satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第170話

~今までのあらすじ~
解説終わり! まだ分からないことはありますが、それはもう少し後で!
今回はピカちゃんのピンチ、再びって感じです。
ピカ「何度私を殺そうとすれば気がすむのか」
あと三、四回は我慢してくれ。
ピカ「不公平! もっと別の人を不幸にしよ!?」
フォース「回数多くない? お前」
ピカ「それな!? だからもっと分担しよう!?」
それはどうだろう……?
ピカ「あんまりだー!!」
フォース(不幸の分担とは一体)
ではでは、始まります!


浅葱の言葉の真意を聞けるような雰囲気でもなく、言われた通りに二人と控え室に戻った。扉を開けると、ピカがベンチの上……ではなく、床に倒れていた。話していたときはそこそこ余裕があったが、今ではその余裕も感じられない。息苦しそうに息を弾ませていた。その様子を見て、浅葱は一瞬で状況を把握出来たようで、迷うことなくピカの元へと駆け寄る。
ポチャとフォースは入口付近に立ったまま動くことはなかった。単純に何かしようとしている浅葱の邪魔にならぬようにしているだけである。
「落ちたの……?」
「幅が狭いからね。その可能性はありそう」
「……ずっと除外してた可能性があったんだけど、もしかしてそういうことか?」
「“サイレントキラー”って知ってる? 知ってるならそういうことなんだけど」
「まだ使い手がいたんだ。途絶えていたと思った」
ルール説明の中に危険なもの、命を奪いかねない技は禁止するとあった。だからこそ、フォースの中でいくつかの可能性が消えていたのだ。その一つがポチャの言った、“サイレントキラー”である。
これは技というよりは一種の能力のようなものである。簡単な言葉で表すなら、一つの暗殺術といえるだろう。刃物や道具を必要とせず、己の身そのものが武器になってしまうと言っても過言ではないくらいに攻撃力が上がる能力だ。また、使い手に攻撃されたからといってすぐに効果が出るのではなく、時間をおいてじわじわと効果が出てくる。その性質上、誰にやられたのか、やった相手がどこにいるのか等、特定しにくくなるという利点がある。しかし、争いが頻発しなくなった今の世では必要のないためか、使い手も激減したとされていた。
「大昔は領地の争いとか、お偉いさん達の陰謀とかあって、それなりにいたんだけど、今じゃ全然見なくなったな」
「武器も多様化して、わざわざ暗殺術なんて使わなくてもよくなったもんね……ほんとは武器なんてものも滅びちゃえばいいんだけど」
「それはねぇな。武器は傷付ける道具だが同時に守る道具でもある。……それが覆らない限り、なくならないよ」
「そうだね。……浅葱さん、ピカは?」
頃合いを見て浅葱に話しかけた。ピカの容態を確認したらしい浅葱はじっと目を閉じてその状態で話し始めた。
「……大陽の馬鹿のせいで大変なことになっちゃったわね。テンション上がったのかしら。あの駄犬め。だから考えて行動しろって言っているのに……あ、馬鹿だから無理ね」
「ぼかして言う辺り、かなりヤバそうですね」
「とりあえず、治癒すれば問題ないわ。ポチャ君、手を貸してくれる?」
「はい。ぼくでよければ」
ポチャは浅葱の要求に頷くと、傍まで近寄ってその場でしゃがむ。対してフォースは何をするでもなく今の状況をただ眺めていた。
“サイレントキラー”が使われたとすると、普通の治療ではどうにかなるとは思えなかった。となれば、浅葱も何かの能力を使うということになる。治癒系統の能力の継承は生命を司るウィルの管轄だ。そして、ウィルは能力を一般の人々に分け与えるような人ではなかった。理由は生命を左右するような能力は意図しなくとも人の寿命に関わる。寿命を勝手に操作することは禁忌とされ、人が触れていい領域ではないためだ。つまり、浅葱が治癒系統の能力を使えるなら、ウィルの関係者。もっと言ってしまえば、探検隊などしている人材でないと言えよう。
「そういや、兄貴は現世に守護者みたいなの置いてたっけ……今は誰だったかな」
浅葱が探検隊しているなら、別の者ががいるということだ。フォースは見たことも聞いたこともないため、誰なのかさっぱりだ。血縁者なのは確かだが。
「ま、いいか。兄貴が完全復活したのも最近だし、把握してなくて当然か」
フォースが仕えるのは力を司る神で、本来は関わりは全くない。ウィルがファウスの下で動いていたなんて事実がなければ関わりを持つことはなかっただろう。そもそも、ウィルがフォースの継承者をしてなければ今、ここに存在もしていない。
そんな今の状況では全く関係ないことを考えていると、浅葱の治癒が始まった。
浅葱はピカの手を左手に、ポチャの手を右手で繋ぎ、目を閉じて集中する。すると淡く光がふわりといくつも天へと舞い上がっていく。
この光が生命力なのだろうと察した。今していることは、他者へと生命力を受け渡しているのだろうと。生命力を送り込むことで自然治癒を促し、回復力を向上させる力だ。やり過ぎると他者と他者を結ぶ役割の担う能力者は死んでしまうし、生命力を渡す側も危険な状態になる。
「“リレクター”……久しぶりに見た」
ウィルも使うことが出来るため、過去に何度か見たことがあった。ウィル以外の人物が使うのは初めて見るのだが。
少しずつ光が終息していくと、浅葱はゆっくりと目を開ける。ピカを見ると、規則正しく呼吸をして眠っているようだった。
「……はい。これでおしまい。ポチャくん、お疲れ様。気分は悪くないかしら?」
「ぼくは大丈夫です。浅葱さん、ありがとうございました」
礼儀正しく、浅葱に向かって頭を下げる。それを見て、浅葱は頭を横に振った。
「元はと言えば太陽がやったことだもの。むしろ、こちらが謝らなきゃいけないわ。本当にごめんなさい」
「そんな……危険なのはピカも知っていたことです。けどまあ、こんなことは予測してなかったと思いますけど」
「私も予想外だったわ。“サイレントキラー”は第三者からは全く分からない能力。離れていたし、何も感じ取れなかったのもあるとは思うけれど、それはただの言い訳ね。太陽も無意識だったみたい」
「そうでしょうね。……ピカも運が悪い。ともあれ、引き留めてすみませんでした。後はぼくがやっておきます」
「えぇ、任せる。ピカちゃんには……説明は不要かしらね? とにかく、何かあれば連絡してくれて構わないわ。お大事にね」
ポチャに笑顔を見せると、立ち上がって部屋を出て行った。出て行く瞬間、フォースに向かって何かを口にするがそれは声になっておらず、口パクであった。短い一言を読み取るものの、首を傾げる。
「……なんで関係者だってバレてんだ」
「はあぁぁぁ……寿命が縮んだ!!」
ホッとしたのか長い溜め息がポチャの口から漏れる。目の前でパートナーが命の危機にあったのだ。気持ちは分からなくはなかった。
「大丈夫か、お前ら」
「ぼくは元気。……ピカはしばらく寝たまま、なのかな。分かんないや。“サイレントキラー”受けて生きてる人なんて聞いたことないから」
「確かに。でも、こっからは出なきゃな」
「あぁ、うん。そうだよね……ピカの荷物持って早く出ちゃお……フォース、バッグ持ってくれる?」
「いいよ」
近くに置きっぱなしだったトレジャーバッグを持とうとしたが、今の自分の姿が過去の幼き姿だったことを思い出した。戻ることも考えたが、ここを出るまではこのままでいいかと考え直し、バッグの紐を調節して引きずらないようにする。
「準備出来た? 行こっか」
「ほーい」
眠ったままのピカを背負って、ポチャとフォースは部屋を跡にした。



~あとがき~
終わり! いや、終わってないけどな!

次回、イブ達と合流します。久し振りにイブ視点出来そうですね。

新しい能力の登場です。いえーい!
まず一つ目。“サイレントキラー”! 嫌な能力ですね。知らない間に殺されちゃったってのが出来る恐ろしい能力です。やばいね! これについては詳しく話すことはないです。本編にももう出てこないのではと思う。
二つ目。“リレクター”。これは回復系の能力です。他者から他者へと生命力を分け与える能力ですね。実は能力者自身の生命力を分けることも出来ます。出来ますが、これだと能力者の負担がマッハなので浅葱も試したことはないです。ウィルは関係ないと思いますけどね。

もうね。ごめんね? ピカちゃん、マジごめん。この“サイレントキラー”と“リレクター”の説明をしたいがためにこんなことに……というか、浅葱と太陽の能力公開したかっただけなんですよ……ごめんな。ほんと。
ピカ「……」
ポチャ「かなり機嫌悪くなってるよ!」
や、ごめん……大丈夫。今度は大丈夫……
ピカ「今度って何? 生死の境をさ迷う話!? 大丈夫じゃないからな!」
うん! 大丈夫!!!
ポチャ「はっきりしないね?」
ピカ「ほんとにね」

ではでは!