satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第196話

~前回までのあらすじ~
あちこち走り回るポチャ君。ピカを探して転々としているところですな。
ポチャ「ほんっとにね……」
まあ、頑張れ。ここら辺はノープランなので、さっさと進めていきますわ。
ポチャ「……大丈夫なのかな」
さあ……? なんとかなるなる!!
ポチャ「ほんとに大丈夫?」


後ろを振り返り、誰もついてきていないことを確認をすると、ほっと息をつく。
「ちょっとは気を付けなきゃな」
再びピカを探して歩き始める。しばらくは黙って探していたのだが、ある気配を感じて、その動きを止めた。その気配が何なのかまでは分からない。そこまで敏感ではないため、じっと集中しなければどこから来るのか分からないのだ。
「何……?」
スイを構え、警戒体制に入る。近くの影から現れたのは一人のピチューだった。片耳にバンダナを巻き、首元の毛先が少しだけ跳ねていた。怯えている様子もなく、戸惑っている様子もない。ただ、何かを探すように辺りを見回していた。
「……ねえ、君、誰か探してるの?」
「え? あぁ、いえ。お構い無く」
ポチャに話しかけられ、にこりとも笑うことなく返答した。見た目はポチャよりも年下だと思われるが、落ち着いた受け答えにそれも疑問に思えてくる。
「え、一人?」
「いえ。仲間がいたんですけど、どっか行っちゃいまして。……まあ、今回、僕は何もしてないし、関係ないんだけど」
「その仲間を探して?」
「一応。形だけでもしておかないと拗ねるし……ところで、大海のポチャさん」
久し振りに呼ばれた通り名に反応が遅れる。そんな名前もつけられていたなと思ったくらいだ。
「……あ、ぼくのことか。何?」
「初めて見ましたけど、結構隙だらけですね。わざと?……それとも、スラに何か言われたか?」
「! 君は」
「あーっと……先に言っておくけど、僕に戦意はない。武装もしてないし、今回のことはリーダーの独断なんだ。それにスラが駆り出されて、僕は半分、遊びみたいなものだったんだけど……黒さんが見てこいって言うから、敵地観察」
ひらひらと力なく手を振る。ピチューの言う通り、見たところ武装した様子はない。彼から聞いた名前は以前、ピカから聞いたものと同じものである。話の内容も嘘はないだろう。つまり、このピチューも敵であり、倒すべき相手なのだ。
「君の名前は」
「キーテ。雷獣から聞いてないか」
「さあ。……名前までは知らないよ。ひと悶着あったのは知ってるけど」
春祭り前に敵と交戦した話は前に聞かされていた。そこで名前が伝えられたかまでは覚えていないのが本音である。そもそも、ピカが彼から名前を聞いたのかさえ謎だ。
「こっちは色々知っているよ。敵のことを知るのは常識だから。……海の国の第一王子ティール・クランド。ここでは、探検隊スカイのサブリーダーで雷獣ピカのパートナー」
攻撃の体勢は取らず、知っているらしいことを話し始めた。攻撃されていないし、突然襲うのも気が引けてしまう。先手必勝なんて言葉があるが、今のこの状況ではやりようがなかった。少なくとも、ポチャの性格ではそんなことは出来なかった。これが誰かを人質にしているなど、そんな状況なら話は変わってくるのだが。
「時の歯車事件、悪夢事件を解決したヒーロー……ってところかな。他にも実積あるんだろうけど。……で、今から約一年前。ある仕事中、自分のパートナーに大怪我を負わせてしまった……だったか。このことをつつかれた?」
「……っ」
無意識に反応してしまった。先程と同じように。キーテはそんなポチャを見ても特に何かをするでもない。
「スラから聞いた話はそんな感じだったな。その様子はビンゴ? あ、これ以上は何も言う気はないから。でも、失望はしたよ。そんなものなのか? 雷獣の相棒は」
ふっとその場から消えたと思ったら、一瞬でポチャの懐へと潜り込んでいた。小さな体を生かして隙間へと入ってきたのだ。抵抗する間もなく、腹に蹴りを入れられていた。その反動でスイを落としてしまう。
「聖剣と神器の違いは扱いやすさにある。神器は人を選ぶが、聖剣は素質があれば誰にだって扱える……もちろん、最大限引き出すにはそれ相応の努力と素質が必要だろう。が、単純に使いたいだけなら、その必要はない」
『てぃー!』
「けほ……っ! スイっ!」
ポチャが呼び戻す前に、キーテがスイに近づき、軽々と持ち上げる。自分の身長とほとんど変わらない剣を何でもないように扱った。
「聖剣二振りは扱えないけど、一つだけなら問題ないな」
「スイ……来い、セツ」
『はいなっ!』
セツを構え、キーテを見据える。キーテはこんな状況でも至極冷静だった。こういう場に慣れているかのように全く動じなかった。
「剣を向ける勇気はあるんだな」
「……ぼくも探検隊の端くれだ。やらなきゃいけないことは分かっているつもりだよ」
スイを取られたということは、ポチャの心に隙があったということになる。聖剣の主はポチャなのだ。その気になればキーテの手から無理矢理引き剥がすことだって可能なはず。しかし、それをしないのは、呼び戻せないと直感で悟っているからだ。今の精神状態では、剣はついてこない。取り戻したいなら、敵の隙をつくか、気絶させるか等をする必要があった。今のポチャにそれらが出来るかは定かではないが。
『てぃー……すいちゃ、帰ってくる?』
「取り戻すよ……っ!」
「やっぱり、聖剣の力までは引き出せないか……そこそこ軽いし、僕には合わないな。……まあ、この際、何でもいいけれど」
『やーだー! てぃーのとこ、もどるー!』
何度か手に馴染ませるように素振りをしていたキーテが呟いた。聖剣を手に出来たのは、彼の剣士としての実力が高いためだろう。スイの声は聞こえているのかいないのか分からないが、聞こえていて無視している可能性が高い。
スイを構えたキーテが、ポチャの懐を目指して走ってきた。それにポチャが対応出来ないはずもなく、防御姿勢を取る。突撃を防がれつつも、キーテは体を捻らせ、横からの斬撃を繰り出した。その攻撃の速さは普段、ポチャが繰り出すものより数段上であった。
「はやっ……! セツ!」
『あうーー! がんばう!』
セツを冷気に溶け込ませ、一瞬で盾のように変形させた。スイとポチャの間にはばかるように作り、一度距離を取る。
「雪花はそんなことも出来るのか」
「……ほんと、詳しいね。色々」
「神器は文献などほとんどないが、聖剣はそれなりに出てくるからな。使い手が多かったという証拠。それでも、一度に複数を操る人は少数だろうな」
『てぃー、ちょーし、わるい? だいじょぶ?』
「……さっきのあれで、心が乱れてる……んだろうね。あまり、大丈夫じゃないよ」
セツに指摘されなくても、動きが鈍いことと狙いが定まっていないことは分かっていた。剣の乱れは心の乱れだと、何度も師に……父のブライトに教わったくらいだ。
盾に変形させていたセツを剣に戻し、再び構える。少しだけ手元が震えているのが分かる。これだけ乱されるとは思わなかったが、自分が考えているよりも、トラウマとはずっと根深いものなのだろう。立ち向かうことすら、嫌になるくらいの虚無感を感じていた。ここでやめてしまえば、どれだけ楽になれるのだろうと考えてしまう。
その気の迷いが敵に悟られないはずもなく、キーテが突っ込んできた。剣を振り上げ、数秒後には振り下ろされるだろう。
「敵意がないと言ったが、訂正しよう。見ていて腹が立つから、ここで斬らせてもらおう。……迷いがあるものから戦場では消えていく。……だから、大海はここでさようなら、だ」
「……っ!」
『てぃー!』
セツを盾にするのも間に合わない。何かの技を使って回避するにも時間が足りない。出来ることいえば、少しでも体をずらし、致命傷を避けるくらいだろうか。体をずらしつつも思わず、ぎゅっと目を閉じ、来るべき痛みに耐える準備をした。
しかし、その必要はなかったらしい。いつまでも痛みが襲ってこない。目を開けてみると、キーテが目の前からいなくなっていた。
「……な、んで?」
「私の下に来い! スイちゃん!」
ポチャの目に写ったのは、電気を帯びる刀を構え、ポチャの愛剣の名を呼ぶ姿。どこからともなく、スイが現れ、彼女の手元に収まる。
『マスター、それは欲張りというものではないか? まあ、我は構わんがな』
「あっはは♪ 仕方ないでしょ? 私の相棒、戦意喪失してるんだもの」
「ピカ……っ!!」
ポチャの声に振り返ったのは、いつもの自信に満ち溢れる笑顔を見せるピカだった。にこっと笑った彼女は、すぐに前を向く。
「さあって……お仕事といきますか! 私を楽しませてよね!」



~あとがき~
何話ぶりなんですかね。ピカ様の登場です。
どうやってキーテを吹っ飛ばしたのか……謎です。明らかになるのでしょうか……(無計画)

次回、ピカとキーテです。戦うかは知らないけど。

やれやれ……大まかにやることは決まっているのにそこまでが遠い。長い! 辛い!!
でも、頑張ります。バトル描写は苦手なのでそこまで続かないはずだ……はずだ……!

ではでは!