satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第174話

~前回までのあらすじ~
ヤバイ組織の目撃情報……それに伴い、警備強化することになりました。大変。
ポチャ「胃痛がマッハだよ……助けて」
胃薬あるよ。
ポチャ「……飲む」
というか、元々君は王子様なんだからまとめるのは大丈夫でしょ!
ポチャ「それもあるけど、こんなところで武器を振り回すような人達がいることが胃痛の原因だから」
あ、そっちか。それは仕方ないや……
ポチャ「仕方ないやの一言で終わらせてほしくない……!」


プクリンからの申し出を受け入れると、彼はこくこくと頷く。ペラップが設けた時間はまだ残っていた。これからどうするかと考えることもなく、ポチャは救護テントの方へと足を運んだ。
入口を潜って周りを見てみると、テント内はこれからのことを考慮してか、傷の手当て用の道具等を急ピッチで揃えているところだ。備えあれば憂いなしということなのだろう。
そして、その更に奥。簡易的なベッドが数個並んでいるところの一つにピカが寝ていた。寝返りを打ったらしく、こちらに背を向けている。近付いて顔を覗いてみると可愛らしい寝顔で起きる様子はない。それがよかったのか残念だったのかはよく分からなかった。
「ピカ、大変なことになったよ。……君の仕事は見てた。でもさ、それと出来るかは別だよね。いや、出来る出来ないじゃないんだろうけど……うん。ぼく、けっこう弱気になってる」
ピカなら「情けないことを言うな」とポチャのことを鼓舞するのだろうか。あるいは「私のパートナーなんだから出来る」と励ますのか……どちらもあり得る話ではあった。
その場にしゃがんで、ベッドに顔を埋める。もう少しすればペラップが約束した時間になる。そうなれば、お祭りが終わるまで厳戒体制で警備をする必要があるのだ。弱気になれるのはこの限られた時間しかない。
「ピカはいつも、こんな重圧受けてたんだなぁ……なんでもない風にするから、全然気付かなかった」
ピカは立場上、あるいは才能があって誰かの上に立つことが多い。そして引っ張ることも作戦を立てるのも一人でやっていた。そんな彼女をポチャは影ながら支えていたと思っていたのだが、実際、立場が代わると今までが役に立てていたのか疑問になってきた。
「もう少し、傍にいていい? 久し振りに気分が沈んできてしんどくなってきた」
「……んっ……ポチャ? どぉした……?」
慌てて顔を上げると、薄目を開けてこちらの様子を窺うピカと目があった。起こしてしまったと罪悪感と同時に格好悪いところを見せたかもという焦りを感じた。
「んぁ……ここ、どこ? なんか、あった……の」
「あっと……えっとね」
見た感じ、まだ顔色も悪く、とてもじゃないが戦わせるわけにはいかないと判断した。相手は武器を使う可能性がある以上、ピカも雷姫を使わざるを得ないが、それが出来る状態ではない。とはいえ、下手に嘘をついて伏せておくのもピカは察して詰め寄る可能性があった。
「ここ、救護テントだよ。バトルが終わったあと、倒れちゃったの。覚えてない?」
「……あー……う、ん。太陽さんの……うん、わかる……死んだと思った……」
「浅葱さんにお礼言ってね。治してくれたの、浅葱さんだから。で、本当は基地に帰ろうかとも思ったんだけど、警備の人手が足りないって聞いて。ぼく、手伝いに行くことになった」
「……うん。……それで……?」
「手負いの君一人を基地に置いておくわけにもいかないって思って、ここに寝かせていたんだ。ここなら寝られるでしょ?」
嘘は何も言っていない。ただ、言いたくないことは伏せているだけだ。ピカは納得したのか、少しだけ開けていた目を閉じてポチャからも目線を外した。
「ん……理解、した。……で、ポチャはどして、そんな顔、してるの? 私が、無茶したから……じゃないよね。そんときは、怒った顔するもん」
「え? ど、どんな顔してるの、ぼく」
「ん~……不安そう……かな? よく、見てないから、なんとも……」
本調子でなくともピカはピカである。仲間のことをよく見ているものだ。これに関してはどう説明をしたらいいのか悩んでいると、ピカはゆっくりと慎重に上半身を起こす。そんなピカを制止するように立ち上がって肩に手を添えた。
「お、起きちゃ駄目だよ! まだ寝てなきゃ」
「そーなんだけど……そんな顔してるポチャ、ほっといて寝らんない…………ん」
ふわりと欠伸を漏らしつつ、両手を広げた。意味が分からず戸惑うポチャに痺れを切らして、ピカがポチャをぎゅっと抱き寄せた。これまた意味が分からずにあわあわしてしまう。そんな彼の様子に意にも介さず、ピカは動じることはなかった。
「え、あ……ん!?」
「どういう状況なのか、分かんないけど……私の代わり、してくれるんでしょ……?」
「えっと……そんなところ、かな」
そんなこと一言も言ってなかったはずなのだが、ポチャの様子を見て、可能性を考えたのだろうか。ドンピシャなことを言うピカにポチャは驚きつつもあくまで平然と受け答えする。
「じゃ、私が元気なるまで、任せるよ。……それなら、頑張れるでしょ……?」
「ピカ、参加するつもりでいるの? それなら気にしなくてもいいよ。ゆっくり休んでて。そのためにぼくが出るのに……」
「だぁからぁ……そんな顔してるポチャは、ほっとけない。だから、一緒にいてあげたい、けど、今の私じゃ邪魔になる……もう少し寝かしてくれれば、多分、大丈夫……になるよ。……大丈夫、ポチャ。私がいる……近くにいるから」
「……うん。ありがと。すっごい頼もしい」
「えへへぇ♪ だろ~」
抱き合っているため、お互いの顔は見えない。それでも、ポチャはお互いがどんな表情をしているのか簡単に分かる。それはピカも同じである。
ポチャの背中をぽんぽんと、ゆっくりあやすように叩いていた。そのピカの口からは、文章というにはあまりにも拙い、彼女の思考が漏れ出ていた。
「……敵はきっと、目的がある。……その目的は、読めない。情報が、足りない、から。……でも、いくつか、ある……可能性……が」
「知ってて、追及しないでくれたんだね。ピカ」
元々、『ヴァンガル』の詳報を集めていたのはピカだ。彼女が予測していたとしてもおかしくはないし、ここから本部までは大した距離はない。なんとなく聞こえていたのかもしれない。
ピカはポチャの言葉に何かを返すことなく、淡々と自分の考えを断片的に話していく。
「あの、組織と、手を……それなら、まも、らなきゃ……いけ、ない」
「守る? 来てくれてる皆を?」
「ちがう……たつ…断つ……? いや、そうじゃ……まもって、まもらない……と……あるい、は……」
「ピカ……?」
するりと力が抜けるように全身をポチャに預けてしまった。完全に意識を手放したようで、規則正しい寝息が聞こえてきた。
「敵の目的。守る。……あの子? あの子って誰? 知っている人なんだよね、多分。でも、ピカも確証があって言っていた訳じゃなさそうだった……どういうこと?」
そっとピカを寝かせ、布団を掛けてあげる。意識がなくなる最後まで、ポチャの力になるような情報を漏らしていたのだろうか。もしかしたら、考えていたことが無意識に漏れていただけかもしれない。いずれにせよ、彼女の考えの一部は共有することが出来た。
「……時間だ。行ってくるね」
ピカの頬を優しく撫でると彼女に背を向け、救護テントを出る。そして、ポチャはこれから起こる騒動へと足を踏み入れた。

「……雷姫。私はあとどれくらいで戦えるまでに回復する?」
「さあ……? 予想以上に入り込んでいたからの。マスター、気が急くのも分かるが、自分を大切にするのも必要ぞ」
ピカは自分の意識の中で雷姫に話しかけた。ポチャのあの様子だと、自分が予測していたより敵が早めに動いてしまったのは明白である。ピカが想像しているものでないのならいいのだが、微睡みの中でペラップの話している内容が聞こえていた以上、ほぼ確定だろう。
「くっそ。これは完全に予想外だ。……どうする。いや、体が使い物にならないんじゃ、どうしようもないが……はぁー! やってしまった!!」
「しかし、マスターがそこまで焦る必要はあるのか? 実力を認める者達もおるのだろう?」
「……視ちゃったから」
「“時空の叫び”か? いつ」
「さっきだよ。ポチャを抱き締めたときね……」
視たものを思い出すようにこめかみ辺りをとんとんと指で叩く。剣を持った人、双剣を構えている人、周りには何もない。何もないが周りの雰囲気は何かあったことを臭わせるものだった。音はない。声もない。ただの色褪せた映像。そんなものを視た。
「あれがポチャで首謀者なら……どうして、そんな展開に? ばったり? 偶然? 必然か?」
「マスター」
「剣を持ったあいつは誰だ? リストにはなかった顔……だよな。あー? いや、はっきり見えなかったな……確定的なことは言えない。なら、あの武器は?」
「マスター!」
「!? は、はい……!」
思考を一度止め、雷姫の方を見ると不機嫌そうにこちらを睨んでいた。
「一度、考えることを止めよ。さすれば回復も早くなる。今は体を休めることに専念せよ」
「……や、でも、考えちゃうっていうか?」
「なら、我が考えなくてもよくしてやろう♪」
「え、待って? 怖いんだけど……!?」
笑顔で近付いてくる雷姫になす術もなく、伸びてきた手に抵抗することも出来なかった。そこでピカの視界は暗転してしまった。こうなってしまうと、深い深い眠りへと落ちていくしかない。
その暗転する直前、雷姫の溜め息が聞こえたような気がした。



~あとがき~
思いの外、ピカとポチャがきゃっきゃっしてしまった……?

次回、イブに視点を戻して花火待機組!

弱ってるポチャくんもあんまりないですね。楽しかった。ピカも別の意味で弱ってますね!
ピカ「ムカつくわぁ」
ポチャ「あはは……」

雷姫、久し振りです。覚えているでしょうか。ピカの愛刀、雷姫様です。ピカの意識の中で好き勝手しているのは雷姫が主導権を握っているからですね。別にピカを操って何かすることはないですけど、本編のように自分のことを大切にしないときとか、休めって言ってるのに休まないピカを無理矢理休ませるときとか……ピカのことを思った行動しかしてないです。なんかこう……ピカが自分より他のことに没頭し始めるとやれやれって感じで制するみたいな。そんな感じ。
雷姫さんは本気になれば主の魂食べちゃう人なんでこんなことは序の口なんですね。あー怖い((←

ではでは!