいです。あの人にはお転婆な妹もいますし、元々そういうことには慣れていたのかも。セラちゃんもブライトが無茶なお願いに付き合ってくれるから、よく巻き込んでたんでしょうね」
「お母さん、そういうところ、あったんだ。……全然知らなかった」
セイラさんの話に驚いたのか呆然としていたが、ややあって、ぽつりと呟いた。
まあ、実の娘に自身のやんちゃ時代の話をしようとは思わないだろう。本人が当時をどう思っているかにもよるが、私だったら、恥ずかしいエピソードとして記憶する。
「ふふ♪……これは多分、セラちゃんに限りませんが……自分の子供の前では良い親でいたいのですよ。誰だってね?」
「そうかもしんねぇっすねぇ~♪ いやぁ、でも、セラおばさんもツバサの小さい頃と変わんないってことっすね。ツバサだって、いきなり土砂降りの雨降らしたり、爆発で使用人吹き飛ばしてたし?」
「!? レオン!?」
突然の暴露にツバサちゃんが慌てたようにレオン君の方を見る。
規格外な力を持つツバサちゃんだ。幼い頃のやんちゃ盛りならば、そういうこともするだろう。
「あらあら。ツバサちゃんも随分とお転婆さんね~?」
「うぅ~! そ、そんなことは……っ!」
恥ずかしさで火照った頬を両手で覆い、あわあわし始める。そんな姿も愛らしい……なんて言ったら、かわいそうかな?
セイラさんもこの話をし続けるのはツバサちゃんに酷だと思ったのだろう。「そういえば」と話を切り替えてきた。
「この後、ラルちゃん達はどうするつもりなのです? ここまでの移動もあったし、夕食まで一息つくのですか?」
それはそれでいいのかもしれないが、その夕食まではそこそこ時間がある。それを超快適空間でダラダラするのも一興ではあるのだけれど。どこかもったいないのも事実で。
「……せっかくの海の国だし、どこかへ出掛けてもいいかなと個人的には思ってます」
「わー! ボクもおでかけするー!」
「俺も賛成♪ ここを探索するのもいいかなって思ってたけど、どうせなら、じっくり外も見てみたいぜ」
「私もです! 海の国、初めてなので!」
よし、満場一致だな。じゃあ、どこへ行こうか? 単純に王都の探索でもいいけれど、私はイチオシのお店とか知らないしな。……単なる観光なら、街中歩くだけでもいいけど。
「あらあら……それなら、海はどうでしょう。今の季節にピッタリですし。波打ち際で遊ぶだけでも楽しいでしょうから♪」
「わー! いいですね! 私、海の国の海岸はとっても綺麗だって聞いたことあります! 見てみたいですっ!」
ふむ、海、か。今の季節にピッタリだからこそ、人も多そうだけど……それもまあ、あり、か。
「せっかくです。国の所有する海に行ってみては? ブライトに掛け合いますよ、私。ティールもこの後の予定はなかったはずなので、一緒に行ってあげてくださいな」
え!? は、話がトントン拍子に進んでいく!
セイラさんは私達の同意を得る前にさっさと部屋を出ていってしまう。行動力の塊かよ、あの人……!
流石のレオン君もぽかんとしつつ、困ったように笑いながら私の方を見た。
「お~……? 俺ら、置いてかれたなぁ~? 大丈夫なのか?」
「多分、大丈夫。セイラさんのことだから、了承は得てくると思うよ。……私達は服を着替えて待ってよう。流石にこの服で海には行けないし」
「だな。うっし! アラシは騎士団の用事があるから誘えねぇけど、ティールは引っ張って行こーぜ♪」
……私達と別れた後はブライトさんと話をしてるみたいだけれど、今もまだブライトさんの執務室なんだろうか。



~あとがき~
切りどころはどこですか……?(滝汗)

次回、ティールとブライト。
一方その頃……ってやつだ!!

雑にまとめてる気がしてならない。申し訳ねぇ!
なんだろう。描写よりもキャラクター達が好き勝手話し始めてる気がするんですよね。
いつか手直ししてるかもしれない。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第333話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわちゃわちゃしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、海の国の王とその妃であるブライトとセイラが登場しました。ブライトは一言くらいしか喋ってないですが。
今回はラル視点より別視点の方がおもろ……いえ、久々に別視点の方がよいかなと思ったので、アラシ君視点です。ほら、久々にできそうな場面だし。ねっ! ねっっ!!??
アラシ「誤魔化し方下手くそか。動機が不純過ぎるだろ」


《A side》
案内役であり役職的には王と王妃を守る役目のはずのゼニスさんがいなくなってしまった。
いいのか。大丈夫なのか、これで……と謎に不安になってしまうのだが、ラルは何か思い当たる節でもあるのだろうか。さっきまでは笑顔だったのに、すっと苦笑いに変わる。
え、何? 何があんの……?
「……さてっと。ティール~?」
セイラ様とティールが立ち上がったのはほぼ同時だった。ティールが慌てたように踵を返し、こちらへ戻ろうとしたところで、一直線に駆け寄ってきていたセイラ様に手首を掴まれる。そして、どこにそんな力があるのかと問いたくなるのだが、セイラ様は掴んだ手首を引っ張り、自分の方にティールを抱き寄せた。
「ちょ、母上! 人前! 人前ですが!?」
「んもうっ♪ 母が息子を抱き締めるのに理由なんていりませんし、一目なんて気にしなくていいんですよ~♪」
「こちらが気にするのですが!?」
さっきまで、王妃として振る舞っていたはずのセイラ様が、今はティールにこれでもかとぎゅうぎゅうと抱き締めまくっている。これを異様な光景と言わずに何て言えばいいんだ?
「あらまぁ……やっぱり始まったか」
「やっぱりって何。何だよ、これ」
「うーん。親子愛?」
いや、分からんて。
戸惑ってるのは俺だけではなく、ラルを除く他メンバーは頭上にはてなを浮かべている。しかし、レオンだけは通常運転で、最初こそは首を傾げていたものの、今はどこか楽しそうに笑っている。
「なんか面白そうなことになってきたな~?」
「お前のそれは最早才能だな。流石だよ」
なんて言ってはみたものの、憧れもしないし、褒めもしてないけど。
「元気にやっているのは分かっていましたが、こうして姿を見ると安心しますね。私の知らないところで風邪や怪我してませんでしたか? 何か嫌なこととかありませんでした?」
「ないです! ないっ! 強いて言うなら、今この瞬間が嫌です!!」
「ちゃあんと元気だったんですね~♪ お母さん、嬉しいです~♪」
「都合のいいことしか聞いてないその耳を何とかしてください。母上、私は……」
と、ここまでにこにことティールを抱き締めていたセイラ様だったが、ふと不満そうに息子であるティールを見つめる。
ティール。いつも通りでいいと言ったはずです」
「あれはラルに言ったのでは?」
「ラルちゃんにも言いましたけれど、ティールにも言いました。なんなら、この場の全員に向けて言いました! 母上じゃなくてお母さん。敬語もなしだと何度も言ってるでしょう?」
「それは理解していますが、人前ですよ」
「人の目があろうとなかろうと、関係ないのです! 私がティールのお母さんなのは変わらないですもんっ!」
「いや、この場では私の母ではなく、国の王妃であるべきだと話してるんです」
「あら。それはもう終わったと思いますけれどねぇ」
「……終わってないから言ったんだけどね、ぼく」
……マジで俺達は何を見せられてるんだろう。
最後の最後でティールはいつもの口調に戻ったが、セイラ様はティールから離れようとはしない。ティールから「お母さん」と呼ばれない限りは離れるつもりがないのだろうか。……あるいは、これが通常なのか。
「通常だよ。セイラさん、ティール大好きだもん。ティールが帰ってきたら、大体、あんな風にくっつくらしいからねぇ」
と、ラルが教えてくれた。
呼ばれても呼ばれなくてもあんな風になるんだ。……ティールのやつ、苦労してんな。
「母さん」
「はぁい♪」
ティールが諦めたようにセイラさんを「母さん」と呼び、それにセイラ様は嬉しそうに答える。ついでにセイラ様の抱き付きからの脱出も諦めたらしく、されるがままになっていた。
「ツバサ達に改めて自己紹介でもしたら? ちゃんと名前、言ってないよね」
「あら、そうでした♪ んもう、あなたも教えてくれればいいのに~? そこで黙って見てないで、こっちにいらっしゃいな」
セイラ様は今まで静観し続けていたブライト様に目を向ける。ずっと静かだったから頭から抜けてしまっていたが、ブライト様もあの光景をじっと見ていたのか。止めようとは思わなかった……いや、毎回あんな風になるのなら、止めても無駄だってことなのかもしれないな。
セイラ様に呼び掛けられたブライト様は、ゆっくりと玉座から立ち上がり、俺達の方へ歩み寄る。そして、容赦なくセイラ様の頭をぽかんっと叩いた。
「きゃう」
「教えたところでお前は止まらんし、私の言葉など聞かないだろう。……それはそれとして、さっさとティールを離せ。何度も言うが、客人の前だ」
「まあっ! ブライトもそれですか。いいじゃありませんか。せっかく久し振りに会えたのですよ? ぎゅーってしたいじゃないですか」
「やりたい気持ちは否定しない。だから、やりたいのなら後でやれ」
「後でやらせてくれなさそうだから、今やるんですよ。分かってませんね、ブライトは」
後でやらせてくれなさそうだから……ってのは分かる気がする。確かにあの反応だとティールはやらせてくれなさそうだけども。
しかし、ブライト様の言葉も一理あると思ったのか、セイラ様は名残惜しそうにティールからそっと離れる。まあ、解放されたティールは一目散にラルの影に隠れたが。
「ほら、逃げられちゃいました」
「私が悪いのか?」
「そーです。ブライトが悪いんですー!」
「……暴論が過ぎる」
……声には出さないけど、俺もそう思う。セイラ様には申し訳ないけど。
セイラ様はぷいっとブライト様から目を逸らすと、今度は俺達に視線を向ける。先程まで不機嫌そうだったのに、俺達を見る目はそれを感じさせない優しい眼差しだった。
「うふふ♪ お見苦しいところをお見せしてごめんなさいね? では、改めまして自己紹介を。私はセイラ……一応、この国の王妃として王を支える役目をしています。けれど、今回は皆と王や王妃としてではなく、ティールの父と母として接したいと思っています♪ なので、様なんて仰々しい呼び方はしなくても大丈夫ですからね~♪」
そいや、ラルもブライト様、セイラ様ではなく、ブライトさん、セイラさんって呼んでたな。もしかして、セイラさんにこうやって頼まれたからなのか。でなきゃ、意外と真面目なラルが不用意に様付けを止めるわけがないもんな。
「そして、私の隣でしかめっ面をしているのが私の夫であり、国王の……」
「ブライト・リエンマイムだ。……セイラ、しかめっ面は余計だ」
「あら。事実ですよ? 久々の息子と対面なのに、その顔はないでしょうに。きちんと会話をしたらどうですか~?」
「しかめっ面はお前のせいだし、会話をさせる隙を与えなかったのもお前のような気がするが?」
「うふふっ♪ 聞こえませ~ん♪」
「……」
あぁ、この感じ……苦労してんだろうな。
セイラさんに振り回されたこの場の空気だったが、ようやくこちらに手番が回ってきたような気がする。ならば、今度はこちらが挨拶する番だ。
その空気をツバサも感じ取ったのだろう。今までのティール達のやり取りをぽかーんっと眺めていたのだが、ハッと我に返り、慣れた所作で恭しく頭を下げる。
「ご挨拶が遅れました! 私、ツバサ・L・ケアルです。陛下と王妃様のことはお母さ……両親から聞いています」
清楚な白のワンピースの裾の端を持ち、いかにもお嬢様の挨拶だ。
俺もツバサに続いて、騎士スタイルの姿勢でペコリと頭を下げる。
「アラシ・フェルドです。今回は主に騎士団の方々にお世話になると思いますが、よろしくお願いいたします」
「レオン・エクレールです。ツバサの付き人として参りました」
最後にレオンも恭しく一礼したところで、俺達は顔を上げる。
ブライトさんの表情は変わらないが、セイラさんはにっこりと微笑み、満足げに何度か頷いた。
「三人のことはルーメンお爺様から聞いてますよ。ここにいる間のお部屋や食事なんかはこちらで用意します。自分のお家だと思って、自由にして構いませんからね♪」
自分の家だとは思えないけど、そう言ってくれるのは歓迎してくれている……と思っていいのだろう。
手短ではあったが、俺達の挨拶も済ませ、とりあえずは任務達成……と言ったところか。
「なんか意外。レオン君、そういう心得あったんだ?」
ぽつりとラルが呟く。
恐らく、ラルの中で、レオンが礼儀作法がきちっとできていた事実が不思議だったのだろう。俺は騎士団で学ぶ機会もある、ツバサは生粋のお嬢様だからできて当然。でも、レオンはどこで学んだのか、と疑問に思ったらしい。
普段、おちゃらけて、ふざけた姿しか見せてないから、その反応は間違ってない。
「にしし♪ 実は小さい頃、ツバサ達と一緒に礼儀作法を教えてもらってたんだよな~♪ だから、こういう場面での作法、マナーはバッチリだぜ?」
「へぇ? ツバサ達ってことは他の……アリア達もってこと?」
ラルと同じようなことを考えていたのか、ティールも不思議そうに首を傾げる。その質問にはツバサが笑顔で頷き、肯定した。
「はいっ♪ 皆が遊びに来てた時とか、たまにですけど、一緒にそういう授業を受けていたんです」
「一緒に受けてたっつーか、ツルギが脱走しないように見張るみたいなやつだったけど」
「あはは♪ そう言えばそうだったね~? 昔のツルギは私も巻き込んで、礼儀作法の先生から逃げてたなぁ……今はもう流石にないけど」
今よりもうちょい小さかった頃はよくあったよな。いやぁ……あの手この手で逃げ出すもんだから、大変だったぞ。
「あらぁ? セラちゃんから聞いてはいたけれど、ツルギ君はセラちゃんによく似ているのねぇ?」
クスクスと楽しそうに笑うセイラさん。ブライトさんも声にはしないものの、何度か頷き、セイラさんの言葉を肯定していた。
そんな二人をツバサはぽかんとしながら見上げ、首を傾げる。
「そう、なんですか?」
「えぇ。だって、セラちゃんも小さい頃はよく脱走していたものよ? ブライト、苦労させられてましたものね~」
「……否定はせんが、困っていたのは私だけではないぞ」
「ふふっ。確かにギルドのみーんな、困ってましたね♪」
「ほえ! そうだったんですか!? そんな話、聞いたことないです」
俺もそんなセラおばさんを想像はできない。
話を続けようとしたセイラさんだったが、ふと何かに気づいてブライトさんに目を向ける。
「あ、ブライト、この後の予定って大丈夫そうですか?」
「今更それを思い出すのか、お前は」
「ちなみに私は問題ないです!」
「……アラシさんは騎士団の方で合同訓練があったように記憶しているが」
セイラさんの言葉は無視し、ブライトさんは俺をちらりと見た。「間違ってないだろうか」と確かめるような目に俺は無言で頷く。
「他は特にはなかったように思う」
「なるほど。じゃあ、ラルちゃん達は私と一緒に行きましょうか!」
「え、嫌ですけど」
ラル、即答で否定かよ!?
しかし、聞こえているのかいないのか。セイラさんはにこにこ笑顔のまま、がしっとラルの腕を掴む。
「せっかくです! たくさんお喋りしましょう♪」
「この後の展開が予想できるから、嫌なんですけど!! ティール! へループ!!」
「え、ぼく?」
ティールは私のところへ来い」
早速、頼りたい相手が取られちまったな、ラルのやつ。
ティールはぴくっと肩を震わせ、ほんの少しだけ気まずそうに俯いた。しかし、それも一瞬で、ブライトさんの言葉に小さく頷いていた。
「はい、父上。……ごめん、ラル」
「うん、知ってたー! 知ってたけど、助けてくれー!!」
「今回は一人じゃないよ、ラル」
「……た、確かに?」
何をどう納得してるんだろう。つか、あっちは何が行われようとしてるんだ。
結局、俺は部屋の外にいるゼニスさんと合流し、合同訓練へ。
ティールはブライトさんと、他のメンバーはセイラさんと行くことになった。
ラルのあの反応の真相は気になるが、俺は様子を見に行けそうにない。……まあ、レオンもいるし、ツバサは大丈夫だろ。



~あとがき~
長くなっちった。
犯人はセイラさんです!

次回、セイラチーム。わちゃわちゃする未来しか見えません。

いやはや、アラシ君視点はいかがですか!
セイラが楽しそうに話しかしてませんね! そのせいで他メンバーみーんな大人しかったですわ!(笑)
アラシ君視点の意味とは。
いや、私の当初の意図としては、わちゃわちゃするセイラ達を見て、アラシ君があわあわするというか、困惑するみたいなのが書きたかったけど、書けなかったね。私にスキルがないばかりに……!

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第332話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でわやわやしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、王宮突撃したら、新キャラのゼニスとアルベルトが登場しました。
ラル「厳密に言えば、王宮がある敷地内にはいるけど、王宮内にいないんだよなぁ」
ティール「手前でのんびりしてたねぇ」
……た、立ち往生はしてないからね??(滝汗)
ラル、ティール「それはそう」


《L side》
王と王妃……ブライトさんとセイラさんか。
王と王妃に謁見する場となると、王宮内にある謁見の間だろう。二人はすでにそこにいるのだろうか。
「到着時刻はルーメン様から伺っていましたから。概ね、予定通りかと」
なるほど。
ゼニスさんを先頭に王宮内を進んでいく。私は一度、来たことがある関係である程度、王宮内─というか、ティールん家一帯─のマップというか、間取りは把握済みだ。
だからと言って、我が物顔で歩けるものでもないのだが。
すれ違う使用人や王宮内で働く官僚達は─という言い回しで合っているかは謎─私達を見て、恭しく一礼してくる。ゼニスさんがいるせいなのか、私達が客人だからなのかは分からない。それでも、遠回しに「特別な方々」なのだと認識されてるのかと思うと、むず痒いと言いますか。
「皆様、こちらです」
ゼニスさんに案内されたところは煌びやかな装飾が施された大きな扉の前だ。如何にも「この先に王様いるぞ!」と主張する扉だなぁというのが平々凡々な私による感想です。
「この先に陛下と王妃がお待ちです。しかし、お二人からは殿下も共にと仰せつかっていますので、皆様はこちらで少々お待ちください」
「はーい♪ なんか今更だけど、俺ら、めっちゃ私服だけどよかったんすかね? アラシは騎士団員の服だからいいとしてさ~?」
レオン君の言う通り、正装してるのはアラシ君だけだ。残りの面々は当然だが、私服。奇抜な格好をしているわけではないし、問題はないと思っている。何より、だ。
「私は初対面の時より、真面目な格好しているから大丈夫だと思ってる」
「ほえ? ラルさん、どんな服着てたんですか?」
「探検隊用の服。ローブ羽織ってたとはいえ、それなりに泥だらけだったような」
「……ラル、お前」
何をどう考えたのか、アラシ君から哀れみの目を向けられる。何をどう考えたんだ、本当に!
「あの、誤解しないで? この国にあるダンジョンへ仕事があった帰りに色々あって、ここに連れてこられたんだよ。ゼニスさんに」
全員の目がゼニスさんに向く。
ゼニスさんは大人の余裕の笑みを浮かべ、「そうでしたねぇ」とにこやかに話し始める。
ティール様が我々から逃げようとなさるので、あの手この手で捕まえたんでしたね。その節はご迷惑をおかけしました」
中二の夏。この国を訪れた理由は仕事である。その帰りにこの国の街を探索中にばったり、巡回中の騎士団員を連れたゼニスさんと出会した。一回目は上手く撒いたのだが、二回、三回と回を重ねた結果、ゼニスさんの手によって捕まってしまい、嫌々ここへ連れてこられたというわけだ。
「謎の鬼ごっこしましたね。……今なら完全に撒ける自信あるんですけど、あの頃は本当に未熟で」
「おやおや。今度、再戦しますか? こちらも手は抜きませんよ」
……怖そうなんで嫌ですね。
話が脱線したが、ブライトさん達がこのままでいいと言ってくれたのなら、お言葉に甘えていいと思う。というか、身なりを整える時間もなく、ここに連れてこられたので、必要ないってことなんだろう。
「ゼニスさん、穏やかな人なのかと思ったけど、意外と容赦ないタイプ……?」
「それはアラシ様のご想像にお任せします」
「っ……あの、ゼニスさん。アラシ様ってやめていただけると」
おずおずとアラシ君が申し出る。アラシ様呼びが聞き慣れていないから……という理由ではなさそうだ。
なぜなら、騎士団員の人達からアラシ様って呼ばれているから。彼らからすれば、アラシ君は次期団長。アラシ様って敬うのは当然なのだし、アラシ君自身、そう思っているはずだ。でなければ、団員達からの呼び掛けに平然と受け答えしていない。しかし、ゼニスさんは他国の騎士団でそれも団長さんだ。そんな人から「アラシ様」って呼ばれるのはどうにも居心地が悪いのだろう。
「私からすれば、皆様は大切なお客様。敬うのは当然かと」
「ぐ……そうかもしれませんけど」
「ふむ。……そうですね。訓練が始まれば、様呼びはしないと約束しましょう。しかし、今の私は単なる案内役です。ご理解くださいませ」
要約すると、あと少しだけ辛抱してくれやってことだな。
ゼニスさん、騎士団長なのに時々、執事ではと思うことあるもん。それはきっと、普段からブライトさんの側に仕えてるからなんだろな。
「ふふ。そう思っていただけて何よりです。……と、話している間にティール様のご到着ですね」
ゼニスさんの言葉にツバサちゃん達もそちらを振り向く。ティールを見た第一声はと言うと。
「お、おぉ……なんつーか、別人だなぁ?」
「…………え、誰」
「はわぁ~♪」
ティール! ティール、おーじさまだ!」
以上である。
普段からフォーマルな服を好むティールだけど、王子ver.なるとより一層それが強まるというか、別次元で変化するというか。
落ち着いた青系統の貴族が着るような豪華な衣装。髪も綺麗にセットしてあり、左耳には小さなひし形の宝石が揺れるピアスがしてあった。
「素直な感想、どうもありがとう……! っと、お待たせしました」
「いえいえ。何事もなくこちらへ来られたようで何よりです」
「………………まあ、うん。ソウデスネ」
あ、あれは何かあった間だ。
しかし、その内容についてティールは触れず、そっと扉の前に立つ。そのまま扉に手を掛けるかと思ったけれど、何を思ったのかその手を止め、ゼニスさんの方をちらりと見た。
「流れでぼくが先頭に立ったけど……ゼニスじゃなくていいの?」
「私はどちらでも構いませんよ」
「……そう」
ティールは扉に手を掛けてから、一度だけ深呼吸をすると、意を決したように扉を開ける。
その先には白い壁、大きな窓に囲まれた大広間があり、奥には二つの玉座が厳格な場であると言うような存在感を放っている。
玉座にはそれぞれ、人が座っている。
一方は軍服のような服からマントを纏う男性。男性にしては長めの髪は、艶のある紺色をしていた。特に表情を変えることもなく、じっとこちらの様子を窺っている。
一方は可憐なドレスを身に纏った女性。水色の髪はふんわりとウェーブを描きながら腰辺りまで伸びている。優しそうな笑みを浮かべつつ、こちらを見つめている。
誰がどう見ても、あの二人がこの国の王とその妃だと分かる。そして、そんな二人がティールの両親、ブライトさんとセイラさんである。
ティールは数歩、前に出るとそっとその場で傅くように膝をつき、頭を垂れる。それに数秒遅れるように私達もぺこっと頭を下げた。
ティール・リエンマイム、ただいま戻りました」
「はい、お帰りなさい♪」
言葉を返したのは女性……セイラさんだ。
そこからほんの少しの間があり、ブライトさんがティールの名前を呼ぶ声が聞こえた。
「面を上げろ。……ラルさん達も上げてもらって構わない」
「畏まりました」
「……ブライト様、セイラ様。お久し振りでございます。この度はこの場の滞在をお許しいただき、ありがとうございます」
と、ある意味お決まりの台詞を言ってから顔を上げる。ツバサちゃん達もこの場の空気に飲まれているのか、目の前の二人に圧倒されているのか分からないが、戸惑いつつもそっと顔を上げた。
「あらあら♪ ラルさん、今更そのような態度を取らなくてもいいんですよ? いつも通りいきませんか? 私もそうしますから♪」
……一応、畏まった方がいい気がしたんだけどな。
セイラさんの隣にいるブライトさんの様子を窺うものの、やっぱり表情は読み取れない。しかし、セイラさんの発言を制止はしなかったので、問題ないと思っている……としようかな。
「では、お言葉に甘えて。……改めて、お久し振りです。セイラさん、ブライトさん。しばらくの間、お世話になりまーす♪」
「……! はじめまして! しずくです!」
「え、ちょ、雫!?」
いきなりいつものテンションで挨拶をするしーくんに驚くティールだが、いつもの通り宣言をしたセイラさんは気にする素振りはない。なんなら、楽しそうに笑い、しーくんに小さく手を振っている。
「はぁい♪ 雫くんのことはティールから聞いてますよ。本当に小さい頃のティールによく似てますねぇ♪ うふふっ! 昔を思い出します~♪」
一頻りキャッキャッした後、セイラさんは私達の後ろに控えていたゼニスさんに目を向け、にこりと微笑む。
「ゼニス君、ここまでラルさん達を案内してくれてありがとうございました。もう下がって大丈夫ですよ」
「畏まりました。何かあればお呼びください」
「はーい♪」
ゼニスさんは恭しく一礼し、そっと謁見の間を出ていく。一国の主の護衛がさっさと出ていく光景にツバサちゃん達は驚いているらしい。そりゃ、基本的には側に仕えているべきだ。私達が客人とは言え、何もしない確証はないはずなのだから。
しかしまあ、ゼニスさんを追い出し……いえ、退出させたってことは……始まるのか。



~あとがき~
この先続けてしまうと長くなるので、次回に持ち越しです。

次回、一体、何が始まるのか。

作中でもラルが言ってましたが、彼女は過去に一度、ここを訪れ、王宮の方々とは顔を合わせております。
訪れるきっかけとなった経緯は語った通りです。家に帰りたくないティールに付き合って鬼ごっこした結果、捕まって連行されたからですね。

ではでは。

学びや!レイディアント学園 第331話

~attention~
『空と海』のキャラ達が学パロなif世界でのんびりしてる物語です。本編とは一切関係がありません。また、擬人化前提で話が進み、友人とのコラボ作品でもあります。苦手な方はブラウザバック!
前回、海の国へ到着し、王宮前まで来ました。入れんかったわ。今回は入りますよ!
ラル「入れなかったらビビるけど?」
ティール「門の前で立ち往生」
王子がそこにおるのに立ち往生とはこれ如何に??
いや、立ち往生しないから!! 大丈夫だから!!


《L side》
今まで馬車と並走していたアラシ君が騎竜から降り、その手綱を他の騎士さんへと手渡すと、門の側にいる騎士さんへ近寄る。
「陸の国、スプランドゥールの『明けの明星』の長、ルーメン・L・ケアル様。並びに騎士団団長、フェゴ・フェルドの名代として参りました、アラシ・フェルドです。今回、陸、海両国での定期貿易、騎士団合同訓練の為にこちらへ参りました。そちらの騎士団団長殿へ取り次ぎは可能でしょうか?」
こちらに背を向けているので、表情までは読み取れないのだが、今のアラシ君は真面目な顔をしているに違いない。
最初から私に対して敬語を使わないアラシ君が、ここまで畏まった言い方をしているのが面白くて仕方がない。
しかし、この真面目空気で笑うわけにもいかないので、すんっと澄まし顔をしていると、門番の騎士さんが何か返答する前に王宮の門がゆっくりと開く。
「ふふ。……時間通りの来訪、感謝します」
シンプルなロングコートに片手剣を帯剣している男性が微笑みながら姿を現した。そして、その横にはいかにも執事ですって感じの燕尾服姿の男性が佇んでいる。
騎士さんはロングコートの男性に対し、ぴしっと背筋を伸ばし、右手を胸に当てる。ついでにアラシ君もペコッと頭を下げた。
「団長! お疲れ様です!」
「あぁ。……君達も警備、ご苦労様」
門番の騎士さんに言葉をかけ、すぐにアラシ君へ目を向ける。
「話には伺っています。君が……」
「は、はい! アラシ・フェルドです!」
「ふふっ……そんなに緊張しなくても大丈夫です。私が海の国の騎士団団長、ゼニス・グレイフォード。こちらは王宮に仕える執事の一人、アルベルトです。……それにしても、お久し振りですね」
「……?」
ゼニスさんの言葉に恐る恐る頭を上げるものの、困惑気味なアラシ君。そんな彼の気持ちを察したらしいゼニスさんはニコッと笑い、付け加える。
「以前、私とお会いした時は小さかったので覚えていないのも無理はありませんね。……アラシ様は一度、お父様に連れられ、ここへ来たことがあるんですよ?」
「はいっ!? そうなんですか!? 親父、そんなこと一言も……」
「そうですね。……恐らく、黙っていた方が面白いと思われたのではないでしょうか。まあ、フェゴさんのことは君がよく分かっていると思いますけれど」
「うっ……! 確かに、親父が考えそうですね。……いやだからって、黙ってるのはどうなんだよ、親父のやつ!」
お祭りの時も思ったけれど、アラシ君ってフェゴさんに玩具にされてないか? 流石、イグさんのお父さん……なんて言うと、アラシ君もそうなのだけれど、彼は誰かを玩具にするイメージはない。
ここにはいないフェゴさんに対する恨み言に忙しいアラシ君は放置し、私は窓から大きく身を乗り出し、ゼニスさんへ手を振る。
「こんにちは、ゼニスさーん! しばらくお世話になりまーす!」
「おや、ラル様。お久し振りでございます」
以前、ここへ訪れた際、ゼニスさんとは顔見知りになっている。なんなら、過去に滞在していた時は騎士団の訓練に参加したことすらある。流石に騎士団全員の顔を知っているとまではいかないけれど。
しかし、ゼニスさんの横にいる執事さん、アルベルトさんとやらは初見である。
ティール、あの執事さんは知ってる人?」
「……ん?」
顔を出すつもりがなかったらしいティールは馬車の中でじっとしていたのだが、私の言葉にちらりと窓から外を見た。そして、─そこまで身を出していた訳ではないが─アルベルトさんと目が合ったのか、ティールはしまったという顔をし、アルベルトさんはパッと顔を輝かせる。
「……アルベルトはぼくの従者だよ。ツバサのメアリーさんみたいな感じの」
専属の使用人さんってことね。ティールは随分と慕われているようで……ん? アルベルト?
「前にドジっ子執事の話を聞いた気がするけど、あの人?」
ティールは小さく頷く。
私が聞いた話は、荷物を運べば転び、料理を作れば、何かしらひっくり返して、掃除洗濯をすれば、何かと手間を増やす……でしたっけ?
「そ。一日一回は何かしらトラブルを起こすことで有名なアルベルトです」
「にゃはは♪ それ、使用人として大丈夫かぁ?」
「が、頑張ってるのは一応知ってるから……っ!」
何とかフォローしているように思うが、今の話でなぜ使用人として雇われているのか謎な人物ではある。もしかしたら、優しいティールの堪忍袋が切れるのは近いかもしれない。
そんなアルベルトさんはティールに熱烈な視線を送り続けている。早く話したくてウズウズしている……そんな感じだ。
「……くっそ。これは行かなきゃ駄目かぁ」
そう呟くと、ティールは身なりを整えながら馬車を降り、アラシ君のところまで歩み寄る。
「お久し振りで……いや、久し振り、ゼニス。ベルト」
「はい。お久し振りでございます、殿下」
「お久し振りでございます、ティール様! お元気そうで何よりです。このアルベルト、ティール様の帰りを待ち望んでおりましたー!」
「うるさい、ベルト。客人の前だ。自制しろ」
「申し訳ありません。嬉しくて、つい」
アルベルトって人、なんだろう、子犬みたいな人だな。私の第一印象はそれだ。
「はっ! 申し訳ありません! 思わず、取り乱しました!」
ティール達三人の会話でようやく我に返ったアラシ君は三人に向かって再び頭を下げる。
「いえいえ、お気になさらず。……アラシ様のその性格は陛下から伺った通り、若い頃のフェゴさんにそっくりです」
「……へ?」
ぽかんとするアラシ君にゼニスさんはクスッと小さく笑うと、「単なる独り言です」と返す。
「さて。皆様をこのままこの場に留まらせておくわけにはいきませんね。定期貿易並びに合同訓練。そして、ティール様一行についても聞き及んでおります。どうぞ、中へ。……ティール様も一度、馬車へお戻りになられますか?」
「いや、面倒だから歩く。すぐそこだし」
すぐそこって距離ではなくないか?……と思ってしまうのは、私の感覚が庶民だからだろうか。いくら王宮の門を潜ったからと言って、目の前に王宮どーんって訳ではないのだけれど。
門を潜って最初に目に入るのは、綺麗に剪定された庭園。その庭園を抜けた先に王宮の扉が見えてきたはずで。
「畏まりました。……では、ティール様はそのままアルベルトと共に自室へ。スプランドゥールの騎士団方は私の部下が、ギルドの皆様は王宮前で担当の者がご案内致します。……もちろん、ラル様方は私がご案内致しますので、ご安心を」
「分かった。……ぼくの荷物は」
「後程、私がお運びします」
噂のドジっ子執事とは思えない程、きちっとした所作で名乗り出る。恭しく頭を垂れるそれは正しく、主を敬う従者の手本のようなそれだ。
「ふむ。ベルトが? 転けてぶちまけないって約束できるか」
「私の命に代えても死守致します」
ティールはじーっとアルベルトさんを見つめた後、そっとゼニスさんへ目を向ける。
「ゼニス、頼んでもいい?」
「はい。他の使用人に伝えておきましょう」
ティールさまー!!??」
「信用ならない。ぼくがいるならともかく、一人でだろ? なんか怖い」
おおう……バッサリやな。
先程、馬車ではフォローしてたけど、実際はそうでもないらしい。
「アルベルトさんだっけ? ティールから手厳しく扱われてんだな。刺々しいティール、あんまし見ない気がするなぁ」
「うゆ? ラルにおこるとき、あんなかんじだよ?」
「あぁ~♪ 確かに、生徒会室のティールさん、あんな感じの時ありますもんね♪」
……明言はせず、黙秘させてもらおっかな。えへへ。
私達の乗る馬車はゼニスさんの先導─流れでティールとアルベルトさんもゼニスさんと先頭を歩いてる─で庭園の中を進んでいく。
数分、のんびりと進むとようやく目的地の王宮前へと到着する。ここから更にいくつかの棟というか、別邸があるのだ。
王宮そのもの、王家達の住まう邸宅、お客様用の邸宅、騎士団員の仕事場&寮、その他諸々。それら一帯全てがティールのお家に含まれるのだから訳が分からない。
「ほあー! 綺麗です!」
「立派なもんだな~……昔からあんの?」
「まあ、王権主義国家として国を治める時代からあるから、古いっちゃ古いね。適宜補修とか、建て直しとかしてるから、そこまで目立つ劣化はないけど」
「どこまでがティールのおうちなの~?」
「遠くの方までだよ。後で一緒に行く?」
「いくー! ティールのおうち、たんけんだ!」
馬車から降りたツバサちゃんやレオン君、しーくんの言葉にティールが笑顔で返答する中、私は後ろを振り返り、遠くを見つめる。
あんなに大きかった門が小さく見えた。それ程遠くに王宮自体存在するということになる。
「ツバサちゃんの家もひっろいなぁなんて思ったけど、ティールの家はその次元越えてるよね。いや、マジで」
「王都内にあるとは思えない程の広さですからね。もしかしたら、片田舎の村くらいの敷地面積はあるかもしれません♪」
いやね? 笑えんのよ、ゼニスさん。冗談に聞こえないから、笑えませんのよ。
ゼニスさんはそれ以上は何も言わず、私に向かってニコッと笑いかけると、てきぱきと自身の部下達に指示を出したり、ギルドの人達を案内する使用人さん達に手短に状況を説明したりしていく。
「さあ、ティール様。こちらです」
「知ってるよ。ぼくの家だから。……じゃあ、ラル、皆のことよろしくね? 何かあったらゼニスさんを頼ってね」
おっすおっす!
ティールはにこっと笑うと、「おいで」と呟く。すると、どこからともなく、スイちゃんとセツちゃんが飛んできて、ティールの腰へと装備される。そして、私に向かって小さく手を振って、慣れた足取りで王宮内へと入っていく。
この場に残ったのは、私、しーくん、ツバサちゃん、レオン君、アラシ君。そして、案内役のゼニスさんだ。
「おやおや、ティール様。最後の最後で気を抜きましたか。残念です」
ゼニスさんの笑みを絶やさず、意味深(?)な言葉にツバサちゃん達は首を傾げる。しかし、それについての説明はせず、ゼニスさんはそっと王宮の扉を開く。
「私達も参りましょう。皆様の荷物はこちらで運びますのでお気になさらず」
「? 参るってどこにっすか?」
「国王と王妃の元へです」



~あとがき~
やべぇぇぇ!!! ぐだってるなぁってのがまる分かりじゃぁぁぁ!!! はずいぃぃ!!

次回、海の国の王と妃。
名前ばっか出てたお二人の登場じゃい。

明確に決めている訳じゃないけど、ティールの家は王宮やし、その他諸々施設(?)もあるしでめっちゃめちゃに広い設定。
そして、今回は騎士団のゼニスと執事のアルベルトが登場しました。今後も頻繁に出てくるかまでは分かりませんが、よろしくな!

ではでは。