satomiのきまぐれ日記

二次創作ポケモンストーリーをいくつか連載しています。他、日記とかをちょいちょいと

未熟な新芽が華開くとき

~前回までのあらすじ~
《この物語は死ネタ、暴力表現等の過激な表現が含まれます。閲覧する際はご注意ください》

前回はまさかのピカ登場でしたね。私もびっくり。
ヴァルツ「だな」
もえぎ「はうぅ」
今回はあれです。事件についてお話ししていく……つもりです! はい! 多分!!
ヴァルツ「こっからどう話に繋がるんだろうな」
もえぎ「えと、私がトリスさんを持つ……そんな話でしたね……」
そのはずなんだけどな。


待ち合わせているという場所はギルドからそこまで遠くありませんでした。場所は私もたまに行くカフェでした。テラス席でピカさんとそのパートナーさんだと思われるポッチャマさんが座っています。ピカさんが私達に気が付くと、にこりと笑ってくれました。
「さっきぶりですね~♪ こんなに早く再会するとは思いませんでしたよぉ」
「俺もだ。……悪いな、時間をとらせて」
最後の一言はピカさんにではなく、その隣のポッチャマさんに言っていました。ポッチャマさんは優しそうな笑顔で応えます。
「大丈夫です。きっと、大切な話ですよね? ぼく、席を外しましょうか?」
「いや。そこまでしなくていい。……ピカが聞かれると不味い話をするなら話は変わるがな」
「えへへ~♪ まあ、ものによりますけど、さっきミーさんに聞かれた話なら問題ないですよ。このまま話しましょう」
店員さんに断りを入れ、私とヴァルさん、ピカさんとそのパートナーさんの四人でお話をすることになりました。とはいえ、私は話すことなんて何もありませんから、黙っているだけだと思いますけれど。
「まずは改めて自己紹介を。私は探検隊スカイのリーダーのピカでーす。ランクは一応、マスターランク手前……だったかな? まあ、ランクなんてこの際、どうでもいいですけど!」
探検隊のランクはよく分かりませんが、それが凄いことなのは理解出来ます。というか、親方様が頼る相手ですから、実力者なのだという認識はありました。
「同じく、スカイ所属のポチャです。基本的にはピカのパートナーとして、アシストするのが仕事。あとはスケジュール管理とか……そんな感じ?」
……あ、私も自己紹介しなくちゃですね。そもそも、私のために自己紹介してくれてるんですもん。
「えと、ヴァルさんのパートナーの……もえぎ、です。普段はえっと……ギルドのお仕事をやってて、ヴァルさんとお仕事をしてます……です。はい」
「……終わった?」
「ここはヴァルツさんもする流れですよー!」
黙って聞いていたヴァルさんが飲んでいたコーヒーをソーサーに置いて、私達に向かって問いかけました。そんなヴァルさんにピカさんはにこにこと笑顔で茶化しました。……私にはそんなこと出来ません。
「必要か、それ」
「もう。ノリ悪いなぁ? いいですけれどね。さて、何を知りたいんですか?」
「ピカはどこまで把握しているのかを」
「噂程度です。ぶっちゃけ、探検隊の中でも色々と流れてきてるんですよね。それくらいの知識です」
「ふむ」
明日向かうとなると、今日、大方の情報収集をする必要があります。やることは多いです。
「ミーさんが言ってたかもですが、『神殺し』はあくまで通称。私は一連の事件を起こしている犯人を指す言葉だと思います。由来は、犯人の通り名か能力か。……あるいは、犯人の狙いに意味があるのかもしれませんけど」
「ぼく、初めて聞いたけど、そんな話あった?」
「私達の大陸は平和だからね。物騒な話とは縁がない。アンテナ張ってる私でさえ、そこまで入ってきてないんだもん」
本来、こちらの仕事を請け負うような仕事をしていないピカさん達を引き留める理由はないです。マスターも無理に受けさせるわけにはいかないですから。
「……私の主観でお話すると、何か目的があると思うんです。だって、殺りたいだけなら、どんどん移動すればいいし、自ら動くべきです。でも、相手は動かない。場所に意味があるのか、誰かが来るのを待っているのか、とかね?」
「人物に意味がある、と?」
「人物だとするなら、お目当てじゃないし、顔見られたから殺す。……今の状況はそんな感じかもですね~……あとは、能力の場合か。“神殺し”……パッと思い付くのは神と呼ばれるポケモンを殺したって線ですけど、彼らは基本、不老不死なのでないです」
私とあんまり歳が変わらなそうなのに、ぽんぽん思い付くようです。ヴァルさんが頼るくらいですから、ある程度予想はしていました。ピカさん、頭の回転がとっても早い人なんですね。
「じゃあ、他に神ってつくものは何かってことになります。私は身近にあるので、“神器”を思い浮かべました。神器……正確には神霊かもですけど、どちらにせよ、無力化してしまうみたいな。そうなると、神器を身に宿らせる使い手にも影響が出る……かもしれません」
笑顔で恐ろしいことを言います。どれも可能性の話ですが、共通して言えることは、相手がどれだけ危険なのかということです。こちらの人員を簡単に切り抜けられるくらいですから、一筋縄ではいかないでしょう。
「全てを総合して考えたとき、自分の身を取りました。自分に危険が及ぶなら、同行する仲間にも被害が及ぶし、結果的に周りに被害が飛ぶ恐れもある。二つ返事で了承出来る話ではなかったので、私はお断りした所存です」
「時間があれば受けていた?」
「下調べする時間があれば、考えなくはなかったですよ。まあ、したところで、受けるかは五分五分でした。今の噂だけで予測出来る可能性が危険すぎますから。本業が探検隊の半端な私達が、首を突っ込める話ではない」
探検隊のリーダーという肩書きを持っているピカさんは、周りの影響と自身の力を見極めて、今回の判断をしました。全てが推測に過ぎませんが、それだけでも力が及ばないと考え抜いた結果と言えます。大陸も違うし、職業も私達とは違うので、お断りしたのは大正解なのかもしれません。
「確証がない話とはいえ、可能性はある。……しかし、今回送り込まれた者達は言うほど弱くはないと思うんだが」
冷めてしまった紅茶に口をつけていたピカさんは、ヴァルさんの言葉にぴくんと耳を動かしました。そして、にこりと笑います。その笑顔はとっても嘘っぽくって、わざとそんな表情をしているように感じてしまいました。
「あっは♪ ヴァルツさん、分かってるくせに」
「……まあ、そうだな」
「あ、あのさ。ピカの言う通りだとして、“神殺し”って呼ばれるなら、神器……神霊がやられた事実があるってことになるよね? そんなのあり得るの?」
今の話で気になったらしい、ポチャさんが遠慮がちに質問を投げ掛けました。確かにポチャさんの言う通りです。神霊が最低でも一つはやられていないと、その名はつかないでしょう。神器はとっても珍しい武器。この世にいくつあるかも知られていないくらいに珍しいものだと聞きます。そんな武器が簡単にやられるのでしょうか?
「そう言われるとそうだね。じゃあ、この線はないかも~」
ピカさんはさらっと自身の答えを捨て、あっけらかんと答えました。ここまで真剣に話したのに。
「適当な奴」
「言ったでしょ? 私の主観で話すって。私にとっての最悪を話したまでですよ。どうせ、現地に行って下調べするんだから、私の考えなんてなくても同じでしょうに。ヴァルツさんは慎重派なんだから」
「こんな仕事をしていれば、慎重にもなるさ。お前も似たようなものだろう?」
「あ~……そうですね。そうかもです。……なので、主観的な意見としてもう一つ。神霊がやられたとすれば、一筋縄ではいかない。神器の強さにもよりますけど、ヴァルツさんでも敵わない可能性すらあり得ますからね。……お気をつけて」
「あぁ。生きて帰れるように頑張るよ」
適当な返事をすると、ピカさんは椅子から立ち上がると、ヴァルさんに何かを手渡しました。何なのかは私からでは見えませんでした。
「餞別です。役に立つかは知りませんけど」
「……お前の餞別は別の意味で恐怖しかないんだが、有り難く貰い受けるよ。……手間かけさせたお詫びにここは俺が払うよ」
「お、やったぜ! ありがとうございますっ♪ あ、例の件はよろしくです~」
「あぁ。続けておく」
二人にしか分からない会話を手短に済ませると、ピカさんとポチャさんは帰っていきました。帰り際に、「今度、ゆっくり話しましょうね」と明るい笑顔で話しかけてくれました。ほぼ喋ることも動くこともしていなかった置物のような私を気にかけてくれていたようです。ピカさん、いい人ですね。
「ヴァルさん、ピカさんに何をいただいたのですか?」
「何だろうな」
すでにウエストポーチに仕舞ったみたいで、手元には何も持っていませんでした。残ったコーヒーを飲み干すと、伝票を持って、会計を済ませに行ってしまいました。私も慌てて、アイスティーを飲み、席を立ちます。
今回の事件と言いますか、お仕事は一筋縄ではいかない。……そんな気がします。元々、仲間が何人もやられているので、初めから簡単なんて思ってなかったんですけれど、よりそう感じたと言いますか。……なんて言うんでしょう? こんなに不安にさせられるお仕事は初めてです。
私は、ヴァルさんのお役に立てるのでしょうか?



~あとがき~
ピカはどんなときでも柔軟に対応出来ますね。戦えるし、推理も出来るし、万能スキル持ちです。

次回、調査前夜。平和な夜をお届けします((

特に言うことはないですね。
本題にすら入れてませんし……(遠い目)

ではでは。