satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
イーブイの少女(もえぎ)を救出。お家探しになります。
ねえ! 自分のお家は!?
ヴァルツ「俺がいなくてもどうにかなる」
もえぎ「あのときは……申し訳ないです……はい」
ヴァルツ「逃げる理由が出来てよかったよ。俺は」
もえぎ「……あうぅ」
こいつめ……!


「ここは……」
「ちゃんと見るのは初めてだな」
『でっか。発展都市なのは知ってたけどぉ』
「ここまでとは、人の子の知恵は侮れませんわ♪」
各々が感想を漏らす。
セイバーギルドの前に来たはいいが、ここで受け付けるものなのかまでは分からなかった。児童施設に行けばよかった気もする。
「マリー、ここから施設まではどれくらいだ?」
「徒歩五分圏内に」
「なるほど。……まあ、いい。直接そちらに向かう方がいいか。ここまで来てなんだが」
くるりとギルドを背にすると、そこには目を細めたナエトルがこちらを見上げていた。俺達三人を順に見ると、納得したように何度か頷いた。
「ぬぅ」
……なんだって?
「中へどうぞ、だそうです」
「おいマリー、なぜ分かる」
俺の疑問には笑って返すだけだった。トリスは何も言わないが、ふぃーはわなわなと体を震わせている。
「は、わ……あわわ……」
「ふぃーは落ち着け」
「は、にゃ……こわい……!」
第一声が言葉ではなく音だった。言葉を発するつもりはないのか。……発せないのか?
いずれにせよ、招待されたのなら、中に入ろう。
ナエトルの後に続いてギルドへと足を踏み入れた。建物自体が大きかったため、中もそれなりの人で賑わっていた。椅子に座って雑談をする者、掲示板とにらめっこしている者、武器の手入れをしている者等、各々作業中らしい。
「ナエさん、おかえりなさい! その子達は? 迷子ですか?」
一人のタブンネが近付いて来て、ナエトルに話しかける。俺達を見て、不思議に思ったらしい。このタブンネはどういう位置付けなんだろうか。
「依頼受理担当のようです。非戦闘員ですね」
マリーが俺の疑問にそっと耳打ちで教えてくれた。さりげなく力を使って探ったのだろう。何も言っていないのに、把握するのもどうかと思うが、俺的にはありがたい。
「ぬ」
「え……親方ですか? ええ、部屋にいらっしゃいますよ。何かありました?」
「ぬん」
「その子が噂の」
なんて言いながら、俺のことを見た。スカウトされた件だろうか。ギルドメンバーになんとなく広まっているらしい。
タブンネに見送られながら、俺達はナエトルを追いかけてついていく。このナエトル、何を言っているのかさっぱりだが、そこそこの地位なのでは?
ある扉の前でピタリと止まる。ナエトルはこちらを振り向き、俺に道を譲る。この先は自分で行けということなのだろうか。勝手に連れてきておいて、それはないだろうと突っ込みたくもなるが、元々会うつもりはあったのだ。それが早まっただけに過ぎない。
「行くか」
「は、はい……」
「何があるのでしょうね♪」
重々しい雰囲気のある扉に手をかけ、ゆっくり開く。部屋の中は豪華絢爛……とはいかず、思ったよりもサンプルである。両壁に本棚と収納棚。両者ともものが詰め込まれて、一応は整理されていた。パッと見たところ、物の規則性はないように思う。そして、正面にモニターがいくつかあり、親方の姿はそれに阻まれて目視出来ない。
「ぬー」
「やあ、おかえり。意外と早かったね。……この子達は?」
モニターから顔を覗かせたのは一人のエルフーン。この人がここ、セイバーギルドの親方であり、陸の四天王の一人……エルンか。
「ぬぬぬ」
「……あ、彼がスカウトしたっていう? なるほど。分かったよ。ナエ、ありがとう」
そう言うと、親方は俺達の前に姿を表した。まあ、どこにでもいるエルフーンにしか見えず、これといった特徴はない。見た目に関してはそれくらいの情報しかないが、にこにこと曇りのない笑顔を向けられ、少しだけ違和感を覚える。その違和感の正体はすぐに見当がついた。
……心から笑っていないな。この人。偽りの仮面でも被っているのだろう。
猫を被るのは悪いことではない。敵を作らないという面では一番よい方法だろう。そういったものが身に染みているのか、意図的にそうしているのか分からない。
「ここに来たってことは返事を聞かせてくれるのかな? ヴァルツ君」
「返事に関してはまだ何も。この子をどうにかしてほしかっただけだ」
ちらりと足元で小さくなっている少女を見る。親方は、俺の目線で何が言いたいのか分かったのだろう。納得したように頷くと、部屋の後方にいたナエトルに呼びかけた。
「ナエ、この子を連れてってあげて」
「ぬーん」
「え? え?」
理解していないのはこの子だけらしい。しきりに辺りを気にして、キョロキョロしていた。どうにか状況を把握しようとしているのかもしれない。
「ふぃー、あの人が新しい家に連れてってくれる」
「おうち……」
ナエトルを一瞥し、再び俺を見上げた。その目には不安の色が見える。
「……俺は一緒には行けない。やることがあるから、ここでお別れだ」
そう告げると、見るからに落ち込んでいるのが分かった。今まで、こんなことをしてくれる大人もいなかったのだろうか。短時間でそれなりの信頼を得たのはいいことなのだろうが、俺にとっては素直に喜べない。今後、会うこともないかもしれないのだから、変に期待させるのもどうかと思う。
そんなことを考えながらも、俺の口から出たのは全く違うことだった。
「これで終わりじゃない。また会えるよ」
「……ほんと?」
ふぃーの目線に合わせ、頭を優しく撫でる。上手く笑えているのか自信はない。
「本当だ。お前が大きくなったら……一人で生きられるくらいになったら。……それくらい時間が経てば、俺のやることも終わっているだろうから」
「わかった。……まってても、いい?」
「好きにしろ」
ふぃーは、パッと顔を輝かせ、こくこくと何度も頷いた。そして、ナエトルの元へと駆け寄ると、こちらを振り返った。
「あ、あの、おにーさん、なまえ……ばる…?」
「ヴァルツ。……ヴァルでいいよ」
「ばるさん! またね……っ!」
「……あぁ」
最後に少女らしい笑顔を見せ、部屋を出ていく。それを見れただけでも、助けた甲斐はあったと言えるだろうか。



~あとがき~
おかしいな。こんなことを書くつもりはなかったのにな??

次回、少女と別れたヴァルツはやっとお家に帰ります。ここまで長かった(泣)

この時代から、エルンとナエは健在ですね。空と海から十年ほど前の話で……え、こいつら何歳??
まあ、いいや。考えるのよそう。

ヴァルツ視点で書く内容は決まっているんですが、こうも続くなんて思ってませんでした。まあ、もうすぐ終わると思います。五話くらいで終われと思ってたのになぁ……無理だったなぁ……

ではでは!