satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第187話

~前回までのあらすじ~
フォースがスラを捕まえたところですね!
なんだかすっごいデジャビュ
フォース「それな」
なんだか何をしているのかさっぱりやで……
今回も続けてフォース達をやってくよー!
フォース「大丈夫か? 時系列とか」
大丈夫。ここら辺からは読んでる順になるはずだから! 多分!
フォース「へえ……?」
では、始めます!


「……最初から、こうすればよかった」
スラはぽつりと呟く。その呟きにフォースが返答することはなく、そして、急所を外した状態で一気に振り下ろした。
が、その動きが最後まで行われることはなく、ピタリと止まってしまった。自分の意思で止めたと言うよりは、体が勝手に止まったと言って間違いはないだろう。
「……マジかよ」
「こっちの方が効果あるみたいだね。ね、すーくん?」
スラが次に姿を変えたのは、イブだった。すぐそこに本物がいると言うのに、何の躊躇いもなく主の姿へと変化させたのだ。体の大きさが変わったせいで、拘束していた“チェーン”からも抜け出してしまう。抜け出しただけなら些細なことですむのだが、よりにもよって、イブの姿になるのは痛手である。
いくら容赦なく冷静に、且つ冷酷に人を武器で狙うことに躊躇いはなくても、その相手が継承者ならば話が変わってくる。
ある程度の距離を取り、剣を手元から消した。その代わりに鎖を手に持つ。対して、スラは子供らしい笑顔を見せる。
「そっちに変えちゃうってことは正解はこっちか」
「正解も不正解もねぇよ」
制御者としての本能が継承者に逆らうなとセーブをかけている。意思とは関係なく、初めからそう組み込まれているように反抗出来ないようになっているのだ。制御者は継承者を殺すことは出来ない。守ることが仕事なのだから、誰に言われなくても当たり前である。そんな当たり前の掟がここでフォースを縛る鎖となり、邪魔をしていた。
見た目だけで止まってしまうのだから、良くも悪くも出来た仕組みではある。理解はしている。していても、自分ではどうにも出来ないことも悟ってしまった。フォースでこれなのだから、正式ではないにしろ、ウィルもイブの制御者としてこの場に存在しているのである。つまり彼も、彼女に逆らうことは出来ない。そして、イブやチコが相手になるとは思えなかった。
「はぁ……マジかよ」
先程と同じ台詞を吐き、どうすればいいのか頭を動かす。動かしたところで、攻撃は出来ない。近距離武器では狙って動作に入れても、直前で止めてしまうし、遠距離武器は狙っても意図的に外してしまうだろう。考えることはどう足止めをするかであった。
「“紅の継承者”……なんだっけ。えいっ!」
「……はぁ!? 嘘だろ!」
間の抜けた合図と共に現れたのは宙に浮く剣数本。出てきた剣は細く、レイピアの類いだろう。何もないところから武器を創り出すそれは、紛れもなく、“強き力”の能力である。鈴流は途中だったとはいえ、ある程度制御するところまでは段階を踏んでいたので、大して驚きもしなかった。が、イブは全くと言っていい程に力に耐性がない。彼女自身に制御するという気持ちがあまりないせいでもあるのだ。目の前の彼女はそんなことをいとも簡単にやってしまったのだ。
本来、力を持つものは目に色が出てしまうが、彼女はいつもの黒目のまま。本当に力を操っている訳ではないらしい。が、感じ取るそれは本物であると告げていた。
「さっきも出来たし……今回は出来ない、なんてわけないじゃない?」
「“へんしん”ではねぇんだな。それの上位互換。コピー能力かよ……心を覗いて、侵入してきたあれも、あのキルリアの固有能力か?」
「そうだよ♪ 私が変身した相手がそういう能力持ちだったの♪ まあ、流石にピカさんの持ってる刀は再現出来ないし、制御者の中に引っ込んだり、るーくんになっても神様にはなれないけどね? そういうのは無理だけど、ある程度は出来る。えへへ。そんなの、チートだって皆に言われちゃうけどね」
ポチャが気持ち悪そうにしていたのも分かる気がしてきた。目の前にこうも真似されると腹が立つと言うよりは、どこか違和感を覚えざるを得ない。そして、ポチャがピカを攻撃出来なかったのも、過去の話を持ってきた他に、こうして守るべき相手が敵意を向けているというこの場面。この場の圧に押されてしまうのだろう。相当のストレスがのし掛かっているのを感じた。鈴流のときは割り切っていたし、違うと確信して、躊躇はなかった。今も戸惑いないが、別の意味で拒否している自分がいるのは確かであった。
「やっぱり……制御者はこの力でやられると死んじゃうんだ? なるほど。同じ力は毒になるってことなんだね」
「すぅの記憶を盗み見てるのかよ。クズだな」
「酷いなぁ……情報として、ちょっと見てるだけだよ? すーくんだって、人の心読むでしょ。それとおんなじ」
「お前と一緒にするな」
「一緒だよ。勝手に見てるってところが特に。……行って、剣達!」
スラの言葉に数本の剣は、全てフォースに向かって飛んでくる。どれも急所に当たりはしないと直感で思う。が、スラの意思で軌道なんていくらでも変えられてしまうだろう。
「くっそ……! “チェーン”!」
変えられないようにするには、縛る必要がある。そう咄嗟に判断して、地面からいくつもの鎖を伸ばし、弓矢のように飛んできていた剣を全て捕まえる。浮いている剣を鎖で止めるという重力を無視した行為であるが、その状況に突っ込みを入れる余裕はなかった。
「わあ……♪ すごぉい♪」
「面白がってるな、お前」
「そんなことないよ? でも、どこまで出来るんだろって考えてたの。この力、色々出来そうだね」
剣を鎖で捕まえたとき、オリジナルよりは威力は劣ると感じた。仮にイブが力を取り戻したとして、フォースの技で止められるとは思えないからである。恐らく、鎖を壊し、的を射てくる。フォースはあくまで継承者の能力を預かっているだけで、自分のものにしている訳ではない。オリジナルには、力の主には勝てないのだ。こうして、扱えるのは能力と長年の経験、知識の違いだ。そこはイブよりは勝るので、競うことがあれば、結果的にフォースが勝つ。純粋な面でいえば、イブの方が上手になる。これも今までの経験上、そうなることは知っているのだ。
よって、スラのコピーはオリジナルよりは劣るということになる。しかし、だからと言って、事態が好転するわけではないのだが。
「じゃあ、数を増やしてみようかな? どれくらい出来るのか気になるもんね」
平然と言い、顔色一つ変えずに十、二十と剣を空中に出現させてその場に浮かせる。この全てを鎖で抑えることは不可能だ。なら、どうするのか。
「出来るだけ頑張るしかない」
二振りの剣を出し、構える。捕まえられないのなら地面に叩きつけて刃を折るしかない。鎖で縛れなかった分をこちらで処理をする。これで、全てを片付けることが出来るのかと問われれば答えは、NOである。いくつかは逃すだろうし、そもそも簡単に折れるわけない。どれだけ防げるかは運次第であった。
「いくよ、すーくん」
「言わなくても来るだろ、お前……!」
二十の剣が一斉にフォースめがけて襲いかかってきた。自分の運を信じて、どうにかするしかないのである。心なしか笑みが溢れてしまうが、頭がおかしくなってきたと冷静な自分がどこかで呟いた気がした。



~あとがき~
まあ、いつかはやってみたかったよね。
偽者だけど、イブVSフォースです。

次回、イブ(偽者)VSフォース!
どうなる、フォースくん。頑張れフォースくん!

制御者は継承者を守る盾であり、剣なので、間違っても殺すようなことはありません。制御者としての当然の意識というよりは一種の洗脳的なものかもしれません。これはフォースもウィルも同じですし、なんなら、エレルやユウ、もういないけど、ラウラも同じです。
抗えるなら神様成分が強いウィルでしょうけど、今回はそんな余裕もないし、別に殺したい訳じゃないからね。多分、ウィルがやったら死んじゃうよね……スラは。
これ、継承者に殺してと言われれば、そう動けるんですかね。どうなんだろ。……継承者が一番だから、命令が優先されそうな気もする。けど、そうやって殺すのは守るというものに反するよな……なんだ、この矛と盾の話は……? みなさんはどう思いますか!?((←え

ではでは!