satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
苛めっ子達に話しかける十五歳。
ヴァルツ「……」
苛めっ子らの年齢は詳しく決めてないけど、十ないし十代前半。ヴァルツよりは年下だと考えてます。
もえぎ(イーブイの少女)はどうなんだろう。分からん。苛めっ子と同い年かそれよりちょい下だと思ってくれればいいです。
ではでは、始めます!


子供達は誰かに止められるとは思っていなかったのだろうか。話しかけられた途端にぎょっとして、俺の方をまじまじと見つめてきた。疑うようなそんな目をしている。それはいじめられていた少女も同じだった。ただし、疑うような目で見ているというよりは、何が起きているのか分からないといった、戸惑いの色が見える。
「複数人で泣いている女子を苛めるものじゃない。普段なら見て見ぬふりをされて、誰にも言われないのかもしれないがな」
「だれだよ! おまえ!!」
「これっきりの相手に名前を教える義理はない。よって、通りすがりの誰かでいい」
特定されるのも面倒だ。言う必要はない。こちらは、この子供達の名前なんて興味もないし、知らなくていい情報だ。仮に必要ならマリーで探りを入れればいい話でもある。
しかし、果敢にも突っ込んできた子供がいるものだ。こんなことで楽しむのもどうかと思うが、楽しんでいたところに水を指されたのだ。腹を立てて突っかかる気持ちも分からなくはない。
「それで? 止めるつもりはあるか?」
「なんにもしらないくせに、勝手なことをいろいろ言うな! ほっとけよ!」
『いや、苛めてるガキの言う台詞じゃないよねぇ』
……ふむ。確かにその通りだ。
「何も知らないのはお前達の方なんじゃないか? 苛めている方はされる方の気持ちを知らないと言うし、やめた途端にけろっと忘れるらしい。……じゃあ、思い知らすためにはどうしたらいいんだろうな」
そう言いながら、手前にいた子供の腕を引き、よろめいたところに足を引っ掻けて転ばせる。他の子供達が驚いたように……そして、一部は怯えたような目をする。
「仕方ない。口で言って止めないのなら、体で分からせるだけだ。喧嘩は得意な方だし」
『んふふっ~♪ 子供相手に躊躇いもなく手をあげちゃうヴァルツ、いいよぉ~♪ 好きぃ♪』
「お前は黙ることを知らないのか?」
思わず、トリスに返答してしまったが、幸いにも子供達が反論しようとしたところで言ったためか、自分達に言われたものだと勘違いしたらしい。きゅっと口を結んだ。
そんな子供達を見て、おかしく思えてきたのか、くすくす笑いながら、また俺に話しかけた。
『女の子、助けたら?』
「そこのイーブイ。動けるなら、こちら側に来てほしいんだが。そこにいられると、苛めっ子達に手が出せない」
「あ……」
ハッと気付いたように顔を上げ、慌てて俺の側まで駆け寄ってくる。苛めっ子達が引き止めるのかとも思ったが、そんなことはなくすんなりと引き渡してくれた。まあ、自分より年上がこんな風に迫ってきているのだから、当然と言えば当然か。
「さて。これで心置きなくお勉強が出来るわけだ。手加減はしてやる。流石に力の差がありすぎるし、弱いもの苛めをしたいわけではないから」
それ以前に、俺とこの子供達だと見た目が弱いもの苛めなんだが、不可抗力というやつだ。大目に見てほしい。
『容赦ないけど、大切なことだ。いいぞいいぞ!』
「ほんっと……口煩い奴だな」
『だって楽しいんだもん』
トリスに黙れと言ったところで、素直に黙るわけもない。小さくため息をつくと、一歩苛めっ子達に近付く。それだけで相手が恐怖していることをはっきりと感じ取った。
これではどちらが苛めているのか分からないな。
俺はバッグから『てつのトゲ』を数本取り出すと、地面に倒れたままの子供目掛けて投げつける。
もちろん、当てることはせず、縁取るように狙いを定めていた。そして、普段の成果か、当たらないギリギリを打ち抜くことが出来た。やられた本人も見ていた子供達も涙をためて、体を震わせている。
「金輪際、この少女を苛めないと誓うならさっさと逃げてもいいんだが。……それをする元気も勇気もないか?」
「うわあぁぁっん!!」
そう声を描けた途端に、脱兎の如く公園を飛び出した。地面に倒れたまま、不幸にも俺の的になった子を残して。
「置いていくんだ。……非情な奴らだ」
『子供相手にここまでしちゃうお前も大概だ』
「お前にだけは言われたくない……って、さっきも言った気がするぞ」
『確かに』
仕方がないので、近付いて地面に刺さっている『てつのトゲ』を抜いてやる。全部抜き終わり、自由になると、ふらつきつつも公園を後にした。
「最近の子供は情けないな」
『お前から見ればねぇ~』
「大丈夫か、お前」
「あ、は、はぃ……あの、わたし、その、いじめないで……ください」
「俺はそんなことしないが。……やっぱり、やりすぎたか」
『ははっ! “ムジカク”って罪だよ~?』
「……? お前、その首の……リーフィアになりたいのか?」
毛に隠れていて先程までは見えなかったが、ちらりと見えたのは、リーフィアに進化するための道具だった。こんな小さな子が持っているのは不思議なものだが、誰かにもらったものなのだろう。
少女はこくこくと頷く。そして、俯いたまま、ぽつりぽつりと話し始める。
「これ、ママがくれたの。……パパ、いなくて、かえってこなくて……でも、これくれたあと、すこしして、ママ……しんじゃった」
その年で天涯孤独か。そりゃ、苛めの対象になるわけだ。パパとやらは死んだのか、元々いないのか、逃げたのか……予測は出来ないが、きっと寂しい思いをしたのだろう。頼れる相手がいれば、この少女も違う人生を歩めてたのだろうに。
そこら辺は俺と似ているのかもしれない。
「一人なのか。家もない?」
「……うん」
親戚もなし。おまけに家すらないという。本当に天涯孤独らしい。かといって、俺と来いとは言えないな。流石に。旅に連れ出すわけにもいかない。
「ふむ……マリー」
「はい。呼びましたか?」
離れたところで待機していたマリーを呼び、この子に出来ることを絞り出す。得策と言えるかは微妙だが、俺に出来ることはこれくらいだ。
「この辺で孤児院とかないか。信頼出来るところ」
「捜します。少々お待ちください」
「あ、あの、このひと……?」
「俺の仲間だよ。悪い人じゃない。……どうだ、マリー」
「この国は荒れていますから、絶対とは言えません。しかし、ギルドの管轄である児童施設があります。身寄りない子供達が集まり、勉学に励むところだそうです。衣食住も保証されているようですね」
「ギルド管轄……セイバーギルドか」
「はい。四天王が一人、エルン様が統治しているギルドですわ。この国唯一の頼み綱の」
「そういえば、少し前にそこにスカウトされたな。……ふぃー」
「ふぃー……?」
リーフィアになりたいみたいだから、ふぃー」
「ふぃー……」
少し笑っているように見えるし、よかったのか。本名を聞くのも忍びないと思ったから勝手につけただけなんだが。
「ふぃー、行くぞ」
「……はい」



~あとがき~
あと二、三話でヴァルツ視点は終わると思います。

次回、イーブイの女の子のお家探し。
いや、あの、ヴァルツ……? 自分のお家も大切にしてやれ? え?

本編でヴァルツはセイバーギルドに所属していますが、ここら辺から繋がりがあったんです。どうやって繋がりを持ったかは知らないけど(考えてない)。まあ、あれですね。多分、見込みある的な感じでスカウト受けてたんでしょうね。はい。
返事は決まってからでいいよって言われて、ヴァルツはほったらかしにしてたわけですが。

苛めっ子から助けるのはいいけど、やり方が酷い。もっとなかったのだろうか……まあ、ないか。

ではでは!