satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第176話

~前回までのあらすじ~
花火が打ち上がりました! お祭りもクライマックスです!
ポチャ「簡単には終わらない……んだよね?」
ふははは!! そうだね!
フォース「その選択が自分の首を絞めるようなことにならなきゃいいな?」
ソ、ソンナコトハナイヨ……?
ポチャ「大丈夫かなぁ」
フォース「大丈夫じゃないな」


数々の花火が打ち上がる中、その人物はじっと人の流れを見ていた。立ち止まって空を見上げる者、空を気にしつつも移動を続ける者。また、何も気にせず歩いている者もいる。これだけの人がいて、誰もその人を気にも留めなかった。端から見れば、特に変な行動をしているわけではない。だからこそ、誰も気にしていないのだ。
突然、片手を空高く掲げる。そして、パチンっと指を鳴らした。何かを始める合図のように。
そして、そんなことをしている人がいても、誰も見ていない。花火に気をとられているせいだろうか。しかし、空で大きな音をたてて大輪の花を咲かせているというのに、一人だけその音に気づいた者がいた。ちらりと見ると、そこには誰もいなかった。
「……?」
彼は首を傾げ、音のした方へと来てみるものの、そこには何もない。少しだけ考えると、側の木に手をかける。
「ここに誰かいたのか? いたとしたら、どんなやつか分かるか?」
彼……フォースは目の前の木に能力を使って、静かに問いかける。しかし、沈黙が返ってくるだけだった。何も知らないということなのだろう。
「……ふむ。変なこと聞いたな。ごめん」
踵を返し、仲間の待つところへと駆け足で戻っていく。嫌な予感がしているためだ。
問いかけが返ってこなかったという答えがそれを確証に変えている。今までの経験から、自然が答えを返さないということは、何かに怯えているということ。その何かを刺激しないように静かになっているらしい。普通の人なら気づかないものだが、心を読む能力を持つフォースや、敏感なものになら感じ取れる些細な変化といえるだろう。
「やだなぁ……面倒くさい」

それぞれの持ち場につき、各々、警戒している頃。ポチャは周りを見回しながら、怪しい者がいないか捜していた。ソルが集めていた資料から、顔が割れている者を捜しているのだ。それでも、その足取りは重く、早く終わってほしいという気持ちでいっぱいになっている。
「荷が重い……」
『ポチャさん。こっちは異常ありません』
『ないぞー!』
「あぁ……うん。ありがとう、ソル。コン」
時折、連絡をくれる仲間の声で気持ちを鼓舞してはいるが、実際に現場に立つと大きな重圧がかかっていた。責任という大きな重圧。
「チルとフィフィは?」
『だいじょーぶ! 空から見ててもなーんにも!』
『特に変な空気も感じません。今のところは何もありません』
「そっか。……目立ちたくないなら、このまま何もなければいいんだけど」
『あっははっ! それ、フラグってやつでしょ? 言っちゃダメなやつ!』
コンが笑って茶化してきた。そうだね、と笑って返す前にソルの冷めた声がバッジから響いた。
『そういうこと言うから、幼稚に見えるんだ。子供扱いされる理由がそれだ』
『むうぅぅ!! ソルのバカ! 和ませようとする、あたしのは、はい?……あっ! はいりょ!』
「喧嘩しないの、二人とも。気を使わせてごめんね、コン。ありがとう」
『へえんっ! もっと言って!』
これ以上褒めると、更に調子に乗るのだろう。とりあえず、この要求はスルーしておくことにした。
ポチャがいるところは花火会場からは少し離れたところだ。それでも人は多く、周りの雑音で連絡が取りにくいと感じるほどに。警備だけして、『ヴァンガル』に注視していればいいかと言われれば、そんなことはない。他にもトラブルは発生するものだ。落とし物、迷子、喧嘩の仲裁、酔っ払いの対応等々。昨日一昨日からも時々発生していた事柄も疎かに出来ない。実際、ポチャ自身、見回り途中に何度か遭遇していた。ちなみに、昨日は一日、本部で待機していることが多く、酔っ払いの対応はピカがその都度現場に出ていた。話し合いだとかそういったものはピカに任せる方が早いのだ。
「はー……平和に終われよって思うんだけど」
空を見ると、いくつもカラフルな花火が上がっていた。このような風景を見ていると、何かが起こるとは思えないのだが。
そういった日常が壊れるのは一瞬だ。
遠くの方で悲鳴が聞こえたのである。そして、その悲鳴は伝染していき、人々をパニックへと誘う。大半は訳が分からず、周りが逃げているから、とりあえず逃げておくという行動を取っているに過ぎないのだろうが。
「な、何が……!?」
『ポチャさん! チルです! いきなり人が現れました。花火の会場の方角!』
空から見張っていたチルからの連絡だった。逃げ惑う人々の流れに逆らいつつ、応答する。
「いきなり!? “テレポート”でも使ったのか? それとも何か道具を? いいや。現れたのは何人?」
『いっぱいだよー! 十人とかそんな数じゃないの。たくさん! 武器は持ってないみたい』
チルと行動していたフィフィが答えた。さっと見て把握出来ないレベルの人が一気に現れたことになる。そんなことが出来るのだろうか。
『もっしー! コンだよ。こっちもなんかいっぱいる! ソルと周りにいた人達で応戦ちゅー! あたしも参加してくるね!』
「え、まっ……えぇ? どういうこと。全く整理出来ない。敵の目的は? この混乱に乗じて何かしたいのか……?」
チルとコンの情報だと、一ヶ所ではなく、複数箇所で起こった現象らしいことが予測出来た。そして、二ヶ所以外にも発生している可能性もあった。『ヴァンガル』は闇組織とは言え、そこまで大きな組織ではなかったはずである。
「い、意味が分からない……!」
頭を抱えたくなるが、そんな暇はない。各責任者に配られている小型無線機を取り出して、警備隊に参加している者達に呼び掛ける。
「スカイ所属のポチャだ! ぼく達の役目は敵からの被害を最小限に抑えること! 市民の誘導は他に任せて応戦しろ。武器の確認はしていないから、こちらからは必要以上に使用しないこと! あ、あと! 危険を感じたら撤退して。以上!」
プクリンのところに配属された人達の基本的役割は何かあれば、率先して前に出て、敵と戦うことだ。他のところも同じ役割を割り振られたところはあるが、どう動くかは分からない。
「戦況が全く分からないんだよね……不味い。後手に回りすぎてる」
慣れないことに頭を使いながらも、ようやく人の波から出てくることが出来た。イブ達がどうなったかも気にならない訳ではないが、フォースとウィルがいるのだから、何とかしているはずだ。
周りを見回すと、少し離れたところで複数人が敵と交えているらしい。こちらより倍以上の敵が襲いかかってきているが、幸いにもその動きは遅かった。
「あれを使うか。……“水遊び”!」
ヨーヨー釣りに使われていたであろう、水を能力で無数の弓矢へと形を変える。標準を敵に合わせて、一斉に放った。



~あとがき~
大変だよ。適当になってる。

次回、突然現れた敵にどう対処していくのか!
同時刻のイブ達に視点を持っていきます。

ポチャの“水遊び”。本編で使ったか覚えてないんですけど、使ったことありましたっけ?←
ま、いいや。使ったことある気がするけど、説明しましょう! “水遊び”は液体を自在に操る能力です。この能力を使っている間は、目の色が青く変化しております。はい、終わり。
フォースのあれは“マインド”っていう能力です。これもどっかで説明した気がします……覚えてないけど。制御者としての能力とは別に保有しているやつですね。あれは生前から持ち合わせてました。“マインド”は生きているものの声を聞くことが出来る能力です。なので、木でも花でも生きていれば心を通わせることが出来ます。まあ、めったに使いませんけどね!

ではでは!