satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

空と海 第200話

~前回までのあらすじ~
ヴァルツとピカが別れ、ピカが敵と交戦中!
そして、描写に注意ですぜぇ~……流血、その他過激表現に注意!
ピカ「……今回、注意することある?」
わからん! まあ、言うだけね。
ピカ「注意って言う割には軽いんだよね」
あはは! ここくらいは明るくいかねば、病んでしまいそうです!!
ピカ「書けなくてひーひー言ってるだけでしょ」
そうとも言う……


戦線離脱し、走ること数分。その短い間でも、ヴァルツは目を閉じて回復に専念しているらしい。トリスは話し相手もいないため、黙って走っていた。
そして、救護テント付近まで近付くと、マリーの姿を発見した。その近くにもえぎの姿はない。
「あ、マリー」
「兄様。……あぁ、愛し子よ! なんて無茶を……!」
ヴァルツの姿を見て、どういった状況なのかを完全に理解したらしい。神器と主は心で繋がっているため、様子は近くにいなくとも感じ取れるのだ。それでも、ヴァルツの命を忠実に守って、もえぎをここまで連れてきた。そこは称賛すべきものだろう。
「ねえ、僕に何か言うことはないのぉ?」
「ありません」
「うっわぁ……清々しいほどにキッパリ言うね。いいけどぉ~……ほら、ヴァルツ。ついたよ」
「……ん」
トリスの呼び掛けにうっすらと目を開けた。ふわりと欠伸を漏らしつつ、しっかりと自分の足で立った。数分とはいえ、休憩したことでいくらかは回復したようだ。また、ピカに薬を投与されたことも相まって、回復も早まったように感じる。軽くストレッチをしながら、体の動きをチェックする。問題ないと確認すると、二人と向き合った。
「それで? 雷姫の主に言われたこと、やるの?」
「まあ、そうだな。……マリー、探れるか」
「はい。……問題ありませんわ」
「トリス。お前はふぃーのところへ戻れ。そっちの方が回復も早い」
「えー? ここまで来たら最後までお供したぁい」
「我儘だな。腹が立つほどに」
「愛し子よ、もえぎ様には会われないのですか?」
「会う?……まだ寝てるんだろう? 必要ない」
救護テント付近は怪我人でごった返しているわけではないが、全く人がいないわけでもない。それなりに忙しそうに動いており、怪我の手当てに道具の補充にと奔走しているらしい。ぐるりと見回していると、偶然レンと目が合った。レンも気が付いたようで、ヴァルツの方へと近寄ってきた。
「ヴァルツ~♪ 生きてたんだな~」
「勝手に殺すな。仕事しろ」
「厳しい……っ! あ、もえぎ嬢なんだけど、パパっと手当てしといたよん。命に別状はないから、安心して」
「? 別に心配してないが」
「素直じゃないね」
「あ?」
「そだ。ピカに会った? いなくなったんだけど」
「ピカなら戦場を駆け回っている。……仕事あるから、これで」
レンに背を向けて本部方面へと歩を進めた。後ろでは「会ったの!?」や「マジで!?」といった驚きの声が聞こえてきたが、それに振り返ることはなく、無視して歩いた。マリーがその後を追いかけ、トリスは珍しくヴァルツの指示に従い、二人の後にはついかなかった。我が物顔でテントの中に入り、あるベッドの前で立ち止まる。そのベッドの上ではある人物がブランケットに包まり、体育座りで小さくなっていた。
「やぁ、もえぎ。元気?」
「……うぅ。私、役立たず、です……」
そう言いながら、もえぎが顔だけブランケットから覗かせる。表情から、かなり落ち込んでいるのがうかがえた。
「落ち込むことないよ。もえぎは頑張ったよ~? ほとんどはもえぎが倒したんだし」
「でも、大事なときに、やられて……全然、力になれませんでした。……いつも、そうです。ヴァルさんの、パートナー……なのに」
「僕を所有しているだけでも大したもんだと思うけどぉ……」
「そんなこと、ないです……うぅ……」
もぞもぞと動き、また隠れてしまった。こうなってしまうとしばらくは閉じ籠ったままだろう。トリスは肩をすくめ、もえぎの中に戻っていった。

「愛し子よ、本当はもえぎ様が起きていたこと、分かっていたのではありませんか?」
「分かっていたとして、何になる?」
「愛し子は、お優しいお方ですわ」
「……好きに解釈しろ」
本部へ足を運ぶと、目的の人物を簡単に見つけることが出来た。彼に近付くと、彼も知っていたようでパッと顔を明るくした。
「えと、ヴァルツ……お兄ちゃん! だよね! ボク、ピカに言われたの。お手伝いしてって!」
おおよそこの場には似合わない、幼く無垢な少年は無邪気な笑顔でヴァルツに話しかけた。
「ピカのところの、フィフィ、だったか? 敵の弱点を探るのはいいが、それをどうするつもりだ?」
「うんっ! フィフィだよー! あのね、ボクがみんなに見せるの。ここだよーって! ボクにしか出来ないってピカが言うから、がんばる。……“レーヴ・スリュー”!」
フィフィが腕を振ると彼の周りに多くの水のスクリーンが現れた。ここ一帯の地形が表示され、点滅している丸印が敵の位置なのだろう。これを目の前の子供が行ったのだとすれば、彼もまた、スカイの優秀な一員である。
「これで、なんとなくは、わかる、かな?」
「“レーヴ・スリュー”……あらゆる情報を可視化して、使用者に伝える技。……マナフィって優秀」
「まあ……♪」
「それで、探った情報をお前に伝えるのか」
そう聞くと、フィフィを首を横に振った。少し困った顔をして、ヴァルツを見上げた。
「うりり……言われても、わかんないから、こーするの! せつぞくっ!」
接続と言ったものの、その実、フィフィと手を繋いだだけである。“レーヴ・スリュー”を使用した人と繋がることで、情報共有を行い、それをスクリーンに写し出すことが出来る。つまり、ヴァルツが見つけた弱点を一気にスクリーンへと情報としてまとめあげられるのだ。しかし、それ相応の情報量をフィフィが抱えることになる。普通なら、パンクして絡まってしまうものだが、フィフィならば出来るとピカが確信しているらしい。ヴァルツはそれに乗っかるしかないのだ。
「マリー」
「はい。愛し子よ」
短剣へと姿を変え、情報を探るために目を閉じて集中する。フィフィと手を繋いだまま、片膝をついた状態で全体の敵の弱点を拾い上げていく。
「……初期より、減ってはいる……のか」
『はい。……しかし、ほとんどが偶然によるものでしょう……あと、一分弱で全てを揃えます』
「了解」
「ほわわ~……たくさんだ~♪ えいえいっ!」
ヴァルツが弱点を探り上げ、それをフィフィが新たな情報として更新していく。全てを探り終えたのと同時にフィフィのスクリーンには膨大な情報が写し出された。敵の位置、弱点の位置が事細かに記されていた。敵の位置に関しては、時々変動しているため、動きに合わせて場所もずらしているのだろう。これはヴァルツが敵の位置と弱点を把握している間のみだろうが、それだけでも大したものである。
「えとえと。……これをー……みんなに、見せる! んー! “マーキング”!」
ぐるぐると手を回し、勢いよく拳を突き出した。水色の光が中に上ると、四方に飛び散っていく。まるで光のシャワーのように降り注いだ。
「これで、みんなにも、見えるようになったね! かいじょー!」
繋いでいた手を離すと、フィフィはニコッと笑った。対してヴァルツは、とんだ大者を隠し持っているものだと心の隅で冷や汗をかく。これを口にすることはないだろうが。
「ピカー! 出来たよー!」
どこからか取り出した通信機で連絡をする。交戦中だと返事も返ってこないのではとも思ったが、その予想を裏切ってピカの気の抜けた返事が返ってきた。
『……はぁい。さっすが、フィっくん。私の愛する息子だねぇ~♪ あとでよしよししてあげよう!』
「やったー! ピカも、がんばって!」
『はいは~い。ヴァルツさん、お疲れ様でした。あとは、適当にこっちでやっときまーす』
「……そうしてくれるとありがたいね」
『一生分の働き、したんじゃないですかね♪』
「そうかもな。……ところで、お前、随分余裕あるみたいだが、終わったなんてことはないだろう?」
『そっすね。……結構、面倒です。最悪の場合も視野に入れてますよ。今はまあ、ある種の休憩時間、ですかね?』
何らかの方法を使って、敵の自由を奪っているのだろう。ピカは攻撃技だけでなく、そういった、妨害可能な技もいくつか取得している。
ヴァルツは先程まで戦っていてたどり着いた一つの答えを言う。これは戦っていて得たものと、今まで蓄積してきた情報による一つの予想であった。
「……ふうん。俺から言えることはないが……俺の予想だと、そいつも周りの敵と大差ないように思う。そういった技を使うやつがいるんだ。“ヴァンガル”の上層部に」
『……ですよねぇ。そんな気はしてました。ってことは、明確な弱点なんてないですね。こいつ』
「一種の“ネクロマンシー”だな。周りとそれは別の人物によるものだろう。造り方が違うし、目の前のそれは、本物の人を使わなければあり得ない」
『……ふふ。人が悪いですね? スパッと言ってくださいよ。ゾンビって♪』



~あとがき~
さくっと雑魚処理は終わりました。あとは警備員さん達が適当に駆逐してくれます……!

次回、他のスカイメンバーの話でもするか。せっかくなので!! 時間軸はずれると思います。申し訳ねぇ。
なんかさらっと情報出ましたけど、次回以降で説明しますんでお待ちを。

フィフィはスカイ最年少ですが、立派な隊員です。やれば出来る子! それがフィっくんなのです。
“レーヴ・スリュー”は作中でも説明がありましたが、簡単に言えば、コンピューターみたいなやつですね。スクリーンに見立てるのは水じゃなくてもいいんです。可視化できるような媒体であれば何だっていいんです。重要なのは、使用者の持つ情報……その中でも必要なもののみを一気に写し出し、利用することが出来る点です。他人の情報を写したければ、使用者に触れて情報を思い浮かべれば直接流れ込み、目の前のスクリーンに写る仕組みです。完全サポート技ですね。後方で展開して、後ろで指示出しする的な。そんな技です。
次に“マーキング”ですが、これも似たようなものです。特定のものにマークして、見えるようにする技です。本来の使い方は敵につけて、追跡するときに使用する感じかな? 今回はそれを全員に見えるようにして、弱点を表示するために使いました。
ここまで語ればわかるかと思いますが、フィっくんは完全後方支援型の戦い方を得意としています。もちろん、攻撃も出来るけど、誰かのサポートに回ることが多いです。そんなフィフィをよろしくね!

ではでは!