satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

幼き騎士は何思う?

~前回までのあらすじ~
やっと家帰ったな、お主……
もえぎ「五話目にして、目的達成、です」
ヴァルツ「……」
わあ……めっちゃ嫌な顔してる~……
ヴァルツ視点ももう終わります!! やったね!!
もえぎ「ヴァルさんの、終わって、書きたいこと、書き終わりますか……?」
ううん! 終わらない! 次はもえぎちゃんだよ。
ヴァルツ「だろうな」
もえぎ「はうぅぅっ!?」
それじゃあ、始めます!


家に帰り、まずやったことと言えば、母に代わりにやると言った部屋の片付けだ。散らかったものを捨てるなり、元の場所に戻すなりと淡々と進めていく。別に足の踏み場がないとかそういう散らかりではないから、これは案外早く終わった。
「他にやることは? というか、どこまで終わってる?」
「お別れは済ませたの。明日、お父さんを火葬場に。それで一通りは」
思ったより、やることはないな。一週間以内にはここを出られるかもしれない。
そんな風に思っていたが、そう簡単にいかないのが人生である。思い通りにはいかないらしく、母の困ったような表情で何となく読めてしまった。
「お父さんのことは、それで終わりなんだけれど……」
「あぁ、うん。親族の挨拶だよね。大丈夫、任せてくれていいよ」
「ごめんなさいね」
「母さんが謝ることじゃない。俺がやらなきゃいけないことなのは理解しているからさ」
笑って、母を安心させる。そこで会話を終わらせるため、まとめたゴミを持ち、外に出た。外は日が沈み、夜になろうとしていた。
当主である父が倒れ、次が俺なのは分かる。そのための挨拶だ。これは今やらなくても、いつかやるときが来るものだから、大して問題ではない。問題と言えば、他のことは親戚一同に任せることになる点だろう。そこそこ名の知れた家柄である。簡単に言えば、ちょっとした金持ち一家だ。事業なんかも立ち上げているし、その統括は父がやっていたと聞く。その前は祖父だったらしいし、流れに沿えば次は俺なのだが、生憎、仕事のことを知らない子供。そんな奴に任せるはずがない。
「醜い争いにならなきゃいいんだがな」
まあ、そこら辺は俺の知ったことではない。仮に、事業が没落したとしても、俺は痛くも痒くもないように手回しをすればいいだけの話。勝手に継いで、適当に済ませてくれればいい。
その準備も必要か? そもそも、父の遺言か何かないのだろうか。そこら辺の始末は……していないか。まだ死ぬなんて思っていなかっただろうし。
母に任せるようなこともないだろう。母は珍しく、外部の家柄だ。そこそこ裕福な生まれらしいが、一族の血を継いではいない。つまり、一族からすれば、母はよそ者なのだ。父が倒れた今、俺がいなければ、さっさと追い出されてもおかしくはない。
よそ者だからこそ、俺のことを少しは子供だと思って接してくれているのは分かる。……あくまで、少しだけだ。結局のところ、父や周りに毒されてしまって、考えが似通ってしまっている。
「……マリー」
『はい。どうしました?』
「お前は母をどう感じ取った?」
『……そう、ですね。大切にしているのが伝わりました。……とだけ』
「子供として、ではないんだろう。道具なのは理解しているつもりだからな。俺がいなくなっては困る。だから、過剰に反応するんだろう。再確認した。やはり、何も変わらない」
『兄様の言葉を借りるのは癪なのですが、子は親を選べない。……これが本当なのだと、愛し子とあのイーブイの少女を見て、学びました。あの少女、辛い目にあっているのに、最後のあの綺麗な笑顔……愛されるべきお人です』
「ふぃーには、俺と同じ様な考えをしないでほしいと思う。いい友人に会えるといいんだが」
ぐっと背伸びをして、気持ちを入れ換える。今日のやることはもうなさそうだが、明日は面倒なことのオンパレードだ。適度に気を抜かないと、やってられない。
「戻ろう」
『その方がよいですわ。夜風に当たりすぎてもいけません』

次の日。予想通り、面倒な一日だった。
寝る前に色々と下準備を済ませ、火葬場に行く。その場には俺と母。そして、一族が何名か来ていた。父と同じくらいの歳だったり、それより少し上だったり。
火葬は何事もなく終わり、家に戻って、やって来る親戚に挨拶するのだが、そこだった。
「坊ちゃん、この度はお悔やみ申し上げます」
「いえ。お気遣い感謝します」
このやり取りを永遠と続ける俺の身にもなれ。何回繰り返せばいいんだ。
火葬場に来ていた人達だけかと思ったが、そんなことはなく、遠縁の人達まで押し掛けてくるのだから、迷惑極まりない。いや、この人達も、好きでこんなガキに頭下げているわけでもあるまい。お互い様というやつか。
マリー、あとどれだけ来るのか探れ。
『はい、愛し子』
気になってしまい、思わずマリーに呼び掛ける。本来なら出現させて使うものだが、大雑把な数が知りたいだけなら、出現させなくとも読み取れるだろう。情報が欲しいわけでもない。マリーの能力を使うために集中しつつも、目の前の気配りは忘れない。変に疑われるのも面倒である。
『この近辺で感じ取れるだけでも、三十くらいは。一族のというよりは、お父様の会社の従業員とか、関係者も含めてですが』
勘弁してくれ。少なくとも三十は頭を下げろと? いや、やるけれども。
『ごめん。我慢出来ないんだけど! ぷくくっ……この状況、マジ笑える~♪ あはははっ!!』
呑気でいいな、この神様め……!
トリスの笑い声が響く頭で、笑顔が引きつっていないか心配になる。しかし、それも杞憂だったようで、何も追求されることなく、話は進んでいく。
「坊ちゃん、この後のことはどうお考えで?」
「まだ何も。しかし、務めは果たします。神霊様と心は通わせておりますので、時が来ればお力を貸してくださりますよ」
トリスのことを様付けで呼ぶのも癪に触る。
『ヴァルツ~♪ もう一回! もーいっかーい!』
うるさい。黙れ。
「父の……私の家で代々行っていた事業に関しては、何も知らないのでおじ様方にお任せします。この件に関して、私は何も口出ししません。それらに関する誓約書も後日お送りします」
笑顔の仮面のまま、やって来る人全員に対応する。これが終わったのは、夜も更ける頃であった。

全てが落ち着き、ようやくこれから自由になれる。俺が帰ってきてから約一週間程経っていた。見立て通りではあったのだが、初日からなかなか濃い一日ではあったな。
「やることは全て終わった。後はギルドの返事をしてしまえば問題ないな」
寝る支度を終え、明日の旅の準備を進めていく。準備とは言ったが、帰ってきてから大して物は出していないため、しなければならないのは補充くらいか。
『ねえねえ? あいつがやってたお仕事を丸々っと投げ出したのは、働き口確保してたからなのぉ?』
「全く知らないから、興味もないしする必要もないと思ったからな。トリスを任せるとは言われても、会社をよろしくされた覚えはない」
『あっはは。性格、歪んでるね。でもでも、そういうとこすきぃ~♪』
真面目に生きている程、トリスには嫌われそうだな。こいつの基準は面白いか否かだ。普通から抜け出すことが重要なのかもしれない。
『お仕事の利益も受け取らないつもりですか?』
「父の遺産でしばらくは問題ないだろうからな。幸いにも母は金銭感覚は狂っていないし、そこそこやりくり上手。少なくとも勝手に使い込んで散財するようなことはない。……他人だと思っているが、見捨てるつもりもないぞ?」
『なぁんだ。夜逃げすると思ったのに』
なぜ俺が夜逃げするんだ。する必要がないだろう。
『愛し子よ、次はどちらに向かいますか?』
「決めていないな。ギルドに加入するなら、勝手に組み込まれる可能性もある」
『私、せっかくなので港町を歩いてみたいです。ずっと大陸ばかりだったので。海を見たいですね』
「行けたらな」
荷物も整え、部屋の電気を消す。この部屋ともしばらくお別れか。大した思い出もないが、快適さで言えば上位だったな。
『野宿するより、ベッドで休んだ方がいいのは明白ですわ』
「子供でも分かるよな。……トリス、さっきから黙ったままだが、死んだか?」
『……いや。残念ながら生きてるよん。でもね、ヴァルツ、悪い知らせだ。僕の聖域に侵入者がいる』



~あとがき~
途中、やっつけですが、許してね。

次回、トリスのいる場所に侵入者! ヴァルツはどう動く……?
やっと書きたいところまで来たよ。もうそろ終わるよ!

今回はいつもより長かったですね。申し訳ない。
もう途中のやつ、いらなくねって思いつつも書きました。周りの大人に振り回されるヴァルツを楽しんでくださいな!←

ではでは!